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究極の第九 ジョナサン・ノット&東京交響楽団@サントリーホール 2023.12.28

ジョナサン・ノット&東京交響楽団の第九を聴くのは今年で5年目になりますが、遂に決定版とも思える最高の演奏に出会うことになりました。無論、saraiが実演で聴いた第九のなかの最高峰の演奏で、実演以外でも、フルトヴェングラーを除くと、最高の演奏です。(フルトヴェングラーは誰にも超えることの出来ない壁です。)
今年の演奏を理解するために、昨年の演奏について書いた記事の一部を以下に引用します。

ーーー昨年の記事ーーー
ジョナサン・ノット&東京交響楽団の第九を聴くのは今年で4年目になります。昨年、遂にノットもこの第九を完璧に己のものとし、今回は奇跡のような自在のオリジナリティあふれる演奏を聴かせてくれました。もっとも、まだまだ、伸びしろを残した演奏で来年以降も飛躍が続くでしょう。第1楽章から、ノットの素晴らしい指揮姿から目が離せません。何故か、モーツァルトのドン・ジョヴァンニの地獄落ちを思わせる白熱した演奏に驚愕します。そして、そのアーティキュレーションの見事さに、感銘を受け続けます。とりわけ、アゴーギクの微妙さが驚異的です。その結果、オーケストラへの要求水準が高過ぎますが、東響のメンバーが必死にくらいついて、次第に熱い演奏に高まっていきます。ノットと東響のこういう関係がとても好ましく感じられます。ノットと東響はこうして切磋琢磨して成長してきました。それにしても第1楽章の高速演奏にしびれます。
ーーーここまでが昨年の記事の引用ーーー

まさに昨年書いたことが今年の演奏につながり、ジョナサン・ノットもさらに自分の音楽表現に磨きがかかり、東響は遂にジョナサン・ノットの高い要求水準をクリアするレベルの演奏を行いました。第1楽章と第2楽章は完璧とも思える演奏。第3楽章はジョナサン・ノットの表現力が増して、何とも美しい演奏に昇華しました。そして、第4楽章は独唱陣、合唱、オーケストラがジョナサン・ノットの棒のもとに一体となった圧倒的な音楽を聴かせてくれました。もう、最後は感動するしかありませんでした。saraiの動悸が高まり、頬は紅潮し、物凄い緊張感を覚え、感覚は研ぎ澄まされて、ジョナサン・ノットが表現するベートーヴェンの音楽と一体化し、桃源郷にはいりこんだ思いになりました。
今年はよほどリハーサルを重ねたとみえて、音楽の精度だけでなく、オーケストラの配置も考え抜かれたものです。対向配置の第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンはステージの中ほどに引っ込んだ位置で横に長く配置されています。5プルトという少な目の構成ですが、音は素晴らしく響きます。ヴィオラは第2ヴァイオリンの背後に4プルト。チェロは第1ヴァイオリンとヴィオラの間に3プルトで密集しています。コントラバスは第1ヴァイオリンの背後です。この配置は弦の響きの分解がよくて、それぞれの音がよく聴こえます。無論、まとまりのよさを欠くことはありません。管は2段ほど高い中央に固まっていて、特に第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンの間に割ってはいるような音響になっています。このオーケストラの配置が音響のよさを生み出しています。
独唱者はステージ前面の指揮者のすぐ前で、ちょうど、第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンの間に収まっています。したがって、何も邪魔されないで独唱者の声が飛び込んできます。大編成の東響コーラスはいつものように背後の2階席に陣取っています。合唱の声もオーケストラの上を何にも邪魔されずに上から降り注いできます。
今日のオーケストラ、独唱者、合唱の配置は理想的なものに思えます。最前列中央のsaraiは特等席で、この音響を味わうことができました。


