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クリストフ・プレガルディエン、シューベルト三大歌曲集を歌う 《白鳥の歌》 リートの森@トッパンホール 2022.10.1

今日から、クリストフ・プレガルディエンの歌うシューベルトの三大歌曲集を聴くことができます。最近、シューベルトのピアノ三重奏曲、弦楽四重奏曲の素晴らしい演奏を聴き、続けて、代表的な歌曲が聴けるのですから、嬉しい限りです。最近はシューベルトとシューマンがsaraiの一番のお気に入りなんです。
今日はいきなり、晩年の《白鳥の歌》。プログラムの前半にルードヴィヒ・レルシュタープの詩による7曲。後半にハインリヒ・ハイネの詩による6曲。ザイドルの詩による第14曲「鳩の便り」はプログラムに含まれていません。新シューベルト全集では「鳩の便り」は他の13曲とは分離されているからでしょう。

前半はまず、ベートーヴェンの連作歌曲《遥かなる恋人に寄す》から始まります。saraiが学生時代によく聴いていた(歌っていた)曲なので、とても懐かしく感じます。プレガルディエンは飛びっきり、郷愁に満ちた歌唱で魅了してくれます。ソット ヴォーチェの見事な歌唱に酔い痴れます。ベートーヴェンはこの曲を書いた時期、スランプだったそうですが、既にロマン派のリートを先取りしたような音楽を書いていたことに驚きます。冒頭と最後の曲は同じ旋律に基づいていますが、その曲がとても素晴らしく歌われました。

次はいよいよシューベルトの《白鳥の歌》。ルードヴィヒ・レルシュタープの詩による7曲です。これはやはり、絶品です。ソット ヴォーチェによる抒情的な歌唱にうっとりと聴き入ります。やはり、プレガルディエンは美声ですね。第4曲の有名なセレナーデは見事に歌い上げられます。第5曲の居場所あたりから、抒情を突きぬけた歌唱になり、第6曲の《遠い地で》は恐ろしいほど深遠を感じさせる歌唱です。シューベルトはここに至り、美しい歌曲を抜け出て、芸術の真髄に到達したかに思われます。プレガルディエンの歌唱も技術も音楽表現も最高です。ただただ、感動します。最後の第7曲 別れが美しく歌い上げられて、前半のプログラムが終了。うーん、素晴らしかった!

後半はブラームスの歌曲からです。これはソット ヴォーチェではなく、強い歌唱で歌い上げられます。saraiの大好きな〈永遠の愛〉、素晴らしい歌唱に満足でした。
そして、いよいよ、《白鳥の歌》のハインリヒ・ハイネの詩による6曲です。ハイネの詩の持つ意味にこれほど迫った歌を書いたシューベルトの凄さに感嘆しながら、その詩情の世界に浸ります。第12曲 海辺で は何と深い音楽なんでしょう。プレガルディエンも絶唱です。第11曲 町 も凄い! 第13曲 もう一人の俺 は信じられないほどの暗い高みに達しています。第9曲 あの娘の絵姿 は壮絶に美しい世界です。そして、最後の第8曲 アトラス は深さと強さを合わせ持った歌唱で全篇を閉じます。
シューベルトの最後の歌曲群を歌い切ったプレガルディエンのソットヴォーチェから強い歌唱までの最高の音楽表現に魅了されました。

拍手に応えて、アンコール。もちろん、シューベルトの絶筆と言われるザイドルの詩による第14曲「鳩の便り」です。軽いノリの抒情的な作品ですが、プレガルディエンの見事な歌唱で強く感動します。これがシューベルトが我々に最後に残してくれた曲。明るい別れの中に憂愁を感じます。我が心に D860に続き、アンコールの最後はシューベルトの夜と夢。曲目紹介はプレガルディエンとゲースが声を合わせていました。以前、プレガルディエンのリサイタルの際もこれがアンコールの最後でした。プレガルディエンがお好きな曲だそうです。彼の美しい高音がこの曲を見事に表現していました。

シューベルトの三大歌曲集、次は《美しき水車屋の娘》。楽しみです。


今日のプログラムは以下です。

  テノール:クリストフ・プレガルディエン
  ピアノ:ミヒャエル・ゲース

  ベートーヴェン:連作歌曲《遥かなる恋人に寄す》Op.98
   第1曲 僕は丘の上に腰を下ろして/第2曲 青い山なみが/第3曲 空高く軽やかに飛ぶ雨ツバメよ/
   第4曲 高みにある雲の群れも/第5曲 五月はめぐり/第6曲 受け取ってください、これらの歌を
  シューベルト:白鳥の歌 D957より 詩:ルードヴィヒ・レルシュタープ
   第1曲 愛の言づて/第2曲 兵士の予感/第3曲 春のあこがれ/第4曲 セレナーデ/
   第5曲 居場所/第6曲 遠い地で/第7曲 別れ

   《休憩》

  ブラームス:《リートと歌》より〈君の青い瞳〉Op.59-8
  ブラームス:《4つの歌》より〈永遠の愛〉Op.43-1
  ブラームス:《低音のための6つのリート》より〈野の中の孤独〉Op.86-2
  ブラームス:《プラーテンとダウマーによるリートと歌》より〈飛び起きて夜の中に〉Op.32-1
  ブラームス:《低音のための5つのリート》より〈教会の墓地で〉Op.105-4
  シューベルト:白鳥の歌 D957より 詩:ハインリヒ・ハイネ
   第10曲 魚とりの娘/第12曲 海辺で/第11曲 町/第13曲 もう一人の俺/
   第9曲 あの娘の絵姿/第8曲 アトラス

   《アンコール》

  シューベルト:鳩の使い D965A
  シューベルト:我が心に D860
  シューベルト:夜と夢 D827

最後に予習について、まとめておきます。

ベートーヴェンの連作歌曲《遥かなる恋人に寄す》を予習したCDは以下です。

  イアン・ボストリッジ、アントニオ・パッパーノ 2019年10月2-4日、ロンドン、ハムステッド、セント・ジュード・オン・ザ・ヒル教会 セッション録音

ボストリッジの歌唱に魅了されます。まさに歌の心情に触れる思いです。


シューベルトの白鳥の歌を予習したCDは以下です。

  イアン・ボストリッジ、アントニオ・パッパーノ 2008年8月15~17日 ロンドン、アビーロード・スタジオ セッション録音

ボストリッジの知的なアプローチが素晴らしいです。


ブラームスの歌曲を予習したCDは以下です。

  ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ、ダニエル・バレンボイム 1978年~82年 セッション録音

とても美しい歌唱。まあ、フィッシャー=ディースカウが歌えば、ドイツ・リートはすべて素晴らしいですけどね。



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尾瀬散策:花を愛でながら、上ノ大堀川を過ぎて上田代、順調な帰路。

2022年8月25日(木)@尾瀬/13回目

尾瀬、2日目です。
朝8時頃に鳩待峠を出発し、1時間30分で山ノ鼻に到着。そこから、今は尾瀬ヶ原の美しい自然を楽しみながら牛首分岐を目指しましたが、中田代の休憩所でお弁当をいただいたところで、引き返す決断をしました。牛首分岐まであと10分くらいのところでした。
一路、山ノ鼻に向けて、戻ります。木道の先には先ほど先に戻っていった子供たちの一団が見えています。今日は、学校の行事として来ている子供たちが、10人ほどの単位でガイドさんに連れられて歩いています。家族連れも多いですね。心なしか、至仏山の雲が晴れてきたように思えます。

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木道添いの小さな草花を愛で、写真を撮りながらブラブラ歩きます。この赤い実はミズオトギリでしょうか。午後になって開くピンク色の花はまだ見えていません。

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これは先ほども見かけたサワギキョウです。

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木道の周りの草原には小さな白い花が見えます。イワショウブでしょうか。

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雲がかかる至仏山に向かって、配偶者が黙々と木道を進んでいきます。

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草原の中に赤茶色の穂先が見えます。尾瀬には似合わないような気がしますが、ヨシでしょうか。

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上ノ大堀川に架かる小さな橋まで戻ってきました。

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近くに咲く黄色い花はハンゴンソウですね。

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上ノ大堀川の水面にはびっしりとスギナモという水草が生い茂っています。

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スギナモの間にミズバショウも見えています。

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上ノ大堀川を渡って進むと、その先の休憩所に先ほどの子供たちの集団が見えます。どうやら、お弁当タイムのようです。

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もう、ここは中田代を過ぎて、上田代に戻ってきました。順調に戻っています。



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クリストフ・プレガルディエン、シューベルト三大歌曲集を歌う《美しき水車小屋の娘》 青春の残滓を熱唱 リートの森@トッパンホール 2022.10.3

クリストフ・プレガルディエンの歌うシューベルトの三大歌曲集の2夜目は《美しき水車小屋の娘》。
若い頃には、ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウのLPレコードを擦り切れるほど聴いたことを思い出します。楽譜を買って、なかでも気に入った曲は自分でも口ずさんでいました。でも、今日になって、クリストフ・プレガルディエンの歌唱を聴いていると、いかに自分が浅い聴き方、音楽の捉え方をしていたか、痛感しました。青春時代に恋愛をした人は誰でもこの曲の何か、甘酸っぱいような美しい感傷を感じることができるでしょうが、もっと深い人生の挫折感や絶望までを今日、初めて聴き取れました。この作品も根っこは《冬の旅》の暗い絶望とつながっているのですね。予習で聴いたクリストフ・プレガルディエンのCDの歌唱は普通のものに思えました。今から15年前の録音ですが、彼はこの15年間で実に深い歌唱に熟成したようです。どの曲も細部まで磨き上げられた完璧とも思える歌唱に驚愕して聴き入りました。

今日は休憩なしで全曲、通しで歌われます。前半は若者が水車小屋の娘に恋焦がれていく様を歌っていきます。青春のロマンですが、底流には何か暗い予感が渦巻いています。そこをクリストフ・プレガルディエンは微妙なニュアンスで歌い上げていきます。強い声と美しい高音を織り交ぜての熱唱です。そして、後半の恋敵の狩人に水車小屋の娘を奪われて、絶望に至るところに差し掛かります。音楽が深遠に落ちていきます。シューベルトの何と言う才能でしょう。音楽でここまで人生の深遠が語り尽くせるのでしょうか。
第16曲以降の5曲は涙なしには聴けません。第16曲 好きな色 はクリストフ・プレガルディエンが急に歌っている途中でピアノに歩み寄り、ミヒャエル・ゲースに目くばせして、救いを求め、ミヒャエル・ゲースが声を出して歌います。歌詞が混乱したようです。よく状況は分かりませんが、歌はちゃんと歌っていて、むしろ、音楽的精度は上がったように思えます。この二人の相棒的な音楽協業の結果、どうしようもないくらいの深い絶望感が表現され、saraiは途轍もなく感動し、涙を禁じ得ません。この曲は3節から成りますが、3節目の深い絶望と哀感はどこまでも深く暗い穴に落ちていくようです。それでいて何と美しい歌なのでしょう。シューベルトが書いた物凄い歌をクリストフ・プレガルディエンが何かに取り憑かれたように歌い尽くします。次の第17曲 いやな色 もさらに絶望感が増します。そして、第18曲 しぼめる花。傑作中の傑作です。美しく哀しい歌をクリストフ・プレガルディエンは語るように歌います。何と素晴らしいことか。第19曲 粉ひきと小川。若者は絶望して、小川に身を投げます。ここはそんなに劇的ではなく、そっと思いやるような調子で歌われます。哀しく絶望的な終わりです。最後の第20曲 小川の子守歌。これは哀しい運命の若者を慰撫するような音楽。バッハ的に言えば、コラールですね。優しい子守歌を聴いていて、深く深く感動しました。

こんな素晴らしい美しき水車小屋の娘を聴いたことがありません。明後日の冬の旅はどこまで深く暗い歌唱になるんでしょう。


今日のプログラムは以下です。

  テノール:クリストフ・プレガルディエン
  ピアノ:ミヒャエル・ゲース

  シューベルト:美しき水車小屋の娘 D795
   第1曲 さすらい Das Wandern
   第2曲 どこへ? Wohin?
   第3曲 止まれ! Halt!
   第4曲 小川への感謝の言葉 Danksagung an den Bach
   第5曲 仕事じまいの集いで Am Feierabend
   第6曲 知りたがり屋 Der Neugierige
   第7曲 もどかしさ Ungeduld
   第8曲 朝の挨拶 Morgengruß
   第9曲 粉ひきの花 Des Müllers Blumen
   第10曲 涙の雨! Tränenregen
   第11曲 僕のもの Mein!
   第12曲 休み Pause
   第13曲 リュートの緑色のリボン Mit dem grünen Lautenbande
   第14曲 狩人 Der Jäger
   第15曲 嫉妬と誇り Eifersucht und Stolz
   第16曲 好きな色 Die liebe Farbe
   第17曲 いやな色 Die böse Farbe
   第18曲 しぼめる花 Trockne Blumen
   第19曲 粉ひきと小川 Der Müller und der Bach
   第20曲 小川の子守歌 Des Baches Wiegenlied

   《休憩》なし

   《アンコール》

  シューベルト:白鳥の歌 D957より 第1曲 愛の言づて
  シューベルト:それらがここにいたことは D775
  シューベルト:憩いのない恋 D138
  シューベルト:さすらい人の夜の歌2 D768


最後に予習について、まとめておきます。

シューベルトの美しき水車小屋の娘を予習したCDは以下です。

  クリストフ・プレガルディエン、ミヒャエル・ゲース 2007年10月6-8日、ベルギー、モル、ギャラクシー・スタジオ セッション録音

この曲はやはり、テノールがいいですね。最近の録音ではこれが一番でしょう。



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尾瀬散策:上田代の池塘で一斉に開き始めたヒツジグサ

2022年8月25日(木)@尾瀬/14回目

尾瀬、2日目です。
尾瀬ヶ原の美しい自然を楽しんだ後、ほどほどのところで引き返します。牛首分岐まであと10分くらいのところでした。
一路、山ノ鼻に向けて、戻ります。上ノ大堀川を渡って、上田代に入ります。木道の先の休憩所に子供たちの集団が見えます。我々がお弁当を食べているときに通り過ぎていった子供たちです。

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周りの草原にはダケカンバの林がありますが、木々は斜めに傾いています。このあたりは風が強いのでしょうか。

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後ろを振り向くと、今渡ってきた上ノ大堀川にかかる小橋が見えています。その向こうには山頂に雲がかかる燧ケ岳(ひうちがたけ)の姿が見えています。

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休憩所でお弁当を食べている子供たちの集団の脇を通り過ぎて、上田代の広大な草原の中を歩いていきます。正面に見えるのは雲に覆われた至仏山です。

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上田代の池塘の風景の中に戻ってきます。

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傍らの草原の中にはワレモコウがあります。

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そして、池塘の水面にはさっきよりもヒツジグサの白い花がよく開いています。未の刻が近づきましたね。

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また、逆さ燧のポイントです。

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今度は、ちょっと風が吹いてきていて、水面が波立ち逆さ燧が見えません。なかなかタイミングって難しいですね。でも、さっき見られてよかった。

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池塘に咲くヒツジグサを楽しみます。すっかり花が開いて、中心の黄色い花弁も見えています。

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木道の間からもヒツジグサが見えています。

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池塘の風景を楽しみながら、山ノ鼻に向かって歩いていきます。



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クリストフ・プレガルディエン、シューベルト三大歌曲集を歌う《冬の旅》 生きることの痛みと絶望の果て リートの森@トッパンホール 2022.10.5

クリストフ・プレガルディエンの歌うシューベルトの三大歌曲集の第3夜目は《冬の旅》。
誰しもそうでしょうが、ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウのLPレコードでこの音楽、そして、ドイツ・リートの素晴らしさに魅了されました。それが高校生の頃です。レコードを擦り切れるほど聴いた挙句、自分でも歌いたくなり、大学に進学した後、第2外国語にドイツ語を選択し、ドイツ語の発音を勉強しました。京都の夜の路地を彷徨いながら、一人、冬の旅を歌っていました。saraiの青春の大切な思い出です。

今日の歌唱はもちろん、次元の異なるものでした。シューベルトがこんなにも生きることに痛みを感じ、絶望していたことを覚らされるような絶唱でした。全24曲のうち、最初の6曲はそれでも人生の美しさを感じさせるものでした。saraiが愛唱していた第1曲の《おやすみ》やあの菩提樹、そして、第6曲の《あふれる涙》。辛い人生は感じていても、そこにはそこはかとなく、人生の哀愁が漂い、何と言っても美しいメロディーがあります。しかし、次の6曲は一挙に暗い奈落に落ち込んでいきます。その中で、第11曲の《春の夢》でふっと甘い憧れが現れると、かえって逆説的に聴いているほうが辛く感じてしまい、その切なさに感極まって、涙が滲みます。そして、第12曲の《孤独》でどうしようもない絶望感に陥ります。シューベルトはここにきて芸術を極めるのですが、それは何という深い絶望の淵に落ち込んでの辛く厳しい道だったのでしょう。
この最初の12曲がシューベルトが最初に書いた《冬の旅》です。ここまでで一応の完結をみます。ここで終わっても芸術史上、稀に見る傑作だったでしょう。しかし、続いて書かれた12曲は恐ろしいほど暗く寂しい曲ばかりですが、シューベルトが到達した最高傑作に間違いありません。その先にあるのは翌年の亡くなる年に書かれた遺作の3曲のピアノ・ソナタです。今回、久しぶりに《冬の旅》を聴いて、シューベルトがどうして、あの3曲のピアノ・ソナタを書いたのかが少しばかり分かったような気がします。シューベルトは自分の死を覚悟した上で最晩年の傑作群を書いたのでしょう。芸術家は何と厳しい人生を送るのでしょう。

ともあれ、後半の12曲です。その最初の6曲は深い絶望感に覆われたモノクロームの世界。美しいメロディーなど無縁の人生に決別するような厳しさです。聴いていて辛くなります。クリストフ・プレガルディエンの表現力は力を増して、聴衆を叩きのめすようなものです。我々の生きる世界はこんなにも苦しく、切ないものなのかと問いかけられます。
続く最後の6曲で明かりが少し差してきますが、それは薄明です。絶望の先によろよろと生きていく希望のない世界。我々にはどこにも行き場がありません。最後の2曲のやるせなさには深い痛みを感じるのみです。シューベルトが芸術の高みに極めたものはロマン派の世界を超えて、現代芸術につながるもの。虚無・・・。

クリストフ・プレガルディエンは大変な歌唱を聴かせてくれました。今回のシューベルトの三大歌曲集で、冬の旅を最後に歌った意味がよく分かりました。そして、シューベルトの芸術の真髄に迫る歌唱にはただただ深い感銘を覚えるのみです。生きているうちにこんなものが聴けてよかった・・・。


今日のプログラムは以下です。

  テノール:クリストフ・プレガルディエン
  ピアノ:ミヒャエル・ゲース

  シューベルト:冬の旅 D911
   1. おやすみ Gute Nacht
   2. 風見の旗 Die Wetterfahne
   3. 凍った涙 Gefror'ne Tranen
   4. かじかみ Estarrung
   5. 菩提樹  Der Lindenbaum
   6. あふれる涙  Wasserfult
   7. 川の上で Auf dem Flusse
   8. 回想 Ruckblick
   9. 鬼火 Irrlict
   10. 憩い Rast
   11. 春の夢 Fruhlingstraum
   12. 孤独 Einsamkeit

   13. 郵便馬車 Die Post
   14. 霜おく髪 Der greise Kopf
   15. からす Die Krahe
   16. 最後の希望 Letzte Hoffnung
   17. 村で Im Dorfe
   18. 嵐の朝 Der sturmische Morgen
   19. まぼろし Tauschung
   20. 道しるべ Der Wegweiser
   21. 宿屋 Das Wirtshaus
   22. 勇気 Mut
   23. 幻の太陽 Die Nebensonnen
   24. 辻音楽師 Der Leiermann

   《休憩》なし

   《アンコール》

  シューベルト:夜の曲 D672
  シューベルト:ヴィルデマンの丘を越えて D884
  シューベルト:さすらい人の夜の歌1 D224
  シューベルト:夜と夢 D827


最後に予習について、まとめておきます。

シューベルトの冬の旅を予習したCDは以下です。

  クリストフ・プレガルディエン、ミヒャエル・ゲース 2012年9月2-5日 ギャラクシー・スタジオ、モル、ベルギー セッション録音

プレガルディエン、渾身の歌唱です。



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突然ですが・・・フレンチレストラン、クイーン・アリスで記念のランチ

当ブログでは、今、8月の尾瀬散策の記事を書いていますが、今日は本日のリアルタイムの記事を書くことにします。
何故かと言うと、今日は特別な日だからです。ちょうど1年前の同じ日は京都で、鱧の名店、割烹 なか川の三条木屋町店ではもしゃぶコースをいただきました。1年後の今日は横浜の自宅にいるので、前日にばたばたとレストランを探し、みなとみらいの有名フレンチレストランで記念のランチをいただくことにしました。

以下、1年前の記事を引用します。

今を去ること、52年前、saraiは京都の大学に入学し、その夏の終わり、クラブの鳥取での合宿を終えて、そのまま、別の大学の吉野(奈良)の合宿に合流。そのときに運命の女性と出会いました。二人とも大学の1回生で10代でした。saraiが猛アタックして、交際に発展し、京都で愛を育みました。無論、その女性がsaraiの今の配偶者です。二人で大学卒業後、上京し、結婚。今に至るわけですが、今日が48回目の結婚記念日です。思い出の地、京都で記念のランチをいただくことにしたわけです。

(引用終わり)

ということで、今日は49回目の結婚記念日です。来年の50回目の結婚記念日に向けての前夜祭みたいなものです。来年は盛大にいきたいものです。配偶者はウィーンって言ってますが、どうなるでしょう。今年のように自宅にいれば、saraiは意中のお店を決めています。東京にある超有名フレンチのお店です。パリにあるレストランの支店で鴨を食べます。

ともあれ、今日は雨模様の中、みなとみらいへ。ランドマークタワーや日本丸が見えています。

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桜木町の駅から雨を避けて、ランドマークプラザを抜けて、クイーンズの建物の一番奥に行きます。おやおや、みなとみらいホールはまだ工事中です。その向かいに横浜ベイホテル東急があります。その三階にフレンチレストラン、QUEEN ALICE(クイーン・アリス)があります。このお店は日本でフレンチレストランブームを起こした立役者の一人、石鍋裕シェフがプロデュースしたお店でグループのほとんどのお店が閉店した中、今でも生き残っているお店です。フジテレビの料理番組、料理の鉄人の初代のフレンチシェフとしてたった3か月だけ出演していたのが、当時飛ぶ鳥を落とす勢いだった石鍋裕シェフです。2代目は坂井シェフでしたね。石鍋裕シェフは既にキッチンを離れているようで、この横浜のお店はお弟子さんのシェフは取り仕切っているようです。

入店すると、全面が窓になった大きな空間に面したテーブルに案内されます。シックなフレンチとは無縁のお洒落な装いです。

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下の2階のカフェも見えています。カフェトスカです。ブッフェランチをやっているようです。

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窓の外には大きな観覧車が見えています。

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早速、今日いただくメニューを決めます。お得なプレミアムランチコースをオーダー。すると、コースを書いたプレートを持ってきてくれます。これは分かりやすいですね。フルコースメニューです。

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もちろん、ワインもいただきます。ラ・クロワザードLa Croisadeの白ワイン。南フランスはラングドック地方のカルカッソンヌで創立されたワイナリーです。白ワインはシャルドネです。ボトルの写真を撮らせてもらいました(ラ・クロワザード レゼルヴ シャルドネ ブラックラベル)。2021年の若いワインで、しっかりとしたコクのある味でなかなか美味しいです。

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料理が始まります。前菜はオマール海老・帆立貝・フレンチキャビアをのせた赤ピーマンのムースとコンソメゼリー。赤ピーマンのムースがなかなか美味しくて、皿のまわりにのっけてある小さく作ったトマトやアスパラガスなどの野菜も口当たりがよいです。

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次はスープ。キノコのスープ カプチーノ仕立て。スープ好きの配偶者に好評。我が家でも似たものがそのうちに出てくるそうです。

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そうそう、パンは最初、バターロールしか出なくて、saraiがここにはフランスパンの用意はないのかと尋ねると、スタッフの方が用意はございますとのこと。言わなくても後で出す予定だったみたいです。ちゃんとバゲットが出ました。

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次はメインの魚。オマール海老と里芋のリゾット オマール海老のエキュームソース。オマール海老をたっぷりいただきました。美味です。

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ここで取材事故。肝心のメインの肉料理を撮り忘れ、途中でなんとか残っているものを撮りました。国産牛サーロインのグリエ 赤ワインソースとメートルドテル バターと共に。しっかりしたお肉でした。

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デザートはいくつかの中から選びます。saraiはモンブラン。普通のモンブランかと思っていたら、栗をすりつぶしたものを固め、その上にバニラアイスを乗せたという凝ったもので、西洋梨やチョコレートのソルベが添えられています。西洋梨そのものも添えられています。豪華ですね。

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配偶者は、抹茶のブランマンジェ 葡萄のジュレとマロンのアイス。

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最後はコーヒー。みるくたっぷりとお願いしたら、本当にたっぷりとミルクを持ってきてくれました。なかなかのサービスです。

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ちょうど完食できて、お腹いっぱいになる絶妙な量でした。よい食材で美味しい料理。さすがに石鍋シェフのDNAを引き継いでいますね。

この横浜ベイホテル東急では昔、中華料理をいただいたことがあります。中国料理 トゥーランドット 游仙境です。このお店は2年前に閉店したそうです。”ヌーベル・シノワ”の旗手、脇屋友詞シェフのお店でしたね。フレンチは初体験でした。


今年も無事、結婚記念日のランチをいただけました。今まで寄り添ってくれて、幸せを与えてくれた配偶者に感謝あるのみです。

来年はいよいよ50回目の結婚記念日。その日を目標に生きていきます。



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尾瀬散策:上田代の池塘の風景の中を往く

2022年8月25日(木)@尾瀬/15回目

尾瀬、2日目です。
尾瀬ヶ原の美しい自然を楽しんだ後、ほどほどのところで引き返します。牛首分岐まであと10分くらいのところでした。
一路、山ノ鼻に向けて、戻ります。上田代に戻ると、池塘の風景が広がります。その中を雲に煙る至仏山に向かって歩いていきます。

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やがて、木道脇に大きな池塘が現れます。

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次々と池塘が現れます。池塘には可憐なヒツジグサが花を開いています。

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池塘の周りには湿原が広がります。小さな白い花が見えます。イワショウブでしょうね。

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池塘には、ヒツジグサが小さな白い花が開いています。

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湿原一帯には大小さまざまな池塘が姿を見せています。

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木道の間に見えるのは、シロバナミゾソバでしょうか。

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その先の木道の間にも、シロバナミゾソバが一面に咲いています。

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池塘にはヒツジグサの花が一斉に開いています。

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池塘のほとりでワレモコウの間に咲く黄色い花はキンコウカかな。

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さらに進むと、木道の間にアブラガヤが見えてきます。

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美しい草原の中に続く木道をどんどん歩いて、山ノ鼻に戻っていきます。



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モーツァルトの2台のピアノのための協奏曲の安定した演奏 ノット&東京交響楽団:モーツァルト・マチネ 第51回@ミューザ川崎シンフォニーホール 2022.10.8

今日から4連チャンのコンサートが続きます。初日の今日はダブルのコンサート。まず、午前11時からのマチネは1時間。その後のオペラは休憩時間を入れると4時間半の長さ。ずい分、演奏時間がまちまちです。まあ、疲れました。

この記事は最初の短いマチネに関してですが、実は同じものを明日も聴くので、ちゃんとした内容は明日の記事で書きます。

1曲目のシェーンベルクの弦楽四重奏とオーケストラのための協奏曲はヘンデルの合奏協奏曲作品6の第7番変ロ長調を自由に編曲、発展させているもので、単なる編曲ではありません。saraiの趣味から言えば、ヘンデルの透明な美しさがなくて残念ですが、まあ、それなら、ヘンデルの合奏協奏曲を聴けばよいので、ここはシェーンベルクがヘンデルの作品にインスピレーションを得て書いたシェーンベルクの世界と思ったほうがよいでしょう。明日はその観点で聴き直してみます。

2曲目のモーツァルトの2台のピアノのための協奏曲はピアノ協奏曲第10番とも呼ばれています。ピアノ協奏曲として聴きましたが、楽しく聴けました。ピアノ2台のための協奏交響曲とも考えられるそうなので、明日は広い角度から聴き直してみましょう。ピアノ・デュオのPiano duo Sakamoto(坂本彩・坂本リサ)の二人はなかなか闊達な演奏を聴かせてくれました。特に第3楽章が見事でした。

今日から、東響の音楽監督のジョナサン・ノットが戻ってきました。今月、来月、再来月と立て続けに東響を指揮するので、楽しみです。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:ジョナサン・ノット(東京交響楽団 音楽監督)
  ピアノ・デュオ:Piano duo Sakamoto(坂本彩・坂本リサ)
  弦楽四重奏
   第1ヴァイオリン:小林壱成(東京交響楽団コンサートマスター)
   第2ヴァイオリン:服部亜矢子(東京交響楽団首席第2ヴァイオリン奏者)
   ヴィオラ:武生直子(東京交響楽団首席ヴィオラ奏者)
   チェロ:伊藤文嗣(東京交響楽団ソロ首席チェロ奏者)
  管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:水谷晃

  シェーンベルク:弦楽四重奏とオーケストラのための協奏曲 変ロ長調(ヘンデルop.6-7による)
  モーツァルト:2台のピアノのための協奏曲 変ホ長調 K.365(316a)

  《アンコール》なし

   休憩なし


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のシェーンベルクの弦楽四重奏とオーケストラのための協奏曲を予習したCDは以下です。

 フレッド・シェリー四重奏団、ロバート・クラフト指揮20世紀クラシック・アンサンブル 2002年10月 セッション録音

ロバート・クラフトはさすがの指揮です。


2曲目のモーツァルトの2台のピアノのための協奏曲を予習したCDは以下です。

 マレイ・ペライア、ラドゥ・ルプー、イギリス室内管弦楽団 1988年 セッション録音

2人のピアノが美しい演奏です。



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       ジョナサン・ノット,  

高い水準のバロック・オペラを堪能 《ジュリオ・チェーザレ》@新国立劇場 2022.10.8

新国オペラ、今シーズンの開幕公演です。新国オペラを年間通して聴くのも2シーズン目に入ります。いきなり、バロック・オペラとは嬉しいですね。ともかく、国内でバロック・オペラはなかなか聴けないですからね。それも本格的なプロダクションですから素晴らしいことです。この《ジュリオ・チェーザレ》を実演で聴くのは初めてです。ヘンデルのオペラ自体、これまで実演で聴いたのは、歌劇「リナルド」、歌劇「アリオダンテ」、歌劇「セルセ」の3つだけ。いずれも海外か、海外のオペラハウスの引っ越し公演でした。

今日の《ジュリオ・チェーザレ》ですが、演出も凝ったものだったし、演奏も美しいものでした。国内でこれだけ高水準のものが聴けたのは望外の幸せ。それにしても、ダ・カーポ・アリアの連続で公演時間は休憩も入れると4時間半の長大なもの。ワグナーに匹敵しますね。歌手の歌唱もとてもピュアーな美しさでした。これでもっとアジリタが凄かったら言うことありません。歌手はみな平均的に高いレベルで、特別、抜きんでた印象の歌手はいませんが、クレオパトラを歌った森谷真理は本来、バロック向きではないと思いますが、持ち前の高音域の強力な声で熱演でした。

今回の演出は現代の博物館のバックヤードで物語が展開するという奇抜なものでした。現代の博物館のスタッフも登場しますが、彼らにはカエサルとクレオパトラがエジプトで起こす一大スペクタクルはまったく感知されないという設定で、現代と過去が交錯しても問題なく、舞台は進行します。
この公演で一番印象に残ったのは、第2幕冒頭で女性奏者たちのバンタ(9名)が舞台に上がり、みな、お姫様ドレスに身を包み、彼女たちの見た目の絢爛豪華さでの伴奏で、クレオパトラ役の森谷真理が彼女自身も美しいドレスを身にまとい、チェーザレ(カエサル)に愛の歌のアリアを歌うシーンの天国的な美しさです。これを見て、聴いただけでも、今日のオペラは聴いた甲斐がありました。
第1幕の最後に、【コルネーリア】役の加納悦子と【セスト】役の金子美香が美しい2重唱を聴かせてくれたのは、音楽的に最高でした。

リナルド・アレッサンドリーニ指揮の東フィルは慣れないバロック・オペラをなかなかの好演でまとめていました。まあ、欲を言えば、ピットにBCJのオーケストラが入れば、もっと凄い演奏になったのにとは思いましたが、色々な関係で難しいのでしょうね。チューリッヒ歌劇場などでは、バロック・オペラのときは特別にバロックオーケストラが入ることを考えれば、新国オペラのゆくゆくの課題ではあるでしょう。

ともかく、これで新国オペラもバロック・オペラがスタートしたわけですから、是非、年間に1回はバロック・オペラを聴かせてほしいと願っています。


今日のキャストは以下です。

  ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル
   ジュリオ・チェーザレ<新制作>

【指 揮】リナルド・アレッサンドリーニ
  【演出・衣裳】ロラン・ペリー
  【美 術】シャンタル・トマ
  【照 明】ジョエル・アダム
  【ドラマトゥルク】アガテ・メリナン
  【演出補】ローリー・フェルドマン
  【舞台監督】髙橋尚史
  【合唱指揮】冨平恭平
  【合 唱】新国立劇場合唱団
  【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

【ジュリオ・チェーザレ】マリアンネ・ベアーテ・キーランド
  【クーリオ】駒田敏章
  【コルネーリア】加納悦子
  【セスト】金子美香
  【クレオパトラ】森谷真理
  【トロメーオ】藤木大地
  【アキッラ】ヴィタリ・ユシュマノフ
  【ニレーノ】村松稔之

最後に予習について、まとめておきます。

以下のヴィデオを見ました。

 グラインドボーン歌劇場 2005
  ジュリオ・チェーザレ:サラ・コノリー
  セスト:アンゲリカ・キルヒシュラーガー
  クレオパトラ:ダニエル・ドゥ・ニース
  コルネーリア:パトリシア・バードン
  アキッラ:クリストファー・モルトマン
  トロメーオ:クリストフ・デュモー
  ニレーノ:ラシッド・ベン・アブデスラム
  クーリオ:アレクサンダー・アシュワース

  演出:デイヴィッド・マクヴィカー
  指揮:ウィリアム・クリスティ
  エイジ・オブ・エンライトゥンメント管弦楽団 グラインドボーン合唱団

  収録:2005年8月14、17日 グラインドボーン歌劇場(グラインドボーン音楽祭、イギリス)

サラ・コノリーのジュリオ・チェーザレ、ダニエル・ドゥ・ニースのクレオパトラがかなり話題にのぼった公演です。指揮はバロック界で最高のウィリアム・クリスティ。素晴らしいプロダクションです。ドゥ・ニースのクレオパトラがとてもキュートです。デイヴィッド・マクヴィカーの演出も素晴らしく、隙のないオペラ公演になりました。



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ジョナサン・ノットの見事な指揮で東京交響楽団がストラヴィンスキー、シェーンベルクを会心の演奏@東京オペラシティコンサートホール 2022.10.9

昨日もほぼ、同内容の演奏を聴きましたが、今日は昨日を大きく上回る演奏に大いに感銘を受けました。

まず、素晴らしかったのは、1曲目のストラヴィンスキーのダンス・コンチェルタンテ。舞台上に並ぶメンバーを見て、あっと驚きます。いつもは前面に弦楽器奏者が並びますが、右手の前面には管楽器奏者が並びます。最前列の中央には、オーボエの荒木奏美が座り、どこか恥ずかしそうな気配です。彼女の横はフルートの相澤政宏。管楽器奏者は首席奏者たちだけがずらっと並んでいます。基本、一つの管楽器は一人ずつです。弦楽器は中央から左方に並びます。ヴァイオリン6人、ヴィオラ4人、チェロ3人、コントラバス1人、トップ奏者たちです。東響の達人たちのみが室内オーケストラを構成しています。
演奏は何とも精度の高いもの。それをジョナサン・ノットが見事な指揮で捌きます。さすがにアンサンブル・アンテルコンタンポランの音楽監督として、現代音楽の経歴を積んだ実力が発揮されます。この曲はストラヴィンスキーの新古典主義の作品ですが、東響の小気味よい演奏は来るべきジョン・アダムズのモダンな音楽を連想させます。この新古典主義の多彩な響きがミニマリズムに変われば、もうジョン・アダムズの世界ですね。少人数とは言え、弦楽アンサンブルは素晴らしい響きです。管楽器は各奏者が次々にメロディーを見事な響きでつないでいきます。いやはや、素晴らしい精鋭メンバーの室内オーケストラが見事に機能しています。この室内オーケストラでほかの曲も聴いてみたいと思っているうちにこの曲が閉じます。

次はシェーンベルクの弦楽四重奏とオーケストラのための協奏曲。昨日も聴きましたが、昨日はこのヘンデルの合奏協奏曲作品6の第7番変ロ長調を編曲したものにしては、ヘンデルの透明な美しさがなくて、満足できませんでした。ただ、この作品はヘンデルの作品を自由に編曲、発展させているもので、単なる編曲ではありません。この作品はシェーンベルクがヘンデルの作品にインスピレーションを得て書いたシェーンベルクの世界と思って、聴き直すことにします。すると、今日の演奏は実に素晴らしく、ちゃんとヘンデルの音楽も聴こえてきて、その上にシェーンベルクの音楽も重なって聴こえてきます。弦楽四重奏が小さな弦楽アンサンブルになって、さらにバックの大きな弦楽アンサンブルと2重構造のような不可思議な音楽になっているところがシェーンベルクが創造した世界です。時折、不協和音も織り交ぜながら、ヘンデルの音楽を拡張して再創造したような、バロックともモダンとも思える複雑で精妙な世界に魅了されていきます。弦楽四重奏は専門の団体を起用せずに東響のメンバーをピックアップしたことも弦楽アンサンブルの2重構造を作る上で同質性を確保することに成功しているように感じます。それに弦楽四重奏を構成する4人の演奏の見事なこと。両サイドのヴァイオリンの見事な演奏に聴き惚れました。まあ、こういう複雑なシェーンベルクの音楽では、ジョナサン・ノットの知的で精密な指揮がとても素晴らしいです。これもアンサンブル・アンテルコンタンポランの音楽監督としての経歴を思い起こさずにはいられません。いずれにせよ、昨日の演奏とはまったくレベルが異なるように感じましたが、それはsaraiの聴き手としての問題だったのでしょうか。

休憩後、後半はモーツァルトの2台のピアノのための協奏曲です。普通はピアノ協奏曲第10番とも呼ばれています。これも昨日も聴いた曲です。気のせいか、出だしから、今日は東響のアンサンブルが冴え渡り、素晴らしいモーツァルトの音楽を奏でていきます。あまりに素晴らし過ぎて、このまま、ピアノなしの演奏を聴いていたいと思うほどです。モーツァルトを指揮するときのジョナサン・ノットはちょっとお尻を突き出して、敏捷にタクトを振る様がまるでモーツァルト自身であるように感じてしまいます。無論、モーツァルトの指揮などは現代の誰も見たことはないわけで、これは単なる錯覚、思い込みですが、それほど、ぴったりとはまっています。
そうこう思っているうちにピアノ・デュオのPiano duo Sakamoto(坂本彩・坂本リサ)の二人の演奏が始まります。何故か、今日はピアノのタッチがよく聴き取れて、実に歯切れのよいピュアーなタッチであることが分かります。もしかして、ノンペダルなのかと思って観察すると、ちゃんとペダルを踏んでいます。よほど、ペダルの踏み方が適切なようで、モーツァルトに最適な切れのあるピュアーな響きで、なおかつ、ホールによく響き渡る音量も確保しています。二人の息もぴったりで音の方向性が分からなければ、どちらが弾いているか、分からないほどです。saraiの席は最前列中央なので、左右の聴き分けはできるんです。実に見事なピアノで失礼ながら、お二人で活動しているのがもったいないくらいです。ソロでモーツァルトのピアノ協奏曲を弾いてもsaraiは十分に満足できるようなレベルの演奏です。特に第1楽章と第3楽章はピアノも素晴らしく、オーケストラも素晴らしく、モーツァルトの世界を堪能しました。

今日はジョナサン・ノットの素晴らしさを再認識しました。今月、来月、再来月と立て続けにジョナサン・ノットと東響のコンサートが続くので、ワクワクします。とりわけ、R.シュトラウスの楽劇《サロメ》は今年のエポックメーキングな演奏になりそうな予感がします。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:ジョナサン・ノット(東京交響楽団 音楽監督)
  ピアノ・デュオ:Piano duo Sakamoto(坂本彩・坂本リサ)
  弦楽四重奏
   第1ヴァイオリン:小林壱成(東京交響楽団コンサートマスター)
   第2ヴァイオリン:服部亜矢子(東京交響楽団首席第2ヴァイオリン奏者)
   ヴィオラ:武生直子(東京交響楽団首席ヴィオラ奏者)
   チェロ:伊藤文嗣(東京交響楽団ソロ首席チェロ奏者)
  管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:水谷晃

  ストラヴィンスキー:ダンス・コンチェルタンテ
  シェーンベルク:弦楽四重奏とオーケストラのための協奏曲 変ロ長調(ヘンデルop.6-7による)

  《休憩》

  モーツァルト:2台のピアノのための協奏曲 変ホ長調 K.365(316a)

  《アンコール》なし



最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のストラヴィンスキーのダンス・コンチェルタンテを予習したCDは以下です。

 ロバート・クラフト指揮20世紀クラシック・アンサンブル 1999年 ニューヨーク州立大学パーチェイス校 セッション録音

シェーンベルク、ヴェーベルン、恩師ストラヴィンスキーのスペシャリストとして名高いロバート・クラフトによる演奏です。


2曲目のシェーンベルクの弦楽四重奏とオーケストラのための協奏曲を予習したCDは以下です。

 フレッド・シェリー四重奏団、ロバート・クラフト指揮20世紀クラシック・アンサンブル 2002年10月 セッション録音

ロバート・クラフトはシェーンベルクでもさすがの指揮です。


3曲目のモーツァルトの2台のピアノのための協奏曲を予習したCDは以下です。

 マレイ・ペライア、ラドゥ・ルプー、イギリス室内管弦楽団 1988年 セッション録音

2人のピアノが美しい演奏です。



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       ジョナサン・ノット,  

ベルチャ・クァルテット、さすがのベートーヴェンとシューベルト@トッパンホール 2022.10.10

今年は海外からの現代を代表する弦楽四重奏団の来日が相次いでいます。これまでコロナ禍で聴けなかった残念な思いが一掃されます。エベーヌ・クァルテット、タカーチ・クァルテットなど、さすがの素晴らしい演奏に唸らされました。今日はいよいよベルチャ・クァルテット。期待が高鳴ります。

ベルチャ・クァルテットはルーマニア出身のヴァイオリニスト、コリーナ・ベルチャ率いるイギリスのクァルテットですが、現在のメンバーにはイギリス人は一人もいないというインターナショナルな団体になっています。まあ、イギリスのクァルテットの血を引き継いでいるとも言えるのかもしれません。

前半はベートーヴェンの弦楽四重奏曲第7番《ラズモフスキー第1番》。第1楽章はチェロの弾く英雄的なテーマで始まりますが、今ひとつ、響きが弱い感じです。ベルチャのヴァイオリンが加わり、徐々に響きがよくなりますが、もうひとつです。テンポはやや早めで颯爽とした演奏ではあります。第2楽章に入り、エンジン全開で響きがよくなり、演奏も熱を帯びてきます。さすがの演奏です。ただ、演奏自体は申し分ありませんが、心の琴線にふれてくるところがもう一つ。予習で聴いた彼らの凄い演奏に比べると、期待通りではありません。第3楽章の美しい演奏も素晴らしいのですが、ベートーヴェンの後期を思わせるような深さには至っていません。
結局、彼らのCDの出来に比べて、70~80%の出来でしょうか。絶好調の演奏には感じられません。もちろん、一般のレベルから言えば、十分以上の出来ですが、彼らの実力はこんなものではないでしょう。

後半はシューベルトの弦楽四重奏曲第14番《死と乙女》。これは第1楽章から素晴らしい響きで激しい演奏を聴かせてくれます。激しさだけでなく、実に繊細で完璧な演奏です。第2楽章の有名な《死と乙女》の伴奏旋律をもとにした抒情的な音楽も見事です。激しく燃え上がったり、狂おしく悶えるような圧巻の演奏です。第3楽章も第4楽章も完璧で熱い演奏に感動します。シューベルトの孤高の魂を具現化するような素晴らしい演奏でした。ただし、彼らのレベルでは当然の演奏かもしれません。最近聴いたばかりのタカーチ・クァルテットのような衝撃は受けませんでした。

むしろ、アンコールで弾いたベートーヴェンのカヴァティーナ、ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第3番、ドビュッシーの弦楽四重奏曲のほうがあっけにとられるほど、素晴らしい演奏でした。特にショスタコーヴィチ、ドビュッシーの素晴らしさは彼らの実力をまざまざと示すものでした。トッパンホールで3日間シリーズでもやってくれれば、彼らの本当の実力が発揮されたかもしれません。また、再度の来日を期待しましょう。


今日のプログラムは以下です。

  ベルチャ・クァルテット
   コリーナ・ベルチャ(ヴァイオリン)
   アクセル・シャハー(ヴァイオリン)
   クシシュトフ・ホジェルスキー(ヴィオラ)
   アントワーヌ・レデルラン(チェロ)

  ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第7番 ヘ長調 Op.59-1《ラズモフスキー第1番》

   《休憩》

  シューベルト:弦楽四重奏曲第14番 ニ短調 D810《死と乙女》

   《アンコール》

  ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第13番 変ロ長調 Op.130より 第5楽章 Cavatina
  ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第3番 ヘ長調 Op.73より 第3楽章 Allegro non troppo
  ドビュッシー:弦楽四重奏曲 ト短調 Op.10より 第3楽章 Andantino, doucement expressif

最後に予習について、まとめておきます。

ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第7番《ラズモフスキー第1番》を予習したCDは以下です。

  ベルチャ・クァルテット 2011-2012 年、オールドバラ、スネイプ・モルティングス、ブリテン・スタジオ セッション録音

現代のベートーヴェンの弦楽四重奏曲のスタンダードとも思える完璧で切れ込みのある演奏です。全集盤からの1枚です。


シューベルトの弦楽四重奏曲第14番《死と乙女》をはタカーチ・クァルテットで聴いたばかりなので、予習していません。



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クァルテット・インテグラにはバルトークが似合う、そして、ウェーベルンも凄い!@鶴見サルビアホール3F音楽ホール 2022.9.30

ミュンヘンのコンクールで2位入賞を果たしたクァルテット・インテグラ。その成長ぶりが体感できたコンサートでした。

何と言っても、後半のバルトーク、熱い演奏でした。やはり、クァルテット・インテグラの若々しい演奏でのバルトークは凄まじいエネルギーを感じました。そして、メストの悲哀のこもった演奏もその真摯さが伝わる演奏でした。メストに始まり、第1楽章から第3楽章までのエネルギーの爆発の末、第4楽章はメストの悲哀と熱い情熱の昂ぶりに満ちた感動の演奏でした。

前半のハイドンの弦楽四重奏曲 第36番 Op.50-1も実に楽趣に満ちた演奏で、彼らが心から音楽を愛し、楽しんでいる様に魅了されました。素晴らしいハイドンでした。
続くウェーベルンの2曲は後期ロマン派の濃密な抒情から、ウェーベルンの究極とも思える切り詰め、凝縮した音楽まで、素晴らしく描き分けた演奏でした。アンコールでいみじくも今日はウェーベルン祭りと宣言した通り、再び、ウェーベルンのまだ切り詰めていない濃厚な中に無調の響きが炸裂する音楽をいかにも若武者らしく奏で切って、聴くsaraiも年甲斐もなく、興奮してしまいました。まるでバルトークの音楽の出現を予告するような凄まじい音楽を聴いて、まぶしい思いに駆られました。

いやはや、今日はプログラムの構成も素晴らしく、演奏も若さとエネルギーの燃えたぎるもので、何も言うことがありません。若者よ! 荒野を目指せ!


