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オペラ《夜鳴きうぐいす》、《イオランタ》のゲネプロ鑑賞記@新国立劇場 2021.4.2

友人のご厚意で新国立劇場の新制作のロシア・オペラのダブルビル、ストラヴィンスキー《夜鳴きうぐいす》、チャイコフスキー《イオランタ》のゲネプロを鑑賞することができました。
無事、初日の本番が終わったようなので、ゲネプロの様子に関する記事をアップします。

ゲネプロとは言え、新国立劇場のオペラを鑑賞するのは、ヤナーチェック《イェヌーファ》を聴いて以来、5年ぶりです。実はその《イェヌーファ》も素晴らしい公演だったのですが、何となく、新国立劇場に足を運ぶ機会がないままになっていました。今回のゲネプロを鑑賞して、気持ちに変化がありました。こういう素晴らしい公演ならば、もっと足を運んでもいいかなという思いです。

今回の二つのオペラとも初聴き。実演だけでなく、CD、DVDの類も聴いたことがありません。しかも予習なしですから、まったくの初聴きです。これは滅多にない経験です。どう鑑賞するんことになるんでしょう。

まずは1番目のオペラ、ストラヴィンスキーの《夜鳴きうぐいす》。1時間にも満たない、ごく短いオペラです。まあ、ストーリーはたわいのないもので、皇帝が夜鳴きうぐいすに癒されるというものです。音楽はストラヴィンスキーらしい、すっきりした美しさに満ちています。聴きどころは、夜鳴きうぐいす役を歌ったソプラノの三宅理恵の美しい歌声に尽きます。実に潤いのある清純な歌声は皇帝ならずとも、sarai自身が癒されました。あんまり、コロラトゥーラのうぐいすの声には聴こえませんが、そんなことはどうでもよく、ただただ、三宅理恵の声に気持ちがよくなりました。いつまでも聴いていたいという感じです。オペラのストーリーでは、毎夜、夜通し、皇帝のために歌うというところで幕が終わりますが、まさに毎夜、saraiのために歌ってほしいと思わせる実感に駆られました。三宅理恵は以前、神奈川フィルのカルミナ・ブラーナ(ドン・ジョヴァンニのツェルリーナのアリアも歌いました)で清楚でありながら、力のこもった歌唱を聴かせてくれたことが印象的です。今回も同様な印象で、素晴らしいソプラノであることを再確認しました。

長い休憩の後、次はチャイコフスキーの《イオランタ》。これは1時間半ほどのオペラです。絶世の美女の王女イオランタは生来の盲目ですが、父親の王の強い命によって、周囲から王女は自身が盲目であることを隠されて、目は涙を流すもので、光を感じるものだということを知らずに育てられています。王女の住む森の中の城に迷い込んだ騎士、ヴォデモン伯爵は一目で王女に恋心を抱き、彼女に見ることの素晴らしさを説きます。自身が盲目であることを知った王女は恐れつつも目の治療を受けて、視力を得ることができます。世界は美しさに満ちていることを知った王女の感動はオペラを見ている我々にも強く伝わってきます。このオペラもイオランタ役のソプラノ、大隅智佳子の純粋無垢な歌声に魅了されます。オペラ冒頭のチャイコフスキーらしい美しいメロディーに乗って歌うイオランタ、フィナーレで初めて光を感じたイオランタが歌い上げるピュアーな感動。単純ではあるけれども、このオペラはチャイコフスキーの《エウゲニ・オネーギン》や《スペードの女王》にもひけをとりません。《エウゲニ・オネーギン》や《スペードの女王》が交響曲だとすれば、《イオランタ》はセレナーデです。ゲネプロでは、ヴォデモン伯爵役のテノール、内山信吾は体調不良で、演技のみで別のテノールが舞台袖で歌っていました。本番では、内山信吾が自身の声で歌うでしょうから、さらなる感動があるでしょうね。また、父親のルネ王役の妻屋秀和とムーア人の医者エブン=ハキア役のヴィタリ・ユシュマノフは内省的な歌唱をしみじみと深い感懐で歌ってくれて、聴き応えがありました。ただ、saraiには、やはり、ソプラノの大隅智佳子のピュアーな歌声が魅力でした。プロダクション全体もよく練れていました。新国立劇場はこういう隠れた名作オペラの公演が素晴らしいのかな。新国立劇場はほとんど見ていないので、偉そうなことは言えませんが・・・。

ところでカーテンコールで海外にいるスタッフ陣を舞台に引っ張り出した大型画面でリモート出演させようとしましたが、これがもたついて、途中で観客の拍手が止まります。これが一番のゲネプロでのリハーサルの練習になったかもしれませんね。本番ではスムーズにいったのでしょうか。ちょっと心配。

ゲネプロとは言え、久しぶりのオペラでした。1年以上もオペラの世界から遠ざかっていました。コロナ禍の為せるところです。やはり、オペラは素晴らしい!!ことを実感できました。ブラボーコールができないのがいかにも残念ではあります。代わりにこのブログ記事で・・・
 ブラービー!!!


