矢代秋雄のピアノ協奏曲は夜の音楽です。第1楽章は夜の初めの喧騒感も漂わせますが、第2楽章は深夜の静寂や熱っぽさ、そして、第3楽章は夜明けに向かう前触れを予感します。夜の音楽を描いたバルトークに精神の深い奥底の核の部分で共鳴したのではないかとsaraiは秘かに感じました。そして、バルトークのバルバリズムさえも感じます。無論、この曲がバルトークに似ているというつもりはありません。精神の深い部分でつながりを感じるというだけです。それにしても、この音楽が発する強烈なエネルギーには無茶苦茶インスパイアされます。自分の精神がどこかに吹き飛ばされそうな恐ろしさも感じます。うーん、今日、聴いたばかりですが、また、聴きたくなりました。小菅優のピアノ、そして、矢代秋雄の音楽・・・素晴らし過ぎました!
書き忘れそうになりましたが、広上淳一が指揮した東響の演奏も凄まじかったです。ピアノに遠慮なしに大音量での演奏でしたが、この曲の本質に迫る素晴らしい演奏でした。ピアノも熱かったのですが、オーケストラも実に熱かった。夜の闇の深い静寂と狂奔する精神の混在。実に狂おしい音楽が見事に表現されました。
ところで、小菅優の弾いたアンコール曲がショパンとはね・・・うまく、いなされました。
後半のプログラムのベートーヴェンの交響曲第4番は東響のアンサンブルが見事に機能した素晴らしい演奏でした。それにしてもこの曲は第3番と第5番という凄い曲に挟まれているのに、ある意味、軽いノリの音楽にしたベートーヴェンの意図はどこにあったのかと自分に問い続けながら、聴き入っていました。ベートーヴェンの心に浮かぶ楽想は熱く燃え上がるものばかりでなく、穏やかで軽みのあるものもあったということでしょうか。第9番の前の第8番も然りです。シューマンが評したという「ギリシャの可憐な乙女」は果たして褒め言葉なのか・・・そうとしか表現できなかったのでは? saraiがこの曲を今日の演奏のように楽しむことはあっても、第3番や第5番のように感動することは決してないでしょう。ちなみにsaraiはこの曲は好きですよ。終演後、大いに拍手を送りました。
今日のプログラムは以下です。
指揮:広上淳一(ジョナサン・ノットの代演)
ピアノ:小菅優
管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:水谷晃
ベートーヴェン:序曲 ハ長調「命名祝日」Op.115
矢代秋雄:ピアノ協奏曲
《アンコール》ショパン:ノクターン第5番 嬰ヘ長調 Op.15-2
《休憩》
ベートーヴェン:交響曲第4番 変ロ長調 Op.60
最後に予習について、まとめておきます。
1曲目のベートーヴェンの序曲「命名祝日」は以下のCDを聴きました。
クラウディオ・アバド指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1990年10月 ウィーン、ムジークフェラインザール セッション録音
この曲は希少な録音しかない中、このCDはとても貴重な録音です。演奏は何も文句ない見事さです。
2曲目の矢代秋雄のピアノ協奏曲の予習は以下のYOUTUBEで聴きました。
河村尚子、山田和樹指揮NHK交響楽団 2019年4月20日 NHKホール
河村尚子のピアノは切れ味のある素晴らしい演奏ですが、なぜか、オーケストラ、特に弦の響きが浅いのが気になります。演奏の問題か、録音の問題かは分かりません。気持ちが悪いので、別の演奏を聴き直します。
岡田博美、湯浅卓雄指揮アルスター管弦楽団 2001年6月 アルスター・ホール、ベルファスト、北アイルランド セッション録音
これはピアノもオーケストラも素晴らしい演奏です。俄然、コンサートで実演を聴くのが楽しみになります。
3曲目のベートーヴェンの交響曲第4番は以下のCDを聴きました。
カルロス・クライバー指揮バイエルン国立管弦楽団 1982年5月3日、バイエルン国立歌劇場 カール・ベーム追悼コンサート ライヴ録音
意外にきっちりした古典的とも言える演奏です。むしろ、昔聴いたバーンスタイン指揮ニューヨーク・フィルの溌剌とした演奏が懐かしく思い出されます。
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