今日のプログラムは以下です。

  弦楽四重奏:クァルテット・インテグラ
   三澤響果 vn  菊野凜太郎 vn 
   山本一輝 va  築地杏里 vc

  ハイドン:弦楽四重奏曲 第36番 Op.50-1
  ウェーベルン:弦楽四重奏のための緩徐楽章
  ウェーベルン:弦楽四重奏のための6つのバガテル Op.9

   《休憩》

  バルトーク:弦楽四重奏曲第6番 Sz.114

   《アンコール》
   ウェーベルン:弦楽四重奏のための5つの楽章 Op.5 から 第1楽章 激しい動きで(Heftig bewegt)


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のハイドンの弦楽四重奏曲は曲目変更になったので、予習していません。

2~3曲目のウェーベルンは以下のCDを聴きました。

 ラサール弦楽四重奏団 1968年、1970年 ミュンヘン セッション録音

ラサール弦楽四重奏団の新ウィーン楽派の弦楽四重奏曲集は永遠の金字塔です。


4曲目のバルトークの弦楽四重奏曲第6番は以下のCDを聴きました。

 タカーチ弦楽四重奏団 1996年8月25-30日、9月9-13日 ノイマルクト、ライトシュターデル セッション録音
 
素晴らしいバルトーク。名演です。



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       クァルテット・インテグラ,  

尾瀬散策:上田代を抜けて、川上川

2022年8月25日(木)@尾瀬/16回目

尾瀬、2日目です。
尾瀬ヶ原の美しい自然を楽しんだ後、ほどほどのところで引き返します。牛首分岐まであと10分くらいのところでした。
一路、山ノ鼻に向けて、戻ります。上田代の池塘の風景の中を歩いていきます。
木道まわりにはアブラガヤが繁っています。

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アブラガヤには油色の花穂が垂れ下がっています。

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池塘にはヒツジグサが可憐な花を咲かせています。

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草原の中に白い綿状の花穂が見えます。サギスゲですね。

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こちらはお馴染みのワレモコウ。

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後ろを振り返ると、木道の先に相変わらず山頂が雲に隠れた燧ケ岳(ひうちがたけ)の姿が見えています。木道は我々と同様に山ノ鼻に向かう人たちがやってきます。鳩待峠に戻るのでしょう。

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木道を進む先にはダケカンバの林があります。いったん、草原の景色が終わりますね。

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草原には、ちらほらとサギスゲの白い穂が見えます。

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木道の下には水芭蕉の群落があります。

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木道は林の中を抜けていきます。

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林を抜けると、周り一帯はアブラガヤが繁っています。

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また、水場に水芭蕉の群落があります。

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マルバダケブキが咲いています。

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やがて、川上川に架かる小さな橋が見えてきます。

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もうすぐ、山ノ鼻ですね。慣れた道は、どんどん進めます。



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尾瀬散策:尾瀬ヶ原に別れを告げて、山ノ鼻に到着

2022年8月25日(木)@尾瀬/17回目

尾瀬、2日目です。
尾瀬ヶ原の美しい自然を楽しんだ後、ほどほどのところで引き返します。牛首分岐まであと10分くらいのところでした。
一路、山ノ鼻に向けて、戻ります。上田代の池塘を過ぎ、川上川までやってきました。
先ほど渡ってきた川上川を再び、渡って戻ります。もう、山ノ鼻も10分ほどでしょう。

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川上川を渡ると、その先は尾瀬ヶ原の最後の草原が広がっています。

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渡った橋は(原の)川上川橋です。山ノ鼻の先、鳩待峠に向かうと、もう一度、川上川を渡りますが、その橋は(山の)川上川橋です。

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橋を渡り終えて、草原の中の木道を進みます。至仏山はすっぽりと雲に覆われています。

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草原の中ほどまでやってきました。

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まわりの草原には、アブラガヤが繁っています。

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後ろから子供たちの一行がやってきます。saraiはノロノロ歩きですから、道を譲って、先に行ってもらいましょう。

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子供たちの後ろ、少し離れて付いていきましょう。

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周りの草原には、ますます、アブラガヤが多くなってきます。

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そのアブラガヤの草原の中、黙々と子供たちの後を追うように歩いていきます。

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草原に黄色い花が咲いています。オゼミズギクです。尾瀬の湿原に咲くキク科の花です。

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白い花も咲いています。ゴマナですね。キク科 シオン属の花です。名前の由来は、ゴマ(胡麻)に似た葉をしていることから、ゴマナ(胡麻菜)となったそうです。

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木道添いの小さな草花を愛でているうちに、山ノ鼻のビジターセンターに戻ってきました。相変わらず、賑わっています。ソフトクリームとアイスコーヒーで疲れを癒します。価格は高いですが、ここまで運んでくれた人のことを考えると、決して高くはありませんね。

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鳩待峠に登って行く前に少し休んでいきましょう。



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尾瀬散策:山ノ鼻から鳩待峠に向かって出発

2022年8月25日(木)@尾瀬/18回目

尾瀬、2日目です。
尾瀬ヶ原の美しい自然を楽しんだ後、ほどほどのところで引き返します。牛首分岐まであと10分くらいのところでした。
帰り道は順調に山ノ鼻まで戻ってきました。結局、尾瀬ヶ原は2時間ほどの散策になりました。

ここでしばしの休息をとります。みなさんも寛いでいます。いいですね、尾瀬の休日!

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木道の下からは、キンミズヒキが顔を覗かせていますね。

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さあ、十分に休息したので、山ノ鼻を後にして出発します。ビジターセンターの前を通り過ぎます。

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鳩待峠に向かって、歩き始めます。まずはダケカンバの林を抜けていきます。

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川上川の橋が見えてきます。

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(山の)川上川橋です。さきほど、尾瀬ヶ原で(原の)川上川橋を渡ったばかりですが、再び、川上川を渡ります。

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橋の上から、清流の流れを眺めます。

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これは反対側の流れです。

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橋を渡り終えて、木道を進むと、お馴染みの紫色のソバナと黄色いマルバダケブキが迎えてくれます。

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これはソバナに似ていますが、ツリガネニンジンですね。

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このあたりはマルバダケブキの群落です。

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まだ、このあたりの川上川沿いの木道は勾配も緩やかで、花を愛でながら、余裕で歩けます。鳩待峠まではまだ、3kmほどあります。1時間半以上はかかるでしょう。無理をせずに歩いていきます。



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田部京子と上岡敏之の最高のベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番 新日本フィルハーモニー交響楽団@すみだトリフォニーホール 2022.10.15

1昨年はコロナ禍での代役とは言え、田部京子が弾くベートーヴェンのピアノ協奏曲を聴く機会が多くて、その素晴らしい演奏に魅了されました。今回も代役ですが、コロナ禍は関係なく、ラルス・フォークトの突然の死によってのものです。彼のご冥福をお祈りします。ともあれ、田部京子の名作が聴けるとのことで、急遽、このコンサートに駆けつけることにしました。田部京子が代役で演奏することを教えてくれて、チケット購入の便宜を図ってくれたお友達のSteppkeさんに感謝します。期待通りの素晴らしい演奏でした。

その演奏について、早速、感想を書いてみます。
ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番の第1楽章はピアノ独奏から始まります。田部京子はいつも通りの丁寧で繊細なピアノ演奏です。続いて、オーケストラの演奏が始まります。抑えた演奏から徐々に熱を帯びてきます。上岡敏之の音楽の持っていきかたの素晴らしさに感銘します。失礼ながら、こんなに素晴らしい指揮をするとは思っていなかったので、驚きました。この後も上岡敏之の素晴らしい指揮でベートーヴェンを堪能しました。田部京子のピアノは絶好調。テクニックも音楽性も文句ないレベルですっかり魅了されます。第1楽章のカデンツァは実に素晴らしい演奏。最高の演奏で魅了してくれます。トリルの見事さには脱帽です。それに音楽だけでなく、彼女の鍵盤の上を走る手の動きの美しさにも感銘を覚えます。

第2楽章は田部京子の独壇場のピアノ演奏です。オーケストラの強奏とナイーブなピアノ独奏が交互に続くベートーヴェンの独創的な音楽で、田部京子の抒情味豊かなピアノの響きが心を打ちます。オーケストラの激しい荒波に耐える一輪のか弱い花が美しい歌を歌い上げます。究極の弱音(ピアノ)の美しさが見事過ぎます。そして、その果てに田部京子だけが表現できる美しい詩情が高潮します。さらに素晴らしいトリルで音楽は絶頂を迎えます。感動の第2楽章でした。思わず、脳裏に少女時代のマルタ・アルゲリッチがクラウディオ・アラウの演奏を聴いて、この同じ部分で音楽とは何かということを初めて悟ったという逸話が浮かび上がります。アルゲリッチはその後、この曲の演奏を封印したそうです。多分、今でも弾いていないのではないでしょうか。確かに録音で聴くアラウの演奏の素晴らしさは極め付きと言えますが、今日の田部京子の美しい詩情はそれ以上にも思えます。

第2楽章から第3楽章への移行も素晴らしいです。田部京子と上岡敏之の息もぴったり合って、第3楽章が始まります。第3楽章は一転して、切れのよいピアニズムで進行します。そして、圧巻のフィナーレ。終わってみれば、これ以上はない最高のベートーヴェンでした。田部京子のピアノも最高でしたが、上岡敏之のサポートの素晴らしかったこと! 彼はこんなに素晴らしい指揮者だったのですね。新日フィルの音楽監督を去ったことが今更ながら、残念に思えます。

さて、前半の冒頭のモーツァルトのフルートとハープのための協奏曲ですが、フルートの上野星矢は低域から高域まで素晴らしい響きで、レガートの美しさはもとより、タンギングの歯切れのよさまで、完璧な演奏でした。ハープの山宮るり子も素晴らしい演奏で、お二人の演奏は見事としか言えません。以前聴いたエマニュエル・パユとマリー=ピエール・ラングラメの素晴らしかった演奏にもひけをとらないレベルの演奏でした。

後半はブラームスの交響曲第2番。これが何とも素晴らしい演奏。ここでも上岡敏之の指揮に感銘を覚えます。ぴたっとはまったブラームスの音楽表現。少し金管の音色が明る過ぎるきらいはありますが、弦の美しい表現には絶句します。音楽が高潮するときの上岡敏之の熱く燃え上がる指揮にオーケストラだけでなく、saraiの心も鼓舞されます。ヴェルター湖のほとりの町、ペルチャッハの美しい自然を彷彿とさせる演奏です。ドイツでの生活が長い上岡敏之の心に沁みついたブラームスの音楽表現なのかなと思いつつ、ロマン派の音楽を堪能しました。ブラームスの交響曲の全曲を聴いてみたい気持ちになっています。

今日のコンサート、どの演奏も大変、満足しました。いつもこんなレベルのコンサートを聴かせてくれるのならば、新日フィルの定期会員になりたいくらいです。でも、上岡敏之は既に音楽監督の座を退いたのですね。残念です。

さて、今日はこの後、サントリーホールに移動して、この日2度目のコンサートです。ジョナサン・ノット指揮の東響の演奏で期待のショスタコーヴィチの交響曲第4番を聴きます。実は一期一会のもの凄い演奏を聴くことになりますが、その記事は別稿でご報告します。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:上岡敏之(新日本フィル 第4代音楽監督)
  フルート:上野星矢
  ハープ:山宮るり子
  ピアノ:田部京子
  管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団  コンサートマスター:崔文洙

  モーツァルト:フルートとハープのための協奏曲 ハ長調 K.299
  ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 Op.58

   《休憩》

  ブラームス:交響曲第2番 ニ長調 Op.73


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のモーツァルトのフルートとハープのための協奏曲は以下のCDを聴きました。

 ジャン=ピエール・ランパル、リリー・ラスキーヌ、ジャン=フランソワ・パイヤール指揮パイヤール室内管弦楽団 1963年 セッション録音
 
定番中の定番。saraiが子供の頃から慣れ親しんでいる演奏を久しぶりに聴きました。懐かしい演奏を聴き、満足しました。


2曲目のベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番は以下のCDを聴きました。

 クラウディオ・アラウ、ベルナルト・ハイティンク指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 1964年4月 アムステルダム、コンセルトヘボウ セッション録音
 
アラウの旧盤です。この20年後にデイヴィスとドレスデン・シュターツカペレと共演した録音もあります。あえて、若い頃、と言っても60代ですが、十分なテクニックがあったころの演奏を聴きました。美しいピアノの響き、そして、溜めの効いた演奏が見事です。


3曲目のブラームスの交響曲第2番は以下のCDを聴きました。

 オットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団 1956年10月 セッション録音
 
クレンペラーと言うと、無骨なイメージがありますが、とても美しいロマンに満ちた演奏です。最近、クレンペラーを再評価して、よく聴くようになってきました。



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       田部京子,  

ジョナサン・ノットのショスタコーヴィチの交響曲第4番を聴く喜び! 東京交響楽団@サントリーホール 2022.10.15

これは昨日聴いたコンサートです。この日、2回目のコンサート。トリフォニーホールから、地下鉄を乗り継いで、サントリーホールに移動しました。

今月は毎週、ジョナサン・ノット指揮の東響が聴けて、とても喜ばしいことです。それに今日は期待のショスタコーヴィチの交響曲第4番が聴けます。そして、その演奏はsaraiの期待を大きく上回り、一期一会とも思える凄まじいものでした。この曲は秘かにショスタコーヴィチの交響曲の中で最高傑作だと思っていましたが、今日の演奏でそれが確信できました。

休憩をはさんで、後半がショスタコーヴィチの交響曲第4番です。有名な第5番のひとつ前の交響曲ですが、そのあまりに先鋭さのため、ソ連の体制が雪解けに向かうまで、何と25年も発表されなかった、いわくつきの交響曲です。大編成のオーケストラが対向配置でステージにあふれるほど並んでいます。
曲の構成は長大な第1楽章、第3楽章と短めの第2楽章から成ります。第1楽章はいきなり金属的な大音響で開始されます。明確な強いリズムを刻みながらぐいぐいと音楽が進んでいきます。大編成のオーケストラの音響の洪水です。やはり、ジョナサン・ノットがコントロールする東響のサウンドは今日は実に快調に鳴り、大音響にもかかわらず、よく揃った素晴らしい響きです。そして、抑えるべきところはぐっと抑え、それでもしっかりと引き締まった音響です。東響の響きはまさに絶好調。ジョナサン・ノットが振ると東響の響きは一段も二段も上のレベルに駆け上がります。ところで、音響の素晴らしさはもちろんのこと、ノットの音楽表現は実に真摯なもので、この音楽の真髄を示すような素晴らしさです。第1楽章はソナタ形式なんだそうですが、曲の構成が複雑で明快なものではありません。しかし、今日のような説得力のある演奏では、そんなことは問題ではなく、saraiの音楽受容力のすべてを集中して、音楽に浸り込みます。第1楽章の後半はプレストになり、弦楽合奏のものすごいスピードの演奏でスリリングです。東響の素晴らしいヴァイオリン奏者たちの技量が存分に発揮されます。ヴィオラもチェロも凄まじい勢いの演奏です。それでいて、きっちりとアンサンブルが整っているというまさに入神の演奏に圧倒されます。音楽的本質はどこにあるのか、難しいところですが、音響とリズムを融合した音楽表現はともかく究極のものです。あまりの凄さに興奮状態にいると、第2ヴァイオリン奏者の女性が倒れて、意識を失ったようです。スタッフのかたが急遽、彼女を舞台から運び出しましたが、ご無事なことをお祈りするばかりです。ノットはそんな状況下でも演奏を続行して、凄まじい演奏を繰り広げます。saraiは心中、動揺しますが、どうすれば、この場合、正解なのかは分かりません。ただ、ノットとて、色んな考えが錯綜した筈で、ただただ、音楽にかける厳しい情熱はきっと命がけのものだろうと想像して、saraiも気持ちを入れ換えて、音楽に集中することにします。saraiも単なるエンターテインメントとしての音楽を聴いているわけではなく、人生のすべてをこの音楽芸術に捧げているつもりです。それは東響のメンバーの方も同じ思いの筈で、だからこそ、気持ちの動揺を抑えて、演奏に集中しているんでしょう。saraiは気合いを入れ直して、第1楽章の残り、4分の1ほどを聴き終えます。

第2楽章はそれまでに比べると、優美とも言っていいメロディアスな音楽です。途中、音響の炸裂はありますが、構成もシンプルで、東響の演奏も美しい響きを奏でます。

第3楽章はラルゴのゆったりした旋律で長閑な開始です。葬送的とも言えますが、そんなに深刻ではありません。途中からアレグロのトッカータ風スケルツォに変わり、また、第1楽章のように推進力の強い音楽が展開されます。魔笛やカルメンの断片も織り交ぜ、実に複雑な音楽です。次いで緩やかな舞曲が展開されます。最終部にはいると、ティンパニの連打に続き、金管のコラールあるいはファンファーレが炸裂、ものすごい音響の嵐です。そして、突然、嵐がすっと引き、穏やかで瞑想的な部分が始まります。ある意味、この交響曲のクライマックスとも言えます。ジョナサン・ノットの素晴らしい音楽表現が冴えて、静謐に音楽を閉じます。

いやはや、参りました。ジョナサン・ノットと東響の演奏をずっと聴いてきましたが、今日はその総決算とも言っていい最高にして究極の演奏でした。そうそう、コンサートマスターの小林壱成のヴァイオリンのソロはとても素晴らしかった。さすがです。

前半のラヴェルの道化師の朝の歌(管弦楽版)も高い精度の演奏で東響のアンサンブルに聴き惚れました。ラヴェルの歌曲集「シェエラザード」はソプラノの安川みくの緊張感高い歌唱でしたが、もう少し、伸びやかさがほしいところでした。今後の成長を待ちたいものです。


今日のプログラムは以下のとおりでした。

  指揮:ジョナサン・ノット
  ソプラノ:安川みく
  管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:小林壱成

  ラヴェル:道化師の朝の歌(管弦楽版)-鏡より
  ラヴェル:歌曲集「シェエラザード」

  《休憩》

  ショスタコーヴィチ:交響曲 第4番 ハ短調 Op.43


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のラヴェルの道化師の朝の歌(管弦楽版)を予習したCDは以下です。

  アンドレ・クリュイタンス指揮パリ音楽院管弦楽団 1961~62年 セッション録音

素晴らしい演奏です。


2曲目のラヴェルの歌曲集「シェエラザード」を予習したCDは以下です。

  マグダレナ・コジェナー、サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 2012年1月 ベルリン、フィルハーモニー ライヴ録音
 
コジェナーはもともと独特の音楽的表現力に長けていましたが、こんなに美声だったでしょうか。夫君のラトル指揮ベルリン・フィルの伴奏も万全です。思わず、聴き入りました。素晴らしい!


