新国立劇場合唱団のソプラノ合唱もとても美しいものでした。第1曲のイントロイトゥス(入祭唱)の後半で甘美なソプラノ合唱が歌われるところでは、文字通り、心が洗われるような思いになりました。第3曲のサンクトゥス(聖なるかな)でも清澄なソプラノ合唱に聴き惚れます。そして、第4曲のピエ・イエス(慈悲深きイエスよ)で中村恵理の清らかな独唱にうっとりと心を委ねます。ここが全曲のちょうど、真ん中で、きっとフォーレも一番心を注いだ部分です。オルガン伴奏に加えて、抑えたオーケストラの演奏も好感を持てます。第5曲のアニュス・デイ(神の子羊)の中間部でもソプラノ合唱の美しさに心を打たれます。第6曲のリベラ・メ(私を解き放って下さい)はバリトンの加耒 徹の清々しい独唱が聴けました。音楽的にも合唱も含めて、訴求力の高いリベラ・メです。素晴らしい演奏に魅了されました。終曲のイン・パラディスム(楽園に)でもソプラノ合唱が素晴らしく、まさに楽園に心を持っていかれる感覚になりました。
中村恵理のソプラノ独唱が素晴らしかったのですが、全体を清らかにまとめあげた小泉和裕の指揮の手腕はさすがと言えます。新国立劇場合唱団の素晴らしい合唱とそれを支えた都響の低弦を中心としたアンサンブルも見事でした。
プログラム前半のオネゲルの交響曲第3番《典礼風》は激しく刻むリズムが炸裂し、小泉和裕の的確なコントロールの下、都響の最高のアンサンブルが聴けました。中心はやはり、都響の誇る弦楽アンサンブルです。いつもの素晴らしい高弦はもとより、低弦も素晴らしい響きを聴かせてくれました。この曲は第2次世界大戦の終結直後に書かれた戦争交響曲と言われますが、その力強い音楽は阿鼻叫喚にも聴こえます。聴きようによってはパシフィック231のような爽快さも感じます。あまり、歴史的背景にこだわらずに推進力のみなぎる音楽を楽しめばよいのかもしれません。ストラヴィンスキーの《春の祭典》にも通じるような人間の根源的な力(野性的な)を感じました。いずれにせよ、見事な指揮、見事なアンサンブルでした。
ところで、今日はこの都響のコンサートに先立って、鶴見サルビアホールでクァルテット・インテグラの演奏で素晴らしいベルクの弦楽四重奏曲も聴きましたが、それは明日、アップします。
今日のプログラムは以下のとおりでした。
指揮:小泉和裕
ソプラノ:中村恵理
バリトン:加耒 徹
合唱:新国立劇場合唱団 合唱指揮:富平恭平
管弦楽:東京都交響楽団 コンサートマスター:矢部達哉
オネゲル:交響曲第3番《典礼風》
《休憩》
フォーレ:レクイエム Op.48
第1曲 イントロイトゥス(入祭唱)とキリエ
第2曲 オッフェルトリウム(奉献唱)
第3曲 サンクトゥス(聖なるかな)
第4曲 ピエ・イエス(慈悲深きイエスよ)
第5曲 アニュス・デイ(神の子羊)
第6曲 リベラ・メ(私を解き放って下さい)
第7曲 イン・パラディスム(楽園に)
最後に予習について、まとめておきます。
オネゲルの交響曲第3番《典礼風》を予習したCDは以下です。
シャルル・デュトワ指揮バイエルン放送交響楽団 1982年、85年 ミュンヘン、ヘラクレス・ザール ライヴ録音
会心の演奏です。交響曲全集なので、ほかの曲も聴いてみたくなります。パシフィック231もよさそうですね。
フォーレのレクイエムを予習したCDは以下です。
ロランス・エキルベイ指揮アクサンチェス合唱団、フランス国立管弦楽団のメンバー
サンドリーヌ・ピオー(S)、ステファン・デグー(Br)、パリ聖歌隊(少年合唱) 2008年1月、聖クロティルド教会 セッション録音
第2稿のネクトゥー&ドゥラージュ版の演奏です。合唱もソプラノ独唱のサンドリーヌ・ピオーも素晴らしいです。昔は第3稿のフルオーケストラ版のクリュイタンス盤を聴いていたものですが、第2稿の小編成オーケストラ版は合唱がピュアーに聴けていいですね。
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