今日は一切、saraiも配偶者も家に閉じ籠っていました。別に何の苦痛もありません。が、何か、ふつふつたるものがあります。こんなことがいつまで続くやら・・・。ネットを活用したヴァーチュアルな活動でも考えてみましょう。この状態は長引きそうですからね。
さあ、一昨年の旅にタイムジャンプします。
この旅の最後の目的地であるマンハイムMannheimで散策中です。まずはフリードリヒ広場Friedrichsplatzに面したマンハイム美術館Kunsthalle Mannheimで美術鑑賞中です。
ジャン=バティスト・カミーユ・コローJean-Baptiste Camille Corotの1865年、69歳頃の作品、《砂丘の小さな馬車La petite charette dans les dunes》です。フランスの森の風景を詩情豊かに描いたコローですが、ここでは開けた平原が描かれています。樹木や草の靄のかかった描き方はコローの絵画の特徴を表しています。よく見ると樹木は銀灰色で描かれています。馬車や人物はこの風景に空想的に配したものなのでしょう。

フランツ・フォン・シュトゥックFranz von Stuckの1896年、33歳頃の作品、《女性の肖像Weibliches Porträt》です。フォン・シュトゥックはミュンヘン分離派の創始者の一人であり、1895年からはミュンヘン美術院の教授となり、パウル・クレー、ワシリー・カンディンスキーという錚々たる顔ぶれの弟子に絵画を教えます。フォン・シュトゥックはファム・ファタール的な女性を描くのを大変得意にしていましたが、この作品もそういう雰囲気の絵画です。少しピンボケ気味の写真になって、申し訳けありません。

新館の展示は未整理の絵画を一括して、大量展示しています。この中から、お宝探しをして、楽しみます。

オスカー・ココシュカOskar Kokoschkaの1925年、39歳頃の作品、《アムステルダム、クロフェニールスバーグワルⅠ Amsterdam, Kloveniersburgwal I》です。当美術館では既にココシュカの素晴らしい作品《ソニア・ドゥジエルスキ Ⅱ》を見ました。あれは最高傑作《風の花嫁》でアルマへの永遠の愛を描いた頃の作品でした。思えば、ココシュカが芸術的頂点に上り詰めた頃だったのでしょう。それから10年、アルマへの失恋の心の痛手もようやく癒されつつある頃の作品です。表現主義的な面は影をひそめて、写実的にアムステルダムの運河風景を描いています。

フランツ・マルクFranz Marcの1908年、28歳頃の作品、《緑の習作Grüne Studie》です。マルクが動物を描かずに背景の緑の野原だけを描いている珍しい作品です。一括展示の作品群の中から、こういうマルクらしくない作品を探し出すのは大変です。

ジョルジョ・デ・キリコGiorgio de Chiricoの1950年、62歳頃の作品、《メタフィジカル(形而上的)なイタリアの広場Piazza d'Italia Metafisica》です。キリコのお得意のシュールで幻想的な古代広場です。あり得ないような風景でありながら、じっと眺めていると、そのイメージの中に入り込んでしまうような気がして、めまいがします。

最後にもう一度、一括展示の作品群を眺めます。右側にベックマンやリーバーマンの作品が見えます。めぼしい作品はほかにはなさそうですね。

最後に新館の最上階(2階)に上がります。ウィリアム・ケントリッジWilliam Kentridgeの映像インスタレーションの《時間の拒絶The Refusal of Time》を体験します。ビデオ映像とカタカタする音を立てる奇妙な装置で構成される部屋のインスタレーション《死に対する声明》で時間とは何かということを訴えかけているようです。時間と死は人間にとって、最大の謎ですが、その難問にケントリッジはインスタレーションという芸術的アプローチで挑んでいます。

興味のあるかたは、以下のYouTubeをご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=w84QiIO8lTU
新館の最上階からの眺めを楽しみます。まずはフリードリヒ広場の給水塔Mannheimer Wasserturmです。

フリードリヒ広場の東の奥には重厚な建物が並んでいます。ネオバロック様式のキリスト教会Christuskirche Mannheimや町一番の高さ212.8mの通信塔Fernmeldeturm Mannheimも見えています。

再び、給水塔のほうを眺めます。その先には目抜き通りのプランケン通りPlanken Straßeが続いている筈です。この後、そのプランケン通りを散策します。

最上階には、ルーフテラスがあります。勢いのある緑の植物のプランターが並べられています。

最後に危うく見逃すところでした。
カスパー・ダーヴィト・フリードリヒCaspar David Friedrichの1824年、50歳頃の作品、《夕べAbend》です。素晴らしく、ロマンティックな作品です。それにこの大胆な構図。画面いっぱいに夕刻の茜色の空が広がり、画面の一番下にちょっとだけ、少し斜めになった地平線が描かれています。フリードリヒならではの見事な作品です。

この旅では、ハンブルク市立美術館Hamburger Kunsthalleで13枚ほどのフリードリヒの大コレクションを見て、ドイツとウィーンの美術に所蔵されているフリードリヒのほとんどの代表的な作品を見終えたつもりでしたが、旅の最後にまた、フリードリヒの名作に出会えて、幸福感に浸ることができました。
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