もちろん、メインの曲の演奏も素晴らしかったんです。前半のバルトークの緊張感の高い演奏も聴きものでした。第1楽章の夜を思わせる冷徹な表現、第2楽章の爆発的なエネルギー。素晴らしいバルトークでした。しかし、プログラム的にどうも落ち着きが悪かったのも事実です。せっかくだから、むしろ、シューマンの第3番のソナタを弾いてくれたほうがよかったかなと思っていたら、それはアンコールでプレゼントされました。
後半のメインのブラームスのクラリネット・ソナタ第1番のヴァイオリン版は昨日の第2番以上の素晴らしい演奏。第1楽章と第2楽章の爽やかなロマンはクラリネットで演奏する渋い世界とは別物のようで、ファウストのヴァイオリンの柔らかい響きが心を打ちます。そして、第4楽章の圧倒的なフィナーレ。ファウストのブラームスもいいですね。ヴァイオリン・ソナタも聴きたかったところです。リサイタルの3日目があれば、ブラームスのヴァイオリン・ソナタが聴けたでしょう。少々、残念です。
そして、最後のアンコールはシューマンで〆です。ヴァイオリン・ソナタ第3番の間奏曲というよりも『F.A.E.ソナタ』の間奏曲です。またまた、シューマンの世界にうっとり。ファウストの弾くシューマンの素晴らしさを堪能しました。
今でもシューマンのヴァイオリン・ソナタ 第2番の第3楽章のコラールの旋律が脳裏から離れず、ずっと、2日間、鳴り続けています。
今日のプログラムは以下のとおりでした。
ヴァイオリン:イザベル・ファウスト
ピアノ:アレクサンドル・メルニコフ
シューマン:幻想小曲集 Op.73
バルトーク:ヴァイオリン・ソナタ 第2番 Sz76
《休憩》
シューマン:3つのロマンス Op.94
ブラームス:クラリネット・ソナタ 第1番 ヘ短調 Op.120-1(ヴァイオリン版)
《アンコール》
シューマン:ヴァイオリン・ソナタ 第3番 イ短調 WoO 27より 第3楽章 間奏曲(F.A.E.ソナタ第2楽章より転用)
最後に予習について、まとめておきます。
1曲目のシューマンの幻想小曲集はヴァイオリン版のよいものがなくて、チェロ版の以下のCDで予習しました。
ミッシャ・マイスキー、マルタ・アルゲリッチ 1999年12月 ブリュッセル セッション録音
マイスキーらしいロマンティックな演奏です。
2曲目のバルトークのヴァイオリン・ソナタ 第2番を予習したCDは以下です。
パトリツィア・コパチンスカヤ、ポリーナ・レシチェンコ 2017年6月 グルノーブル、MC2 セッション録音
コパチンスカヤが弾くとこうなるのねっていう、自在で凄い演奏です。
3曲目のシューマンの3つのロマンスを予習したCDは以下です。
イザベル・ファウスト、アレクサンドル・メルニコフ 2014年9月 セッション録音
今日のリサイタルで演奏するファウストとメルニコフのコンビでの演奏です。
4曲目のブラームスのクラリネット・ソナタ 第1番はヴァイオリン版のよいものがなくて、ヴィオラ版を中心に以下のCDで予習しました。
ウイリアム・プリムローズ(ヴィオラ)、ルドルフ・フィルクスニー 1958年 セッション録音
ヨゼフ・スーク(ヴィオラ)、ヤン・パネンカ 1990年 セッション録音
イェルク・ヴィトマン(クラリネット)、アンドラーシュ・シフ 2018年5月14-16日 ドイツ、ノイマルクト、Historischer Reitstadel セッション録音
プリムローズは古い録音ですが、おおらかな演奏で楽しませてくれます。スークはとても美しい、清々しい演奏。ヴィトマンとシフはこれぞ真打ちという深い演奏です。
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