3曲目のショスタコーヴィチの交響曲 第4番を予習したCDは以下です。

  コンドラシン指揮モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団 1962年 セッション録音

コンドラシン指揮モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団はその前年に25年間、お蔵入り(実際はショスタコーヴィチの抽斗の中?)していたこの作品を初演したコンビ。当時、スターリンが死に、いくら雪融けって言っても、いわくつきの作品の演奏はソヴィエト体制下ではリスクがあった筈です。あっぱれ!コンドラシン。その気概が乗り移ったような迫力と抒情に満ちた名演です。この演奏は一度は聴かないといけないでしょうね。



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       ジョナサン・ノット,  

春の祭典 完全版 なのか! クラウス・マケラ&パリ管弦楽団@サントリーホール 2022.10.17

今日は本当は昨日聴いた95歳の超高齢の巨匠、ブロムシュテットのもう2度と聴けないであろうマーラーの交響曲第9番のコンサートの記事を書くつもりでしたが、それは明日書くことにして、今日聴いた弱冠26歳のクラウス・マケラ率いるパリ管弦楽団の恐るべきコンサートについて書きます。明日もサントリーホールで同じコンビのコンサートがありますが、財政的事情であえて、今日のコンサートを選びました。明日はアリス=紗良・オットの注目すべきラヴェルのピアノ協奏曲がありますが、今日のコンサートでマケラの指揮するストラヴィンスキーの春の祭典をどうしても聴きたかったので、今日にしました。その思いは完全に叶えられました。まさにこれこそ、春の祭典の完全版(そんなものはありませんけどね)だという凄い演奏が聴けました。

前半はドビュッシーとラヴェル。まず、ドビュッシーの交響詩《海》。これはsaraiの苦手の曲です。何となく、とりとめがないように思えてしまうんです。今日の演奏は色彩感あふれる演奏でとても聴き映えがします。特に大音響で鳴り響くところは少し心を揺さぶられます。この曲のとっかかりが掴めたような気がします。何と言っても音の響きが斬新であることに気づかされました。何と言うか、一種の現代音楽のように音の響きを楽しめばよいのではないかと思えました。海の風景をイメージしていたら、だめなんですね。それにしても、マケラの表現は実に新鮮さにあふれています。

次はラヴェルのボレロ。これもちょっと期待して聴きます。しかし、最初のほうのソロ楽器が同じ旋律を演奏する部分、これは誰が指揮しても同じですね。事実、最初のフルートの演奏ではマケラは手を下ろして、指揮していません。弦楽器のアンサンブルが登場して、ちょっと様子は変わります。何か、いつもとは違う印象です。そして、トゥッティで全楽器が演奏し始めると、物凄い迫力。これまで聴いたことのないような世界になります。しかも、マケラは指揮台上でもう素晴らしい踊りを舞っています。マケラの引き締まった体躯によるバレエもどきを鑑賞しつつ、とてつもないフィナーレを迎えます。今までは中途半端なミニマル音楽のはしりとしか思っていなかったボレロですが、全然、ミニマル音楽とは無縁であることが分かりました。それにシャルル・ミュンシュのように終盤のテンポを上げることなく、切れと響きの重層構造でここまで音楽を高潮させるとは恐るべき才能としか言えません。きっと2度と聴けないボレロです。凄過ぎる演奏でした。

休憩後、いよいよ、今日のメイン、ストラヴィンスキーの春の祭典です。冒頭はファゴットの非常に高音域の演奏で古い民謡調の有名な旋律が流れます。さすがにパリ管の管の響きは魅了されます。管のソロを中心に組み立てたパートの素晴らしい演奏が続き、いよいよ、弦のガッガッガッ・・・という蒸気機関車の推進音のような響きが始まります。えっ、意外に抑えた演奏で物凄い響きではありません。少し、肩すかし。しかし、これも計算の上みたい。第1部は時折、凄い音響で高潮しますが、最後の大地の踊りのフィナーレでがーっと盛り上がって、いったん、終了。第2部もおとなしめに展開していきます。すべては最後の生贄の踊り(選ばれし生贄の乙女)に向かって収斂していきます。ここが凄かった! 音響の凄まじさにも圧倒されますが、変拍子の連続で頭がおかしくなるようなリズムの狂乱。一体、どんな構造になっているのか、驚嘆せずにはいられない音楽です。今まで、この曲の何を聴いてきたのか・・・これが春の祭典の完全版なんですね。驚嘆とショックではらわたが煮えくり返るような衝撃を受けます。作曲したストラヴィンスキーが凄いのか、それを完璧に演奏するマケラが凄いのか。これ以上聴いていたら、こちらのほうが生贄になりそうなところで圧巻のフィナーレ。まさに題名通り、生贄の踊りで踊り狂った乙女は死に至るでしょう。音楽表現の究極を聴きました。

クラウス・マケラ凄し! クルレンツィスも凄いですが、これからの音楽界はクラウス・マケラの世界になるという確信を持ちました。生きているうちにこういうものを聴けて、よかった・・・。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:クラウス・マケラ
  管弦楽:パリ管弦楽団  コンサートマスター:千々岩英一

  ドビュッシー:交響詩《海》管弦楽のための3つの交響的素描 La Mer, trois esquisses symphoniques pour orchestre
   第1楽章「海上の夜明けから真昼まで」De l'aube à midi sur la mer
   第2楽章「波の戯れ」Jeux de vagues
   第3楽章「風と海との対話」Dialogue du vent et de la mer
  ラヴェル:ボレロ Boléro

   《休憩》

  ストラヴィンスキー:春の祭典 Le Sacre du printemps
   第1部 大地の礼賛
    序奏
    春のきざし(乙女達の踊り)
    誘拐
    春の輪舞
    敵の部族の遊戯
    長老の行進
    長老の大地への口づけ
    大地の踊り
   第2部 生贄の儀式
    序奏
    乙女の神秘的な踊り
    選ばれし生贄への賛美
    祖先の召還
    祖先の儀式
    生贄の踊り(選ばれし生贄の乙女)

   《アンコール》
  ムソルグスキー:『ホヴァーンシチナ』より  前奏曲『モスクワ川の夜明け(Рассвет на Москве-реке)』



最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のドビュッシーの交響詩《海》は以下のCDを聴きました。

 ジャン・マルティノン指揮フランス国立放送管弦楽団 1973年 セッション録音

なかなかよい演奏です。スタンダードにしてもよいでしょう。


2曲目のラヴェルのボレロは以下のCDを聴きました。

 シャルル・ミュンシュ指揮パリ管弦楽団 1968年9月 パリ、サル・ワグラム セッション録音
 
終盤の盛り上がりは凄まじいものです。決定盤と言えるでしょう。


3曲目のストラヴィンスキーの春の祭典は以下のCDを聴きました。

 テオドール・クルレンツィス指揮ムジカエテルナ 2013年10月7日~9日 ケルン、シュトルベルガー・シュトラーセ 7 セッション録音

天才指揮者、マケラの予習ですから、やはり、天才指揮者の演奏を聴かないといけないでしょう。クルレンツィスはやはり、とんでもない凄い演奏を聴かせてくれます。



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       マケラ,  

永遠の別離を告げるようなブロムシュテットのマーラー9番 NHK交響楽団@NHKホール 2022.10.16

指揮者は80歳を過ぎてからが本当の真価を聴くことができるというのがsaraiの信念というか、思い込みのようなものです。ましてや、今日のブロムシュテットのように90歳を過ぎてもなお指揮が続けられるというのは驚愕ものだと思っていたら、何と彼は既に95歳。95歳の指揮者のマーラーの交響曲第9番を聴くのはもちろん、初めてです。どんな演奏を聴かせてくれるんでしょう。聴かずにはいられない思いでこのコンサートに足を運びました。

90歳を超えてもかくしゃくとしていたブロムシュテットもさすがに今日はコンサートマスターの篠崎史紀に手を取られての登場です。そして、指揮台上の椅子にどっかと腰を下ろします。思えば、4年前のザルツブルグ音楽祭でウィーン・フィルを振ったときは当時のsaraiよりもしっかりした歩き方をしていました。そして、立ったままの指揮で素晴らしいシベリウス(2番)とブルックナー(4番)を聴かせてくれました。
すぐに演奏が始まります。ほとんど手を動かさないでの指揮です。ブロムシュテットは若い頃から地味で淡々とした指揮でしたから、これでさほど指揮が枯れたというわけではありませんが、手の動きがぎこちないせいか、N響のアンサンブルはもうひとつ揃っていません。マーラーの交響曲第9番は、いつも精密な演奏ばかり聴いてきたので、saraiはなかなか、演奏に入り込めません。時折、手を大きく振るときはアンサンブルが揃うような気がしますが、気のせいかもしれません。まあ、そんなにいうほどアンサンブルが悪いわけではなく、時折、もたつくと言ったほうが正確かもしれません。それでも第3楽章に入ると、アンサンブルが精彩を取り戻します。第4楽章に期待を持たせるような雰囲気です。第4楽章のアダージョが始まります。実はそんなに集中できずに聴いていたのですが、とても美しい弦楽のアンサンブルの演奏が展開されます。saraiは驚いて、ブロムシュテットの指揮を眺めると、それまで小さな動きだった手がゆったりと大きく振られています。見違えるような美しい弦の響きが続きます。これこそ、saraiの最愛のマーラーの第9番です。ますます、振幅の大きい弦楽合奏が続き、saraiの気持ちも一気に飛翔します。弱音の弦楽合奏も美しく、無論、高潮していくと魂を揺さぶられます。音楽の高潮も収まり、木管のソロがリレーするパートに入っていきます。クラリネットが高音で演奏するあたりからはその美しい音色にうっとりと聴き惚れます。そして、弦楽セクションが引き継いで、大きな高まりを作っていきます。その頂点で弦楽器群がユニゾンでゆったりと緊張感を持って、下降するあたりで、聴いているsaraiも手にぐっと力が入り、音楽と一体化していきます。そして、音楽が沈静化し、終結部に向かっていきます。チェロのソロが愛の動機を演奏し、弦楽セクションの極めて繊細で優しい弱音の極致のパートにはいっていきます。緊張感の高いアンサンブルはずっと続いていきます。マーラーの愛の終焉、そして、自然や人生への告別・・・薄明の世界です。これはブロムシュテットの別れの音楽でしょうか。白鳥の歌を聴くようにただただ、最後の告別を待ちます。長い長い、そして、美の極致のような弦楽セクションの弱音が続いていきます。人間の呼吸がだんだん浅くなるように音楽も呼吸しながら、弱まっていきます。やがて、永遠の静寂・・・この先には何もありません。ただ、永遠の時間が待ち受けるのみです。これがブロムシュテットが日本の聴衆に向けて残してくれた最後のメッセージのように思えます。
感謝・・・それだけです。


今日のプログラムは以下のとおりでした。

  指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット
  管弦楽:NHK交響楽団 コンサートマスター:篠崎史紀

  マーラー/交響曲 第9番 ニ長調


もはや、この曲は予習していません



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尾瀬散策:ダケカンバの林の中を鳩待峠へ

2022年8月25日(木)@尾瀬/19回目

尾瀬、2日目です。
尾瀬ヶ原の美しい自然を楽しんだ後、ほどほどのところで引き返します。牛首分岐まであと10分くらいのところでした。
帰り道は順調に山ノ鼻まで戻り、ここでしばしの休息をとった後、鳩待峠に向かって、ハードな道を登ります。
まだ、川上川沿いの緩やかな道を余裕で花を愛でながら歩いているところです。木道の間から、ソバナが顔を覗かせています。

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この白い花はシラネセンキュウでしょうか。

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これはシシウドかな。

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これはまたマルバダケブキです。

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ダケカンバの林の中の木道を黙々と進んでいきます。

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このあたりは緩やかな登りなので、気持ちのよい散策になります。

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林の樹木の上はすっかり明るくなっています。薄曇りという歩きやすい気候です。

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ダケカンバの林がしばらく続きます。

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やがて、大きな岩で木道が二つに分かれているポイントに戻ってきます。

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大岩を通り過ぎて、もう一度振り返って、この巨大な岩塊を眺めます。凄いですね。

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ようやく密集した林を抜けて、開けたところに出てきます。

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こんな山奥にも電柱が立っています。東電の送電線が尾瀬ヶ原に電気を供給しているのかしらね。

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自然を守りつつも文明の力はやはり必要なのでしょう。
少しずつ、木道は傾斜が登りにかかってきます。踏ん張りどころです。まだ、鳩待峠まで1時間以上の行程はあるでしょう。



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期待の若手、金川真弓のヴァイオリン・リサイタル@東京文化会館小ホール 2022.10.20

若手の新鋭ヴァイオリニスト、金川真弓の演奏に期待して、足を運びました。今日も超美麗なヴァイオリンの響きに酔い痴れましたが、課題もありました。

今日の演奏ですが、最初のJ.S.バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第3番はさすがに素晴らしい響きの演奏です。音楽性も豊かですが、何か、もうひとつ、気魄というか、厳しさというか、これが金川真弓のバッハの無伴奏だという主張がほしいところです。何と言っても、ヴァイオリン音楽の聖典とも言えるものですから、聴き方も注文が厳しくなります。素晴らしい演奏ではあったんです。だけど、彼女ならもっと精進してほしいと願いたいところです。

次の武満徹の妖精の距離は圧巻の素晴らしい演奏。短い曲ですが、彼女の美点がすべて出ていました。冒頭の伸びやかなヴァイオリンの響きを聴いただけで、ぐっと魅了されました。武満徹の音楽がこんなに素敵に演奏されるなんて・・・もう、うっとりして聴き入りました。

次のドビュッシーのヴァイオリン・ソナタは武満徹の妖精の距離と引き続いて演奏されます。それはsaraiも納得です。常々、この両者は音楽性に親近さがあると思っていたので、セットで演奏するのもいいでしょう。で、ドビュッシーも武満と同様に素晴らしい演奏で始まりますが、さすがに武満のように高いレベルの演奏というわけにはいきませんでした。フランス音楽のエスプリという得体のしれないものがもう一つ表現しきれていなかったようです。もっと思い切り踏み込んだ演奏をしてほしかったところです。

後半のベートーヴェンのクロイツェルは一番課題の残った演奏になりました。超有名曲の宿命として、よほどの演奏、それも個性的な演奏をしないとなかなか満足できません。ベートーヴェンのピアノ・ソナタでも、悲愴とか熱情とかの有名曲でもよくあるケースですが、聴衆はずい分、聴き込んでいますから、こういう曲を取り上げることはかなりの準備をしておく必要がありますし、そもそもプログラムにのせること自体、危険です。今日の演奏ももちろん、テクニック的には完璧な演奏でしたが、もっとベートーヴェンらしい颯爽として風格のある演奏が望まれたところです。辛口な言い方になり過ぎたかもしれません。よい演奏ではあり、高い精度でもありました。しかし、もう一歩の努力を期待しています。

プログラム的には、プロコフィエフとかバルトークなどを組み入れたおいたほうが均整がとれたような気がします。期待の新鋭ですから、これからも注目して聴きたいと思っています。


今日のプログラムは以下です。

  金川真弓 ヴァイオリン・リサイタル

  ヴァイオリン:金川真弓
  ピアノ:ジュゼッペ・グァレーラ
 
  J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第3番ハ長調 BWV1005
  武満徹:妖精の距離
  ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ ト短調

  《休憩》

  ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第9番イ長調 Op.47 「クロイツェル」

  《アンコール》

  バッジーニ:妖精の踊り?
  ガーシュウィン/ハイフェッツ編:『ポーギーとベス』より


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のJ.S.バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第3番を予習したCDは以下です。

 チョン・キョンファ 2016年2月24-26日、4月3-5日、5月30-6月1日、セント・ジョージ教会(ブランドン・ヒル、ブリストル)、英国 セッション録音

復活したチョン・キョンファの演奏です。何とも素晴らしいバッハの無伴奏ソナタ・パルティータ全曲です。


2曲目の武満徹の妖精の距離を予習したCDは以下です。

 デュオ・ガッツァーナ 2011年3月、 スイス・イタリア語放送オーディトリオ、ルガーノ、スイス セッション録音

姉妹デュオ、ナターシャとラファエラ・ガッツァーナによる見事な演奏。


3曲目のドビュッシーのヴァイオリン・ソナタを予習したCDは以下です。

 オーギュスタン・デュメイ、マリア・ジョアン・ピリス 1993年9、10月、 ミュンヘン セッション録音

デュメイの名演。


4曲目のベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ 第9番「クロイツェル」を予習したCDは以下です。

