
今日演奏された2曲は1回目を上回る会心の演奏でした。80歳を超えた小林研一郎のチャイコフスキーは深い哀調に満ち、そして、熱く燃え上がる覇気に満ちたものでもあり、オーケストラを極限まで自在にドライブした素晴らしい演奏を聴かせてくれました。これほどまでに惹きこまれるチャイコフスキーを聴いたことはないと思うほどの最高の演奏でした。
まず、最初の交響曲第2番「小ロシア」ですが、題名通り、ロシアの民謡調のメロディーラインが明快に描き出され、メリハリのきいた演奏で全楽章、心地よく聴けました。とりわけ、第4楽章の盛り上がりは見事の一語です。
次の交響曲第5番は何とも凄い演奏でした。第1楽章の冒頭は仄暗い音調でロシアの凍てついた大地を思わせるように始まり、次第に嵐が吹き荒れるように高潮しつつ、暗い情念も見事に織り込まれます。このあたりも凄かったのですが、まだまだ、小手調べの段階でした。第2楽章はオーケストラの各パートをバランスよく響かせて、うっとりとするほどの美しさの極致です。もう、茫然として聴き入るのみです。小林研一郎、入神の指揮です。最高のチャイコフスキーの音楽を見事に描き出してくれました。その素晴らしい演奏は第3楽章にはいっても続きます。そして、間を置かずに第4楽章に入ります。ここに至って、小林研一郎の指揮は自在さを発揮して、ダイナミクスもテンポの揺れも思うがままです。日本フィルはぴったりと小林研一郎の棒に反応し、素晴らしい演奏を聴かせてくれます。終盤のゲネラルパウゼもピタっと決まり、フィナーレに突入していきます。圧巻のコーダに深く感動しました。
小林研一郎の80歳のチャイコフスキー交響曲チクルスは期待以上の素晴らしさ。彼の音楽の総決算のようです。続く悲愴はさらなる高みに駆け上がる予感がします。
今日のプログラムは以下です。
小林研一郎80歳(傘寿)記念&チャイコフスキー生誕180周年記念チャイコフスキー交響曲全曲チクルス
指揮:小林研一郎
管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団 コンサートマスター:木野 雅之
チャイコフスキー:交響曲第2番 ハ短調 Op.17 「小ロシア」
《休憩》
チャイコフスキー:交響曲第5番 ホ短調 Op.64
《アンコール》
チャイコフスキー:交響曲第5番 から 第4楽章の終盤~コーダ
最後に予習について、まとめておきます。
1曲目のチャイコフスキーの交響曲第2番「小ロシア」は以下のCDを聴きました。
エフゲニ・スヴェトラーノフ指揮ソヴィエト国立交響楽団 1990年 サントリーホール ライヴ録音
スヴェトラーノフのいわゆる東京ライブです。録音もよく、演奏も最高です。やはり、こういうロシアものはロシア人たちの演奏に限ります。といいながら、小林研一郎の80歳東京ライヴも凄まじい演奏が続いていますけどね。
2曲目のチャイコフスキーの交響曲第5番は以下のCDを聴きました。
エフゲニ・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィル 1960年11月9~10日 ウィーン、楽友協会大ホール セッション録音
これは定番中の定番。LPレコードの頃から、これまでに何度となく聴いてきた愛聴盤でもあります。
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