第1楽章の冒頭から弦楽アンサンブルの歯切れのよい音が響いてきます。冒頭のカオスの中から実在が出現するようなフレーズの音の響きが美しく、それは何度も繰り返し現れますが、その音楽の質の高さに、ただただ、感銘します。そして、第1楽章では、何と言っても東響の切れの良いアンサンブルが凄過ぎて、ノットがそれをさらに煽り立てるように激しい指揮で追い込んでいきますが、東響のアンサンブルは万全でしっかりと受けとめていきます。息もできない緊張感の中、圧巻の演奏で第1楽章は終わります。ふーっとsaraiは息をつく思いです。第2楽章もそのままの勢いで切れのよいアンサンブル。実に素晴らしい響きの音楽が鳴り響きます。とりわけ、トリオの部分の音楽的な精度の高さに魅了されます。弦の素晴らしさはもちろんですが、管の素晴らしいこと。音楽に聴き惚れているうちに第2楽章もすーっと終わります。ここまで、ジョナサン・ノットの気合いのはいった凄い指揮に魅了されます。圧倒的な体の使い方に驚嘆します。汗を浮かべつつも凄い形相での指揮です。彼は完璧にこの曲の楽譜を研究し尽くしたようです。理解し尽くしたもののみがなしえる指揮に思えます。
ここで独唱陣4人の入場。合唱の東響コーラスは最初から後方席に陣取って、出番を待っています。
第3楽章が始まります。音楽的にとても美しい演奏です。ノットの解釈は万全です。中庸のテンポで粛々と流れるような演奏です。ノット独自の表現もすっかりと確立したようです。とても魅了される音楽になりました。
第3楽章が終わると、間を置かずに恐怖のファンファーレが熱く奏でられます。そして、行き着く先は器楽による“歌”、歓喜の歌です。ヴァイオリンで奏でられるまでの流れが絶妙で、トゥッティで歓喜の歌が演奏されると心が熱くなります。ここから声楽が加わります。バリトンの与那城敬は昨年以上の踏ん張った歌唱で、東響コーラスの大合唱を呼び込みます。4重唱は独唱陣が好調で素晴らしい響きです。テノールの小堀勇介が素晴らしい歌唱で先導する行進曲風の音楽はオーケストラだけの演奏に変わり、東響の素晴らしいアンサンブルが響き渡ります。とりわけ、ヴァイオリンの響きの素晴らしさに魅了されます。
ここから、合唱の素晴らしいパートに入っていきます。この音楽の最も重要な部分です。圧倒的な東響コーラスに耳を傾けながら、第九の真髄を味わっていきます。そして、2重フーガでの清らかな女性合唱と力強い男声合唱との交錯で心を揺さぶられます。再び、独唱陣が立ち上がり、最後の4重唱。フーガ風の最高の歌唱で心が熱くなり、感動の極み。独唱陣は渾身の力をふりしぼり、最後のフェルマータの美しい響き。深く感動します。その残影の後、物凄い合唱が燃え上がり、音楽は最高峰に上り詰めます。そして、圧倒的な東響の力が火の玉のように燃え上がって、爆発的なコーダに突入。圧巻のフィナーレです。ベートーヴェンの特別な音楽をノットと東響、そして、東響コーラス、4人の好調な独唱者が極上の演奏を聴かせてくれました。

最後は付けたしのような《蛍の光》。もったいないような美しい演奏でした。

最後の最後はほとんどの聴衆が居残って、指揮者コール。誰もいなくなったステージに満面の笑みを浮かべたジョナサン・ノットが登場。今年最後の彼の姿を目に焼き付けて、すべて終了。

今年もジョナサン・ノットはR.シュトラウスの楽劇《エレクトラ》と今日の第九で最高の音楽を聴かせてくれました。来年は《薔薇の騎士》と第九ですね。きっと、期待に応えてくれるでしょう。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:ジョナサン・ノット
  ソプラノ:三宅理恵
  メゾソプラノ:金子美香
  テノール:小堀勇介
  バリトン:与那城敬
  合唱:東響コーラス(合唱指揮:河原哲也)
  管弦楽:東京交響楽団(コンサートマスター:小林壱成)

  ベートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 Op.125

  《アンコール》 蛍の光 AULD LANG SYNE(スコットランド民謡)


最後に予習について、まとめておきます。

ベートーヴェンの交響曲 第9番は以下の演奏で予習したばかりです。素晴らしい演奏だったので、もう一度聴こうと思いましたが、ベルリン・フィル デジタル・コンサートホールには、ほぼ同じキャストの別の公演も収録されています。

