ところで今日のコンサートはフェスタサマーミューザKAWASAKI2019のオープニングコンサートです。これから丸2週間、ミューザ川崎でオーケストラの祭典が続きます。saraiはその中の主要なものを聴きます。
前半の2番目はリゲティのピアノ協奏曲。リゲティのスペシャリストといえるノットが東響の音楽監督になってくれたお蔭で次々とリゲティの作品が聴けます。先週はレクイエムでしたが、今日の演奏のほうがのびのびと自由闊達に演奏しているような感じです。ピアノ協奏曲といっても、オーケストラの編成が小さく、その分、ノットのドライブもスムーズです。響きもリズムも完璧な演奏です。ピアノの独奏のタマラ・ステファノヴィッチもこの難しい曲を完璧に弾きこなします。曲の構成は5楽章でいわゆるアーチ形の構造をとっています。曲想はまったく違いますが、リゲティの同郷の先輩であるバルトークがしばしば用いた形式です。ポリリズムの形式による複雑なリズムの曲が第1楽章、第3楽章、第5楽章で展開されますが、実に小気味よい演奏です。まだ、リゲティの本質がどのあたりにあるのか、把握しきれていませんが、ノットは今後もリゲティの作品を演奏してくれるでしょう。勉強させてもらいましょう。
後半のプログラムはベートーヴェンの交響曲 第1番。驚異的に素晴らしい演奏でした。ノットは現代音楽から、ベートーヴェン、モーツアルトという古典主義の作品まで、幅広くカバーしますが、とりわけ、古典主義作品の現代的な演奏にかけては、最高の音楽を聴かせてくれます。東響の精度の高いアンサンブルもノットの棒に敏感に反応しながら、素晴らしい演奏を聴かせてくれます。ノットと東響の絶好調コンビの演奏はあり得ない高みに到達しています。ノットは凄い指揮者ですね。こういう音楽が日本で聴けるのは幸運としか言いようがありません。演奏の中身について、深くは触れませんが、ともかく、アーティキュレーションが最高で、まるで、1800年頃のウィーンの街にタイムスリップしたかのような錯覚を覚えるくらい、このベートーヴェンの音楽の本質を突いたと感じてしまうような凄過ぎる演奏でした。今年はベートーヴェンの交響曲第7番も素晴らしい演奏でしたし、年末には交響曲第9番も聴けます。奇数番号の残りの交響曲、第3番と第5番も是非、聴きたいところです。多分、既に演奏済みかもしれませんが、再び、演奏してもらいたいな! そう念願してしまうほど、素晴らしい交響曲第1番でした。(この交響曲を聴いていると、何故か、モーツァルトのオペラの最上の響きを連想してしまいました。)
今日のプログラムは以下です。
指揮:ジョナサン・ノット
ピアノ:タマラ・ステファノヴィッチ
管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:水谷晃
バリー・グレイ:「ザ・ベスト・オブ・サンダーバード」〜ジョナサン・ノット スペシャル・セレクション(オリジナル・サウンドトラックより)
リゲティ:ピアノ協奏曲
《休憩》
ベートーヴェン:交響曲 第1番 ハ長調 Op.21
最後に予習について、まとめておきます。
1曲目のサンダーバードはもちろん予習していません。
2曲目のリゲティのピアノ協奏曲を予習したCDは以下です。
ピエール=ロラン・エマール、ラインベルト・デ・レーウ指揮ASKOアンサンブル 2000年
リゲティ・プロジェクトと題した5枚組のリゲティ作品集の中の一枚。これがピアノ協奏曲かと驚かされますが、そのジャズっぽい作風は聴きやすさがあります。でも、このシンコペーションのかたまりのような曲はジャズではなくて、ポリリズムなんですね。複数のリズムと旋律線が同時進行しているようです。でも、ピアニストもオーケストラもこんな難しい曲をよく演奏しますね。
3曲目のベートーヴェンの交響曲 第1番を予習したCDは以下です。
サイモン・ラトル指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 2002年4月29日~5月17日 ウィーン、ムジークフェラインザール ライヴ録音
ラトルがベルリン・フィルの音楽監督に就任する直前にウィーン・フィルとベートーヴェン交響曲全集をライヴ録音したCDの1枚を聴きました。ノットにとってはイギリス人指揮者の先輩になるラトルの演奏を聴いてみたわけです。まずはウィーン・フィルの響きが素晴らしいですが、その中でラトルも引き締まったモダーンなスタイルの演奏表現を志向して、ラトルらしい個性を発揮している見事な演奏です。この全集の中ではこのスタイルの演奏が成功しているものだと思います。
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