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中村 恵理のリューに酔う、テオリンも絶唱:オペラ《トゥーランドット》@東京文化会館 2019.7.12

中村 恵理のリューが聴きたくて、国内で久しぶりに舞台演出のオペラを聴くことにしました。これが大当たり。今日は一連のオペラ《トゥーランドット》公演の初演日ですが、その完成度の高さに感銘を受けました。国内のプロダクションでも、これだけのキャスト、スタッフを用意すると、海外でのオペラ公演にも匹敵するレベルのオペラが上演できるんですね。今後もこういう取り組みを続けてほしいものです。高額のチケットにも関わらず、座席はほぼ埋まっていました。みなさん、何に魅かれての来場だったんでしょう。saraiは最初に書いた通り、中村恵理のリューと、そして、タイトルロールのテオリンです。

書きどころ満載の感じでしたが、要点だけに絞ります。まずは中村恵理のリュー、最後に死ぬシーンでのアリア《氷のような姫君》でのピュアーな歌唱、最高でした。このシーンがプッチーニの絶筆だったわけですが、saraiの心の中でも、今日のオペラはここで終わったも同然。あたかもイゾルデの愛の死を連想させるがごとくです。プッチーニ的にはそうじゃなくて、ミミの死だと思い返します。いずれにせよ、このオペラはプッチーニの死でここで未完となったわけですが、saraiの妄想では、プッチーニはここでちゃんとけじめをつけて、彼のオペラ作曲はここで完結したような思いにもかられます。スカラ座での初演でもトスカニーニがこのリューの死のシーンで演奏を止めて、ここで先生はお亡くなりになりましたとスピーチしたそうですが、なんだか、それがこのオペラの正しい終わり方にも思えます。プッチーニには、トゥーランドットではなく、やはり、リリックなリューが似合います。そして、現代の最高のリューの歌い手が中村恵理です。

急にこれ以上、書きたくなくなりましたが、それもわがまま。テオリンの歌うトゥーランドットは素晴らしかったです。もしかしたら、テオリンを生で聴くのは初めてだったでしょうか。ちょっと調べてみると、5年前、バルセロナのリセウ劇場でのワルキューレで彼女のブリュンヒルデを聴いていました。道理で今日の第2幕の最後のシーンで彼女が「見も知らぬ異邦人に私を与えないでください」と歌ったとき、デジャヴのようにワルキューレでブリュンヒルデが「私を通りすがりの男に与えるのは止めてください。火の壁を通り抜けることのできる英雄だけに私を得られるようにしてください」と父ヴォータンに哀願するシーンを連想してしまったわけです。ちなみに彼女のブリュンヒルデは素晴らしかったことを思い出しました。そのとき、saraiが書いたブログ記事を読み返すと、現在最強のブリュンヒルデと絶賛していました。同じ言い方で言えば、今日のテオリンは現在最強のトゥーランドットだと思いました。歴史を通じても、最高のトゥーランドット歌いと賞賛されているビルギット・ニルソンにも肉薄する出来栄えに思えました。

カラフを歌ったテオドール・イリンカイも見事な歌唱で合格点。《誰も寝てはならぬ》は素晴らしい歌唱で聴き入りました。それに今日は合唱の合同チームが凄い歌唱を聴かせてくれました。これ以上の合唱はないでしょう。舞台に階段を多用し、その上に並んで大合唱団が歌ったのも成功の一因です。

最後に演出についてですが、舞台装置の素晴らしさも含めて、現代的な演出の中に音楽面の配慮もみられる、納得できるものでした。問題はフィナーレの演出。まだ、これからご覧になる方もいるでしょうから、詳細は述べませんが、びっくりするような終わり方でした。賛否両論あるでしょうが・・・。


プログラムとキャストは以下です。

  指揮:大野 和士
  演出:アレックス・オリエ
  管弦楽:バルセロナ交響楽団
  合唱:新国立劇場合唱団、藤原歌劇団合唱部、びわ湖ホール声楽アンサンブル
  児童合唱:TOKYO FM少年合唱団

 トゥーランドット姫              イレーネ・テオリン
 中国の皇帝アルトゥーム         持木 弘
 ティムール                  リッカルド・ザネッラート
 名前の知れない王子(実はカラフ)   テオドール・イリンカイ
 リュー、若い娘               中村 恵理
 ピン、皇帝に仕える大蔵大臣      桝 貴志
 パン、内大臣                与儀 巧
 ポン、総料理長               村上 敏明
 役人                     豊嶋 祐壹


