モーツァルト・マチネと言いながら、今日の前半のプログラムはモーツァルトと親交のあった作曲家の作品です。
まず、C. P. E. バッハのシンフォニアです。C. P. E. バッハと言えば、つい最近まで当ブログで書いていたハンブルク散策の中で訪れた聖ミヒャエル教会の地下に埋葬されている大バッハの次男ですね。彼の作品はほとんど聴いたことがありません。父親の大バッハとはまるで傾向の違う作品を書いていたんですね。北ドイツのハンブルクで書かれた作品とは言え、随分、イタリア風のテーストが感じられました。力強いパートと繊細で優しいパートが交互に入れかわるという感じの音楽を丁寧に、それでいて、さらっと演奏してくれました。
次はトーマス=リンリーJr.のヴァイオリン協奏曲です。佐藤俊介のさりげないヴァイオリンの演奏がバロック風の典雅な雰囲気を心地よく感じさせてくれました。短い第2楽章のしみじみとした抒情が印象的でした。
後半は10代のモーツァルトが作曲した作品です。前の2曲とほぼ同時代に作曲されたものですが、時代をリードしていくモーツァルトの天才ぶりがうかがえて、とても興味深いです。
まず、交響曲 第26番です。イタリア旅行の直後に書かれたものでイタリア風の作風になっていますが、既にモーツァルトの才が光っています。この曲を実演で聴くのは初めてです。コンパクトな作品が軽妙に演奏されました。
最後は、ヴァイオリン協奏曲 第1番です。これはとても颯爽とした美しい演奏でした。佐藤俊介のヴァイオリンの演奏が光りましたが、決して、古典の枠からは外れない節操のある自然な演奏が印象的でした。
現代はモーツァルトの作品の表現の幅が広く、色んなスタイルの演奏が楽しめます。今日の演奏はピリオド的な表現スタイルでしかも地味とも思える演奏でしたが、その丁寧で誠実な演奏は好感を持てるものでした。オランダ・バッハ協会の音楽監督として、活躍する佐藤俊介の実力が十分に発揮されたものでした。なお、彼の演奏を聴くのは今日が初めてです。
今日のプログラムは以下です。
指揮/ヴァイオリン:佐藤俊介
管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:田尻順
C. P. E. バッハ:シンフォニア 変ホ長調 Wq. 183/2, H. 664
トーマス=リンリーJr.:ヴァイオリン協奏曲 ヘ長調
モーツァルト:交響曲 第26番 変ホ長調 K. 184/161a
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲 第1番 変ロ長調 K. 207
休憩なし
最後に予習について、まとめておきます。
1曲目のC. P. E. バッハのシンフォニアを予習したCDは以下です。
カール・リヒター指揮ミュンヘン・バッハ管弦楽団 1969年7月、ミュンヘン、ヘラクレスザール セッション録音
手堅い演奏。文句なし。
2曲目のトーマス=リンリーJr.のヴァイオリン協奏曲を予習したCDは以下です。
エリザベス・ウォルフィッシュ、ピーター・ホルマン指揮パーリー・オブ・インストゥルメンツ
なかなかの好演です。特にエリザベス・ウォルフィッシュのヴァイオリンが素晴らしく美しい演奏です。
3曲目のモーツァルトの交響曲 第26番を予習したCDは以下です。
ジェイムズ・レヴァイン指揮ウィーン・フィル 1984-1990年 ウィーン、ムジークフェラインザール セッション録音
レヴァインがウィーン・フィル初のモーツァルト交響曲全集として取り組んだもの。もちろん、とても美しい演奏です。
4曲目のモーツァルトのヴァイオリン協奏曲 第1番を予習したCDは以下です。
アンネ=ゾフィー・ムター(ヴァイオリンと指揮)ロンドン・フィル 2005年7月、ロンドン、アビーロード第1スタジオ セッション録音
ムターのモーツァルトの演奏はひそかに愛好していますが、この曲はちょっと合わなかったかもしれません。
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