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コロナ禍の聖金曜日に心に沁みるマタイ受難曲のコラール:バッハ・コレギウム・ジャパン@サントリーホール 2021.4.2

今日は長い一日になりました。1時過ぎに新国立劇場に行って、オペラのゲネプロを聴き、そのまま、サントリーホールに移動して、6時ごろに到着。バッハ・コレギウム・ジャパンの恒例の聖金曜日のマタイ受難曲を聴いて、サントリーホールを出たのは10時ごろ。全部で9時間くらいを費やして、正味6時間ほど、音楽に浸りました。

新国立劇場のオペラのゲネプロはストラヴィンスキーの《夜鳴きうぐいす》とチャイコフスキーの《イオランタ》の2本立て。特に《イオランタ》が素晴らしくて、感動で涙が出ました。その感想は明日書くことにして、今日はバッハ・コレギウム・ジャパンのマタイ受難曲について、感想を綴ってみます。やはり、聖金曜日の音楽はその日にその感動を書きたいですからね。昨年はコロナ禍のために聖金曜日に聴くことがかなわず、延期になって、真夏のマタイになってしまいました。聖金曜日にマタイを聴くのは2年ぶりです。来年も再来年もずっと聖金曜日にBCJ(バッハ・コレギウム・ジャパン)のマタイを聴ければ、この上ない幸せです。

今日だけはsaraiは己のおかしてきた罪や恥ずべき行いを省みながら、バッハの神聖な作品に向き合います。宗教の枠を超えて、自分にそう思わせるような破格の音楽です。うなだれながら聴き入るsaraiを優しく慰撫してくれるのは、マタイ受難曲の中核をなすコラールの数々です。中でも5回登場する受難コラールは西洋音楽の最高峰であるマタイ受難曲の中で、音楽を超える力を持つ特別のものです。BCJは合唱と器楽のありったけの力でこの受難コラールを歌い上げてくれます。それも5回とも表現を変えながら、最高のものをもたらしてくれます。特に4回目に登場する第54曲(第63曲)のコラール「おお、血と涙にまみれし御頭」の極限に至るような美しさは格別でした。繰り返しでぐっと抑えた表現の優しさはまるでコロナ禍で苦しむ全人類を慰撫するかのようです。最後の5回目の登場はイエスが十字架で亡くなった直後に歌われます。
第62曲(第72曲)の コラール「いつの日かわれ去り逝くとき」です。このフリギア旋法で歌われるコラールは弔いの歌にしか聴こえません。死すべき運命にあるすべての人々に優しく救いをもたらすようにしみじみと歌われます。頭を垂れて、じっと聴き入りました。BCJの最高の音楽です。これを聴ければ、また、来年まで、心穏やかに生きていけるような気がします。

コロナ禍で日本人だけでの演奏になりましたが、BCJの実力はますます底上げされて、海外演奏家が参加できないギャップをはねのけてくれます。もともと器楽奏者たちは名人揃いですから、素晴らしい演奏です。今年は配置も普通の間隔に密集したせいか、昨年よりも無理のない演奏です。合唱隊も同様です。合唱もアリアもすべて素晴らしかったのですが、今年のベストの演奏は第49曲(第58曲)のソプラノのアリアです。菅きよみのフラウト・トラヴェルソのソロが主導して、アウス・リーベAus Liebe、ヴィル・マイン・ハイラント・シュテルベンWill Mein Heiland Sterben(愛故にわが救い主は死にたまわんとす)とソプラノの森麻季が歌い上げます。あえて、ソプラノの森麻季がステージの奥でひっそりと歌っていたのが印象的です。終盤に「アウス・リーベ」(愛故に)が幾度も繰り返されるところの清澄さには胸を撃たれました。菅きよみのフラウト・トラヴェルソの朴訥とした響きも見事です。

今年から、マタイの指揮は鈴木雅明から息子の鈴木優人にバトンタッチ。父親とはまた違う表現で最高の演奏を聴かせてくれました。あっ、やはり、エヴァンゲリストの櫻田 亮の美声と卓抜な表現力には触れておかないといけませんね。BCJの最新のCDでは彼がエヴァンゲリストを歌っていませんが、是非とも、櫻田 亮がエヴァンゲリストを歌うBCJ3回目のCDの録音を願わざるを得ません。

来年のBCJのマタイ受難曲の演奏が今から楽しみです。


今日のプログラムは以下です。


  指揮:鈴木優人
  エヴァンゲリスト:櫻田 亮
  イエス:加耒 徹
  ソプラノ:森 麻季、松井亜希
  アルト:久保法之、青木洋也
  テノール:櫻田 亮、谷口洋介
  バス:加耒徹、加藤宏隆
  フラウト・トラヴェルソ/リコーダー:菅きよみ
  オーボエ:三宮正満
  ヴァイオリン(コンサートマスター):若松夏美、高田あずみ
  チェロ:山本徹
  ヴィオラ・ダ・ガンバ:福沢宏
  合唱・管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン


J. S. バッハ

マタイ受難曲 BWV 244

第1部

 《休憩》

第2部


最後に予習について、まとめておきます。

以下のCDを聴きました。

 鈴木雅明指揮バッハ・コレギウム・ジャパン 2019年4月 彩の国さいたま芸術劇場 セッション録音
  ベンヤミン・ブルンス(エヴァンゲリスト)
  クリスティアン・イムラー(バスI/イエス)
  キャロリン・サンプソン(ソプラノI)
  松井亜希(ソプラノII)
  ダミアン・ギヨン(アルトI)
  クリント・ファン・デア・リンデ(アルトII)
  櫻田 亮(テノールI)
  ザッカリー・ワイルダー(テノールII)
  加耒 徹(バスII/ユダ/ピラト/大祭司カヤパ/祭司長I)
  鈴木優人(オルガン)

旧盤も素晴らしい演奏でしたが、新盤は録音もよく、よりロマンティックな演奏になっています。予習の時間が取れず、慌てて、前日の18時から聴きだして、21時までかかり、それまで夕食を待ってくれた配偶者に感謝です。



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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
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金婚式、おめでとうございます!!!
大学入学直後からの長いお付き合い、素晴らしい伴侶に巡り逢われて、幸せな人生ですね!
京都には年に2回もお越しでも、青春を過ごし

10/07 08:57 堀内えり

 ≪…長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さ…≫を、長調と短調の振り子時計の割り振り」による十進法と音楽の1オクターブの12等分の割り付けに

08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
その後、ザル

07/08 18:59 sarai

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クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
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07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

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