最後に予習について、まとめておきます。

予習したCDは以下です。

 フランチェスコ・モリナーリ・プラデッリ指揮ローマ歌劇場  1965年録音
   ビルギット・ニルソン、フランコ・コレッリ、レナータ・スコット

何と言う名盤でしょう。まず、トゥーランドット役と言えば、昔から、この人。ビルギット・ニルソン。マリア・カラスという対抗馬はいますが、美しい声、そして、強くて伸びる声量は不世出でしょう。しかし、やはり、カラフ役のフランコ・コレッリが素晴らしい! この人の歌唱には賛否両論あるようですが、saraiは若い頃から彼のカッコ良さに同性ながら、参っています。史上最高のイタリアン・テノールだと信じています。やはり、素晴らしい歌唱を聴かせてくれます。ニルソンとコレッリの2重唱の凄さには絶句します。さらにリューはレナータ・スコット。この人もリリックなソプラノ役では図抜けた存在です。ですから、これは最高のキャストですね。カラスの録音がステレオならば、これに匹敵したかもしれません。映像版はレヴァイン指揮のMETでエヴァ・マルトン、プラシド・ドミンゴ、レオーナ・ミッチェルの3人が揃った素晴らしい公演をいつも聴いています。マルトンが最高です。ミッチェルのリューも素晴らしい。今回は聴きませんでした。



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       中村恵理,  

オーケストラの響きに魅了される・・・ロレンツォ・ヴィオッティ&東京交響楽団@東京オペラシティコンサートホール 2019.7.13

絶好調の東響の素晴らしい響きに終始、魅了されました。

前半のブラームスのピアノ四重奏曲は冒頭が少しアンサンブルが乱れましたが、すぐに素晴らしい響きを取り戻し、予習で感じていた管弦楽版の違和感を忘れさせる高いレベルの演奏になります。圧巻だったのは第3楽章。祝祭的で魅惑的な音楽が高らかに響き渡ります。東響の弦と木管を中心にした美しいアンサンブルをロレンツォ・ヴィオッティの熱い指揮が盛り立てます。この壮大なスケール感はオリジナルの室内楽版では出せないでしょう。初めて、シェーンベルクの編曲の意図が分かったような気がします。第4楽章は速いパッセージが勢いよく奏でられて、ヴィオッティの指揮はさらに熱く燃え上がります。第3楽章、第4楽章の演奏は素晴らしいもので、高揚した気持ちで全曲を聴き終えます。

後半のドヴォルザークの交響曲 第7番は前半の演奏以上に東響のアンサンブルがより美しく、響き渡ります。この素晴らしい音響を聴いているだけでも満足です。第8番、第9番ほど耳慣れしていないせいか、実に耳に新鮮に響きます。あまりの心地よさに時折、ふーっと意識が遠のくほどです。強烈な響きにホールの空気がびりびりと振動することもしばしばですが、それがうるさくないのは東響のアンサンブルがきっちりしているからです。ヴィオッティの若々しい感性の直線的な指揮も好感が持てます。いずれ、熟成の時を迎えるでしょうが、それまでは元気のよい音楽を聴かせてくれればいいでしょう。

最後はブラームスの名作をアンコール曲にして、素晴らしいコンサートをしめくくってくれました。なお、若き指揮者ヴィオッティの東響の舞台への登場はこれが4回目だそうです。前回のヴェルディのレクイエムも素晴らしい演奏でした。今後も楽しみですね。


  指揮:ロレンツォ・ヴィオッティ
  管弦楽:東京交響楽団 コンサート・マスター:水谷晃

  ブラームス:ピアノ四重奏曲 第1番 ト短調 op.25
         (シェーンベルクによる管弦楽版)

   《休憩》

  ドヴォルザーク:交響曲 第7番 ニ短調 op.70

   《アンコール》
     ブラームス:ハンガリー舞曲第1番 ト短調


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のブラームスのピアノ四重奏曲 第1番(シェーンベルクによる管弦楽版)を予習したCDは以下です。

 クリストフ・エッシェンバッハ指揮ヒューストン交響楽団 1995年
 
堅実な演奏ですが、正直言って、オリジナルの室内楽版が聴きたくなりました。


2曲目のドヴォルザークの交響曲 第7番を予習したCDは以下です。

 ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団 1960年 ハイレゾ

これは予想を上回る素晴らしい演奏。聴けば聴くほど、このコンビの演奏はどれも素晴らしいです。その中でも、この演奏は最高に素晴らしいもののひとつです。



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07/08 15:53 じじい@

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久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

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