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クァルテット・エクセルシオのショスタコーヴィチ・シリーズは上々の滑り出し@鶴見サルビアホール 2021.4.22

このところ、弦楽四重奏の殿堂である鶴見サルビアホール(音楽ホール)はコロナ禍の影響で日本人のカルテットの登場が多くなっています。今日は日本を代表するカルテットの一つ、クァルテット・エクセルシオの登場です。saraiはこれまで機会がなく、これが初聴きです。どんな演奏を聴かせてくれるんでしょう。

今日はショスタコーヴィチ・シリーズの開始で第1番から第3番が演奏されます。彼らは初めてショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲全曲に取り組むのだそうです。多分、これから3曲ずつ、5回のコンサートで第15番まで聴かせてくれるんでしょう。saraiはこれまで、アトリウム・カルテット、パシフィカ・カルテットで全曲チクルスを聴きましたが、いずれも素晴らしい演奏でした。ショスタコーヴィチの音楽はこの弦楽四重奏曲に限らず、交響曲でも多様な音楽表現が聴けます。ショスタコーヴィチの音楽の意味は様々な解釈がなされてきて、そのそれぞれが聴き手には面白く聴けます。どれが正解というのはないような気がします。クァルテット・エクセルシオのショスタコーヴィチ・シリーズも彼らの視点に基づく演奏になるのでしょう。しっかりと聴かせてもらいましょう。

今日の演奏ですが、緻密に練り上げられて、各声部のバランスがよくて、美しい表現でした。やはり、ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲は音楽的な解釈はともかくとして、このように美しい響きで聴きたいものです。そういう意味では素晴らしい演奏でした。どの曲の演奏もよかったのですが、第1番を聴いているときはこれは素晴らしいと思い、次の第2番は凄い大曲としてのさらなる素晴らしさ。しかし、やはり、今日の最高の演奏は第3番でした。とりわけ、第2楽章は精密極まりない演奏で固唾を飲みながら、聴き入りました。

簡単に各曲の演奏に触れておきましょう。
まず、第1番です。冒頭、第1楽章は音程の狂ったメロディーが響くような雰囲気を見事に表現しています。まるでハイドンのパロディーのようです。一転して、第2楽章は苦しくて遅々とした行進が描き出されていて、ベートーヴェンの後期の弦楽四重奏曲へのオマージュのように思えます。素晴らしい音楽表現です。いかにも習作めいた清新な感じがよく表出された演奏でした。

第2番はこってりとした大曲で大変、聴き応えがありました。序曲と題された第1楽章は対位法の醸し出す緊張感にあふれた演奏。第2楽章は第1ヴァイオリンがレシタティーボを模した一人舞台のような演奏を繰り広げます。saraiの趣味では、もっと突っ込んだ演奏が欲しかった感じが否めません。第3楽章のワルツは響きがよくて、攻撃的な雰囲気が表出されていて、盛り上がります。第4楽章の主題と変奏はヴィオラの提示する主題が美しく奏でられて、次々と各楽器で変奏されて、最後は主題がフラグメントに切り刻まれていくところまで、素晴らしい展開の演奏が続き、主題が回帰して終わります。何となく、この曲は全体に社会主義リアリズムの雰囲気があって、そこが良いとも悪いとも感じてしまいます。そういう解釈での演奏だったんでしょうか。

最後は第3番です。この作品も色んな表情を見せてくれます。第1楽章は屈託ない明るさに始まり、突如、高潮したり、沈んだりしながら、素晴らしい対位法の展開を聴かせてくれます。各声部が見事にこの2重フーガをバランスよく表現してくれました。第3楽章では攻撃的に激しく燃え上がります。スターリンを密かにパロディったとも言われています。第4楽章は第2次世界大戦の戦没者への葬送の音楽です。素晴らしい音楽表現で精緻な演奏を聴かせてくれました。最後の第5楽章では激しく燃焼した後、静かに曲を閉じます。やはり、第3番は名曲ですが、素晴らしい演奏で深く心に迫ってきました。

ということで、全曲演奏への上々のスタートでした。最後の第15番まで、何年もかかるのでしょうね。素晴らしく精緻な演奏が聴けそうです。


今日のプログラムは以下です。

  弦楽四重奏:クァルテット・エクセルシオ
   西野ゆか vn  北見春菜 vn  吉田有紀子 va  大友 肇 vc

   ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲 第1番 ハ長調 Op.49
   ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲 第2番 イ長調 Op.68

   《休憩》

   ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲 第3番 ヘ長調 Op.73

   《アンコール》
    なし

最後に予習について触れておきます。
今回のショスタコーヴィチ・シリーズに際しては、きちんと全曲を聴いていない以下のCDを聴くことにしました。

 エマーソン・カルテット 1994年、1998年、1999年 アスペン音楽祭 ライヴ録音

切れのいい演奏と素晴らしい響き。エマーソン・カルテットならでは完成度です。とてもライヴ録音とは信じられないレベルの高さです。なお、saraiのお気に入りの演奏はルビオ・カルテットのCDです。



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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
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《あ》さん、saraiです。

結局、最後まで、ご一緒にブッフビンダーのベートーヴェンのソナタ全曲をお付き合い願ったようですね。
こうしてみると、やはり、ベートーヴェン

03/22 04:27 sarai

昨日は祝日でゆっくりオンライン視聴できました。

全盛期から技術的衰えはあると思いましたが、彼のベートーヴェンは何故こう素晴らしいのか…高齢のピアニストとは思えな

03/21 08:03 

《あ》さん、再度のコメント、ありがとうございます。

ブッフビンダーの音色、特に中音域から高音域にかけての音色は会場でもでも一際、印象的です。さすがに爪が当たる音

03/21 00:27 sarai

ブッフビンダーの音色は本当に美しいですね。このライブストリーミングは爪が鍵盤に当たる音まで捉えていて驚きました。会場ではどうでしょうか?

実は初めて聴いたのはブ

03/19 08:00 

《あ》さん、コメントありがとうございます。
ライヴストリーミングをやっていたんですね。気が付きませんでした。

明日から4回目が始まりますが、これから、ますます、

03/18 21:44 sarai

行けなかったのでオンライン視聴しました。

しっとりとした演奏。弱音はやはり美しいと思いました。
オンラインも良かったのですが、ビューワーが操作性悪くて困りました

03/18 12:37 

aokazuyaさん

コメントありがとうございます。デジタルコンサートホールは当面、これきりですが、毎週末、聴かれているんですね。ファゴットのシュテファン・シュヴァイゲ

03/03 23:32 sarai
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