   キリル・ペトレンコ指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 2019年8月23日、ベルリン・フィルハーモニー ライヴ収録    マルリス・ペーターゼン(ソプラノ)
   エリーザベト・クルマン(アルト)
   ベンヤミン・ブルンス(テノール)
   ユン・クヮンチュル(バス)
   ベルリン放送合唱団
   ギース・レーンナールス(合唱指揮)
    キリル・ペトレンコ首席指揮者就任演奏会(ベルリン・フィル デジタル・コンサートホール)

で、急遽、考え直して、以下の演奏を聴きました。

   キリル・ペトレンコ指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 2019年8月24日、ベルリン・フィルハーモニー ライヴ収録    マルリス・ペーターゼン(ソプラノ)
   エリーザベト・クルマン(アルト)
   ベンヤミン・ブルンス(テノール)
   ユン・クヮンチュル(バス)
   ベルリン放送合唱団
   ギース・レーンナールス(合唱指揮)
    ブランデンブルク門前で行われる入場無料の野外コンサート(ベルリン・フィル デジタル・コンサートホール)
    
上記のキリル・ペトレンコ首席指揮者就任演奏会の翌日のコンサートです。心なしか、ペトレンコは前日の終始、緊張感に包まれた指揮から柔らかい表情に変わっているように思えました。演奏は前日同様、スーパースター揃いのベルリン・フィルがペトレンコの見事な指揮の下、最高のパフォーマンスで魅了してくれました。これが無料のコンサートだとはね・・・。
なお、このコンサートはベルリンの壁崩壊30周年を記念したものです。30年前はバーンスタインが国際共同オーケストラを指揮して記念コンサートを東ベルリン、シャウシュピールハウスと西ベルリンのフィルハーモニーで行っています。バーンスタインはその翌年、肺がんで亡くなりましたから、貴重な文化遺産にもなりましたね。



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       ジョナサン・ノット,  

ジョナサン・ノット教授の現代音楽実験工房という風情の格調高いコンサート@東京オペラシティコンサートホール 2023.11.17

ジョナサン・ノットが近現代作品を振ると、その素晴らしさには脱帽ものです。
前半の4曲はドビュッシーを除くと、古いものでもリゲティ。新しいものはまだ、作曲して10年経っていないアマンの作品という現代作品。それも最近はやりのやわな現代作品ではなく、ばりばりの格調高い作品。現代ものを得意にするジョナサン・ノットはいともたやすく流れるような美しい指揮でこなします。ノットの知性の高さには恐れ入ります。凄い演奏に圧倒されました。

まずは今年、生誕100年のリゲティ。このアパリシオンはノットがベルリン・フィルを指揮して世界初録音したものです。いわば、ノットはリゲティの権威です。その演奏は理解したとは正直言えませんが、自信みなぎる流麗な指揮で微塵もゆるがないものでした。リゲティの作品によくあるような、宇宙空間の無の世界から開始して、次第に原子、分子、生命体が出現するというイメージが浮かび上がるような難解でありながら、心を励起させる音楽です。題名のアパリシオンはフランス語で幻影とか出現という意味なので、美術の世界のギュスターヴ・モローの《出現L'Apparition》を連想して、イメージしていました。この絵はサロメが指さす先に突然、出現した洗礼者ヨハネの生首が浮かび上がっています。

2023111701.jpg

 
 By Gustave Moreau - Gustave Moreau, 1876, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=19585188


ともあれ、何とも素晴らしいリゲティでした。


次のドビュッシーの3つの夜想曲より 「祭」は一転して、分かりやすい音楽に聴こえます。ここではノットは浮き立つような音楽を披露してくれました。時代を少しだけ遡ると、音楽はこんなに形を変えます。

次はブーレーズのメサジェスキス。 独奏チェロと6つのチェロという7人と指揮者ノットだけの演奏。チェロのさざ波のような音響、そして、無窮動的な音楽です。ブーレーズにしてはとっても分かりやすい音楽ですが、演奏は超難しそうです。東響のチェロ・セクションが総力を上げての演奏でした。伊藤文嗣の素晴らしいチェロ演奏が印象的でした。

前半の最後はディーテル・アマンが2016年に完成させたグラットGlut。まだ、作曲されて、7年ほどの現代音楽。オーケストラが様々な音響を奏でる派手な作品です。これも演奏が難しそうですが、ノットはまるでモーツァルトでも演奏するように流麗な指揮です。その美しい指揮を見ていると何とも簡単そうですが、オーケストラは汗をかいて演奏していました。