 ヴォルフガング・シュナイダーハン、カール・ゼーマン 1959年5月11-28日、ウィーン、ウィーン楽友協会、ブラームス・ホール  セッション録音

決定盤です。



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       金川真弓,  

オペラは最高!抱腹絶倒のチョン・ミュンフン&東フィルの《ファルスタッフ》@東京オペラシティコンサートホール 2022.10.21

このところ、新国オペラをよく聴くようになって、日本のオペラ演奏水準の向上に驚いているところですが、その新国オペラで最もオーケストラピットに入っている東フィルがあのチョン・ミュンフンとコンサート形式オペラに取り組むというので、聴いてみることにしました。すると、とんでもなく凄いオペラを聴けて、まあ、楽しいこと、この上なし。これだけのオペラを聴けたのは久しぶりです。やはり、これからは各オーケストラに積極的にコンサート形式オペラに取り組んでもらいたいなと思いました。来月はジョナサン・ノット&東響の《サロメ》も楽しみです。

まず、今日のオペラはやはり、チョン・ミュンフンの音楽面から演出までのリーダーシップが素晴らしかったと思います。いちいちあげていけば、切りがありませんが、異例のアンコール演奏はまるで、オペレッタみたいで滅茶苦茶楽しませてもらいました。
次にタイトルロールのファルスタッフを歌ったセバスティアン・カターナの素晴らしかったこと。このオペラは特にファルスタッフ役の比重が高いオペラですが、声量といい、演技力といい、申し分のない働きでした。
さらにすべての歌手の歌唱と演技も文句のないもので、普通はどこかに不満を覚えるものですが、みな、最高の力を出し切っていました。これはsarai個人の趣味ですが、三宅理恵のナンネッタの歌唱が最高でした。まさにその透明感のある高域の伸びやかな声は天使というか妖精のような美しさに満ちていました。
ミュンフン指揮の東フィルの面々の楽しさあふれる演奏も素晴らしかったと思います。やはり、音楽は演奏する人自身が楽しまないといい演奏にならないということが痛切に感じられました。
最後に、人生の最後にこういう素晴らしい喜劇のオペラを書いたヴェルディに深く敬意と感謝を持ちました。

いやあ、音楽をこんなに楽しめたのは何年ぶりだろう。コロナ禍を吹き飛ばすこういうオペラを演奏してくれた皆さんに感謝しかありません。会場では叫べなかったので、ここで・・・ブラーボー!!!


今日の公演内容、キャストは以下です。

  ヴェルディ/歌劇『ファルスタッフ』(演奏会形式)
   原作: ウィリアム・シェイクスピア 『ウィンザーの陽気な女房たち』
   台本: アッリーゴ・ボーイト

指揮・演出:チョン・ミョンフン(東京フィル 名誉音楽監督)
  【合 唱】新国立劇場合唱団(合唱指揮:河原哲也)
  【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団 コンサートマスター:近藤薫

ファルスタッフ(バリトン):セバスティアン・カターナ
  フォード(バリトン):須藤慎吾
  フェントン(テノール):小堀勇介
  カイウス(テノール):清水徹太郎
  バルドルフォ(テノール):大槻孝志
  ピストーラ(バス・バリトン):加藤宏隆
  アリーチェ(ソプラノ):砂川涼子
  ナンネッタ(ソプラノ):三宅理恵
  クイックリー(メゾ・ソプラノ):中島郁子
  メグ(メゾ・ソプラノ):向野由美子


最後に予習について、まとめておきます。

以下のヴィデオを見ました。

 チューリッヒ歌劇場 2011年ライヴ

 アンブロージョ・マエストリ(Br ファルスタッフ)
 バルバラ・フリットリ(S アリーチェ・フォード)
 マッシモ・カヴァッレッティ(Br フォード)
 イヴォンヌ・ナエフ(Ms クイックリー夫人)
 ユディト・シュミット(Ms メグ・ペイジ夫人)
 エファ・リーバウ(S ナンネッタ)
 ハビエル・カマレナ(T フェントン)
 マルティン・ツィセット(T バルドルフォ)
 ダヴィデ・フェルジーニ(Br ピストーラ)
 パトリツィオ・サウデッリ(T 医師カイウス)
 チューリッヒ歌劇場管弦楽団&合唱団
 ダニエレ・ガッティ(指揮)

 演出:スヴェン=エリク・ベヒトルフ
 装置:ロルフ・グリッテンベルク
 衣装:マリアンネ・グリッテンベルク
 照明:ユルゲン・ホフマン

 収録時期:2011年3月
 収録場所:スイス、チューリッヒ歌劇場(ライヴ)

この時期の大半のファルスタッフのDVDでファルスタッフ役を歌っていたマエストリが前面に出た公演です。ガッティの指揮も見事。ところでフェントンを歌っていたのは今をときめくカマレナだったんですね。素晴らしい歌唱です。



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珍しいブルックナーの交響曲第2番が聴けた!それも極め付きの美しい演奏 ノット&東京交響楽団@ミューザ川崎シンフォニーホール 2022.10.22

今日も明日もジョナサン・ノットと東響の素晴らしいコンビの演奏を聴きます。会場は別ですが、同じプログラムです。滅多に聴けないブルックナーの交響曲第2番ですから、聴き逃がせませんね。ブルックナーは交響曲第3番以降は実演で聴いていますが、第2番以前は第0番を1回聴いただけで、今日の第2番は初めて、実演で聴きます。楽しみです。

今日のブルックナーの交響曲 第2番は事前の発表では何も記載がなかったので、当然、第2稿での演奏と思っていたら、ジョナサン・ノットの強い希望で第1稿での演奏になりました。第1稿と第2稿の大きな違いは中間の楽章の演奏順序の違いです。第1稿では、第2楽章はスケルツォ、第3楽章はアンダンテ。第2稿ではこれが逆の順序になります。ジョナサン・ノットはベートーヴェンの交響曲第9番に倣った第1稿の順序にこだわるそうです。

第1楽章は美しい演奏で始まります。素晴らしい演奏です。ただ、トゥッティでは、響きが濁って聴こえます。それ以外は不満のない演奏にじっと聴き入ります。第2楽章は激しく燃え上がるスケルツォ。ようやく、東響の響きも純化されて、素晴らしい演奏になります。第3楽章は実に静謐で美しいアンダンテ。心に沁み入る響きを受け止めます。第4楽章は第3楽章のアンダンテと対比するような急速な動きの音楽です。そして、最高の響きで感動のコーダ。素晴らしいブルクナーでした。第3番以降しか、ブルックナーが演奏されないのが不思議ですね。今後はこの第2番も演奏される機会が増えるでしょう。

前半、1曲目のシェーンベルクは無調の初期の作品。でも、12音技法とは異なり、調性のかけらも感じられます。表現主義的な叫びが印象的です。まるでカンディンスキーの抽象絵画みたいです。というよりもカンディンスキーがシェーンベルクの音楽に霊感を与えられたんですね。

2曲目のウェーベルンのパッサカリアは実に美しく演奏されます。ウェーベルンの後の作品のようにぎりぎりまで切り詰められたものとは違い、ある意味、ウェーベルンとしては、饒舌とも言えるほどです。それでも10分ほどでこの類まれな作品は終わります。若きウェーベルンの音楽がジョナサン・ノットの手によって、美しく演奏されました。

明日も同じプログラムをサントリーホールで聴きます。どういう感想になるでしょう・・・。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:ジョナサン・ノット(東京交響楽団 音楽監督)
  管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:グレブ・ニキティン

  シェーンベルク:5つの管弦楽曲 Op.16
  ウェーベルン:パッサカリア Op.1

  《休憩》

  ブルックナー:交響曲 第2番 ハ短調


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のシェーンベルクの5つの管弦楽曲を予習したCDは以下です。

 ロバート・クラフト指揮ロンドン交響楽団 1994年5月 ロンドン,アビー・ロード・スタジオ セッション録音

ロバート・クラフトはさすがの指揮です。


2曲目のウェーベルンのパッサカリアを予習したCDは以下です。

 ロバート・クラフト指揮ロバート・クラフト管弦楽団 1956年2月24日、ニューヨーク、コロンビア30丁目スタジオ セッション録音

シェーベルクと同様にロバート・クラフトによるウェーベルンの世界初の全集です。素晴らしい演奏です。ブーレーズだけが現代音楽のスペシャリストではありません。


3曲目のブルックナーの交響曲 第2番を予習したCDは以下です。

 オイゲン・ヨッフム指揮シュターツカペレ・ドレスデン 1980年3月4-7日 ドレスデン、ルカ教会 セッション録音

文句ないブルックナーの交響曲全集からの1枚です。いやはや、素晴らしい。



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       ジョナサン・ノット,  

ジョナサン・ノットはシェーンベルク、ウェーベルンからブルックナーまで、まったく隙のない最高の演奏 東京交響楽団@サントリーホール 2022.10.23

今日も昨日もジョナサン・ノットと東響の素晴らしい演奏に心震わされています。同じプログラムですが、今日は昨日の演奏以上の極めて高い精度の演奏にすっかり魅了されました。

まず、前半はシェーンベルクの5つの管弦楽曲です。結構、難解に思える作品ですが、ジョナサン・ノットが振ると、それなりに明快にも思えます。そして、東響のメンバーが確信を持って演奏しているのが分かります。第1曲で音響が錯綜する様も実に音楽的に響いてきます。そして、その音響の研ぎ澄まされた美しさ。後期ロマン派の爛熟した音楽があったからこそ、そのアンチテーゼとして、こういう新しい音楽のあり方が作り上げられたことが納得できるような演奏です。第2曲はさらに精密度を増して、見事な演奏に結実しています。そして、第3曲はほぼ、メロディー性もなくなり、音響の色彩感が変容していくだけです。その変異の微妙さは音楽的色彩のグラデーションを思わせます。これまでにはない新しい音楽の想像に感銘を受けます。第4曲は再び、第1曲のような表現主義的な音響が響き渡ります。ジョナサン・ノットの見事な指揮と東響のアンサンブルが素晴らしいです。第5曲は締めくくりにふさわしい熱い音塊が響いてきます。シェーンベルクが創造した無調音楽の真髄をジョナサン・ノットが再創造して、いかに今でもシェーンベルクが音楽の最前線にいるかを示してくれました。

前半を締めくくったのはウェーベルンのパッサカリアです。作品番号が1であることから分かるようにウェーベルンの音楽の原点にあるような作品です。シェーンベルクの無調作品に続いて聴くと、何とも分かりやすい音楽に聴こえてしまいます。パッサカリアは古い音楽の荘重な変奏曲の舞踊音楽ですが、その形式を借りて、新しい音楽を創造したのがこのウェーベルンの作品です。弦楽のピツィカートに続き、フルートのソロで美しい主題が提示されます。何とフルートのトップで演奏しているのはいつもはセカンドの濱崎 麻里子。首席の相澤氏は横でサポート役です。なんとも美しい音色に魅了されます。ソロのフルートに続いて、様々な形で絢爛豪華な変奏が繰り広げられます。王朝形式の音楽が現代音楽(と言っても20世紀初頭の音楽ですが、今でも十分新しい)で再創造されたかのごとくです。ここでもジョナサン・ノットの指揮の棒さばきの素晴らしいこと。東響のアンサンブルをまるで天国のオーケストラのような美しさに昇華させます。この曲を実演で始めて聴いたのはウィーン・フィルの来日公演でしたが、今日の東響は演奏の新鮮さにおいては優るような勢いでした。

前半は、ウィーンの20世紀初頭の音楽が今でも斬新に響く様にすっかり魅了されて、満足しきりますが、メインは後半のブルックナーです。

昨日の記事でも書いた通り、今回のブルックナーの交響曲 第2番は第2稿ではあるものの、ジョナサン・ノットの強い希望で中間の楽章の演奏順序を変えます。第1稿では、第2楽章はスケルツォ、第3楽章はアンダンテ。第2稿ではこれが逆の順序になります。今回は第1稿のように、第2楽章はスケルツォ、第3楽章はアンダンテになります。まあ、ブルックナーの場合、版によって、こういう変更はよくあることですから、それほど気にはなりません。それでも、もっと早く、そのことが告知されていたら、第1稿の演奏で予習しておいたのにね。最近、話題のジモーネ・ヤングの演奏が第1稿らしいので、それを聴いておく、よい機会になっていたことでしょう。

ともあれ、今日の演奏ですが、昨日にも増して、美しい響きの演奏に身を委ねることになりました。
第1楽章はともかく冒頭からの弦の美しい合奏に聴き惚れます。ヴァイオリン、ヴィオラのトレモロの中から、チェロが第1主題を厳かに演奏する、いわゆる、ブルックナー開始です。東響の弦のアンサンブルの美しさは大好きで、もう、ぞくぞくします。弦が主体になって、第2主題、第3主題と提示していきます。とりわけ、第3主題は素晴らしい演奏です。次第に高揚して、金管も加わり、頂点に至ります。昨日はここで響きが濁っていましたが、今日は美しい響きです。その後、展開部、再現部と雄大で美しい演奏が続きました。長大な楽章でしたが、素晴らしい演奏でした。第2楽章はいかにもブルックナーらしいスケルツォが荒々しく奏されます。東響の響きはここでも純度を失いません。短いパウゼを挟んで、トリオはレントラー風の長閑とも思える演奏です。そして、再び、スケルツォの再現部が雄々しく奏されます。第3楽章は実に静謐で美しいアンダンテ。弦のアンサンブルの美しさがしみじみと響きます。後期のブルックナーの交響曲の緩徐楽章のような熱い高揚はありませんが、それでもクライマックスは静かに訪れます。そして、コードは静かに閉じられます。
第4楽章は第3楽章のアンダンテを引き継ぐように静かに始まりますが、すぐに力強く第1主題が演奏されます。素晴らしい響きです。そして、ヘ短調ミサ曲からの「キリエ」が引用などで多彩な響きを奏でながら、最後は最高の響きで感動のコーダ。今日は昨日以上に素晴らしいブルックナーでした。あえて、ジョナサン・ノットがこの第2番を取り上げたのが納得できるものでした。いつも第3番以降しか、ブルックナーが演奏されないのももったいないですね。今後はこの第2番も含め、それ以前の交響曲も演奏してもらいたいものです。とりあえず、saraiが実演で未聴の第1番と第00番を聴かせてもらいたいものです。

これで、今月のジョナサン・ノットの公演はおしまい。次は来月後半のR.シュトラウスの楽劇《サロメ》です。過剰な期待を抱いているsaraiですが、きっと、今年最高の音楽体験をもたらしてくれるでしょう。

そうそう、今日はアシスタント・コンサートマスターの廣岡さんの退任の公演でもありました。今後は楽団長の重責を担うそうです。指揮者コールでジョナサン・ノットと一緒にステージに顔を見せてくれました。これからはステージで演奏する姿を見ることはなくなります。残念です。まあ、今後は東響を裏から支えてもらいましょう。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:ジョナサン・ノット(東京交響楽団 音楽監督)
  管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:グレブ・ニキティン

  シェーンベルク:5つの管弦楽曲 Op.16
  ウェーベルン:パッサカリア Op.1

  《休憩》

  ブルックナー:交響曲 第2番 ハ短調


最後に予習について、まとめておきます。もっとも昨日ともちろん同じです。

1曲目のシェーンベルクの5つの管弦楽曲を予習したCDは以下です。

 ロバート・クラフト指揮ロンドン交響楽団 1994年5月 ロンドン,アビー・ロード・スタジオ セッション録音

ロバート・クラフトはさすがの指揮です。


2曲目のウェーベルンのパッサカリアを予習したCDは以下です。

 ロバート・クラフト指揮ロバート・クラフト管弦楽団 1956年2月24日、ニューヨーク、コロンビア30丁目スタジオ セッション録音

シェーベルクと同様にロバート・クラフトによるウェーベルンの世界初の全集です。素晴らしい演奏です。ブーレーズだけが現代音楽のスペシャリストではありません。


3曲目のブルックナーの交響曲 第2番を予習したCDは以下です。

 オイゲン・ヨッフム指揮シュターツカペレ・ドレスデン 1980年3月4-7日 ドレスデン、ルカ教会 セッション録音

文句ないブルックナーの交響曲全集からの1枚です。いやはや、素晴らしい。



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       ジョナサン・ノット,  

ヴィジョン弦楽四重奏団、リッチな響きと美しさの交錯するドヴォルザークの第13番@鶴見サルビアホール3F音楽ホール 2022.10.24

初聴きのヴィジョン弦楽四重奏団、その名の通り、暗譜で立奏のイケメン4人組です。

冒頭のブロッホのプレリュード(瞑想)は豊かな響きでゆったりしたメロディーが対位法に展開していきます。彼らは実におおらかな演奏で短い曲をあっという間に弾き切ります。

