書きどころ満載の感じでしたが、要点だけに絞ります。まずは中村恵理のリュー、最後に死ぬシーンでのアリア《氷のような姫君》でのピュアーな歌唱、最高でした。このシーンがプッチーニの絶筆だったわけですが、saraiの心の中でも、今日のオペラはここで終わったも同然。あたかもイゾルデの愛の死を連想させるがごとくです。プッチーニ的にはそうじゃなくて、ミミの死だと思い返します。いずれにせよ、このオペラはプッチーニの死でここで未完となったわけですが、saraiの妄想では、プッチーニはここでちゃんとけじめをつけて、彼のオペラ作曲はここで完結したような思いにもかられます。スカラ座での初演でもトスカニーニがこのリューの死のシーンで演奏を止めて、ここで先生はお亡くなりになりましたとスピーチしたそうですが、なんだか、それがこのオペラの正しい終わり方にも思えます。プッチーニには、トゥーランドットではなく、やはり、リリックなリューが似合います。そして、現代の最高のリューの歌い手が中村恵理です。
急にこれ以上、書きたくなくなりましたが、それもわがまま。テオリンの歌うトゥーランドットは素晴らしかったです。もしかしたら、テオリンを生で聴くのは初めてだったでしょうか。ちょっと調べてみると、5年前、バルセロナのリセウ劇場でのワルキューレで彼女のブリュンヒルデを聴いていました。道理で今日の第2幕の最後のシーンで彼女が「見も知らぬ異邦人に私を与えないでください」と歌ったとき、デジャヴのようにワルキューレでブリュンヒルデが「私を通りすがりの男に与えるのは止めてください。火の壁を通り抜けることのできる英雄だけに私を得られるようにしてください」と父ヴォータンに哀願するシーンを連想してしまったわけです。ちなみに彼女のブリュンヒルデは素晴らしかったことを思い出しました。そのとき、saraiが書いたブログ記事を読み返すと、現在最強のブリュンヒルデと絶賛していました。同じ言い方で言えば、今日のテオリンは現在最強のトゥーランドットだと思いました。歴史を通じても、最高のトゥーランドット歌いと賞賛されているビルギット・ニルソンにも肉薄する出来栄えに思えました。
カラフを歌ったテオドール・イリンカイも見事な歌唱で合格点。《誰も寝てはならぬ》は素晴らしい歌唱で聴き入りました。それに今日は合唱の合同チームが凄い歌唱を聴かせてくれました。これ以上の合唱はないでしょう。舞台に階段を多用し、その上に並んで大合唱団が歌ったのも成功の一因です。
最後に演出についてですが、舞台装置の素晴らしさも含めて、現代的な演出の中に音楽面の配慮もみられる、納得できるものでした。問題はフィナーレの演出。まだ、これからご覧になる方もいるでしょうから、詳細は述べませんが、びっくりするような終わり方でした。賛否両論あるでしょうが・・・。
プログラムとキャストは以下です。
指揮:大野 和士
演出:アレックス・オリエ
管弦楽:バルセロナ交響楽団
合唱:新国立劇場合唱団、藤原歌劇団合唱部、びわ湖ホール声楽アンサンブル
児童合唱:TOKYO FM少年合唱団
トゥーランドット姫 イレーネ・テオリン
中国の皇帝アルトゥーム 持木 弘
ティムール リッカルド・ザネッラート
名前の知れない王子(実はカラフ) テオドール・イリンカイ
リュー、若い娘 中村 恵理
ピン、皇帝に仕える大蔵大臣 桝 貴志
パン、内大臣 与儀 巧
ポン、総料理長 村上 敏明
役人 豊嶋 祐壹
最後に予習について、まとめておきます。
予習したCDは以下です。
フランチェスコ・モリナーリ・プラデッリ指揮ローマ歌劇場 1965年録音
ビルギット・ニルソン、フランコ・コレッリ、レナータ・スコット
何と言う名盤でしょう。まず、トゥーランドット役と言えば、昔から、この人。ビルギット・ニルソン。マリア・カラスという対抗馬はいますが、美しい声、そして、強くて伸びる声量は不世出でしょう。しかし、やはり、カラフ役のフランコ・コレッリが素晴らしい! この人の歌唱には賛否両論あるようですが、saraiは若い頃から彼のカッコ良さに同性ながら、参っています。史上最高のイタリアン・テノールだと信じています。やはり、素晴らしい歌唱を聴かせてくれます。ニルソンとコレッリの2重唱の凄さには絶句します。さらにリューはレナータ・スコット。この人もリリックなソプラノ役では図抜けた存在です。ですから、これは最高のキャストですね。カラスの録音がステレオならば、これに匹敵したかもしれません。映像版はレヴァイン指揮のMETでエヴァ・マルトン、プラシド・ドミンゴ、レオーナ・ミッチェルの3人が揃った素晴らしい公演をいつも聴いています。マルトンが最高です。ミッチェルのリューも素晴らしい。今回は聴きませんでした。
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