この前半だけでも聴きものでした。こんなものが演奏できるのはジョナサン・ノットを音楽監督に持つ東響だけですね。ジョナサン・ノットを聞き始めてから、現代音楽が近い存在になりました。とりわけ、リゲティは素晴らしい。


後半はごくふつーの音楽。ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番《皇帝》です。ゲルハルト・オピッツが予想を上回る美しい演奏を聴かせてくれました。まあ、前半ほどのインパクトはありませんでしたけどね。


今日から、saraiの黄金の10日間がスタートします。明日は新国立劇場でオペラ。そして、ウィーン・フィル、ベルリン・フィルと続きます。東京は素晴らしく音楽文化が享受できる街です。


今日のプログラムは以下のとおりです。

  指揮:ジョナサン・ノット
  ピアノ:ゲルハルト・オピッツ
  チェロ:伊藤文嗣(東響ソロ首席奏者)
  管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:景山昌太郎(客演)

  リゲティ:アパリシオン 
  ドビュッシー:3つの夜想曲より 「祭」
  ブーレーズ:メサジェスキス ~独奏チェロと6つのチェロのための~
  アマン:グラット
  
   《休憩》
   
  ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 op.73 「皇帝」
  

最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のリゲティのアパリシオンを予習した演奏は以下です。

  ジョナサン・ノット指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 リゲティ・プロジェクト2 2001年 セッション録音

リゲティの晩年に録音されたアルバム、リゲティ・プロジェクト(5CD)に含まれるリゲティのスペシャリスト、ジョナサン・ノットがベルリン・フィルを振って世界初録音した演奏。リゲティも立ち会ったようです。


2曲目のドビュッシーの3つの夜想曲より 「祭」を予習したCDは以下です。

  フランソワ=グザヴィエ・ロト指揮ル・シエクル 2018年1月、フィルハーモニー・ド・パリ セッション録音

ロトとル・シエクルによる作曲当時のオリジナル楽器を使った演奏。色彩感あふれる演奏です。


3曲目のブーレーズのメサジェスキスを予習したCDは以下です。

  ジャン=ギアン・ケラス、ピエール・ブーレーズ指揮パリ・チェロ・アンサンブル 1999年10月、シテ・ド・ラ・ムジーク、パリ セッション録音

ブーレーズ監修による決定盤。


4曲目のアマンのグラットを予習した演奏は以下です。

  チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団 YOUTUBE
  https://www.youtube.com/watch?v=pDNyvfoHjdE&list=PLFWHEZH48SJpkygeD-Km0yPv5MIqY-81l&index=1

音響の洪水。


5曲目のベートーヴェンのピアノ協奏曲 第5番「皇帝」を予習した演奏は以下です。

  内田光子、サー・サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 2010年2月14日、ベルリン・フィルハーモニー ライヴ収録 (ベルリン・フィル デジタル・コンサートホール)

内田光子は冒頭こそ、スケール感不足に感じますが、第1楽章終盤あたりから、ピアノが鳴り始め、第2楽章の美しさは筆舌尽くし難しの感があります。ラトル指揮ベルリン・フィルも熱い演奏です。



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       ジョナサン・ノット,  

ジョナサン・ノットと東響の流麗な田園交響楽の響き@サントリーホール 2023.11.11

ジョナサン・ノットが振ると、東響は素晴らしい響きで音楽を奏でてくれます。
前半はベートーヴェンのピアノ協奏曲 第2番。冒頭から、美しい弦の響きにうっとりと聴き惚れます。そして、ゲルハルト・オピッツは意外にも肩の力の抜けたピアノの響きで、モーツァルトのようなタッチで軽やかな演奏を聴かせてくれます。東響と共演するときのオピッツはいつも素晴らしい演奏で驚かせてくれます。きっと相性がいいんですね。第2楽章にはいると、ベートーヴェンらしい深い音楽を聴かせてくれます。そして、第3楽章はシャープな演奏で締め括ってくれます。オピッツのピアノもノット指揮の東響も見事な演奏で満足させてくれました。

後半はベートーヴェンの交響曲 第6番「田園」。第1楽章はジョナサン・ノットの美しい指揮姿に惹き付けられます。その指揮のもと、東響は実に流麗な演奏を聴かせてくれます。第2楽章はさらに美しい響きの演奏で小川のあたりの風景を彷彿とさせてくれます。第3楽章にはいると、途中から音楽が高潮していきます。第4楽章の雷鳴と電光の後、第5楽章は天国的な響きで満たされます。音楽の響きも高まっていき、感動的なフィナーレ。ノットらしさが発揮された「田園」でした。ただ、saraiはこの曲は苦手。美しい標題音楽ですが、心に高まる感動はありませんね。この曲で唯一、saraiを魅了してくれるのは、フルトヴェングラーだけです。


今日のプログラムは以下のとおりでした。

  指揮:ジョナサン・ノット 
  ピアノ:ゲルハルト・オピッツ
  管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:グレブ・ニキティン
  

  ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第2番 変ロ長調 Op.19

  《休憩》
  
  ベートーヴェン:交響曲 第6番 ヘ長調 Op.68 「田園」


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のベートーヴェンのピアノ協奏曲 第2番を予習した演奏は以下です。

 内田光子、サー・サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 2010年2月10日 ベルリン・フィルハーモニー ライヴ収録 (ベルリン・フィル デジタル・コンサートホール)

内田光子の奏でる響きはまるでモーツァルト。とても素晴らしい演奏に魅了されました。


2曲目のベートーヴェンの交響曲 第6番「田園」を予習した演奏は以下です。

 ベルナルド・ハイティンク指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 2015年3月6日 ベルリン・フィルハーモニー ライヴ収録 (ベルリン・フィル デジタル・コンサートホール)

老巨匠ハイティンクはいつもの自然体の指揮で無理のないベートーヴェンを奏でます。シュテファン・ドールのホルンが見事です。



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       ジョナサン・ノット,  

ジョナサン・ノットと東響による瑞々しさにあふれるブルックナーの交響曲第1番@東京オペラシティコンサートホール 2023.10.21

ジョナサン・ノットのブルックナーもいよいよ第1番です。昨年の第2番では、極めて美しい演奏を聴かせてくれましたが、今回の第1番はそれ以上の美しさでした。それにブルックナーの第1番は実に若々しい響きの音楽で、第2番以降とはかなり趣きが異なって、ブルックナーの別の一面を聴くことができます。saraiは第00番を除くと、この第1番だけは実演で聴いていなかったので、これで第0番~第9番まですべて、実演で聴いたことになります。

第1楽章の冒頭から、素晴らしい響きで魅了されます。低弦できっちりと行進曲風のリズムを刻みながら、第1ヴァイオリンが実に美しく第1主題を奏でていきます。木管も美しく響き、第1ヴァイオリンが第2主題を美しく響かせます。ブルックナー風ではありますが、これまでのブルックナーでは聴いたことのない実に瑞々しい響きです。そして、ノットが美しくも激しく棒を振り、音楽は高潮していきます。いったん落ち着きますが、今度は金管が咆哮し、再び、音楽が盛り上がります。こういう波が繰り返されながら、音楽は進行していきます。そして、ノットの気魄の掛け声とともにコーダに突入し、圧巻の高揚で曲を閉じます。その凄まじさに拍手したい気分です。

第2楽章のアダージョは抒情的な音楽。弦の各パートの対位法的な展開が印象的です。弦を中心に木管が絡んで優しい調べにうっとりと聴き惚れます。

第3楽章のスケルツォは後のブルックナーを思わせる躍動した音楽が展開されていきます。牧歌的なトリオを含めて、すべて反復があり、思いのほか、長い楽章です。ちょっと冗長かもしれません。

第4楽章は極めて速いテンポで音楽が進行します。東響の見事なアンサンブルに魅了されます。この楽章の途中から、素晴らしい演奏になり、陶然として聴き惚れます。弦に木管、そして、金管が加わり、素晴らしく高潮していきます。そして、コーダに入ります。木管、金管から弦の圧倒的な盛り上がりをみせて、ハ短調からハ長調に転調して、盛大な完結を迎えます。ノットの気魄が東響に乗り移って、凄いしめくくりになりました。

ブルックナーの交響曲第1番がこんなに素晴らしいとは・・・ノット&東響の演奏は最高でした。
来シーズンのノットのブルックナーは第00番を期待していましたが、第7番を演奏する予定です。無論、第7番も楽しみです。

