fc2ブログ
 
  

底知れぬ実力のマツーエフのプロコフィエフ、そして、ゲルギエフ&ウィーン・フィルの「悲愴」の深い慟哭に共感と感動@サントリーホール 2020.11.10

これは特別なコンサートです。コロナ禍の中、あり得ないような場に立ち会った思いです。今日、サントリーホールに集まった聴衆のみなさんはそれぞれ、深い思いを胸に刻んだことでしょう。こんなに真剣に演奏するウィーン・フィルは初めて見ました。聴衆と音楽家がこれほど共感しあったコンサートは稀有なことです。「悲愴」の演奏の前にウィーン・フィルの楽団長のダニエル・フロシャウアーから異例のメッセージがありました。世界中でコロナの犠牲になった人々にこの演奏を捧げ、演奏後は黙とうを捧げたいというものです。奇跡のように実現したウィーン・フィルの来日公演。彼らはこの後、帰国しても演奏の場はありません・・・少なくとも11月末まではウィーンの劇場は閉鎖しています。

ゲルギエフが全身全霊を傾けて指揮した「悲愴」は両端楽章の第1楽章と第4楽章の慟哭するような音楽がすべてでした。2004年に彼らが録音した演奏はゲルギエフの故郷、北オセチアの小学校における大惨事の直後だったので、まるで大地が慟哭するような演奏でしたが、今日はゲルギエフもウィーン・フィルも聴衆もコロナの影響下にあり、途轍もない共感が生まれ、人間の熱い感情、哀しみにあふれた慟哭がホール全体を包み込みました。これ以上、言葉で表す能力はsaraiにはありません。音楽のチカラにあらためて、驚かされるばかりです。終演後、saraiは隣席の見も知らぬ女性に素晴らしかったですねって、思わず声を掛けてしまいました。彼女もsaraiと同様に感動していたのが見てとれたからです。彼女はぽつりと、ウィーン・フィルが来てくれてよかった・・・と答えたきり、言葉を詰まらせます。深い思いがほとばしり、嗚咽しています。saraiも絶句します。同じ思いです。いえいえ、聴衆全員が同じ思いを共有していたと思います。コロナに感染しなかった人たちも心に深い傷を負ったと思います。その共通体験がこのウィーン・フィルの「悲愴」である意味、昇華したのかもしれません。この場に居合わせた誰もが忘れられないコンサートになったことでしょう。もちろん、saraiも隣席の女性も・・・。

前半の演奏も素晴らしかったんです。とりわけ、デニス・マツーエフのプロコフィエフの演奏には底知れぬ実力を思い知らされました。しかし、今日はそれを書く気力はありません。後半の「悲愴」で音楽の持つ途轍もないチカラを感じさせられましたからね。こういう音楽を聴くと、言葉はチカラを失います。ブログで音楽の感想を書けずに申し訳けありません。こういうコンサートに遭遇してしまったということです。一生に何回もあることではありません。ウィーン・フィルの面々にとってもそうだったのではと想像します。

こういう場を作ってくれたウィーン・フィル、ゲルギエフ、聴衆、関係者のみなさんに感謝の心を捧げ、コロナ禍で犠牲になった人々に哀悼の意を捧げるということでつたない記事を終えます。


今日のプログラムは以下のとおりです。

  指揮:ワレリー・ゲルギエフ
  ピアノ:デニス・マツーエフ
  管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 コンサートマスター:フォルクハルト・シュトイデ&アルベナ・ダナイローヴァ

  プロコフィエフ:バレエ音楽『ロメオとジュリエット』Op.64 より
    「モンタギュー家とキャピュレット家」
    「少女ジュリエット」
    「仮面」
    「ジュリエットの墓の前のロメオ」
  プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第2番 ト短調 Op.16
   《アンコール》グリーグ:組曲『ペール・ギュント』第1番 より 第4曲「山の魔王の宮殿にて」

   《休憩》

  チャイコフスキー:交響曲第6番 ロ短調 Op.74「悲愴」

   《アンコール》
    チャイコフスキー:『眠りの森の美女』より「パノラマ」


最後に予習について、まとめておきます。

プロコフィエフのバレエ音楽『ロメオとジュリエット』を予習したCDは以下です。

  リッカルド・ムーティ指揮シカゴ交響楽団 2013年10月 シカゴ、オーケストラ・ホール ライヴ録音

意外と言っては失礼ですが、シカゴ響の演奏能力を引き出して、ムーティは見事な演奏を聴かせてくれます。バレエのシーンを彷彿とさせてくれます。


プロコフィエフのピアノ協奏曲第2番を予習したCDは以下です。

  アンナ・ヴィニツカヤ、ギルバート・ヴァルガ指揮ベルリン・ドイツ交響楽団 2010年4月 セッション録音

これはもう10年前の録音ですが、アンナ・ヴィニツカヤのピアノは実演で聴いた通りの凄い演奏です。テクニックも切れ味もそして、豪快さも兼ね備えていますが、一番素晴らしいのは濃厚なロマン、もっと言えば、色気があることに驚愕します。彼女がこの曲でベルリン・フィルにデビューしたのは昨年、2019年のことです。恐るべきピアニストです。


チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」を予習したCDは以下です。

  ワレリー・ゲルギエフ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 2004年9月、ウィーン、ムジークフェラインザール ライヴ録音

当時話題になった、この録音ももう15年以上も前のことです。第1楽章、そして、第4楽章は大地が慟哭するような凄まじい演奏です。現在はあまり評価されていないのが不思議です。ゲルギエフの故郷、北オセチアの小学校において大惨事が起きた時期と重なり、何よりもロシア、なによりも故郷を愛するゲルギエフは最悪の状態だったと言うことで、コンサート中も涙を流しながらの指揮だったようです。なお、同年11月にウィーン・フィルを率いて来日した際には、サントリーホールにて「北オセチアに捧げる心の支援」と題して、この「悲愴」1曲だけのチャリティー・コンサートを行なったそうです。それを聴いた友人の話では終演後の拍手はなく、聴衆は無言で立ち去った感動のコンサートだったそうです。公演直前に新潟県中越地震が発生したため、収益の半分はこの地震の被災地に寄付されたそうです。



↓ saraiのブログを応援してくれるかたはポチっとクリックしてsaraiを元気づけてね

 いいね!








テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

人気ランキング投票、よろしくね
ページ移動
プロフィール

sarai

Author:sarai
首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
たまには、旅ブログも書きます。

来訪者カウンター
CalendArchive
最新記事
カテゴリ
指揮者

ソプラノ

ピアニスト

ヴァイオリン

室内楽

演奏団体

リンク
Comment Balloon

 ≪…長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さ…≫を、長調と短調の振り子時計の割り振り」による十進法と音楽の1オクターブの12等分の割り付けに

08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
その後、ザル

07/08 18:59 sarai

CDでしか聴いてはいません。
公演では小沢、ショルティだけ

ベーム、ケルテス、ショルティ、クーベリック、
クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
、チェリブ

07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

もろともにあはれとおもへ山ざくら 花よりほか

通りすがりさん

コメント、ありがとうございます。正直、もう2年ほど前のコンサートなので、詳細は覚えておらず、自分の文章を信じるしかないのですが、生演奏とテレビで

05/13 23:47 sarai
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR