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ベルヴェデーレ宮殿のオーストリア・ギャラリー:マカルト、フォイエルバッハ、ベックリン、クリムト

2019年9月8日日曜日@ウィーン/3回目

ベルヴェデーレ宮殿Schloss Belvedereの上宮Oberes Belvedereの入館時間になり、並んでいる人の列を尻目に入館します。ここにはウィーン美術史美術館に次ぐ規模のオーストリア・ギャラリーÖsterreichische Galerie Belvedereがあり、世紀末芸術を中心とした充実したコレクションが揃っています。とりわけ、クリムトとシーレの傑作群に再会できるのが楽しみです。
入館して、2階への階段に向かいます。

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バロック装飾の階段を上って、2階に向かいます。

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2階の大広間です。

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大広間の大きな窓からはさきほどまで散策していた庭園が見渡せます。下宮とその先のウィーンの旧市街も眺められます。

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目指すはクリムトとシーレ。勝手知ったる美術館です。2階の大広間から、右手の部屋に進みます。途中、印象的な作品だけをピックアップして鑑賞します。

ハンス・マカルトHans Makartの1870年、30歳頃の作品、《マグダレーナ・プラッハMagdalena Plach》です。マカルトは19世紀後半のウィーンを席巻したアカデミック美術の第1人者として活躍した画家でした。近年、再評価されている画家です。この作品に描かれているマグダレーナ・プラッハは、ウィーンの美術商、ゲオルク・プラッハの妻で、ゲオルク・プラッハはマカルトの大きな作品を購入した最初のディーラーでした。とても美しい肖像画に魅了されます。

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ハンス・マカルトHans Makartの1868年、28歳頃の作品、《モダンなキューピッド-壁を飾るデザインModerne Amoretten – Entwurf zur Dekoration einer Wand》です。マカルトは自分のアイデアやアイデアをより簡単かつ迅速に表示するために、初めて写真を使用しました。 彼は「モダンなキューピッド」の3つの複製物に薄くグレージング(光沢を出す艶出しの手法)し、2つのトンディ(円形のイメージ画)をキャンバスに直接描きました。若いマカルトの意欲的な挑戦ですね。

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アンゼルム・フォイエルバッハAnselm Feuerbachの1868-1869年、39-40歳頃の作品、《オルフェオとエウリディーチェOrpheus und Eurydike》です。フォイエルバッハはマカルトと同時期にウィーンで活躍した新古典主義の画家です。フォイエルバッハがこの作品で扱ったテーマは、古代の物語の決定的な瞬間を人間の存在のドラマに集中させることにあります。この作品「オルフェウスとエウリュディケ」では、悲劇的な愛の主題は芸術家の運命の主題にもリンクされています。オルフェウスは、運命や孤独を克服することに成功していない存在として描かれています。絵そのものに注目すると、二人の衣装のひだが美しく描き込まれていることが特徴的ですが、やはり、オルフェオの希望に燃える顔とエウリディーチェの未来を絶望すような暗い表情が対照的に描かれていることがとても印象的です。刮目すべき作品です。

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アルノルト・ベックリンArnold Böcklinの1887年、60歳頃の作品、《海の牧歌Meeresidylle》です。ベックリンは19世紀のスイス出身の象徴主義の画家です。ベックリンはフォイエルバッハとも親交がありました。この作品では海の幻想的な風景が描かれています。ベックリンが好んで取り上げた主題のひとつです。

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ありました! クリムトの作品が登場します。

グスタフ・クリムトGustav Klimtの1895年、33歳頃の作品、《演劇『クラビコ』中のカルロスに扮する宮廷役者ヨーゼフ・レヴィンスキーの肖像Josef Lewinsky als Carlos in Clavigo》です。クリムトはブルク劇場の天井画をてがけましたが、この成功をきっかけにブルク劇場の名優の肖像画を委嘱されるようになります。この作品はその1枚ですが、従来の肖像画に終わらないのがクリムトの凄いところです。中央の肖像も見事ですが、その左右に描かれた装飾画が素晴らしいです。とりわけ、右側は古代の火盤から立ち上る煙の上に描かれた若い女性の美しさはクリムトの真骨頂です。左側の金色とグレイで描かれた月桂樹も中央に描かれた名優の肖像を称えているかのごとくです。装飾的な肖像画で、クリムトが新時代のユーゲントーシュティールの芸術を切り開いていくことを宣言したのでしょう。

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グスタフ・クリムトGustav Klimtの1891–1892年、29-30歳頃の作品、《1862年の花嫁としてのマリー・ケルナー・フォン・マリラウンの肖像Marie Kerner von Marilaun als Braut》です。1862年5月1日、マリー・ケルナーは植物学のアントン・ケルナー教授(後にケルナー・フォン・マリラウン)と結婚しました。教授は1891年に妻へのクリスマス・プレゼントとして、クリムトに肖像画の作成を依頼しました。クリムトは1862年の結婚式の際に作られた水彩のミニアチュアをもとに肖像画を描き、12月24日に暫定的に絵画を手渡しました。クリスマスプレゼントとしての納期を一応守ったわけですが、その後、最終的な手直しを施して、翌年、完成させます。肖像画はミニアチュアをもとにしていますが、白いユリで作られたブライダルブーケとヘアリングのデザインは、1892年の国際音楽および劇場展のポスターと同様にクリムトのデザインです。ウェディングドレスとベールは、1891年のエミリエ・フレーゲのパステル調の肖像画と同様に描かれています。初期のクリムトの作品として、貴重な肖像画です。

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グスタフ・クリムトGustav Klimtの1894年、32歳頃の作品、《婦人の肖像Frauenbildnis》です。この若い女性の肖像画は最初の大きな代表的なクリムトの女性の肖像画です。この作品は後に描かれる立っている女性の肖像画の基礎になります。とりわけ、エミリエ・フレーゲ(ウィーン美術館)、ハルミネ・ガリア(ナショナルギャラリー、ロンドン)、マーガレーテ・ストンボロー・ヴィトゲンシュタイン(ノイエピナコテーク、ミュンヘン)がその系列です。彼の肖像画はカメラで撮影した写真をもとにリアルに再現する手法で描かれています。

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クリムトの肖像画を皮切りにオーストリア・ギャラリーの名品の鑑賞を始めたところです。この後、シーレの傑作も続々と登場します。



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07/08 15:53 じじい@

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久々のコメント、ありがとうございます。
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06/18 12:46 sarai

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06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

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