今回はオーケストラ・声楽曲編です。
このジャンルは今年もたくさんのコンサートを聴きました。素晴らしい演奏が多過ぎて、選定が難航しました。オーケストラ曲と声楽曲を比較するのは難しいので、今年もオーケストラ曲と声楽曲に分けて、ベスト10を選定することにしました。
ちなみに昨年の結果はここです。
まず、声楽曲のベスト10は以下です。今年は《グレの歌》と中村恵理に酔った1年でした。
1位 ジョナサン・ノット&東京交響楽団、2度目の《グレの歌》はさらに素晴らしい出来!@サントリーホール 2019.10.6
2位 バルトリとクルレンツィス、世紀の共演@ルツェルン音楽祭 2019.9.13
3位 究極のメサイア・・・ウィリアム・クリスティ&レザール・フロリサン@東京オペラシティコンサートホール 2019.10.14
4位 中村恵理の絶唱に感動!@川口リリアホール 2019.11.30
5位 聖金曜日の感動のマタイ受難曲、再び バッハ・コレギウム・ジャパン@東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル 2019.4.19
6位 グレの歌 藤村実穂子の絶唱に感動! 大野和士&東京都交響楽団@東京文化会館 2019.4.14
7位 グレの歌に酔う カンブルラン&読売日本交響楽団@サントリーホール 2019.3.14
8位 中村恵理、最高のR.シュトラウスを歌う @Bunkamuraオーチャードホール 2019.5.6
9位 妙なる響きの教会カンタータに感動 バッハ・コレギウム・ジャパン@東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル 2019.3.3
10位 ヴェルディのレクイエム 魂の演奏 ヴィオッティ&東響@サントリーホール 2019.1.12
次点 知性的で演劇的な歌唱で魅了:ボストリッジ リートの森@トッパンホール 2019.1.22
ジョナサン・ノットの2回の演奏は究極の《グレの歌》を聴かせてくれました。これ以上の演奏はあり得ないでしょう。ジョナサン・ノットは流石の音楽作り。指揮もキャスティングも最高でした。こんな《グレの歌》はもう生涯聴くことができないほどの素晴らしさでした。
チェチーリア・バルトリとクルレンツィスの初共演でした。歴史に残る公演に立ち会えただけでも嬉しく思いましたが、その演奏たるや、驚異的なものでした。
ウィリアム・クリスティ&レザール・フロリサンは今年創立40周年とのことですが、まさに旬の時を迎えているようです。ハレルヤコーラスとアーメンコーラスの素晴らしさはもちろん、アリアや管弦楽合奏はそれ以上の音楽内容で、長大なオラトリオのすべてが最高の演奏ばかりでした。メサイアの本質的なところを表現し尽くした名演でした。
中村恵理のソプラノの美声にはまっています。オペラのアリアから歌曲まで何でも素晴らしい。彼女の公演はほぼカバーしました。来年も楽しみでたまりません。(4位と8位)
日本にいてこそ聴けるのがバッハ・コレギウム・ジャパン。聖金曜日に毎年、素晴らしいマタイ受難曲が聴けるのは無上の喜びです。そして、バッハのカンタータも素晴らしかったです。ランクに入れなかったマニフィカトも大変、感銘を受けました。来年はBCJ創立30周年でバッハの3大宗教曲が聴けるのが楽しみです。(5位と9位)
ジョナサン・ノット&東京交響楽団の2回の《グレの歌》以外にも、都響と読響でも素晴らしい《グレの歌》が聴けた嬉しい年でした。森鳩の歌を歌った藤村実穂子のパーフェクトで気魄あふれる歌唱には絶句してしまいました。カンブルランの《グレの歌》は読響の常任指揮者としての最後のサントリー定期でした。カンブルランも思い入れのある公演だったのでしょう。大編成のオーケストラ、合唱団を見事にドライブした名演でした。(6位と7位)
ヴィオッティ&東響のヴェルディのレクイエムは何とも凄まじく魂に訴えかける演奏でした。東響コーラスの圧倒的なパフォーマンス、そして、ソロ歌手陣の恐ろしいまでの気魄の歌唱がすべてでした。
現代を代表するテノールの一人、イアン・ボストリッジは素晴らしいシューマンで魅了してくれました。
