今日のコンサートはフェスタサマーミューザKAWASAKI2022のオープニングコンサートです。去年に引き続き、
ジョナサン・ノット が来日して東響を振ります。悪夢のようなコロナ禍はまだ終わっていませんが、音楽コンサートは正常化しています。
ジョナサン・ノット &東響はコアなファンには聴き逃がせません。
開幕のファンファーレに続いて、今年も滅多に聴けない曲の演奏のオンパレードです。
クルタークのシュテファンの墓はギターが弾くメロディをほかの楽器が弾き継ぐという構成。ノットが室内楽的に精密な指揮をします。ノットの現代音楽の演奏は確信に満ちた高水準のもので、実に聴く者も勉強になります。ノットのリゲティは定評がありますが、同じくハンガリーの作曲家のクルタークの演奏も見事です。精密で静謐な演奏に感銘を受けました。
次はシェーンフィールドの4つのパラブルです。ポール・シェーンフィールドは1947年生まれのアメリカ人作曲家で、クラシック、ポピュラー、フォークの音楽様式を組み合わせた作品で知られているようです。ただ、何故、ここでこのほぼ無名の作曲家の作品を取り上げたのか、不思議に思っていましたが、後で調べてみると、ノットとDresdner Sinfonikerは1998年にこの曲のヨーロッパ初演をしていました。ノットにはゆかりの作品だったのですね。今日の演奏ではノットの素晴らしい指揮のもと、東響が見事な演奏。そして、ピアノの中野翔太が思いっ切りのよい凄まじい演奏を聴かせてくれました。ジャズののりが印象的な作品です。
後半はドビュッシーの第1狂詩曲で始まります。パリのコンセルヴァトワールで腕を磨いた東響のクラリネット首席奏者の𠮷野亜希菜のさりげない演奏でドビュッシーの作品が見事に表現されました。もちろん、今年の5月に牧神の午後への前奏曲で繊細で素晴らしい演奏を聴かせてくれたノットはここでもドビュッシーの音楽を丁寧に磨き上げた演奏でうっとりとさせてくれます。ノットのフランス音楽の素晴らしさに感嘆します。
続いて、ストラヴィンスキーの3曲。2曲はストラヴィンスキーがアメリカに渡った後に作曲したもの。タンゴやジャズというストラヴィンスキーには珍しい作品をノットはマニアックに演奏します。こういうストラヴィンスキーもあるのだという啓蒙的とも言える演奏です。逆に3曲目はストラヴィンスキーがロシアにいるときの初期の作品で印象派的な作風です。ストラヴィンスキーの色々な顔を紹介してくれたようです。演奏はノットらしく、東響のアンサンブルを見事にドライブしたもので、その細部に渡る精密さには頭が下がります。
最後はラヴェルのラ・ヴァルス。最後は有名な作品でしめくくってくれます。フランス風のエスプリでのウィンナーワルツが気品高く演奏されます。ノットの指揮姿も美しいです。音楽が高潮して、圧巻のフィナーレ。
ジョナサン・ノット の知的なアプローチがふんだんに聴けたコンサートでした。このところ、
ジョナサン・ノット の頻繁な来日が続いています。今度は10月、11月、12月と続けての来日です。どのコンサートも聴き逃がせませんが、とりわけ、11月のサロメが楽しみです。3年続きのR.シュトラウスの楽劇のコンサート形式上演の第1弾です。来年はエレクトラかなと想像しています。最後はナクソス島のアリアドネで締めかな。
今日のプログラムは以下です。
指揮:
ジョナサン・ノット ギター:鈴木大介
ピアノ:中野翔太
クラリネット:𠮷野亜希菜
クラリネット:谷口英治
管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:グレグ・ニキティン
三澤 慶:「音楽のまちのファンファーレ」~フェスタ サマーミューザ KAWASAKIに寄せて
クルターク:シュテファンの墓
シェーンフィールド:4つのパラブル Four Parables for Piano & Orchestra
第1曲RamblingTilltheButcherCutsUsDown《我々を殺すまで肉屋はぶらつく》
第2曲Senility'sRide《老衰という乗り物》
第3曲Elegy《哀歌》
第4曲DogHeaven《犬の天国》
《休憩》
ドビュッシー:第1狂詩曲
ストラヴィンスキー:タンゴ
ストラヴィンスキー:エボニー協奏曲
ストラヴィンスキー:花火
ラヴェル:ラ・ヴァルス
最後に予習について、まとめておきます。
2曲目のクルタークのシュテファンの墓を予習したCDは以下です。
エリオット・シンプソン(ギター)、ラインハルト・デ・レーウ指揮アスコ/シェーンベルク・アンサンブル 2013年3月−2016年7月、アムステルダム、ハーレム セッション録音
ルーマニア生まれのハンガリーの作曲家、ジェルジ・クルタークの合唱とアンサンブルの為の作品を全て収録した3枚組のアルバムです。指揮のデ・レーウは、約20年の歳月をかけ、1つ1つクルターク夫妻の助言を得ながらクルタークの全作品を丁寧に勉強していったそうで、その成果がここに凝縮されています。貴重な録音です。
3曲目のシェーンフィールドの4つのパラブルを予習したCDは以下です。
ジェフリー・カハーン(p)、ジョン・ネルソン指揮 ニュー・ワールド・シンフォニー 1992年9月 セッション録音
カハーンのピアノが素晴らしいです。国内盤は既に廃盤になっているのが残念です。このCDはこの曲の世界初録音のようです。
4曲目のドビュッシーの第1狂詩曲を予習したCDは以下です。
ギイ・ダンカン(cl)、ジャン・マルティノン指揮フランス国立放送管弦楽団 1973-1974年、パリ、サル・ワグラム セッション録音
マルティノンによるドビュッシー管弦楽曲全集(4CD)の中に含まれる演奏です。フランス的なエスプリに満ちた演奏です。
5曲目のストラヴィンスキーのタンゴを予習したCDは以下です。
アンタル・ドラティ指揮ロンドン交響楽団 1964年7月 セッション録音
安定した演奏。
6曲目のストラヴィンスキーのエボニー協奏曲を予習したCDは以下です。
ベニー・グッドマン(cl), ストラヴィンスキー指揮コロンビア・ジャズ・コンボ 1965年4月27日、ハリウッド セッション録音
希代のクラリネット奏者ベニー・グッドマンが作曲家自身の指揮するハリウッドの腕利きのジャズ・プレーヤーたちと演奏した夢のような録音。実に素晴らしい演奏です。
7曲目のストラヴィンスキーの花火を予習したCDは以下です。
アンタル・ドラティ指揮ロンドン交響楽団 1964年6月 セッション録音
これも安定した美しい演奏。
8曲目のラヴェルのラ・ヴァルスを予習したCDは以下です。
シャルル・ミュンシュ指揮ボストン交響楽団 1955年12月5日、ボストン、シンフォニー・ホール セッション録音
1955年の録音ですが、れっきとしたステレオ録音。既に1952年に録音していたにも関わらず、再録音したのはモノラル録音をステレオ録音にすることでした。音質も素晴らしく、ミュンシュのラヴェルが聴ける喜びに浸ります。
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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