最初のモーツァルトの交響曲第32番はとても短い3楽章構成の作品で20代前半のモーツァルトによる簡明なものです。しかし、今日の沼尻竜典指揮の東響はその簡明さを爽やかに吹き抜ける風のように瑞々しく表現してくれました。その魅力たっぷりの演奏に大変満足しました。とりわけ、東響の弦楽セクションの響きの美しさは際立っていました。こういう演奏を聴いていると、東響の演奏でモーツァルトの全交響曲を聴いてみたくなります。
次はハイドンのトランペット協奏曲。ハイドンが60代半ばで作曲した熟達した作品です。東響の首席トランペット奏者の佐藤友紀が張りのある音色で晴れやかに演奏してくれました。もう少し、抑えた響きのほうがsaraiの好みではありますが、カデンツァも華麗に演奏し、全体に勢いに満ちた音楽を披露してくれました。この作品も15分ほどの短い作品ですが、十分に楽しめました。
最後はモーツァルトの交響曲第38番「プラハ」。沼尻竜典のめりはりのある表現、東響のアンサンブルの素晴らしさが相俟って、圧巻のモーツァルトを味わえました。第1楽章の主題提示部は両翼に配置したヴァイオリンの素晴らしい響きに魅了され、展開部はぞくぞくするような勢いに満ちた演奏、そして、再現部ではまたしても素晴らしい両翼のヴァイオリンの響きに魅了されます。第2楽章は優美な音楽が古き良き時代の感慨に我々を導いてくれます。第3楽章も早いテンポの音楽が素晴らしいヴァイオリン群の響きで進行し、フィナーレへの高潮ぶりは最高の盛り上がりで聴くものを魅了してくれました。沼尻竜典のツボを押さえた指揮に感銘を覚えるとともに、東響の弦楽アンサンブルの素晴らしさにモーツァルトの音楽の極みを感じ取ることができました。最高の爽やかな音楽に気分も最高になりました。東響ファンとしても嬉しいコンサートでした。あとはジョナサン・ノットの来日で年末の第9を締めてほしいものです。14日の隔離までしての来日は大変、難しいでしょうけどね・・・。
今日のプログラムは以下です。
指揮:沼尻竜典(ジョナサン・ノットの代演)
トランペット:佐藤友紀(東京交響楽団首席トランペット奏者)
管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:グレブ・ニキティン
モーツァルト:交響曲第32番 ト長調 K.318
ハイドン:トランペット協奏曲
モーツァルト:交響曲第38番 ニ長調「プラハ」 K.504
休憩なし
最後に予習について、まとめておきます。
1曲目のモーツァルトの交響曲第32番を予習したCDは以下です。
ヨーゼフ・クリップス指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 1973年6月 セッション録音
特に凄い演奏ではありませんが、アムステルダム・コンセルトヘボウの美しい響きを活かした安定した演奏です。
2曲目のハイドンのトランペット協奏曲を予習したCDは以下です。
アリソン・バルサム(トランペット、指揮)、ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメン 2008年 セッション録音
とても満足できる指揮とトランペット。美貌の新星です。
3曲目のモーツァルトの交響曲第38番「プラハ」を予習したCDは以下です。
ヨーゼフ・クリップス指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 1972年11月 セッション録音
これは素晴らしい演奏です。クリップスの面目躍如でコンセルトヘボウも素晴らしい響き。圧巻の演奏です。これ以上の演奏は聴いたことがありません。もし、これを超えるとすれば、クルレンツィスくらいでしょう。
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