最初のラフマニノフの前奏曲も切れがよく、そして、よく響くタッチの演奏に魅了されます。ラフマニノフにしてはいささか健康過ぎるきらいもありますが、これが彼女の持ち味でしょう。超絶的なパートの演奏は素晴らしいものです。ただ、ラフマニノフの暗い情念やどうしようもない、やるせなさはほとんど聴こえてきません。ラフマニノフの明るいピアニスティックな面だけが強調されるような演奏です。したがって、少し、演奏が単調に聴こえてしまいます。まあ、こういう演奏もあるのかもしれませんが、saraiとしては今一つです。
次のプロコフィエフは第1楽章から素晴らしい響きと切れの良いタッチでぐんぐん進んでいきます。明快で硬質な表現はプロコフィエフの本質に迫るものです。第2楽章の繊細な表現が今一つに感じますが、第3楽章は圧巻の力強い表現で圧倒してくれます。これこそ戦争ソナタです。見事な演奏に満足です。
最後の「展覧会の絵」は気合のこもった激しいタッチの演奏でピアノの楽しさを感じさせてくれます。一部、単調に思えるパートもありましたが、《キエフの大門》の盛り上がりは凄まじく、小川典子の良い面が出た演奏でした。
アンコールはヴォカリーズ。美しい演奏でしたが、もっと魅了してくれるような演奏だったらと大満足とまではいきません。弾き込み不足かな。あるいはそれまでに大曲、難曲を演奏したので疲れたのかしらね。
今日のプログラムは以下です。
ラフマニノフ:「10の前奏曲」Op.23から 第1番、第4番、第5番、第6番、第7番
ラフマニノフ:「13の前奏曲」Op.32から 第7番、第10番、第12番
プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ 第7番 変ロ長調 Op.83
《休憩》
ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」
《アンコール》
ラフマニノフ(小川典子編):ヴォカリーズ ホ短調 Op.34-14(ピアノ独奏版)
最後に予習について、まとめておきます。以下のCDを聴きました。
最初のラフマニノフの前奏曲、8曲は以下のCDを聴きました。
ニコライ・ルガンスキー 2017年9月 ブリュッセル、ル・フラジェ セッション録音
期待して聴きましたが、期待を超える素晴らしさ。ルガンスキーは素晴らしい。
2番目のプロコフィエフのピアノ・ソナタ 第7番は以下のCDを聴きました。
アレクサンドル・メルニコフ 2018年8月、2019年1月 テルデックス・スタジオ、ベルリン セッション録音
メルニコフはリヒテルの弟子だそうで、初演したリヒテルに学んだ演奏だとのこと。切れのある演奏はもちろんですが、深い味わいも感じられる優れた演奏です。
3番目のムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」は以下のCDを聴きました。
小川典子 1997年8月 ダンデリード・ギムナジウム、スウェーデン セッション録音
自筆譜に基づく珍しい演奏です。もっともどこが違うのかはよく分かりませんが・・・。前半は少し平板な演奏ですが、後半は盛り上がります。少し、うるさい表現ではあります。後半だけをキーシンの演奏と比べると、キーシンはスケールの大きな明晰な演奏です。
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