オペラ『ドン・ジョヴァンニ』とオペラ『コジ・ファン・トゥッテ』はヨーロッパ遠征で聴くクルレンツィス&ムジカエテルナの演目なので、よい予習になります。東響の演奏は特にオペラ『コジ・ファン・トゥッテ』の序曲のアンサンブルが素晴らしく、聴き応えがありました。森 麻季はもちろん、その実力を発揮して、堂々の歌唱。しかし、彼女の声質はスープレット的なので、ドン・ジョヴァンニのドンナ・アンナのアリアではパワー不足を感じます。むしろ、ツェルリーナのアリアでも歌ってくれたほうがよかったでしょう。その点、コジ・ファン・トゥッテのフィオルディリージのアリアのほうが合っていましたが、これはもっと透明な声を聴かせてもらいたかったところです。
交響曲 第40番には期待しましたが、本当にエンジンがかかったのは第4楽章。これは東響らしい素晴らしいアンサンブルを聴かせてくれました。沼尻竜典の指揮はもっと、古典派のポリフォニーをきっちりと聴かせてほしかったところです。全体には素晴らしい演奏でした。予習で聴いた1970年のセルの演奏が素晴らし過ぎたので、ちょっと辛口の聴き方になってしまいました。
それにしても、1時間強の短いコンサート。交響曲第40番の前に短くても休憩がほしいですね。次回はジョナサン・ノットが交響曲第41番《ジュピター》を聴かせてくれます。楽しみです。
今日のプログラムは以下です。
指揮:沼尻竜典
ソプラノ:森 麻季
管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:青木尚佳
<オール・モーツァルト・プログラム>
オペラ『ドン・ジョヴァンニ』 K. 527
序曲、アリア「むごい女ですって」(第2幕、ドンナ・アンナのレシタティーヴォとアリア)
オペラ『コジ・ファン・トゥッテ』 K. 588
序曲、アリア「恋人よ、許してください」(第2幕、フィオルディリージのアリア)
交響曲 第40番 ト短調 K. 550
最後に予習について、まとめておきます。
オペラ『ドン・ジョヴァンニ』とオペラ『コジ・ファン・トゥッテ』はヨーロッパ遠征に向けて、クルレンツィス&ムジカエテルナの演奏を聴いたばかりなので、省略。
最後の交響曲 第40番を予習したCDは以下です。
ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団 1970年5月22日、東京文化会館ライヴ、NHK録音
これは素晴らしい演奏です。いわゆる「悲しみの疾走」というイメージでは捉えられない音楽自身の持つ魅力に満ちています。モーツァルトと言えば、オペラとピアノ協奏曲に尽きると思っていましたが、この演奏を聴いて、モーツァルトは交響曲の分野でポリフォニーを完成したことが実感できました。常に複数の声部の旋律やリズムが明確に聴こえて、どの声部もいきいきと輝いています。この演奏はセルの最晩年の来日コンサートのライヴ録音です。彼はこの2カ月後に亡くなります。saraiは当時、京都で学生時代を過ごしていました。とても東京までの旅費やコンサート費用を捻出できる状態ではありませんでしたが、こういう素晴らしい演奏を聴き逃がしたことが残念です。しかし、録音の状態も素晴らしく、最晩年のセルの深い味わいと当時のクリーヴランド管弦楽団の演奏レベルの高さを実感できます。
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