今回は協奏曲編です。
今年はこのジャンルは素晴らしいコンサートがとても多く、順位付けはあまり意味がないと思えるほどの激戦でしたが、その中でもアンドラーシュ・シフとカペラ・アンドレア・バルカによるベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲の音楽的な精度の高さは圧倒的でした。茫然自失して聴き入っただけでした。コパチンスカヤとクルレンツィスのハチャメチャの快演も口あんぐりで驚かされるばかりでした。この2つは別格のコンサートでした。
ちなみに昨年の結果はここです。
今年は以下をベスト10プラス2に選びました。
1位 西欧文化を体現する圧巻の演奏:ベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲・・・アンドラーシュ・シフ&カペラ・アンドレア・バルカ@東京オペラシティコンサートホール 2019.11.8
2位 圧巻の日本デビュー!クルレンツィス&ムジカエテルナ コパチンスカヤもハチャメチャの快演 @Bunkamuraオーチャードホール 2019.2.10
伝説に残るクルレンツィスのチャイコフスキー コパチンスカヤも最高! @すみだトリフォニーホール 2019.2.11
3位 奇跡のコンサート!ブランデルブルク協奏曲全曲 バッハ・コレギウム・ジャパン@東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル 2019.11.24
4位 鬼神のごときバティアシヴィリ、凄し! ネゼ゠セガン&フィラデルフィア管弦楽団@サントリーホール 2019.11.4
5位 美しきヴィニツカヤの飛翔・・・リットン&東京都交響楽団@東京文化会館大ホール 2019.5.28
6位 庄司紗矢香の妙なる響きに感動・・・ペンデレツキ&東京都交響楽団@サントリーホール 2019.6.25
7位 モーツァルトはオペラだけじゃない 内田光子&マーラー・チェンバー・オーケストラ@ウィーン・コンツェルトハウス 2019.9.26
8位 小川典子、圧巻のラフマニノフ 上岡敏之&新日本フィルハーモニー交響楽団@ミューザ川崎シンフォニーホール 2019.7.28
9位 天才モーツァルトと天才マーラーの最高の音楽・・・アリス=紗良・オット&インバル&ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団@東京芸術劇場 コンサートホール 2019.7.10
10位 知的で静謐、かつ日本人的な味わい・・・宮田大&小泉和裕&東京都交響楽団@東京文化会館大ホール 2019.7.16
次点 ベルクとマノンの精神に報いる素晴らしい演奏・・・ヴェロニカ・エーベルレ&大野和士&東京都交響楽団@東京文化会館大ホール 2019.9.3
次点 静謐極まりないリゲティ ジャン=ギアン・ケラス、トマーシュ・ネトピル&読売日本交響楽団@サントリーホール 2019.11.29
アンドラーシュ・シフとカペラ・アンドレア・バルカによるベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲は単に素晴らしい演奏だったとか、完璧なベートーヴェンだったと言ってしまっては語弊があると思うほどの高いレベルの音楽でした。聴衆がただ音楽に耳を傾けるだけでなく、音楽からの深い文化的な示唆を受けて、その理解度を試される場であったとも思えます。こういう音楽を日本で聴けたことに感謝するのみです。
日本デビューも鮮烈でしたが、翌日のクルレンツィス&ムジカエテルナは伝説に残るに違いない、最高のチャイコフスキーを聴かせてくれました。コパチンスカヤも2日とも素晴らしく個性的な名演です。この2日間のコンサートはあり得ないようなレベルの音楽で、saraiはただただ、満足にため息をもらすばかりでした。
バッハ・コレギウム・ジャパンのブランデンブルク協奏曲全曲。これが凄かった! まあ、いつものように名人揃いの演奏で素晴らしいだろうとは思っていましたが、それを遥かに凌駕する、あり得ないような奇跡とも思える演奏でした。
期待のバティアシヴィリの来日公演。期待以上の出来でした。まさに今が旬のバティアシヴィリ、渾身の演奏に鳥肌が立ちました。
難曲のプロコフィエフのピアノ協奏曲第2番を完璧に弾きこなすヴィニツカヤにとって、ピアノ協奏曲第3番を弾くのはたやすそうにさえ見えてしまいました。切れのよさ、響きの美しさ、ダイナミクス、どれをとっても、そのピアニズムは見事としか言えませんでした。
庄司紗矢香が表現するペンデレツキの音楽の世界。とても素晴らしいです。作曲者自身が指揮している目の前で堂々と心のありったけをぶつけるような演奏を繰り広げる姿は感動的でした。日本人には難しかった自己表現が見事に実現していました。
現代のモーツァルトのピアノのオーソリティの内田光子はK.466のニ短調の協奏曲でピアノの響きが美しく響き渡り、最高の演奏。それ以上に素晴らしかったのは内田光子の指揮。深くて鋭いオーケストラの響きと考え抜かれた音楽表現で聴くものを魅了しました。ピアニストの内田光子よりも音楽家の内田光子が光りました。
小川典子はラフマニノフのピアノ協奏曲 第2番という難曲を完璧に弾きこなし、どのパッセージでも聴き手を魅了してくれました。響き、タッチ、切れ味、どれをとっても満足な演奏でした。上岡敏之&新日本フィルハーモニー交響楽団も美しいアンサンブルで好サポート。特に抒情的な聴かせ所でのピアノとオーケストラの協奏は圧倒的でした。
会場の聴衆みんな、いや世界中の音楽ファンが体調を心配していただろうアリス=紗良・オットのピアノでしたが、その純度の高いピアノの響きでモーツァルトの名曲を最高に歌い上げました。これからはモーツァルト弾きに専心してもらいたいと思うほどの見事な出来栄えでした。
独奏チェロの宮田大の熟成した音楽を賞賛すべきでしたし、小泉和裕の見事な指揮には脱帽の感に至ります。協奏曲の指揮でここまでのレベルの音楽を聴いたことはありません。
ヴァイオリンの若手奏者、ヴェロニカ・エーベルレは何とも瑞々しいロマンにあふれるベルクのヴァイオリン協奏曲を聴かせてくれました。大野和士の指揮も大変、精度が高く、見事なアンサンブルを展開してくれました。これが最高のベルクのヴァイオリン協奏曲とまでは言いませんが、こんなに魅力にあふれた演奏に接したのは初めてです。
ケラスのチェロは決して激することなく、あくまでも優し気な静謐な響きを保ちました。リゲティ特有の宇宙空間を漂うかのような幽玄な音響空間が静かに静かに表現されて、感銘深い演奏でした。
いよいよ、次回は最終回、大賞も発表します。そして、大晦日でもありますね。
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