前半は大木麻理のオルガン独奏によるリゲティのハンガリアン・ロック。素晴らしい演奏でした。難しいリズムも難なく決めて、ノリのよい音楽が続き、最後はカタルシスのような和音を響かせて終わります。
続いて、ベリオの声(フォーク・ソングⅡ)。ヴィオラのディミトリ・ムラトの熱演とノットのあり得ないような見事な指揮による2群のオーケストラの超絶的な演奏で圧倒されました。2群のオーケストラはステージ上と2階の客席に分かれて配置。この配置で演奏すること自体、無理がありそうですが、ノットは完璧にドライヴ。こういう現代曲になると、ノットは真価を発揮します。実に明快なベリオでした。大変、感銘を覚えました。リゲティの独奏曲とセットで演奏するというアイディアもノットらしい見事な発想です。


今日のプログラムは以下のとおりです。

  指揮:ジョナサン・ノット
  ヴィオラ:ディミトリ・ムラト
  オルガン:大木麻理
  管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:グレブ・ニキティン

  リゲティ:ハンガリアン・ロック(オルガン独奏)
  ベリオ:声(フォーク・ソングⅡ) ~ヴィオラと2つの楽器グループのための

   《休憩》
   
  ブルックナー:交響曲 第1番 ハ短調 リンツ稿ノヴァーク版
  

最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のリゲティのハンガリアン・ロックを予習した演奏は以下です。

  ピエール・シャリアル  1995年10月31日-11月2日、ドイチュラント放送、ケルン放送局スタジオ セッション録音

1997年にリゲティ生誕75年を記念して発売された「リゲティ・エディション」で、リゲティ自身が監修したものです。
とても見事な演奏です。これはバレル・オルガン独奏ですが、この「リゲティ・エディション」内には、チェンバロ版も含まれています。


2曲目のベリオの声(フォーク・ソングⅡ)を予習したCDは以下です。

  キム・カシュカシャン、デニス・ラッセル・デイヴィス指揮ウィーン放送交響楽団 1999年11月 ORFスタジオ、ウィーン セッション録音

カシュカシャンの見事な演奏。


3曲目のブルックナーの交響曲 第1番を予習した演奏は以下です。

  エリアフ・インバル指揮フランクフルト放送交響楽団 ブルックナー:交響曲全集 1982~88年、フランクフルト、アルテ・オーパー セッション録音

00番、0番も含めた原典版、第1稿を主体にしたユニークなブルックナー交響曲全集です。第1番もリンツ稿ノヴァーク版を用いた演奏で安定したインバルらしい演奏です。録音も結構良い方です。



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       ジョナサン・ノット,  

新しい響きを引き出したドビュッシーの「ペレアスとメリザンド」、ノット流のシャープで明確なヤナーチェクのグラゴル・ミサ・・・ジョナサン・ノット&東響@サントリーホール 2023.10.15

また、ジョナサン・ノットがやってきました。やはり、ノットが振ると、東響は凄い響きで音楽を奏でてくれます。
前半はドビュッシーのオペラ「ペレアスとメリザンド」をノット自身が編曲したオーケストラヴァージョンが奏でられます。冒頭の森のシーンだけは聴き慣れた「ペレアスとメリザンド」の響きが耳に残りますが、その後はこんなオーケストラの響きがあったのかと首をひねるばかりです。その新しい響きに魅惑されているうちに音楽が進行し、恐れていた眠気などは一切、吹き飛びます。オペラの編曲版というよりもドビュッシーの新たなオーケストラ曲が誕生したという思いに駆られます。ミステリアスな雰囲気で魅力に満ちた傑作オーケストラ曲です。saraiにとっては交響詩《海》などよりもよっぽど素晴らしい作品に思えます。素晴らしい音楽、素晴らしい演奏でした。弦楽パートも木管パートも素晴らしい演奏でした。

