後半のチャイコフスキーの交響曲第5番が聴きものでした。音楽としてはオーソドックスな演奏ですが(それが悪いと言っているわけではありません)、チェコ・フィルのオーケストラの鳴らし方が凄い。今までチェコ・フィルがこんな響きで鳴った覚えがありません。もともと素晴らしい響きのオーケストラで大好きなんですが、もっとシャープな響きだったような印象があります。今日のチェコ・フィルの響きは高弦の美しさはもちろんですが、低弦の分厚い響きが凄い。まるでドイツのオーケストラの重心の低い響きのようです。いや、ちょっと違うかな。むしろ、コンセルトヘボウ管弦楽団みたいかな。いえいえ、違いますね。ロシアのサンクトペテルブルク・フィルみたいかな。ともかく、もともと素晴らしかった弦のアンサンブルが別次元の響きになったみたいで、音楽そっちのけで弦の美音に聴き惚れていました。音楽的には、第2楽章の美しいメロディーに聴き惚れ、第4楽章のフィナーレの大迫力に圧倒されました。ちょっと鳴らせ過ぎのきらいもありますが、これだけ鳴らせられるのも見事です。指揮者でこうもオーケストラの響きが変わるのか、驚きでした。
一方、前半の「わが祖国」はチェコ・フィルの十八番。ビシュコフもこのオーケストラを振るからには避けられない演目です。楽譜を置いての指揮です。後半のチャイコフスキーは暗譜だったので、それだけでも意気込みの違いが分かります。基本的にチェコ・フィル任せの演奏に思えました。と言うことは間違いない演奏ではありました。オーケストラの響きも従来のチェコ・フィルの響きでした。“ヴィシェフラト(高い城)” “モルダウ”は素晴らしい演奏でしたが、かって、ビエロフラーヴェクが指揮した“ヴィシェフラト(高い城)”の素晴らしさには及びません。
アンコールはチェコのお国ものの定番。ドヴォルザークのスラヴ舞曲です。ここでもチェコ・フィルの弦の響きの素晴らしいこと! 今日の最高の演奏だったかもしれません。それにsaraiはこのスラヴ舞曲第2集の第2番が子供のときから大好きなんです。うっとり、満足して聴きました。
今日のプログラムは以下のとおりです。
指揮:セミヨン・ビシュコフ
管弦楽:チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
スメタナ:連作交響詩「わが祖国」より “ヴィシェフラト(高い城)” “モルダウ” ”シャールカ”
《休憩》
チャイコフスキー:交響曲第5番 ホ短調 Op.64
《アンコール》
ドヴォルザーク:スラヴ舞曲第2集 Op.72, B.147 第2番 アレグレット・グラツィオーソ ホ短調
ドヴォルザーク:スラヴ舞曲第1集 Op.46, B.83 第1番 プレスト ハ長調
最後に予習について、まとめておきます。
スメタナの連作交響詩「わが祖国」を予習したCDは以下です。
ラファエル・クーベリック指揮指揮チェコ・フィル 1990年5月12日、スメタナ・ホール 「プラハの春」音楽祭オープニングコンサート ライヴ録音
やはり、チェコ・フィルの演奏を聴いておきましょう。とすると、クーベリックかアンチェルが指揮したものになります。ここはあの記念すべき年の「プラハの春」で特別にクーベリックが指揮した伝説の演奏を聴きます。一言で言って、とても熱い演奏です。音楽以外の何かがあります。いいえ、音楽としても素晴らしい演奏です。
チャイコフスキーの交響曲第5番を予習したCDは以下です。
セミヨン・ビシュコフ指揮チェコ・フィル 2017年 プラハ
ビシュコフ&チェコ・フィルが最近取り組んだチャイコフスキー・プロジェクトをまとめた交響曲全集からのCDを聴きます。チャイコフスキーの憂愁がたっぷりと味わえるロマンティックな演奏です。それでいて、実にオーソドックスな演奏でもあり、力強い迫力もあります。ビシュコフがこんな演奏をするとは予想外でした。
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