次はラヴェルの弦楽四重奏曲。第1楽章は独特の旋律の第1主題に彩られながら、遅滞なく進んでいきます。彼らの演奏スタイルはエネルギッシュとも言えるけれども、だからと言って、強引な印象はなく、自然な力に満ちています。本来はこの曲はフランス風のエスプリが必要な要素でしょうが、そういうふうなものはなくても、美しい音楽が成立しています。うーん、なかなかいいね。
第2楽章はピッツィカートで勢いよく弾んでいきます。ここでも彼らは自然体。特別な思い入れはなくて、ただ、豊かな響きに満ちた音楽を奏でていきます。トリオは弱音器で静かに演奏されるのが基本ですが、別にそういうわざとらしさはない直球勝負のような音楽です。再び、ピッツィカートの演奏に戻り、さらっとこの楽章を閉じます。
第3楽章は静謐な美しい音楽が奏でられます。さすがにここでは彼らの繊細な表現が聴けます。
第4楽章は勢いを取り戻し、彼ららしい激しい音響の嵐で思う存分の演奏です。なかなか聴き応えのあるラヴェルで楽しめました。

休憩後、ドヴォルザークの弦楽四重奏曲 第13番です。のっけから豊かな音響の演奏ですが、その響きの中にドヴォルザークらしい旋律美が浮かび上がってきます。結局、全曲、豊かな響きと旋律美に支配された音楽が続きますが、終始、音楽の美しさと楽しさに魅了されました。さほど、ボヘミアの郷愁とかの感傷に浸る雰囲気はありませんが、納得のドヴォルザークでした。この日、これが一番の演奏でした。何と言うか、自然な音楽の喜びの発露を味わわせてくれるような暖かい音楽演奏になっていました。

アンコールは彼らのセカンドアルバム、スペクトラムからの1曲。クラシック音楽ではなく、フォーク、ポップ、ロック、ファンク、ミニマル、シンガーソングライターの音楽にインスパイアされた彼らが作り上げた独自なもので、楽器をギターのように抱えて、指だけでの演奏です。アクションも含めてノリのよいもので、クラシック音楽にあきたらない彼らの音楽表現です。見事なものではありますが、残念ながら、saraiの興味をそそるようなものではありません。別にsaraiはクラシック至上主義ではありませんが、やはり、真摯な魂の叫びを音楽の中に求めてしまいます。


今日のプログラムは以下です。

  弦楽四重奏:ヴィジョン弦楽四重奏団
   フロリアン・ヴィライトナー vn  ダニエル・シュトル vn  
   ザンダー・シュトゥアート va  レオナルド・ディッセルホルスト vc


  ブロッホ:プレリュード(瞑想)
  ラヴェル:弦楽四重奏曲 ヘ長調

   《休憩》

  ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲 第13番 ト長調 Op.106

   《アンコール》
   スペクトラムから サンバ


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のブロッホ:プレリュード(瞑想)は音源が見つからなかったので、予習していません。


2曲目のラヴェルの弦楽四重奏曲は以下のCDを聴きました。

  エベーヌ・クァルテット 2008年2月 セッション録音
 
これは素晴らし過ぎる演奏です。冒頭から美しい響きに魅了されます。音楽的表現も最高です。この作品の本命盤でしょう。


3曲目のドヴォルザークの弦楽四重奏曲 第13番は以下のCDを聴きました。

 パヴェル・ハース四重奏団 2010年6月3,6,29,30日 プラハ,ルドルフィヌム セッション録音
 
パヴェル・ハース四重奏団の素晴らしい演奏です。彼らの来日演奏をずい分聴いていませんが、今、どうしているのでしょう。



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久し振りに聴くカンブルランと読売日本交響楽団の素晴らしい響きに感銘@サントリーホール 2022.10.25

久々にカンブルランが振る読響の演奏を聴きましたが、何とも相性がぴったりです。読響の独特の明るい音響はカンブルランの音楽にぴったりです。もしかすると、こういう読響の明るい響きを作り出したのは9年間の長きに渡って常任指揮者を務めたカンブルランだったのでしょうか。それ以前の読響を聴いていないので、saraiには分かりません。それにしてもカンブルランが読響の指揮台に戻ってきたのはsaraiの記憶によると、2019年3月のグレの歌を振って以来です。あれはとても素晴らしい演奏でした。

今日はドビュッシーを中心としたプログラム。遊戯もイベリアも読響の明るいパレットのような響きにカンブルランが色彩をちりばめた演奏に魅了されました。こういうフランスものをカンブルランと読響が演奏すると無敵ですね。今日はこれだけでも十分に満足できるコンサートでした。

今月7日に亡くなった一柳慧の世界初演となる遺作、ヴァイオリンと三味線のための二重協奏曲は、意外にも一柳慧にしては難解な作品ではなく、美しい響きの作品でした。89歳にして、到達した境地だったんでしょうか。成田達輝のヴァイオリンの響きも美しく、読響の弦楽アンサンブルも最高に美しいものでした。

最後に演奏したヴァレーズのアルカナは強烈な先鋭な響きはほどほどで、むしろ、マイルドにも思える美しい音響が冴え渡ります。カンブルランと読響が演奏すると、ヴァレーズもこうなるのですね。以前、ノットと東響で聴いたときは、まさに先鋭な音響に度肝を抜かれましたが、今日の演奏はヴァレーズももう古典なのかと感じるものでした。それにしても読響のアンサンブル、明るい響きは素晴らしい。

今日のカンブルラン指揮の読響を聴いていると、サントリー定期以外のコンサートにも足を運べばよかったと悔やまれました。また、来年も来てほしいものです。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:シルヴァン・カンブルラン
  ヴァイオリン:成田達輝
  三味線:本條秀慈郎
  管弦楽:読売日本交響楽団  コンサートマスター:長原幸太

  ドビュッシー:遊戯
  一柳慧:ヴァイオリンと三味線のための二重協奏曲(世界初演)
   《アンコール》一柳慧:Farewell to the Summer Light(ヴァイオリン・三味線・アンコール)

   《休憩》

  ドビュッシー:イベリア(管弦楽のための「映像」から)
  ヴァレーズ:アルカナ


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のドビュッシーの遊戯は以下のCDを聴きました。

 ジャン・マルティノン指揮フランス国立放送局管弦楽団 1973年 パリ、サル・ワグラム セッション録音
 
ドビュッシーらしい香り高い演奏。


2曲目の一柳慧のヴァイオリンと三味線のための二重協奏曲はまだ音源なし。


3曲目のドビュッシーのイベリアは以下のCDを聴きました。

 ジャン・マルティノン指揮フランス国立放送局管弦楽団 1973年 パリ、サル・ワグラム セッション録音
 
これもドビュッシーらしい香り高く、溌剌とした演奏。


4曲目のヴァレーズのアルカナは以下のCDを聴きました。

 ロバート・クラフト指揮コロンビア交響楽団 1963年12月 セッション録音
 
ロバート・クラフトの貴重な録音。



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圧巻のニルセン、巨匠ブロムシュテットのもと、目の覚めるような極美のアンサンブル NHK交響楽団@サントリーホール 2022.10.26

NHKホールでのマーラーの交響曲第9番では、第4楽章はともかく、老巨匠ブロムシュテットはあまりに動きに乏しくて、心配な状況でしたが、今日はおぼつかない歩行状況はともかく、とてもしっかりした指揮で、少ない動きで的確な指示で、それに呼応するNHK交響楽団も必死にくらいつくような新鮮な演奏。これまで聴いたことのないような圧倒的な極美のサウンドを聴かせてくれました。

ニルセンと言えば、ブロムシュテットの代名詞とも言えるものです。N響とのコンビでは、昨年、交響曲第5番を聴きましたが、実に美しい演奏でした。その前にも、ウィーンの楽友協会でウィーン交響楽団を指揮して、その曲を演奏するのを聴きました。単に北欧系の家系だけでの親和性ではないような気がします。今日の演奏はもはや爆演ではなくて、ニルセンのどこまでも世界に突き抜けるような美しさの限りを尽くすようなものです。これがブロムシュテットの総決算なのでしょう。N響はブロムシュテットの精いっぱいの手の動きに反応して、見事な演奏を聴かせてくれました。ポジティブな世界肯定の感覚を美しい音楽の響きで歌い上げるような瑞々しい表現にブロムシュテットはこの老境で至ったようです。我々はただただ、この美し過ぎる音楽世界を自然に受容するだけで、幸福感に浸ることができます。これが巨匠の音楽を聴く最後の機会になったとしても、悔いの残らないような一期一会とも思える最高の音楽が脳裏に刻み付けられました。

前半のグリーグのピアノ協奏曲、ムストネンの爆演とやりたい放題の演奏に心を揺さぶられました。ピアノの陰で見えませんでしたが、ブロムシュテットは温かく、そういうムストネンの演奏をサポートしているようでした。ムストネンはミスタッチを恐れぬ自己表現に徹して、それをsaraiは好感を持って聴き入っていました。グリーグの音楽の真髄に迫るような演奏に思えました。ムストネンは初聴きですが、CDではベートーヴェンのバガテルや変奏曲の演奏に注目していました。まさか、こういう演奏スタイルとは、驚きました。また、別の機会に聴かせてもらいましょう。


今日のプログラムは以下のとおりでした。


  指揮 : ヘルベルト・ブロムシュテット
  ピアノ : オリ・ムストネン
  ソプラノ : 盛田麻央
  バリトン : 青山 貴
  管弦楽:NHK交響楽団 コンサートマスター:白井圭

  グリーグ:ピアノ協奏曲 イ短調 Op.16
   《アンコール》ヘンデル:調子のよい鍛冶屋(『ハープシコード組曲第1集』第5番 ホ長調 HWV.430 の終曲「エアと変奏」)

   《休憩》

  ニルセン:交響曲 第3番 Op.27「広がり」


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のグリーグのピアノ協奏曲を予習したCDは以下です。

  田部京子、小林研一郎指揮東京交響楽団 2018年6月10日 ミューザ川崎シンフォニーホール ライヴ録音

とても素晴らしい演奏です。大変、感銘を覚えました。


2曲目のニルセンの交響曲 第2番を予習したCDは以下です。

  ナンシー・ウェイト・クロム(S)、ケヴィン・マクミラン(Br)、ヘルベルト・ブロムシュテット指揮サンフランシスコ交響楽団 1989年12月 サンフランシスコ、デイヴィス・シンフォニー・ホール セッション録音

ニルセンの交響曲全集から1枚です。ブロムシュテットはデンマーク国立放送交響楽団との全集録音に続いて、2回目の全集です。ともかくブロムシュテットはニルセンのスペシャリストですね。この演奏も見事です。旧盤のデンマーク放送交響楽団を指揮したもののほうが爆演で熱い演奏です。



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尾瀬散策:鳩待峠へ本格的な登りが始まります

2022年8月25日(木)@尾瀬/20回目

尾瀬、2日目です。
尾瀬ヶ原の美しい自然を楽しんだ後、ほどほどのところで引き返します。牛首分岐まであと10分くらいのところでした。
帰り道は順調に山ノ鼻まで戻り、ここでしばしの休息をとった後、鳩待峠に向かって、ハードな道を登ります。
しばらくは川上川沿いの緩やかな道を余裕で歩きますが、次第に林のなかの登り道になります。木道の傍らの湿地にはミズバショウの群落も見えます。

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ミズバショウの中を抜ける木道を進んでいきます。

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ダケカンバの林が綺麗ですね。

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ダケカンバの林をなおも登っていきます。

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気持ちのよい林の中を順調に歩いていきます。

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樹々の先が明るくなってきます。ようやく林を抜けるのかな。

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おーっ、木道がめちゃめちゃに壊れているところがあります。木道は順次、修復されているそうですが、厳しい自然環境はそれを上回るスピードで木道を痛みつけているようです。こういう箇所は気を付けて歩きます。

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川上川沿いの片側は開けた道に出てきます。

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東京電力の赤い電柱が印象的です。

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ここから一気に急な階段が始まります。まだ、余力で登っていきます。

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ここが正念場とばかりにsaraiはストックを持つ手に力を込めて、一歩一歩着実に登っていきます。

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階段を登りきると、再び、緩やかな傾斜の木道が続きます。

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傍らには山ウドも見えます。この辺りでは貴重な山菜ですね。

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きつい登り道の途中には、救いの神のようなベンチが置かれています。しかし、その甘い誘惑には負けずに休むことなく、ゆっくりと登っていきます。

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ベンチには鳩待峠まで、あと1.33㎞という表示があります。山ノ鼻から鳩待峠まで全3.3㎞のうち、もう既に半分以上も歩きました。

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しかし、この後の道がきついのはよく分かっています。気を引き締めて歩いていきましょう。ここまでは順調なペースで歩いてきています。足元が朝方よりも乾いて歩き易くはなっています。山ノ鼻からは30分ほど歩いてきました。まだ、1時間から1時間半ほどは登っていかないといけません。残っている体力を出し尽くすような感じです。



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尾瀬散策:鳩待峠へ修行の道

2022年8月25日(木)@尾瀬/21回目

尾瀬、2日目です。
尾瀬ヶ原の美しい自然を楽しんだ後、ほどほどのところで引き返します。牛首分岐まであと10分くらいのところでした。
帰り道は順調に山ノ鼻まで戻り、ここでしばしの休息をとった後、鳩待峠に向かって、ハードな道を登ります。
しばらくは川上川沿いの緩やかな道を余裕で歩きますが、やがて、本格的な登り道を順調に登り、山ノ鼻から鳩待峠まで全3.3㎞のうち、残り、1.33㎞の地点までやってきました。
ひたすら、上りの木道を進んでいきます。

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傾斜のある坂はどこまでも続きます。

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既に息も上がり、足の力も弱ってきていますが、踏ん張って歩くのみです。

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もう、ただただ、黙々と歩き続けます。頭の中はからっぽ。これこそ、山歩きの真髄。

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それほどの急坂ではありませんが、どこまでも登り道が続きます。余計な想念は一切なし。

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まさに修行の道です。

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体力の限りを尽くした挑戦。足が痛いとか、何とかは既に忘れています。

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saraiの歩く姿はよろよろだったようです。それに足も痛む左足をかばった歩き方になっていますね。

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それでもsaraiは歩みを止めず、粛々と登り続けます。

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ここで木道は左に直角に折れて、迂回するように続きます。

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流れを迂回するような道をsaraiは進んでいきます。ここはいったん平坦な道で一息尽きます。

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美しい流れが見えています。

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流れを渡ります。ヨセ沢です。

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流れを渡ると、その先にはまた登り道が始まります。

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そして、その先、魔の急階段になります。

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山ノ鼻からひたすら歩き続けて45分です。まだまだ、この先は長くて、厳しい道が待ち受けています。



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ヘンデルの日本初演オペラ「シッラ」(完全舞台版世界初演)@神奈川県立音楽堂 2022.10.29

2020年春に上演される筈でしたが、コロナ禍で上演3日前に中止になったヘンデルの謎のオペラ「シッラ」が2年半経った今日、遂に上演されました。もちろん、日本初演でエウローパ・ガランテにとっても完全舞台版世界初演になります。
完全なバロックオペラですが、演出・衣装は歌舞伎仕立てという実にユニークなもの。この神奈川県立音楽堂版の室内オペラが世界に発信されることになりました。NHKが録画収録していたので、来年1月あたりにBSで放映されるようです。
オペラのあらすじはローマの執政官だったシッラが独裁で悪行を重ねるも、最後には妻の説諭を受け入れて、その罪を悔いて、引退生活にはいるというものです。音楽監督のファビオ・ビオンディの言では、現在の世界でも独裁者が横行していますが、このオペラのように罪を悔いて、引退してくれることを願うとのこと。saraiとて、大賛成ですが、現実はそううまくいきませんね。

