まず、2つのヴァイオリンのためのコンチェルトーネです。モーツァルトが18歳のときの作品です。若いころの作品ですが、ヴァイオリン協奏曲などもすべて10代の頃に書かれているので、若書きというほどのことはありません。実は初聴きですが、モーツァルトらしい馴染みやすい作品なので、気持ちよく聴けます。題名は《2つのヴァイオリンのための》となっていますが、協奏交響曲のような感じです。実際、ソロ楽器は2つのヴァイオリンのほかにオーボエとチェロが大活躍します。とりわけ、荒絵理子のメリハリがあって、気迫に満ちた演奏に聴き惚れました。演奏機会の少ない作品を聴けて満足でした。
最後は、ヴァイオリン協奏曲 第5番「トルコ風」です。この有名な作品が美しい演奏で聴けて、楽しめましたが、モーツァルトと言えば、クルレンツィスのようにもっと本質に切り込んで、新たな姿を見せてほしいものです。気持ちよく聴いて、少し寝落ちしてしまったことへの言い訳けめきますが、やはり、美しく演奏できるのは当たり前で、現代にモーツァルトを演奏するのなら、それもこんなにポピュラーな作品を演奏するのなら、何か聴くものにおっと思わせるものを提示してほしいものです。今や、日本の音楽界は世界的に高いレベルにあるので、そういう挑戦は必須だと思う、贅沢な聴衆からの高いレベルの注文です。演奏自体はパーフェクトでした。
今日のプログラムは以下です。
指揮/ヴァイオリン:大谷康子
管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:水谷晃
<オール・モーツァルト・プログラム>
2つのヴァイオリンのためのコンチェルトーネ ハ長調 K.190(186E)
ヴァイオリン協奏曲 第5番 イ長調 「トルコ風」 K.219
休憩なし
最後に予習について、まとめておきます。
1曲目の2つのヴァイオリンのためのコンチェルトーネを予習したCDは以下です。
ユリア・フィッシャー、ゴルダン・ニコリッチ、ヤコフ・クライツベルク指揮オランダ室内管弦楽団 2007年2月、メノナイト教会、ハーレム、オランダ セッション録音
特に個性が前に出た演奏ではありませんが、水準以上の演奏ではあります。
2曲目のヴァイオリン協奏曲 第5番「トルコ風」を予習したCDは以下です。
アンネ=ゾフィー・ムター、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィル 1978年2月 ベルリン、フィルハーモニー セッション録音
ムターが14歳で録音した記念すべきデビュー盤です。後年、2005年にロンドン・フィルを弾き振りしたCDは実は秘かに愛聴している個性的な演奏ですが、このデビュー盤ではとても素直に清純な演奏を聴かせてくれます。カラヤンもそっと包み込みように優しく伴奏しています。こういう演奏も好きですが、繰り返し聴きたいのは姉御のムターのやりたい放題の演奏のほうです。何と言っても聴いていて楽しめますからね。でも、ちゃんとモーツァルトからは逸脱していません。以前、今年亡くなった母に演奏者名を伏せて、2005年のムターの弾き振り盤を聴いてもらいましたが、好きな演奏だと言ってくれました。何か嬉しかった思い出です。
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