で、まずは人を食ったようなプログラムのJ.シュトラウスⅡの芸術家の生涯です。これは冒頭のオーボエ独奏の美しい演奏からして、通常のウィンナーワルツとは異なります。何という演奏でしょう。J.シュトラウスⅡが後期ロマン派の音楽に変身したような演奏が続きます。最後はめでたく普通の気持ちのよいウィンナーワルツに復帰します。今日のプログラムに合わせたスペシャルなJ.シュトラウスⅡの演奏でした。ノットの知的なアプローチに魅了されました。
次は最も期待したリゲティのレクイエムです。いやはや、これが本物のリゲティなんですね。東響コーラスと独唱者二人の素晴らしい歌唱です。ですが、さすがにCDで聴いたノット&ベルリン・フィルには及びません。一言で言えば、少し突っ込みが足りませんでした。その結果、戦慄を覚えるような演奏までには至りませんでした。もしかしたら、明日の川崎定期では物凄い演奏になるかもしれません。残念ながら、明日はバレエ公演を見るので、川崎定期には行きません。
後半のプログラムはタリスの40声の合唱曲で始まります。これは東響コーラスが期待以上の素晴らしい歌唱を聴かせてくれました。特にソプラノパートの美しい声の響きは圧巻でした。本場イギリスの合唱団にも優るとも劣らない素晴らしい歌唱です。こういう音楽が聴けるのもノットを音楽監督に招いた成果ですね。saraiはタリスは初聴きです。こんな素晴らしい音楽があったんですね。
最後はR.シュトラウスが若い頃に書いた《死と変容》です。これはまさに豊穣の響き。圧倒的なフィナーレは極美の世界。予習で聴いたチェリビダッケ&ミュンヘン・フィルと並び立つような美しさ。ジョナサン・ノット&東京交響楽団は着実に前進しています。
今日のプログラムは以下です。
指揮:ジョナサン・ノット
ソプラノ:サラ・ウェゲナー
メゾソプラノ:ターニャ・アリアーネ・バウムガルトナー
合唱:東響コーラス
管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:グレブ・ニキティン
J.シュトラウスⅡ:芸術家の生涯 op.316
リゲティ:レクイエム
《休憩》
タリス:スペム・イン・アリウム(40声のモテット)
R.シュトラウス:死と変容 op.24
最後に予習について、まとめておきます。
1曲目のJ.シュトラウスⅡの芸術家の生涯を予習したCDは以下です。
ヴィリー・ボスコフスキー指揮ウィーン・フィル 1958年、ウィーン、ゾフィエンザール セッション録音
ボスコフスキー、ウィーン・フィルとくれば、もう何も言うことのない美しい演奏。ただただ、その響きに心も体も委ねるだけ。
2曲目のリゲティのレクイエムを予習したCDは以下です。
ジョナサン・ノット指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 2001年
カロリーネ・シュタイン(ソプラノ)、マルグリート・ファン・レイセン(メゾ・ソプラノ)、ロンドン・ヴォイセズ(合唱)
リゲティ・プロジェクトと題した5枚組のリゲティ作品集の中の一枚。リゲティが関わっただけに、ノットはベルリン・フィルと素晴らしい仕事を成し遂げています。
3曲目のタリスのスペム・イン・アリウムを予習したCDは以下です。
タリス・スコラーズ(TALLIS SCHOLARS) 1985年 マートン・カレッジ・チャペル オックスフォード
いやはや、究極のア・カペラです。この上もなく美しい。ただ、それだけです。
4曲目のR.シュトラウスの死と変容を予習したCDは以下です。
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ウィーン・フィル 1950年録音
セルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィル 1979年2月17日 ヘラクレス・ザール、ミュンヘン ライヴ録音
フルトヴェングラーならでは演奏。誰にも真似できない魂の燃焼があります。
チェリビダッケはミュンヘン・フィルの首席指揮者に就任する直前の演奏。この4カ月後、チェリビダッケは正式にミュンヘン・フィルの首席指揮者に就任します。後のこのコンビの大躍進が確信できるような凄まじい演奏です。
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