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ベルヴェデーレ宮殿のオーストリア・ギャラリー:ココシュカ、シーレ、クリムト・・・とりわけ、シーレの最高傑作《家族》に感動!

2019年9月8日日曜日@ウィーン/8回目

ベルヴェデーレ宮殿Schloss Belvedereの上宮Oberes Belvedereのオーストリア・ギャラリーÖsterreichische Galerie Belvedereで絵画鑑賞中です。
素晴らしいクリムト、シーレの作品に魅了されています。

オスカー・ココシュカOskar Kokoschkaの1910年、24歳頃の作品、《マトンとヒヤシンスのある静物Stillleben mit Hammel und Hyazinthe》です。マトン(羊肉)、亀、マウス、ヒヤシンス。実に雑多なものが描かれた静物画です。ココシュカの初期の作品のコレクターだった内科医のライヒェル博士の家でこの作品は描かれました。イースターの時期に描かれた、この静物画の対象要素は実はライヒェル博士の子供たちがキッチンや冬の庭などから持ち込んだものです。マトンはイースターラムです。イースターの静物とでも名づければ、よさそうな絵です。画面全体は暗い色調で、若きココシュカはいかなる気持ちで描いたものなんでしょう。いずれにせよ、この作品はこの美術館では、ココシュカの最も重要なコレクションです。

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オスカー・ココシュカOskar Kokoschkaの1910年、24歳頃の作品、《管財人Der Rentmeister》です。この肖像画のモデルはかって、ジャーナリストのJulius Szeps博士と誤って伝えられていました。実際はココシュカの記憶では、ウィーンの管財人だった人でした。ココシュカの初期の肖像画はモデルの内面に強く踏み込んだものになっています。この作品では、男は視線を落とし、何か自分の中の思いにふけっているようです。そういう男の心を見透かすように画家は男の外面をはぎ取るような冷徹な観察でこの肖像を描いています。

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エゴン・シーレEgon Schieleの1918年、28歳頃の作品、《しゃがむカップル(家族)Kauerndes Menschenpaar (Die Familie)》です。シーレの最晩年の作品です。saraiの最愛の作品のひとつです。この美術館にはクリムトの《接吻》という傑作もありますが、saraiはこの作品を見るためにこの美術館を訪れます。シーレの見果てぬ夢が描かれている作品です。シーレ自身とその妻エディット、そして、エディットのお腹の中にいて、もうすぐ産まれる筈だった子供が描かれた仮想の家族の絵画です。人間の温もり、究極の愛が描かれた作品にsaraiはいつも胸が熱くあります。この年、スペイン風邪でこの家族は実現することなしにみな、この世を去ることになりますが、芸術家はこの最高の絵を世に残しました。極上の“美”の世界に、saraiはほのぼのと温かい気持ちで満たされて、幸福な感動が胸の内に広がります。
この最愛の絵に5年ぶりに再会して、ウィーン訪問のひとつの目的を果たした思いです。

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グスタフ・クリムトGustav Klimtの1916/17年、54/55歳頃の作品、《アダムとイヴAdam und Eva》です。《接吻》の約10年後に描かれました。《接吻》のように豪奢な金箔が使われることはなくなりましたが、官能美は永遠にクリムトのトレードマークです。クリムト最晩年の集大成の1枚です。クリムトは最後まで“愛”を描き、女性をこれ以上なく、美しく描き続けました。

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エゴン・シーレEgon Schieleの1915–1917年、25-27歳頃の作品、《母と二人の子供Ⅲ Mutter mit zwei Kindern III》です。シーレの母と子シリーズの1枚です。母と子の情愛というよりも、子は生の象徴、母は死にゆくものとして対照的に描かれています。シーレの育った家族環境ゆえの呪縛です。この呪縛から解かれるのは最晩年となる28歳のときというのはあまりに残酷な人生ですが、最後に愛せる家族を持てたシーレは幸福に死ねたのかもしれません。

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グスタフ・クリムトGustav Klimtの1917/1918年、55/56歳頃の作品、《花嫁Die Braut》です。クリムトの絶筆です。クリムトが亡くなったとき、未完のまま、アトリエに残されていました。彼は最後まで“愛”の画家を貫いて、この作品も美しい女性を中心とした愛の空間が描かれています。そして、空間の多くを占めるのは装飾的な色彩の乱舞です。黄金時代は既に10年前に終焉しましたが、金箔がなくても、華麗な画面表現は健在でした。

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エゴン・シーレEgon Schieleの1915年、25歳頃の作品、《死と乙女Tod und Mädchen》です。シーレが表現主義の画家だったことを如実に示す1枚です。死にゆく男にすがる女性。恋人だったヴァリー・ノイツェルがモデルです。この頃、シーレはヴァリーに別れを告げ、エディット・ハルムスと結婚しようとしていました。ヴァリーとの愛の終焉を描いた本作は、来るべき新生シーレの誕生も予告するものでした。しかし、がらっと作風を変えて、商業的にも成功する画家に上り詰めようとしたシーレに残されている時間はあまりに少ないものでした。ところで、この作品の主題の《死と乙女》は15世紀のドイツ芸術で隆盛を誇った《死の舞踏》から派生したもので、シューベルトの作品を想起させます。シューベルトのロマンに満ちた名曲(saraiの大好きな音楽!)に比して、表現主義のグロテスクな絵画は100年という時の大きな隔たりを思わせます。そして、今、saraiは100年後にこの作品を眺めています。2人の大芸術家の残してくれた二様の美を鑑賞できることの幸せに感謝しています。

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まだ、クリムトとシーレの名作は続きます。



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07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

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