で、いよいよ、オーケストラ部門です。今年はベスト10は以下です。ともかく、今年はクルレンツィスとノットに魅了された1年でした。
1位 圧巻の日本デビュー!クルレンツィス&ムジカエテルナ コパチンスカヤもハチャメチャの快演 @Bunkamuraオーチャードホール 2019.2.10
伝説に残るクルレンツィスのチャイコフスキー コパチンスカヤも最高! @すみだトリフォニーホール 2019.2.11
チャイコフスキーの音楽の本質を描き尽したクルレンツィス&ムジカエテルナ@サントリーホール 2019.2.13
2位 ジョナサン・ノット&東京交響楽団の一連のコンサート
ジョナサン・ノットは現代も古典も超絶的!! 東京交響楽団@東京オペラシティコンサートホール 2019.5.18
これがショスタコーヴィチの5番か!驚きの演奏・・・ノット&東京交響楽団@サントリーホール 2019.5.25
今日も絶好調、リゲティとシュトラウス・・・ジョナサン・ノット&東京交響楽団@サントリーホール 2019.7.20
Thunderbirds Are Go! ジョナサン・ノット&東京交響楽団@ミューザ川崎シンフォニーホール 2019.7.27
なんというマーラー、ノットでしかなしえないマーラー!・・・ジョナサン・ノット&東京交響楽団@サントリーホール 2019.11.16
リゲティ、R.シュトラウス、モーツァルトの極美の響き・・・ノット&東京交響楽団@東京オペラシティコンサートホール 2019.11.23
さらに精度を上げたR.シュトラウス、モーツァルトの極美の響き・・・ノット&東京交響楽団:モーツァルト・マチネ 第38回@ミューザ川崎シンフォニーホール 2019.11.24
ジョナサン・ノット&東京交響楽団の第九は始まったばかり@サントリーホール 2019.12.28
3位 最上のオーケストラ、超一流の指揮者で何ともチャーミングな魅惑のコンサート・・・アラン・ギルバート&東京都交響楽団@東京文化会館大ホール 2019.12.9
自己と葛藤するマーラーを鮮やかに表現・・・アラン・ギルバート&東京都交響楽団@サントリーホール 2019.12.14
4位 ただただ、絶句・・・ミンコフスキ&東京都交響楽団@東京文化会館大ホール 2019.10.7
5位 ティーレマンが振るとウィーン・フィルが美しく鳴る:ブルックナーの交響曲第8番@サントリーホール 2019.11.11
6位 鈴木雅明の偉業に感銘!ベートーヴェン:交響曲第9番 バッハ・コレギウム・ジャパン@東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル 2019.1.24
7位 新常任指揮者ヴァイグレ、見事なブルックナー 読売日本交響楽団@サントリーホール 2019.5.14
8位 天才モーツァルトと天才マーラーの最高の音楽・・・アリス=紗良・オット&インバル&ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団@東京芸術劇場 コンサートホール 2019.7.10
9位 ショスタコーヴィチの交響曲の重く、感銘深い演奏 ユーリ・テミルカーノフ&読売日本交響楽団@サントリーホール 2019.10.9
10位 読響の実力が発揮されて、バルトークの難曲も余裕の演奏 ヘンリク・ナナシ&読売日本交響楽団@サントリーホール 2019.7.11
今年の1位はクルレンツィス。凄い!!!! やはり、クルレンツィスは音楽の世界を変える。初の来日公演の3日間はまさに歴史に残るコンサートでした。
2位はジョナサン・ノット&東京交響楽団の一連のコンサート。少し卑怯なランキングになりましたが、ノットの今年のコンサートはすべてが素晴らし過ぎたので、それを一つ一つ選んだら、このベスト10が成り立ちません。今年は2回の《グレの歌》を含めて、全部で10回聴きましたが、すべて、指揮者コールになるほどの絶品の演奏ばかりでした。シェーンベルク、リゲティ、マーラー、ベートーヴェン、モーツァルト・・・すべて、記憶に残るコンサートばかりでした。
