今年はリゲティ生誕100年の節目の年。何かとリゲティが取り上げられる機会が増えていますが、今日のコンサートはまさに真打ちとも言える圧倒的に素晴らしいものでした。
何と言っても、
コパチンスカヤと都響の選りすぐりのメンバーが共演したヴァイオリン協奏曲はsaraiが生涯で最高に感動したと言っても過言でない凄まじい演奏でした。第1楽章から、
コパチンスカヤと都響の奏者の火花の散るような緊張感の高い演奏です。超絶的に難しい演奏でここまでぴたっと合わせるのは神業に思えます。
コパチンスカヤも凄い演奏ですが、都響の演奏レベルの高いことに驚嘆します。弦の奏者は皆、達人揃い。コンマスの矢部達哉がいれば、ベストメンバーです。いっそのこと、コンマス3人が揃って演奏すればよかったのにね。
コパチンスカヤの演奏は予習したCDの演奏とはがらっと変わっています。12年経って、ますます進化したのでしょう。聴いているsaraiもあまりの緊張感に同期してしまいます。まさに手に汗を握るような演奏です。
第2楽章は
コパチンスカヤのソロでアリアが歌われます。CDでは美しい演奏でしたが、ここでは美しさは影を潜め、内面の思いを表出したような表現です。リゲティの心の叫びこそがこのヴァイオリン協奏曲のメインテーマですから、それにふさわしい表現に変わったのでしょう。やがて、都響のメンバーと協奏しながら、高度な音楽表現が繰り広げられていきます。素晴らしい音楽に魅了されて聴き入るのみです。ここまではsaraiも冷静に音楽を受容していました。
第3楽章は間奏曲。穏やかな音楽が始まりますが、やがて、次第に音楽は高潮していきます。聴いているsaraiもインスパイアされるように心が震えていきます。
第4楽章はパッサカリア。音楽は激しさを増して、極限に達していきます。リゲティの抑圧されてきた人生が凝縮されているような魂の叫びが圧倒的に高まります。saraiは感動を通り越して、もう嗚咽するような状況に達します。音楽からこれほどの共感を与えられたことはありません。涙が止まりません。何と言う素晴らしい音楽、そして、凄い演奏でしょう!
第5楽章はアパッショナート。この作品はアーチ型の構造をしていて、この楽章は第1楽章に呼応していますが、音楽的な高まりは尋常ではありません。圧倒的な感動が止まりません。やがて、最後のヴァイオリンのカデンツァに入り、
コパチンスカヤのヴァイオリンがますます、冴えを見せます。凄い演奏です。最後はヴァイオリンだけでは足りずに声を上げていきます。そして、都響のメンバーも加わって、圧倒的なフィナーレ。本当に打ちのめされました。音楽の持つ力がここまで凄いものとは・・・。リゲティの前半の人生は災厄の連続でした。それも人間が引き起こした災厄です。戦争、抑圧、・・・人間の負の力が彼を打ちのめしたのですが、この音楽の力でそれらをすべて撥ね返したと感じます。音楽の力、文化の力はあらゆる負の力に立ち向かうものです。
saraiが聴いてきた音楽の中で今日の演奏は間違いなく、ベストワンです。素晴らしいものを聴きました。
後半のバルトーク。《中国の不思議な役人》の全曲版は多分、初めて聴きました。都響、そして、大野和士の全力での演奏、素晴らしかったのですが、もう、ここでその詳細を書く力はありません。
最後のリゲティのマカーブルの秘密。これもコパチンスカヤと都響の圧倒的な演奏でしたが、それもさきほどのヴァイオリン協奏曲の圧倒的な音楽に比するものではありません。まあ、リゲティの素晴らしい音楽をこれほど聴けて嬉しいことはありませんけどね。
そうそう、今日と明日は都響のコンミスの四方恭子のラストコンサート。お疲れさまでした。前半のコパチンスカヤのアンコールは四方恭子とデュエットでのリゲティの作品の演奏でした。この曲は以前、クルレンツィスの初来日のとき、コパチンスカヤがムジカエテルナのコンマスとアンコールでデュエットした曲でした。何とも素晴らしい演奏をお二人が聴かせてくれました。これもコパチンスカヤの思いやりだったのでしょうか。
明日も同じプログラム。聴きに行きたい気持ちはありますが、まあ、今日で完全燃焼しました。
今日のプログラムは以下のとおりです。
指揮:大野和士
ヴァイオリン& 声:パトリツィア・コパチンスカヤ
合唱:栗友会合唱団
管弦楽:東京都交響楽団 コンサートマスター:四方恭子(隣の席は山本友重)
リゲティ(アブラハムセン編曲):虹~ピアノのための練習曲集第1巻より[日本初演]
リゲティ:ヴァイオリン協奏曲
《アンコール》リゲティ:バラードとダンス(2つのヴァイオリン編) コパチンスカヤ&四方恭子
《休憩》
バルトーク:《中国の不思議な役人》op.19 Sz.73(全曲)
リゲティ:マカーブルの秘密
最後に予習について、まとめておきます。
1曲目のリゲティの虹(ピアノのための練習曲集第1巻より)を予習したYoutubeは以下です。
MIDI楽器によるオーケストラ演奏 https://www.youtube.com/watch?v=LefjmBHbvJw
見事なオーケストラ編曲とMIDIによる演奏です。実は恥ずかしながら、MIDIであることに全然気が付きませんでした。
2曲目のリゲティのヴァイオリン協奏曲を予習したCDは以下です。
パトリシア・コパチンスカヤ、ペーテル・エトヴェシュ指揮アンサンブル・モデルン 2011年10月 フランクフルト、ヘッセン放送ゼンテザール セッション録音
コパチンスカヤの素晴らしいヴァイオリン!
3曲目のバルトークの《中国の不思議な役人》(全曲)を予習したCDは以下です。
ピエール・ブーレーズ指揮シカゴ交響楽団 1994年12月 シカゴ セッション録音
ブーレーズ渾身のバルトーク・プロジェクト、CD8枚組の中の1枚です。完璧とも思える演奏で座右に置きたいアルバムです。
4曲目のリゲティのマカーブルの秘密を予習したYoutubeは以下です。
パトリシア・コパチンスカヤ(声、ヴァイオリン、指揮)、カメラータ・ベルン 2019年2月3日、テアター・ナチオナル、ベルン ライヴ収録
https://www.youtube.com/watch?v=Nlj6bkA1t0M
バーバラ・ハンニガン、サイモン・ラトル指揮ロンドン交響楽団 2015年1月15日 バービカンホール、ロンドン
https://www.youtube.com/watch?v=QttUcKZ8NMU
バーバラ・ハンニガン(ソプラノ、指揮)、イェーテボリ交響楽団 2013年4月12日 イェーテボリ
https://www.youtube.com/watch?v=ireZYjEkpac
バーバラ・ハンニガン(ソプラノ、指揮)、アヴァンティ室内管弦楽団 2011年4月23日 シャトレ座、パリ , Presences Festival 2011
https://www.youtube.com/watch?v=8ZKaMuALMMY
コパチンスカヤの唯一無二とも言える声、ヴァイオリン、指揮も見事。しかし、本職のソプラノ歌手、バーバラ・ハンニガンはさすがに歌唱が素晴らしく、そのパフォーマンスとともに感動の音楽を聴かせてくれます。圧倒的な歌唱に心が震えます。実演で聴きたいものです。
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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