まずは、ラヴェルの海原の小舟です。うーん、素晴らしい音楽表現です。春の海が朝日に輝いています。時折、波が高くなります。ノットの指揮の下、東響のアンサンブルも見事です。聴き応え十分でした。
次はソプラノのユリア・クライターが登場。彼女を日本で聴くのは初めてです。ヨーロッパでは、モーツァルトのオペラで2度聴きましたが、まさにモーツァルト歌いという美しい歌唱を聴かせてもらいました。フランダース・オペラでのフィガロの伯爵夫人とザルツブルグ音楽祭でのコジ・ファン・トゥッテのフィオルディリージでの凛とした歌唱でした。
で、今日の歌唱ですが、モーツァルト歌いだと確信していたユリア・クライターがベルクの歌曲をどう歌うのかというのが想像できませんでした。それがとっても素晴らしかったんです。濃密なロマンに満ちた憂いを含む歌唱にすっかり魅了されました。ベルクの若い頃の歌曲なので、無調めいた雰囲気よりも後期ロマン派、まるでR.シュトラウスの歌曲を聴いているような感じです。7曲とも何と言う魅惑に満ちた歌唱なんでしょう。ノットのサポートももちろん、万全です。久々に素晴らしい歌曲を聴きました。ユリア・クライターの歌うR.シュトラウスの4つの最後の歌を聴いてみたい!
後半は満を持して、ノットがマーラーの交響曲第5番を演奏します。東響のメンバーも入れ込んでいる雰囲気です。珍しくダブルコンマスです。第1楽章は意外にあっさりとした演奏ですが、精緻な演奏で惹き付けられます。第2楽章は嵐が吹き荒れるような凄まじい演奏。第3楽章はちょっと落ち着いて、一休み。第4楽章は有名なアダージェット。マーラーのアルマへの愛の告白ですね。とても美しい演奏にうっとり。演奏のギアーが上がってきます。そして、第5楽章は最高の演奏でした。ノットが東響のメンバーをインスパイして、物凄い演奏です。音楽が高潮して、圧巻のフィナーレ。尻上がりの素晴らしい演奏でした。
今日のプログラムは以下のとおりでした。
指揮:ジョナサン・ノット
ソプラノ:ユリア・クライター
管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:水谷晃(ダブルコンマス 小林壱成)
ラヴェル:海原の小舟(管弦楽版)-鏡より
ベルク:七つの初期の歌
《休憩》
マーラー:交響曲 第5番 嬰ハ短調
最後に予習について、まとめておきます。
1曲目のラヴェルの海原の小舟を予習したCDは以下です。
アンドレ・クリュイタンス指揮パリ音楽院管弦楽団 1962年9月, 10月 セッション録音
一幅のパステル画を眺めるような美しい演奏です。
2曲目のベルクの七つの初期の歌を予習したCDは以下です。
アンネ・ゾフィー・フォン・オッター、クラウディオ・アバド指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1993年4月、ウィーン楽友協会グローサーザール セッション録音
いやはや。フォン・オッターの歌が素晴らしい。ただただ、彼女の歌唱に魅了されました。
3曲目のマーラーの交響曲 第5番を予習したCDは以下です。
ジョナサン・ノット指揮バンベルク交響楽団 2003年9月15-19日 バンベルク、ヨゼフ・カイルベルト・ザール セッション録音
これがノットのマーラーなのねって感じです。ユダヤ人的な粘りはまったくなくて、あっさりめですが、精緻な演奏が後半に向かって盛り上がっていきます。
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