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1年ぶりに帰ってきたジョナサン・ノット、再び、東京交響楽団との第九を振る@サントリーホール 2020.12.28

リアルのジョナサン・ノットの指揮を聴くのはちょうど1年ぶり。1年前の同じ日に聴いたのも今日と同じ、ベートーヴェンの交響曲第9番でした。まさか、リアルのジョナサン・ノットを1年も聴けないとは思ってもみませんでした。しかし、次はまたいつ聴けるか、予測もできません。今日のサントリーホールに集まった聴衆も同じ思いだったでしょう。今日も明日もチケットは完売だそうです。張り詰めた雰囲気でノットの登場を待ちます。ノットは昨年と同様ににこやかな表情で現れます。満場の拍手が沸き起こります。待ちに待った時がやってきました。

東響の第9は先週聴いたばかりですが、今日はジョナサン・ノットが振るという特別な演奏です。そして、それは素晴らしい演奏になりました。冒頭は少し、出が合いませんでしたが、それほどオーケストラのメンバーの緊張感も高かったのでしょう。徐々にノットの丁寧な指揮でアンサンブルが美しさを増していきます。第2楽章の後半ではアンサンブルの美しさに魅せられていきます。第3楽章の抒情味あふれる演奏に心が清められる思いです。ここまで実に格調の高い音楽が展開されます。ふと、交響曲第6番《田園》のフレーズを連想してしまいます。力強さよりも心の安寧をイメージするような音楽表現です。しかし、これがノットの構想したこの交響曲の展開だったようです。第4楽章に入ると、いきなり、テンションを高めた音楽表現が始まります。強烈なアンチテーゼの音楽を経て、静かに始まる歓喜の歌は頂点に達し、声楽パートに入っていきます。ここからがノットの第9の真骨頂でした。バスバリトンのリアン・リはその張りのある声で一気に別次元の音楽を開始していきます。心なしか、ノットも満足気です。ポジティヴなテーゼの音楽をリアン・リは主導していきます。が、合唱はまだ、抑え気味の感じです。そして、4重唱は独唱者すべてが好調な声を聴かせてくれて、合唱も盛り上がり始め、音楽全体が高揚していきます。次に器楽で行進曲が始まり、テノールの笛田博昭が実に見事な歌唱を聴かせてくれ、男声合唱も盛り立てて、いよいよ、音楽は高い山に上っていきます。続く管弦楽のみによるスケルツォ風のフガートは爽やかに疾走していきます。
ここからはノットは合唱団に向かって指揮し、合唱の山場になります。荘重で壮麗な合唱に身震いする思いです。全世界の人々に勇気と祝福を与えるような天上の音楽に深く感動していきます。男性合唱の雄々しさ、女声合唱の天からきらめきながら降り注ぐ美しい霊気は天上の天使を思わせます。心の奥底から上り詰めた高揚感はただただ、持続するのみです。
そして、ベートーヴェンが創造した最高の二重フーガが合唱団の渾身の歌唱で燃え上がります。「歓喜」を歌う"Freude, schöner Götterfunken" と「抱擁」を歌う "Seid umschlungen, Millionen!"の二重フーガの素晴らしさ! とりわけ、たった10人のソプラノの合唱の魅惑的な響きに心を奪われます。プロの合唱団の威力は圧巻です。どこまでも上り詰める高揚感にしびれるような感覚を味わいます。
そして、その高揚感を引き継いで、最後の4重唱がフーガ風の最高の歌唱を聴かせてくれます。合唱とも絡まり合いながら、最後はソプラノのジャクリン・ワーグナーが美しい響きを残影のように残して、4重唱パートが終わりを告げます。これまで聴いたなかでも今日の独唱者たちの歌唱は最高のものでした。
いったん、静まった音楽は管弦楽と合唱がテンポを上げて、最後の高みに上り詰めていきます。何という感動でしょう。スローダウンした後、圧倒的なフィナーレに突進していきます。管弦楽のみの激しい後奏で音楽は途轍もない高みで圧巻の最後を迎えます。演奏者も聴衆も心を一つにして、音楽の偉大さに感動します。人と人の心を繋ぐ音楽、それがベートーヴェンの交響曲第9番です。

アンコールの後、お馴染みの指揮者コール・・・満場、スタンディングオベーションで感動を分かち合いました。ジョナサン、日本の聴衆のあなたへの愛を感じてくれましたよね。いつまでも日本を拠点に活動を続けることを期待しています。近い将来、また、素晴らしい音楽を聴かせてくれることを願っています。

今日のコンサートをもって、今年のsaraiの音楽は〆にします。今年、48回目のコンサートでした。今年は例年の半分ほどの回数に留まりましたが、最後にジョナサン・ノット&東響が聴けて、満足です。

おっと、今年のシメはまだ、大晦日のジルヴェスターコンサートが残っていました・・・。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:ジョナサン・ノット
  ソプラノ:ジャクリン・ワーグナー
  メゾソプラノ:中島郁子
  テノール:笛田博昭
  バスバリトン:リアン・リ
  合唱:新国立劇場合唱団(合唱指揮:河原哲也)
  管弦楽:東京交響楽団

  ベートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 Op.125

  《アンコール》 蛍の光 AULD LANG SYNE(スコットランド民謡)


最後に予習について、まとめておきます。と言っても、先週と同じです。

ベートーヴェンの交響曲 第9番を予習したCDは以下です。

  ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮フィルハーモニア管弦楽団、ルツェルン音楽祭合唱団
   エリーザベト・シュヴァルツコプフ、エルザ・カヴェルティ、エルンスト・ヘフリガー、オットー・エーデルマン
    1954年8月22日 ルツェルン音楽祭 ライヴ録音

auditeから出たハイレゾ録音で聴きました。フルトヴェングラーが指揮した最後の第9です。第3楽章のしみじみとした表現に心打たれます。バイロイトの第9と並ぶ最高の名演です。



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金婚式、おめでとうございます!!!
大学入学直後からの長いお付き合い、素晴らしい伴侶に巡り逢われて、幸せな人生ですね!
京都には年に2回もお越しでも、青春を過ごし

10/07 08:57 堀内えり

 ≪…長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さ…≫を、長調と短調の振り子時計の割り振り」による十進法と音楽の1オクターブの12等分の割り付けに

08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
その後、ザル

07/08 18:59 sarai

CDでしか聴いてはいません。
公演では小沢、ショルティだけ

ベーム、ケルテス、ショルティ、クーベリック、
クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
、チェリブ

07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

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