3位はアラン・ギルバート&東京都交響楽団の素晴らしいコンサート2連発。もう嬉しくなって踊りたくなるような素敵なコンサートでした。アラン・ギルバートはやはり、只者ではないことをはっきりと認識させてくれてくれました。マーラーはアラン・ギルバートのセンスを買って、急遽、1週間前にチケットを求めましたが、その期待は裏切られませんでした。素晴らしいマーラーでした。
4位はミンコフスキ。この日の演奏が終わり、saraiは青ざめていました。一体、これは何だったんでしょう。いつも音楽表現が深いとか、譜面の読みが鋭いとか、分かったようなことを書いている自分を恥じてしまいました。音楽はそれ自体で成り立つもので、素人が何だかんだと言葉で表現するものではないという厳然たる事実を突き付けられた思いでした。軽々しく拍手することさえも躊躇われました。恐れ入りましたと黙って席を立つのが正しい姿ではないかとすら思えました。本当のオーケストラ音楽とはこれほどのものなのでしょうか。本来はこれを1位にランクしてもよかったかな。
5位はティーレマン。この日のティーレマンがウィーン・フィルから引き出した響きはチェリビダッケとはまた質が違いますが、恐ろしいほどの美しさに満ちていました。巨匠ティーレマン、世界最高のオーケストラのウィーン・フィルの名に恥じない素晴らしい演奏でした。これまでウィーン・フィルのブルックナーは何度となく聴いてきましたが、これほどの美しい響きを聴いたのは初めてです。さすがにティーレマンです。
6位は鈴木雅明指揮のバッハ・コレギウム・ジャパンのベートーヴェンの第九。素晴らしい演奏にただただ感銘を受けました。よほど、満を持しての公演だったのでしょう。まずは鈴木雅明の完璧なベートーヴェン解釈に賛辞を送らないといけないでしょう。そして、バッハ・コレギウム・ジャパンの名人たちの演奏の素晴らしさに感銘を受けました。
7位は読響の新しい第10代常任指揮者のセバスティアン・ヴァイグレ。彼がいよいよサントリーホールのステージに登場。素晴らしいブルックナーでした! まずは新常任指揮者ヴァイグレはどの声部も驚くほどよく鳴らせます。今までこの曲で気が付かなかったようなフレーズが浮かび上がってきます。とても新鮮で鮮やかな響きに魅了されました。
8位はインバルのマーラー。久しぶりに素晴らしいマーラーを聴かせてもらい満足しました。
9位はテミルカーノフのショスタコーヴィチの交響曲。彼はにこりともせずに気難しい顔をして、演奏。テミルカーノフは存在感のある指揮者です。指揮がうまいとかではなく、彼が振ると、音楽に深みが出て、凄い音楽になります。やはり、80歳を過ぎた指揮者は貴重です。
10位は読響のバルトークの難曲。うーん、日本のオーケストラの実力もなかなかですね。バルトークの管弦楽のための協奏曲と言えば、オーケストラ能力の試金石みたいなものの一つですが、読響は余力を残した演奏。指揮者がもっと厳しい要求をしても応えられたでしょう。
ジャジャーン!
ここで今年の大賞発表です。
クルレンツィス&ムジカエテルナのモーツァルトのオペラ、ダ・ポンテ三部作+バルトリ@ルツェルン音楽祭
全3オペラ、すべて新しい音楽の価値観を創造する究極の演奏でした。その集大成として、バルトリも加わった《コジ・ファン・トゥッテ》の素晴らしかったこと! 文句なしの大賞です。クルレンツィスの来日公演のときのウェルカム・パーティーで意気投合した音楽ファンの《今、旬なときのクルレンツィスのダ・ポンテ3部作を聴かない手はない》という後押しのお言葉に従って、本当に良かったと思います。お名前も知らない方ですが、ここで感謝の言葉を捧げます。
大賞にはなりませんでしたが、アンドラーシュ・シフのベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲、ジョナサン・ノット&東京交響楽団の一連のコンサートも同等の価値のあるコンサートでした。
来年の感動に期待しながら、今年の総括は幕としましょう。
今年も当ブログを読んでいただいたみなさんには感謝です。また、来年も引き続き、ご愛読ください。
saraiはこれから、みなとみらいホールのジルヴェスターコンサートに出かけます。今年も音楽で年越しです。
皆さま、よいお年を!!
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