最初はプロコフィエフの古典交響曲。冒頭での不揃いがご愛嬌ですが、あとはこれぞ鉄壁のアンサンブル。実演でこんなに完璧な演奏を聴いたのは初めてです。何と言っても、コンマスの矢部達哉が仕切る弦楽アンサンブルは最高です。小編成での演奏はまるで室内オーケストラのような透明さを湛えた美しい響き。アラン・ギルバートの的確な指揮のもと、実にモダンで洒脱な演奏。すべての楽章があるべき姿で演奏されました。短い曲ですが、これを聴いただけでも、今日のコンサートに足を運んだ甲斐がありました。
続いて、ビゼーの「アルルの女」の第1組曲と第2組曲から抜粋した5曲。いっそのこと、残り3曲も加えて、全曲を演奏してほしかったところです。というほど、素晴らしいサウンドの演奏でした。編成は先ほどよりも大きくなりました。ここでも鉄壁のアンサンブルですが、透明感よりも厚みの加わった熟成したサウンドです。やはり、弦楽アンサンブルの美しさに魅了されますが、木管も美しい演奏です。特にフルートが美しいので、第2組曲のメヌエットを聴きたかったところ。saraiのかつての愛奏曲ですし・・・。今日の5曲は組曲からの抜粋ですが、演奏順は下の劇音楽「アルルの女」の順番で演奏されました。無論、全曲など聴いたことはないので、ふむふむということはありません。それでも、今日の4曲目のアダージェット(第1組曲)の異常に美し過ぎる抒情に満ちた演奏から、最後のファランドール(第2組曲)の圧倒的な盛り上がりに至る演奏効果には唸らされました。それにしても、第1ヴァイオリン群の美しい響きは見事でした。
休憩後、最後はラフマニノフの交響的舞曲。これは初聴きです。ラフマニノフがアメリカ時代に書いた生涯最後の作品です。ここに至り、都響は大編成になり、ステージに楽団員があふれるほどです。第1楽章、きびきびした演奏に始まり、中間部でラフマニノフらしい美しく、抒情味にあふれた音楽が弦楽、特に第1ヴァイオリンで奏されます。都響の見事な演奏にうっとりします。ギルバートの指揮もダイナミックです。第2楽章、第3楽章も同じく聴きどころ満載で、都響の鉄壁のアンサンブルが機能します。そして、大団円・・・圧倒的な音響で華やかな終わり。ラフマニノフは生涯の最後までラフマニノフであり続けたのですね。ただし、初期の作品、ロシア時代のときのようなやるせなさは影を潜めています。まあ、今日は都響の鉄壁のアンサンブル、そして、それを見事に引き出したアラン・ギルバートの素晴らしい指揮がすべてでした。次回、このコンビはどんな音楽を聴かせてくれるでしょうか。
今日のプログラムは以下です。
指揮:アラン・ギルバート
管弦楽:東京都交響楽団 コンサートマスター:矢部達哉(隣席は山本友重)
プロコフィエフ:交響曲第1番 ニ長調 Op.25《古典交響曲》
ビゼー:「アルルの女」からパストラール(第2組曲)、メヌエット(第1組曲)、カリヨン(第1組曲)、アダージェット(第1組曲)、ファランドール(第2組曲)
《休憩》
ラフマニノフ:交響的舞曲
最後に予習について、まとめておきます。
1曲目のプロコフィエフの交響曲第1番 《古典交響曲》を予習したCDは以下です。
カルロ・マリア・ジュリーニ指揮シカゴ交響楽団 1976年4月 セッション録音
ジュリーニとシカゴ交響楽団のコンビによる一連の録音はいずれもsaraiの愛聴盤です。重厚でカンタービレのきいた演奏はシカゴ響の完璧なアンサンブルも相俟って聴き応えがあります。この曲に限っては、軽み(かろみ)の表現が見事です。
2曲目のビゼーの「アルルの女」を予習したCDは以下です。
アンドレ・クリュイタンス指揮パリ音楽院管弦楽団 1964年 セッション録音
素晴らしい演奏です。
3曲目のラフマニノフの交響的舞曲を予習したCDは以下です。
ヴラディーミル・アシュケナージ指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 1983-1974年、アムステルダム、コンセルトヘボウ セッション録音
指揮よし、オーケストラよし。一点の曇りもない名演です。
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