今日のキャストは以下です。

【指 揮】高関 健
  【演出・美術・衣裳】ヤニス・コッコス
  【アーティスティック・コラボレーター】アンヌ・ブランカール
  【照 明】ヴィニチオ・ケリ
  【映 像】エリック・デュラント
  【振 付】ナタリー・ヴァン・パリス


『夜鳴きうぐいす』
  【夜鳴きうぐいす】三宅理恵
  【料理人】針生美智子
  【漁師】伊藤達人
  【中国の皇帝】吉川健一
  【侍従】ヴィタリ・ユシュマノフ
  【僧侶】志村文彦
  【死神】山下牧子
  【三人の日本の使者たち】高橋正尚/濱松孝行/青地英幸


  『イオランタ』
  【ルネ】妻屋秀和
  【ロベルト】井上大聞
  【ヴォデモン伯爵】内山信吾(演技のみ)
  【エブン=ハキア】ヴィタリ・ユシュマノフ
  【アルメリック】村上公太
  【ベルトラン】大塚博章
  【イオランタ】大隅智佳子
  【マルタ】山下牧子
  【ブリギッタ】日比野幸
  【ラウラ】富岡明子

今日のゲネプロに向けての予習はなし。



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シューベルト名曲尽くし 関西弦楽四重奏団with上村 昇@鶴見サルビアホール 2021.4.5

100席限定の鶴見サルビアホール(音楽ホール)での今日の公演は実力ある関西弦楽四重奏団によるシューベルト尽くしですから嬉しいですね。

最初のシューベルトの弦楽四重奏曲 第12番「四重奏断章」は冒頭から素晴らしい響き。これぞシューベルトです。勢いに優る演奏に続き、歌謡性に満ちたロマンティックな表現も見事です。短い単一楽章の未完の作品ですが、シューベルト好きにはたまらない演奏でした。

2曲目のチェロと弦楽四重奏のための「アルペジオーネ・ソナタ」はチェロの上村 昇の一人舞台のような演奏。本来ならば、編曲者のミハイル・カニュカ自身が来日して演奏する筈でしたが、コロナ禍で来日できず、思う存分、弾く筈だったカニュカ自身もさぞや残念だったでしょう。珍しいものを聴かせてもらいましたが、これはわざわざ、ピアノを弦楽四重奏に変えるほどの意味は感じませんでした。強いて言えば、第2楽章はセレナード的になり、聴き応えがあったようにも思います。

休憩後の後半はシューベルトの晩年の傑作、弦楽五重奏曲 D.956です。長大な第1楽章を緊張感を持って、パーフェクトとも思える演奏で弾き切って、saraiもその演奏に引き込まれます。シューベルトの音楽の爽やかさや旋律の美しさを十分に楽しませてくれます。第2楽章は音楽表現が難しいと思いますが、これまた素晴らしい演奏で、深くて、ロマンティックな演奏です。中間部の熱い演奏にはこちらも高揚します。第3楽章のスケルツォは怒涛のように白熱した演奏を聴かせてくれます。そして、第4楽章。郷愁を帯びたアレグレットが始まります。歌謡調の第2主題が魅力的に美しく演奏されます。そして、勢いよくフィナーレが奏でられて、この長大な作品がしめくくられます。素晴らしいシューベルトでした。以前、ここで聴いたロータス・カルテットに迫るような演奏でした。


今日のプログラムは以下です。

  弦楽四重奏:関西弦楽四重奏団
   林七奈 vn 田村安祐美 vn 小峰航一 va 上森祥平vc
  チェロ:上村 昇

   シューベルト:弦楽四重奏曲 第12番 ハ短調 D.703「四重奏断章」
   シューベルト(M.カニュカ編):チェロと弦楽四重奏のための「アルペジオーネ・ソナタ」イ短調 D.821

   《休憩》

  シューベルト:弦楽五重奏曲 ハ長調 D.956

   《アンコール》
    なし

最後に予習について触れておきます。

1曲目のシューベルトの弦楽四重奏曲 第12番「四重奏断章」は以下のLPレコードを聴きました。

 アマデウス弦楽四重奏団 1959年 ハノーファー ドイツ、ハノーファー セッション録音

アマデウス弦楽四重奏団のLPレコードのほぼすべてのコレクションを収集し終えて、順次、聴いているところです。アマデウス四重奏団のシューベルトは素晴らしいです。


2曲目のシューベルのチェロと弦楽四重奏のための「アルペジオーネ・ソナタ」は以下のCDを聴きました。

 ロータス・カルテット&ミハル・カニュカ 2014年4月1-2日 ドイツ、ザントハウゼン=ハイデルベルク、クララ・ヴィーク・アウディトリウム セッション録音

多分、唯一の録音です。編曲者のカニュカ自身が参加しています。ロータス・カルテットというよりもほぼカニュカの一人舞台の演奏です。ロータス・カルテットとしては一緒に録音されているシューベルトの弦楽四重奏曲 第15番が聴きものです。


3曲目のシューベルトの弦楽五重奏曲は以下のCDを聴きました。

 リンゼイ弦楽四重奏団&ダグラス・カミングス 1985年1月 セッション録音

リンゼイ弦楽四重奏団らしく、実に抒情味あふれる演奏です。それにゆったりとした演奏です。



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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
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 ≪…長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さ…≫を、長調と短調の振り子時計の割り振り」による十進法と音楽の1オクターブの12等分の割り付けに

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07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

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