第1楽章は幾分早いテンポのせいか、少し演奏が固い感じですが、それでも高揚感にあふれる演奏です。終盤の盛り上がりに感銘を覚えます。第2楽章に入る前に異例のチューニング。オーケストラのメンバーも気合を入れ直すようです。
第2楽章の冒頭の葬送行進曲の主題は何というか、弦楽パートの魂の入った弱音の美しい響きがまさに悲愴な雰囲気を醸し出して、心に響きます。オーボエは少し響かせ過ぎの印象はありますが、美しいソロではあります。深い精神性に満ちた演奏が続き、ノットとベートーヴェンが一体化したような音楽にただただ聴き入ってしまいます。圧巻の演奏に魅了されました。
第3楽章はとても切れのある演奏。あのホルンのパートもパーフェクトです。あっという間に次の終楽章に突入。
第4楽章は最高の演奏。ノットの指揮は満を持していたかの如く、微妙にテンポを揺らしながら、オーケストラをインスパイアします。リズムの乗りも素晴らしく、saraiも浮遊感を覚えます。行進曲での推進力は素晴らしく、高揚感に浸ります。対位法パートでの弦楽セクションの素晴らしい響きにも魅了されます。いったん、沈静化した音楽が最後に爆発し、輝きに満ちたコーダの高潮は最高でした。
素晴らしいベートーヴェンでした。ただ、これが生のノットの指揮なら、さらなる感動があったでしょう。10月の来日はなんとしても実現してほしいものです。生のノットで最高の《トリスタンとイゾルテ》を聴きたい!
今日のプログラムは以下です。
指揮:ジョナサン・ノット(ベートーヴェンに映像にて出演)
管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:グレブ・ニキティン
ストラヴィンスキー:ハ調の交響曲
《休憩》
ベートーヴェン:交響曲第3番 変ホ長調op.55 「英雄」
最後に予習について、まとめておきます。
1曲目のストラヴィンスキーのハ調の交響曲は以下のCDを聴きました。
サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィル 2007年9月20-22日 フィルハーモニー、ベルリン ライヴ録音
いかにもラトルらしい切れのある演奏。ベルリン・フィルの流石の実力です。
2曲目のベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」は以下のCDを聴きました。
レナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィル 1964年1月27日 ニューヨーク、マンハッタン・センター セッション録音
最近、あまり、世評にのぼることがないCDですが、saraiにとっては思い入れのある演奏です。子供のころ、あまり、お小遣いがなく、初めて、この曲のLPを買うに当たって、カラヤン&ベルリン・フィルを買うか、バーンスタイン&ニューヨーク・フィルを買うか、レコード屋さんのお兄さんにお願いして、比較試聴をさせてもらい、選んだのが、カラヤン盤。痛恨の選択でした。あのとき、買っておくべきはバーンスタイン盤でした。お陰でこの曲の何たるかがずっと分からずにいました。今回、久しぶりにこの演奏を聴き、あのカッコいいバーンスタインの若さにあふれる突っ込んだ演奏の素晴らしさに感動しました。もう子供時代には戻れませんが、その頃の気持ちでこの演奏を聴くと、甘酸っぱい思い出に浸れます。もっともこの曲はフルトヴェングラーの残した12の録音に優る演奏は何もありませんけどね。
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