このオペラはヘンデルの初期のオペラですが、音楽的内容は後の作品と同じく、旋律美に満ちて、聴き応え十分です。違いと言えば、長さが2時間と短いこと。他の作品は通常3時間超ですから、聴くのも負担がありません。だからといって、物足りないという感じもありません。オペラの構成はヘンデルのオペラ作品に共通するダ・カーポ・アリアとレシタティーボが交互に登場して、ダ・カーポ・アリアで音楽の美しさを楽しみ、レシタティーボでストーリーが進行するというものです。今日の公演で際立ったのは、ファビオ・ビオンディ指揮のエウローパ・ガランテのバロックアンサンブルの質の高い演奏です。ただでさえ美しいヘンデルの音楽が光り輝いていました。今日の主役は彼らの演奏だと言い切っても過言でありません。弦の美しさ、オーボエ・リコーダーの質の高い響き、通奏低音の見事な響き、そして、ファビオ・ビオンディの独奏ヴァイオリンの素晴らしさ。言ってしまえば、彼らの演奏ならば、ヘンデルのどのオペラでも完璧に演奏するだろうということです。こういう演奏が日本で聴けるというのはなんとも贅沢で嬉しいことです。
歌手陣もメゾソプラノ3人、ソプラノ3人、バリトン1人の海外勢が充実の極み。タイトルロールを歌ったソニア・プリナは別格。以前、チューリッヒ歌劇場で同じくヘンデルのオペラ《リナルド》のリナルド役で素晴らしい歌唱を聴きましたが、今日も素晴らしい歌唱です。ただ、今日のシッラ役はとんでもない独裁者という悪役なので、その分、ちょっと損をしていたかもしれません。チェリア役のフランチェスカ・ロンバルディ・マッズーリの透明で張りのある歌唱がとりわけ、魅力的でした。レピド役のヴィヴィカ・ジュノーの巧みな歌唱、フラヴィア役のロベルタ・インヴェルニッツィの美しい声の響きも印象的で、彼女たちの2重唱の美しさには参りました。メテッラ役のスンヘ・イムは高域の美しさは素晴らしかったのですが、低域の声でもうひとつ出ていない感じ。曲によって、出来が違って聴こえました。CDとは配役が唯一異なったクラウディオ役のヒラリー・サマーズは声が柔らかく、この役にはもうひとつ合っていない感じです。CDで歌っていたマルティナ・ベッリが出てくれればという気持ちになりました。
演出は歌舞伎風で、これは賛否両論あるでしょう。まあ、面白かったことは間違いありません。サプライズの終幕の天井から2人のエアリアルが離れ業を演じたのは素晴らしかったですね。まさにシルク・ドゥ・ソレイユ。見事です。舞台の制約の多い中、ここまでの仕上げは賞賛するしかありません。


今日のプログラムは以下です。

  ヘンデル: 歌劇 《シッラ》 HWV.10

  音楽監督:ファビオ・ビオンディ(指揮・ヴァイオリン)
  演奏:エウローパ・ガランテ

  ソニア・プリナ(コントラルト/ローマの執政官シッラ)
  ヒラリー・サマーズ(コントラルト/ローマの騎士クラウディオ)
  スンヘ・イム(ソプラノ/シッラの妻メテッラ)
  ヴィヴィカ・ジュノー(メゾ・ソプラノ/ローマの護民官レピド)
  ロベルタ・インヴェルニッツィ(ソプラノ/レピドの妻フラヴィア)
  フランチェスカ・ロンバルディ・マッズーリ(ソプラノ/シッラの副官の娘チェリア)
  ミヒャエル・ボルス(バリトン/神)
  神谷真士(スカブロ/シッラの臣下 黙役)
  桧山宏子 板津由佳(エアリアル)
  片岡千次郎(兵士/殺陣)
  亀山敬佑(兵士/殺陣)

  台本:ジャコモ・ロッシ
  演出:彌勒忠史
  美術:tamako☆
  衣裳:友好まり子
  照明:稲葉直人(ASG)
  立師:市川新十郎


最後に予習について、まとめておきます。

 ファビオ・ビオンディ(ヴァイオリン&指揮)、エウローパ・ガランテ、
  ソニア・プリナ(コントラルト/シッラ)、
  マルティナ・ベッリ(メゾ・ソプラノ/クラウディオ)、
  スンヘ・イム(ソプラノ/メテッラ)、
  ヴィヴィカ・ジュノー(メゾ・ソプラノ/レピード)、
  ロベルタ・インヴェルニッツィ(ソプラノ/フラヴィア)、
  フランチェスカ・ロンバルディ・マッズーリ(ソプラノ/セリア)、
  ルカ・ティトット(バス/イル・ディオ)
   2017年1月28日-30日、コンツェルトハウス(ウィーン、オーストリア) ライヴ録音
 
素晴らしい演奏です。今回の来日公演とほぼ同じキャストの公演。



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入魂のモーツァルトのレクイエムに感動!鈴木優人指揮バッハ・コレギウム・ジャパン@東京オペラシティコンサートホール 2022.10.30

鈴木優人自身の補筆校訂版によるモーツァルトのレクイエムの素晴らしい演奏でした。ジュスマイヤーの補筆完成版を骨格としているために何ら違和感はありません。唯一、第8曲 ラクリモーサ【涙の日】の後に置かれたアーメン・フーガが目新しいところですが、最近のCDではこれを含む版の演奏も多くなってきています。

やはり、モーツァルト自身が書いたとされる第8曲 ラクリモーサ【涙の日】の最初の部分までの音楽密度が高く、第1曲 レクイエム・エテルナム【永遠の安息を】の途中、森 麻季のピュアーなソプラノ独唱でsaraiの感動スイッチが入り、涙が滲んできます。若い頃にはsaraiはこの曲の真髄が分からずにいましたが、ようやく、この歳になって、この曲の素晴らしさを“感じる”ことができるようになってきたようです。第2曲 キリエ【憐れみの賛歌】もBCJ(バッハ・コレギウム・ジャパン)の素晴らしい合唱に心を奪われます。そして、第3曲 ディエス・イレ【怒りの日】の恐ろしいほどの迫力に心が舞い上がります。第4曲 トゥーバ・ミルム【奇しきラッパの響き】では、バスのドミニク・ヴェルナーの素晴らしく響く声とトロンボーンの響きに圧倒されます。そして、テノール、アルト、ソプラノ独唱が続き、最後は四重唱で和します。ここでも、好調な森 麻季の歌唱に心奪われる思いです。この後も素晴らしいBCJの合唱が続きます。そして、第8曲 ラクリモーサ【涙の日】の冒頭の8小節はモーツァルト自身の書いた音楽。何と素晴らしく心に沁みるのでしょう。ここまででsaraiは感動の極みに至りました。残る部分は音楽はともかく、BCJの合唱の響き、BCJのオーケストラの響き、そして、独唱者たちの歌唱の響きの素晴らしさに聴き入ります。そして、第14曲 ルックス・エテルナ【永遠の光】はモーツァルト自身によるイントロイトゥス【入祭唱】とキリエ【憐れみの賛歌】のコラージュです。最後にまた、魂の感動を覚えます。
死の床についていたモーツァルトが妻コンスタンツェの妹ゾフィーやジュースマイヤーとともに最後まで、ラクリモーサ・・・と歌っていたというイメージがsaraiの頭の中に反芻されて、この曲を聴くと、自然と感動してしまいます。天才作曲家の遺言を聴いている思いに駆られます。鈴木優人の素晴らしい補筆校訂版と彼自身の繊細で丁寧な指揮、そして、BCJの合唱の素晴らしさがモーツァルトの最後の傑作を見事に再現してくれました。モーツァルトの魂に合掌!

ところで、この鈴木優人の補筆校訂版のレクイエムは4年前の鈴木優人の首席指揮者就任記念演奏会で聴きましたが、そのときはレクイエムの後に本編でアヴェ・ヴェルム・コルプスが入っていて、とても違和感を感じました。だって、レクイエムの後に演奏できる曲ってあるわけないでしょう。そして、今日もやはり、どうしてもアヴェ・ヴェルム・コルプスを演奏したいらしく、アンコールでの演奏になりました。前回はとても違和感があったのに、今日のようにアンコールで演奏されると、レクイエムの後に演奏するなら、このアヴェ・ヴェルム・コルプスしかないという気持ちになりました。不思議なものですね。静謐なアヴェ・ヴェルム・コルプスに再び、心が洗われる思いになりました。やはり、名曲です。


今日のプログラムは以下です。


  指揮:鈴木優人
  ソプラノ:森 麻季
  アルト:藤木大地
  テノール:櫻田 亮
  バス:ドミニク・ヴェルナー
  合唱・管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン


  モーツァルト:交響曲第39番 変ホ長調 KV 543

 《休憩》

  モーツァルト:レクイエム KV 626 鈴木優人 補筆校訂版 モーツァルトの自筆譜及び、アイブラー、ジュスマイヤーの補筆完成版に基づく
   イントロイトゥス【入祭唱】
    第1曲 レクイエム・エテルナム【永遠の安息を】 (ニ短調 アダージョ 4分の4拍子 合唱・ソプラノ独唱)
    第2曲 キリエ【憐れみの賛歌】 (ニ短調 アレグロ 4分の4拍子 合唱)
   セクエンツィア【続唱】
    第3曲 ディエス・イレ【怒りの日】 (ニ短調 アレグロ・アッサイ 4分の4拍子 合唱)
    第4曲 トゥーバ・ミルム【奇しきラッパの響き】 (変ロ長調→ヘ短調 アンダンテ 2分の2拍子 バス、テノール、アルト、ソプラノ独唱・四重唱)
    第5曲 レックス・トレメンデ【恐るべき御稜威の王】 (ト短調 グラーヴェ 4分の4拍子 合唱)
    第6曲 レコルダーレ【思い出したまえ】 (ヘ長調 アンダンテ 4分の3拍子 四重唱)
    第7曲 コンフターティス【呪われ退けられし者達が】 (イ短調 アンダンテ 4分の4拍子 合唱)
    第8曲 ラクリモーサ【涙の日】 (ニ短調 ラルゲット 8分の12拍子 合唱)
       アーメン・フーガ
   オッフェルトリウム【奉献文】
    第9曲 ドミネ・イエス【主イエス】 (ト短調 アンダンテ・コン・モート 4分の4拍子 合唱・四重唱)
    第10曲 オスティアス【賛美の生け贄】 (変ホ長調 アンダンテ 4分の3拍子 合唱)
   サンクトゥス【聖なるかな】
    第11曲 サンクトゥス【聖なるかな】 (ニ長調 アダージョ 4分の4拍子 合唱)
    第12曲 ベネディクトゥス【祝福された者】(変ロ長調 アンダンテ 4分の4拍子 四重唱・合唱)
   アニュス・デイ【神の小羊】
    第13曲 アニュス・デイ【神の小羊】 (ニ短調 ラルゲット 4分の3拍子 合唱)
        コムニオ【聖体拝領唱】
    第14曲 ルックス・エテルナ【永遠の光】 (ニ短調 アダージョ 4分の4拍子 ソプラノ独唱・合唱)

 《アンコール》
  モーツァルト:アヴェ・ヴェルム・コルプス ニ長調 K.618



最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のモーツァルトの交響曲第39番は演奏曲目を見落としていたので、予習なし。でも、スーパー有名曲ですから、まあ、いいでしょう。


2曲目のモーツァルトのレクイエムは以下のCDを聴きました。

 テオドール・クルレンツィス指揮ムジカエテルナ、ニュー・シベリアン・シンガーズ
   ジモーネ・ケルメス(S)、ステファニー・ウゼール(A)、マルクス・ブルッチャー(T)、アルノー・リシャール(B)
      2010年2月、ノヴォシビルスク劇場 セッション録音

クルレンツィスは日々進化しています。これは少し古い録音ですが、やはり、新鮮な響きが聴けます。賛否あるでしょうが、聴いておくべき演奏だと思います。ソプラノをナデージダ・パヴロヴァにして、再録音してほしいです。



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感動の日々、クァルテット・ベルリン=トウキョウの圧巻のベートーヴェンの弦楽四重奏曲第15番@鶴見サルビアホール3F音楽ホール 2022.10.31

昨日のモーツァルトのレクイエムも感動しましたが、今日のベートーヴェンの弦楽四重奏曲第15番はさらなる感動を味わいました。まさに感動の日々です。

クァルテット・ベルリン=トウキョウのコンサートは楽しみにしていましたが、コロナ禍で2度に渡る延期で、今日、ようやく聴けました。彼らはベートーヴェンの弦楽四重奏曲を初期、中期とじっくりと取り組んできました。そして、遂に満を持して、後期の作品を演奏します。まずは第15番 Op.132です。後期の傑作、第13~15番を作曲順に演奏していくのでしょうか。期待を上回る演奏を聴いて、深く感動しました。

前半のプログラム、ハイドンとモーツァルト、とても美しく、楽しい演奏でした。とりわけ、ハイドンの弦楽四重奏曲 第32番 Op.33-3「鳥」は4人それぞれの弦がよく響いて、何とも気持ちのよい音楽です。それにハイドンの音楽がとても素敵ですね。これを聴いたモーツァルトが触発されたのがよく分かります。

そして、後半。ベートーヴェンの後期の傑作、第15番 Op.132の演奏が始まります。冒頭、チェロの響き、とても緊張しています。続く他の弦も緊張気味。彼らが真摯にこの曲に取り組んでいるのが分かります。第1楽章はベートーヴェンの自由な発想の曲想が続き、クァルテット・ベルリン=トウキョウの4人は自在に弾き込んでいきます。まるで幻想曲のように幽玄で深い世界が広がります。とても素晴らしい! 演奏も曲も最高です。第2楽章は中間部になって、激しく盛り上がります。そして、この曲の頂点をなす第3楽章にはいります。彼らは調弦をしながら、ちょっと間を取って、第3楽章を弾き始めます。ゆったりとした流れの中、ベートーヴェンの高邁な精神、高貴とも思える人間の最高の魂が奇跡のような音楽で語られていきます。美しいとか強いとかという音楽としては語れない人間の根源的な魂そのものがそこにあります。ここに至り、これこそ人間が創造することができた最高の芸術であることが実感できます。この曲に比肩できるのはもう2曲のベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲しかないことを確信します。演奏する4人もそれは十分に感じているのでしょう。こういう音楽を演奏できる喜び、そして、それを受容できる喜び。それがこのホールの空気を包み込んでいます。長大な第3楽章が終わりを告げたとき、あたかも壮大な音楽が閉じたような錯覚に陥ります。しかし、さらに第4楽章が勢いよく演奏されます。そして、途切れることなく、圧巻の第5楽章につながっていきます。何と言う雄々しさに満ちた音楽なのでしょう。人はどこまでも生き抜いていくという思いの結晶したような音楽です。ぐんぐん前進を続けていき、コーダはさらにテンポを上げて進みます。もう、聴いているsaraiも一緒に進んでいくしかありません。深い感動に至りながら、頂点に上り詰めます。凄い演奏でした。

無論、こんな音楽にアンコールは不要です。そういえば、昨日もそんな感想を持ちました。昨日はそんなsaraiを嘲笑うようにこれしかないでしょうというアヴェ・ヴェルム・コルプスが演奏されて、それなりに納得しました。何と今日もアンコールをアヴェ・ヴェルム・コルプスで締めくくります。まあ、これしかありませんね。今日は弦楽四重奏版のとっても美しく、静謐なアヴェ・ヴェルム・コルプスでした。


今日のプログラムは以下です。

  弦楽四重奏:クァルテット・ベルリン=トウキョウ
   守屋剛志vn  モティ・パヴロフvn  
   グレゴール・フラーバルva  松本瑠衣子vc


  ハイドン:弦楽四重奏曲 第32番ハ長調 Op.33-3「鳥」
  モーツァルト:弦楽四重奏曲 第16番変ホ長調 K.428

   《休憩》

  ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第15番イ短調 Op.132

   《アンコール》
   モーツァルト:アヴェ・ヴェルム・コルプス ニ長調 K.618


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のハイドンの弦楽四重奏曲 第32番 Op.33-3「鳥」は以下のCDを聴きました。

  リンゼイ四重奏団 1995年3月21-23日 聖トリニティ教会,ウェントワース、ヨークシャー、英国 セッション録音
 
リンゼイ四重奏団のハイドンはどれも素晴らしいです。これも見事な演奏。


2曲目のモーツァルトの弦楽四重奏曲 第16番は以下のCDを聴きました。

  アマデウス四重奏団 1966年、ベルリン セッション録音
 
アマデウス四重奏団のモーツァルト、とてもいいですね。


3曲目のベートーヴェンの弦楽四重奏曲 第15番は以下のCDを聴きました。

  リンゼイ四重奏団 1983年 聖トリニティ教会,ウェントワース、ヨークシャー、英国 セッション録音
 
リンゼイ四重奏団の旧盤のベートーヴェンの弦楽四重奏団全集からの1枚です。新盤もいいのですが、旧盤はさらに感銘深い演奏です。



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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
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金婚式、おめでとうございます!!!
大学入学直後からの長いお付き合い、素晴らしい伴侶に巡り逢われて、幸せな人生ですね!
京都には年に2回もお越しでも、青春を過ごし

10/07 08:57 堀内えり

 ≪…長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さ…≫を、長調と短調の振り子時計の割り振り」による十進法と音楽の1オクターブの12等分の割り付けに

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じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
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これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
その後、ザル

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CDでしか聴いてはいません。
公演では小沢、ショルティだけ

ベーム、ケルテス、ショルティ、クーベリック、
クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
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07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
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06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

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