今日も前半は現代音楽から始まります。最初はライマンの《シューベルトのメヌエットによるメタモルフォーゼン》。10人の奏者だけでの演奏です。シューベルトの原曲はピアノ曲ですが、見事にその本質を活かした、まさにメタモルフォーゼンになっています。趣きはファンタジーと言ってもいいのかもしれません。それを読響の達人たちが素晴らしい響きで演奏してくれました。曲も満点、演奏も満点って感じで、大変、満足して聴きました。それにしても凄い作品を掘り起こしてきましたね。CDではジョナサン・ノットの指揮の演奏を聴きました。是非、ノット&東響でも聴きたいところです。
次は現代音楽を代表する作曲家、トーマス・アデスのイン・セブン・デイズ。無調と調性音楽のミックスと思っていたら、何と無調的要素はほぼありません。それでもアデスらしい新しさは感じさせてくれる作品です。読響のアンサンブルも素晴らしいのですが、何と言っても、トルコ出身の新鋭ピアニスト、ジャン・チャクムルの順調な成長が感じられた演奏に感銘を覚えました。以前聴いたときは音楽性は抜群ながら、テクニック的にはミスも多かったと記憶していますが、今日の演奏は盤石のもので、もちろん、持ち前の音楽的な感性は素晴らしいものでした。すっかり、彼のピアノに聴き入ってしまいました。浜松国際ピアノコンクールの審査員の耳は確かだったようです。
プログラム後半はシューベルトのザ・グレイト。第8番か、第9番か、ややこしいですが、第9番と言っておけば、未完成と混同することはありません。この曲は聴けば聴くほど素晴らしい傑作です。この作品なしにロマン派の交響曲は生まれなかったと思うほどです。特にシューマンの交響曲との親密な関係が窺われます。鈴木優人指揮の読響は第1楽章の中途あたりまでは、もう一つの響きに思えましたが、そこから、劇的に響きがよくなります。第2楽章の美しい演奏にはうっとりと聴き入りました。第3楽章、第4楽章はもう圧倒的な響きでこの作品を堪能させてくれました。音楽的には、鈴木優人はまだまだ伸びしろを残している感じです。いつか、圧倒的な名演を聴かせてくれるでしょう。
今日のプログラムは以下です。
指揮:鈴木優人
ピアノ:ジャン・チャクムル
管弦楽:読売日本交響楽団 コンサートマスター:林悠介
ライマン:シューベルトのメヌエットによるメタモルフォーゼン(日本初演)
アデス:イン・セブン・デイズ(日本初演)
《アンコール》ブラームス:4手のためのワルツ集 Op.39より 第1曲、第4曲、第14曲、第15曲(ピアノ・アンコール/指揮者との連弾)
《休憩》
シューベルト:交響曲第8番(第9番) ハ長調 D944 「グレイト」
最後に予習について、まとめておきます。
1曲目のライマンの《シューベルトのメヌエットによるメタモルフォーゼン》は以下のCDを聴きました。
ジョナサン・ノット指揮バンベルク交響楽団 2002年-2006年 セッション録音
ジョナサン・ノット&バンベルク交響楽団のCD第1弾だったシューベルト:未完成を初めとする、交響曲全集とシューベルトにからむ現代音楽の録音からの一枚です。こういう現代音楽をノットはこの頃から得意にしていたのですね。なお、シューベルトの原曲、メヌエット D600はヴォロドスのピアノで一応聴いておきました。トリオ D610とセットにした演奏です。
2曲目のアデスのイン・セブン・デイズは以下のCDを聴きました。
ニコラス・ホッジス、トーマス・アデス指揮ロンドン・シンフォニエッタ 2011年3月11日 バーミンガム・シンフォニー・ホール ライヴ録音
作曲家自身の指揮での演奏です。意外に無調的要素がないのに驚きました。
3曲目のシューベルトの交響曲第8番「グレイト」は以下のCDを聴きました。
ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団 1970年 セッション録音
ジョージ・セル、晩年の再録音です。実に見事な演奏です。ここまで明快な演奏はなかなか聴けません。この曲の真髄を聴いた思いです。
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