後半はヤナーチェクの奇想のミサ曲、グラゴル・ミサです。本場チェコを中心にソロ歌手を呼び、万全の体制での演奏です。それにしてもノットがヤナーチェクとは虚を突かれた思いです。かなり、イメージが違います。しかし、さすがにジョナサン・ノットは超絶的とも思える指揮と音楽作りで素晴らしいグラゴル・ミサを実現してくれました。こんなにシャープな表現のヤナーチェクを聴くのは初めてかもしれません。ノットの高い要求水準に応えた東響の弦楽アンサンブルの凄さにも感嘆しました。しかし、見方を変えれば、ヤナーチェクの音楽へのアプローチというよりもノットの得意とする現代音楽へのアプローチのようにも思えました。まあ、聴き応えのある音楽ならば、そんな些細なことに拘泥する必要もありませんね。東響の演奏、そして、東響コーラスの健闘に加えて、ソプラノ・ソロのカテジナ・クネジコヴァが張りのある声で素晴らしい歌唱。本場チェコ出身の彼女はオペラのカーチャ・カバノヴァーを彷彿とするような見事な歌唱で、ヤナーチェクの本質に切り込むような表現と響きで魅了してくれました。テノールのマグヌス・ヴィギリウスも高域の声がよく出ていて、聴き映えのする歌唱でした。オルガンの大木麻理も第8曲で素晴らしいソロを響き渡らせてくれました。彼女は一週間後のオペラシティシリーズでもリゲティのハンガリアン・ロックのオルガン・ソロ演奏を聴かせてくれるようです。楽しみですね。

今後、ジョナサン・ノットが取り上げていくはずのヤナーチェクの音楽にも注目desu.


今日のプログラムは以下のとおりでした。

  指揮:ジョナサン・ノット 
  ソプラノ:カテジナ・クネジコヴァ 
  メゾソプラノ:ステファニー・イラーニ
  テノール:マグヌス・ヴィギリウス
  バス:ヤン・マルティニーク
  オルガン:大木麻理
  合唱:東響コーラス
  管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:小林壱成
  

  ドビュッシー/ノット編:交響的組曲 「ペレアスとメリザンド」

  《休憩》
  
  ヤナーチェク:グラゴル・ミサ(Paul Wingfieldによるユニヴァーサル版)


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のドビュッシー/ノット編の交響的組曲 「ペレアスとメリザンド」は予習していません。
オペラから編曲箇所を抽出して聴けばよかったのかもしれませんが、その手間をかける気力がありませんでした。


2曲目のヤナーチェクのグラゴル・ミサを予習した演奏は以下です。

  カレル・アンチェル指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 1963年 セッション録音
    ドマニーンスカー(S)、ソウクポヴァー(A)、ブラフト(T)、ハーケン(Bs)、
    チェコ・フィルハーモニー合唱団、ヴォドラーシカ(org)

本場ものの演奏。しかも指揮はカレル・アンチェルとくれば、悪かろう筈がありません。熱い演奏です。



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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
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《あ》さん、saraiです。

結局、最後まで、ご一緒にブッフビンダーのベートーヴェンのソナタ全曲をお付き合い願ったようですね。
こうしてみると、やはり、ベートーヴェン

03/22 04:27 sarai

昨日は祝日でゆっくりオンライン視聴できました。

全盛期から技術的衰えはあると思いましたが、彼のベートーヴェンは何故こう素晴らしいのか…高齢のピアニストとは思えな

03/21 08:03 

《あ》さん、再度のコメント、ありがとうございます。

ブッフビンダーの音色、特に中音域から高音域にかけての音色は会場でもでも一際、印象的です。さすがに爪が当たる音

03/21 00:27 sarai

ブッフビンダーの音色は本当に美しいですね。このライブストリーミングは爪が鍵盤に当たる音まで捉えていて驚きました。会場ではどうでしょうか?

実は初めて聴いたのはブ

03/19 08:00 

《あ》さん、コメントありがとうございます。
ライヴストリーミングをやっていたんですね。気が付きませんでした。

明日から4回目が始まりますが、これから、ますます、

03/18 21:44 sarai

行けなかったのでオンライン視聴しました。

しっとりとした演奏。弱音はやはり美しいと思いました。
オンラインも良かったのですが、ビューワーが操作性悪くて困りました

03/18 12:37 

aokazuyaさん

コメントありがとうございます。デジタルコンサートホールは当面、これきりですが、毎週末、聴かれているんですね。ファゴットのシュテファン・シュヴァイゲ

03/03 23:32 sarai
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