バイロイト音楽祭Bayreuther Festspiele初体験、祝祭劇場Bayreuther Festspielhausで楽劇《トリスタンとイゾルデ》がいよいよ開演です。
第1幕はホールの照明が落とされて、暗闇の中から、あのトリスタン和音が低い響きで現れます。その音たるや、柔らかで絹のような滑らかさの極上の響きです。前奏曲は目を閉じて、うっとりと聴き入ります。ロマンチシズムの極みです。トリスタンとイゾルデが船でマルケ王のもとにむかう場面が続き、第1幕終盤のトリスタンとイゾルデが恋に落ちるシーンの素晴らしさにはジーンときてしまいます。ティーレマンの安定した丁寧な指揮が光ります。ティーレマンは少し変わったように思います。熟成したとでも表現しましょうか。無理のない音楽、深みのある音楽に変わってきているような気がします。まさに巨匠の道を極めつつあると感じました。歌手陣はすべて好調です。噂に聞いた通り、歌手の声はオーケストラの響きを突き抜けて、ちゃんと聴こえてきます。その声をオーケストラの響きが包み込みます。これがワーグナーが目指した音響だったんですね。
第1幕が終わり、予約してあるディナーに行きましょう。広くて豪華なバイロイト音楽祭付属のシュタイゲンベルガーSteigenbergerのレストランに着飾った多くの人が揃っての食事は、なかなか壮観です。

着物姿の配偶者もテーブルに着きます。相席になるとのことでしたが、相席予定の客はほかのテーブルに案内され、結局はテーブルは我々二人だけになります。

綺麗なテーブルセッティングです。

1回目の休憩には、アントレが出ます。オマールエビと春巻きのようなもの(中は肉系)を、たっぷりの甘いソースで頂きます。野菜もありますが、タケノコやダイコンのような感じの煮物です。なんだか食材がよく分かりません。日本の煮物とは違って、甘いです。でも、美味しいです。オマールエビは殻を外すのにちょっと緊張しますが、美味しいです。

勧められるままにコーヒーを頂きます。

テーブルにはsaraiの名前が書かれた挨拶状がのせられていました。

1回目の休憩の食事は終了。ワインは自重しました。レストランを出て、祝祭劇場の前に出ると、もう第2幕開始のラッパが鳴っています。

8名ほどのバンドですね。毎回、異なるメロディーが奏でられます。基本、その日の演目の旋律がもとになっています。

こういうものもなかなかよいですね。皆さん、ご苦労様。

第2幕に向けて、再び、ホール内の席に着きます。

配偶者の隣席の人のご夫婦は、この後、ウィーンとザルツブルクに行くそうです。彼らが配偶者の着物を誉めてくれたとのこと。よかったね。
第2幕が始まります。ティーレマン指揮のバイロイト祝祭管弦楽団の演奏する前奏曲の素晴らしい響きに聴き入ります。幕の中盤からは《トリスタンとイゾルデ》の夢のような至上の愛の歌に恍惚とします。ティーレマン指揮のオーケストラもトリスタン役のステファン・グールドもイゾルデ役のペトラ・ラングも最高です。愛の死のテーマの後の音楽は表現できないほどの素晴らしさです。それが永遠を思わせるほど続きます。永遠の愛はいつまでも続いてほしいと心の底から願望します。メロートやマルケ王の乱入でその愛のシーンが突然、打ち破られるのはこの《トリスタンとイゾルデ》を聴くといつも残念な点ですが、音楽を永遠に演奏するわけにはいかないので仕方がありません。幕の最後でトリスタンが無明の世界に付いて来れますかとイゾルデに訊くと、イゾルデがどこまでもあなたについていきますと答えるシーンにはジーンときます。不倫なのに夫の前で堂々と表明するのはモラル的には問題ですが、これこそ至上の愛ですね。ワーグナーは不倫の末、妻にしたコジマのことを念頭においたのでしょうか。第2幕は最高の愛の音楽です。
第2幕終了後の休憩に入り、再び、レストランの赴き、ディナーの続きです。また、同じテーブルが綺麗にセッティングされています。

今度はメインです。チキンです。香ばしく焼けてます。お肉をパスタで巻いたものも付いてます。野菜は、人参などのほかにアプリコットを甘く味付けしたもの。普段食べたことがないような料理です。貴重な体験です。

レストランのテーブルはワグネリアンの紳士淑女で満席。壮観ですね。

美味しいチキンをいただいています。華やいだ雰囲気の中でのディナーは格別です。

最後はデザートです。甘いものかチーズからの選択で、甘いものをチョイス。

さて、それぞれ1時間の幕間の休憩の中で提供しないといけない食事。何といっても、スタッフのテキパキと素晴らしい動きが印象的です。一歩が大きく、歩くのが早い。客の食事の進み具合をよく見ていて、どんどん事が進みます。清算も早いです。ヨーロッパではいつものことである、見てみないふりの扱いとは全く違います。我々を担当したスタッフの女性もとっても感じがよく、彼女にパーフェクトだったねというと、時間が決まってるからもう大変で忙しくてたまらないのよとほがらかに答えてくれました。
音楽だけでなく、舌も楽しめるバイロイト音楽祭です。もっとも贅沢は今日だけ。明日は食べません。破産します。
第3幕が始まります。前奏曲の素晴らしさに金縛りになりそうです。さきほども書いたとおり、ティーレマンははっきりと変わりました。こんなに味わい深い音楽を表現するようになったんですね。これほどの音楽は誰も到達しえなかった境地に思えます。第3幕はまさにティーレマンの一人舞台。素晴らしい音楽が最後まで続きます。saraiの集中力もぐっと高まり、一音も聴い漏らさないように音楽にのめりこみます。そして、終幕の愛の死の極上の音楽が始まります。ペトラ・ラングもここまでくると、相当に疲れていたに相違ありませんが、最後の喉を使って歌い切ります。それを支え、天上の音楽を展開したのはティーレマンとバイロイト祝祭管弦楽団です。これを聴いて、感動しない人は音楽を聴く資格のない人でしょう。saraiはそれほどの感動を味わいました。やはり、ワーグナーは作品を聴いて対峙すべきというsaraiの信念に間違いはありませんでした。
これで今日の公演は無事終了。ティーレマン指揮の《トリスタンとイゾルデ》は素晴らしい演奏で圧倒的でした。もう、いつ死んでも悔いが残らないという感じです。この楽劇についての記事はここです。ワーグナーはやはり、この聖地バイロイトで聴かないとその本質が分からないことを認識させられました。
感動を胸に駐車場で待つバスまで戻ります。来た時よりも大きい2階建てバスになってます。来るときに、バス1台では乗り切れなかったからでしょう。それなりに町は暗く、歩いて帰るなんて考えられません。シャトルバスでの送迎のあるこのホテルにして正解でした。別のホテルのバスは席に座れない人がいました。
部屋に戻ると、掃除ができていません。レセプションに連絡すると、レセプションの女性がやってきます。タオル交換とごみの処理、カップの交換をしてくれます。コーヒーと紅茶は多めに持ってきてくれます。どうして忘れられたのかな。祝祭劇場に出かける前には、掃除をしてねのランプを付けていったのだけど・・・。
みそ汁を飲んで、お風呂に入り、ブログの記事を書いてから寝ます。
明日はまた、ワーグナーの特別な作品、舞台神聖祝典劇《パルジファル》です。感動のバイロイト音楽祭が続きます。
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