無事、初日の本番が終わったようなので、ゲネプロの様子に関する記事をアップします。
ゲネプロとは言え、新国立劇場のオペラを鑑賞するのは、ヤナーチェック《イェヌーファ》を聴いて以来、5年ぶりです。実はその《イェヌーファ》も素晴らしい公演だったのですが、何となく、新国立劇場に足を運ぶ機会がないままになっていました。今回のゲネプロを鑑賞して、気持ちに変化がありました。こういう素晴らしい公演ならば、もっと足を運んでもいいかなという思いです。
今回の二つのオペラとも初聴き。実演だけでなく、CD、DVDの類も聴いたことがありません。しかも予習なしですから、まったくの初聴きです。これは滅多にない経験です。どう鑑賞するんことになるんでしょう。
まずは1番目のオペラ、ストラヴィンスキーの《夜鳴きうぐいす》。1時間にも満たない、ごく短いオペラです。まあ、ストーリーはたわいのないもので、皇帝が夜鳴きうぐいすに癒されるというものです。音楽はストラヴィンスキーらしい、すっきりした美しさに満ちています。聴きどころは、夜鳴きうぐいす役を歌ったソプラノの三宅理恵の美しい歌声に尽きます。実に潤いのある清純な歌声は皇帝ならずとも、sarai自身が癒されました。あんまり、コロラトゥーラのうぐいすの声には聴こえませんが、そんなことはどうでもよく、ただただ、三宅理恵の声に気持ちがよくなりました。いつまでも聴いていたいという感じです。オペラのストーリーでは、毎夜、夜通し、皇帝のために歌うというところで幕が終わりますが、まさに毎夜、saraiのために歌ってほしいと思わせる実感に駆られました。三宅理恵は以前、神奈川フィルのカルミナ・ブラーナ(ドン・ジョヴァンニのツェルリーナのアリアも歌いました)で清楚でありながら、力のこもった歌唱を聴かせてくれたことが印象的です。今回も同様な印象で、素晴らしいソプラノであることを再確認しました。
長い休憩の後、次はチャイコフスキーの《イオランタ》。これは1時間半ほどのオペラです。絶世の美女の王女イオランタは生来の盲目ですが、父親の王の強い命によって、周囲から王女は自身が盲目であることを隠されて、目は涙を流すもので、光を感じるものだということを知らずに育てられています。王女の住む森の中の城に迷い込んだ騎士、ヴォデモン伯爵は一目で王女に恋心を抱き、彼女に見ることの素晴らしさを説きます。自身が盲目であることを知った王女は恐れつつも目の治療を受けて、視力を得ることができます。世界は美しさに満ちていることを知った王女の感動はオペラを見ている我々にも強く伝わってきます。このオペラもイオランタ役のソプラノ、大隅智佳子の純粋無垢な歌声に魅了されます。オペラ冒頭のチャイコフスキーらしい美しいメロディーに乗って歌うイオランタ、フィナーレで初めて光を感じたイオランタが歌い上げるピュアーな感動。単純ではあるけれども、このオペラはチャイコフスキーの《エウゲニ・オネーギン》や《スペードの女王》にもひけをとりません。《エウゲニ・オネーギン》や《スペードの女王》が交響曲だとすれば、《イオランタ》はセレナーデです。ゲネプロでは、ヴォデモン伯爵役のテノール、内山信吾は体調不良で、演技のみで別のテノールが舞台袖で歌っていました。本番では、内山信吾が自身の声で歌うでしょうから、さらなる感動があるでしょうね。また、父親のルネ王役の妻屋秀和とムーア人の医者エブン=ハキア役のヴィタリ・ユシュマノフは内省的な歌唱をしみじみと深い感懐で歌ってくれて、聴き応えがありました。ただ、saraiには、やはり、ソプラノの大隅智佳子のピュアーな歌声が魅力でした。プロダクション全体もよく練れていました。新国立劇場はこういう隠れた名作オペラの公演が素晴らしいのかな。新国立劇場はほとんど見ていないので、偉そうなことは言えませんが・・・。
ところでカーテンコールで海外にいるスタッフ陣を舞台に引っ張り出した大型画面でリモート出演させようとしましたが、これがもたついて、途中で観客の拍手が止まります。これが一番のゲネプロでのリハーサルの練習になったかもしれませんね。本番ではスムーズにいったのでしょうか。ちょっと心配。
ゲネプロとは言え、久しぶりのオペラでした。1年以上もオペラの世界から遠ざかっていました。コロナ禍の為せるところです。やはり、オペラは素晴らしい!!ことを実感できました。ブラボーコールができないのがいかにも残念ではあります。代わりにこのブログ記事で・・・
ブラービー!!!
今日のキャストは以下です。
【指 揮】高関 健
【演出・美術・衣裳】ヤニス・コッコス
【アーティスティック・コラボレーター】アンヌ・ブランカール
【照 明】ヴィニチオ・ケリ
【映 像】エリック・デュラント
【振 付】ナタリー・ヴァン・パリス
『夜鳴きうぐいす』
【夜鳴きうぐいす】三宅理恵
【料理人】針生美智子
【漁師】伊藤達人
【中国の皇帝】吉川健一
【侍従】ヴィタリ・ユシュマノフ
【僧侶】志村文彦
【死神】山下牧子
【三人の日本の使者たち】高橋正尚/濱松孝行/青地英幸
『イオランタ』
【ルネ】妻屋秀和
【ロベルト】井上大聞
【ヴォデモン伯爵】内山信吾(演技のみ)
【エブン=ハキア】ヴィタリ・ユシュマノフ
【アルメリック】村上公太
【ベルトラン】大塚博章
【イオランタ】大隅智佳子
【マルタ】山下牧子
【ブリギッタ】日比野幸
【ラウラ】富岡明子
今日のゲネプロに向けての予習はなし。
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