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完璧に響き渡った《エレクトラ》2回目 恐ろしいほどの完成度 ノット&東京交響楽団@サントリーホール 2023.5.14

今日の《エレクトラ》は一昨日のミューザ川崎に続いて2回目です。いずれも運よく、最前列のほぼ中央の最高の席で聴くことができました。コンサート形式ですから、歌手がすぐ目の前で歌うので、ともかく声がよく響きます。いつもの舞台形式のオペラだと、舞台上で歌う歌手の手前にピットにはいったオーケストラがいます。歌手の声を聴くには、コンサート形式が最高です。そして、今日は主要なキャストの5人が物凄く響く声で歌ってくれて、最高の感動を味わわせてくれました。オレストを歌ったジェームス・アトキンソンもミューザ川崎のときと比べて、格段の歌唱を聴かせてくれました。ジョナサン・ノット指揮の東響もミューザ川崎のとき以上の圧倒的な迫力の演奏を聴かせてくれました。やはり、サントリーホールの音響はsarai好みのようです。

この《エレクトラ》はワーグナーの楽劇を引き継いで、さらに音楽の純度を高めたような最高の芸術です。その戦慄のドラマは《サロメ》と同様に、あるいはそれ以上に、これは愛と狂気をはらんだ命をかけた迫真の芸術であり、聴くものの実存に襲い掛かってきます。父親の復讐劇は母親殺しというおぞましい結果になり、その陶酔感に強い衝撃を受けます。R.シュトラウスの芸術的創作力は《サロメ》をも超えて頂点に達した一大傑作です。何と言ってもエレクトラの愛と狂気を完璧に歌い切ったクリスティーン・ガーキーはミューザ川崎では若干皮相的に思えた表現も今日は真摯で素晴らしい歌唱に昇華していました。歌唱だけでなく、真に迫った演技も最高でした。

ただ、昨年の《サロメ》のように、サロメを歌ったアスミク・グリゴリアンだけが光り輝いたのではなく、今日の《エレクトラ》では、エレクトラを歌ったクリスティーン・ガーキーの周りのキャストたちの歌唱と演技が見事で、さらに言えば、ジョナサン・ノット指揮の東響の圧倒的な演奏に深く魅了されました。冒頭から終幕までずっと緊張感を強いられる演奏でしたが、とりわけ、最後のオーケストラ中心の演奏になった後の超絶的な高揚感は格段のものでした。

詳細の感想は一昨日のミューザ川崎の公演について書いた通りですが、演技内容はかなりブラッシュアップされて、さらに納得感のあるものに変わっていました。短時間でこういう修正を加えた演出監修のサー・トーマス・アレンには脱帽です。

クリテムネストラ役のハンナ・シュヴァルツの歌唱はさらに声量を抑えたものになり、実に迫真の歌唱になったのは絶句しました。こういう悩めるクリテムネストラを強調した歌唱の独自性はあるいは賛否あるかも知れませんが、単なる悪役ではないという深みは素晴らしいと感じ入りました。老いてこその歌唱に感銘を受けました。

オレスト役のジェームス・アトキンソンはミューザ川崎のときの歌唱とうってかわって、実に見事な歌唱を聴かせてくれました。その美声に魅了されました。

音楽は大団円へはいり、狂乱するエレクトラは踊りながら崩れ落ちながらも中央の椅子に目を開けて座っています。素晴らしい響きの東響がオレストのモティーフを強烈に繰り返し、エレクトラはその響きの終焉とともにクリソテミスに抱かれつつ、目を閉じて、最期のときを迎えます。そして、照明が落ちて、暗黒に。圧倒的なフィナーレです。サントリーホールの聴衆が興奮と熱狂に包まれます。
万雷の拍手とブラボーコールはコロナ禍の終わりを告げるかのようでした。


2023051401.jpg



次回のR.シュトラウスのコンサート形式オペラが待ち遠しいです。何が上演されるのでしょう。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:ジョナサン・ノット
  演出監修:サー・トーマス・アレン
  管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:小林壱成

  エレクトラ:クリスティーン・ガーキー
  クリテムネストラ:ハンナ・シュヴァルツ
  クリソテミス:シネイド・キャンベル=ウォレス
  エギスト:フランク・ファン・アーケン
  オレスト:ジェームス・アトキンソン
  オレストの養育者:山下浩司
  若い召使:伊藤達人
  老いた召使:鹿野由之
  監視の女:増田のり子
  第1の侍女:金子美香
  第2の侍女:谷口睦美
  第3の侍女:池田香織
  第4の侍女/クリテムネストラの裾持ちの女:髙橋絵理
  第5の侍女/クリテムネストラの側仕えの女:田崎尚美
  合唱:二期会合唱団


最後に予習について、まとめておきます。もちろん、一昨日と同じです。

 R.シュトラウス:『エレクトラ』(ザルツブルク音楽祭2010)

  エレクトラ:イレーネ・テオリン(ソプラノ)
  クリテムネストラ:ヴァルトラウト・マイヤー(メゾ・ソプラノ)
  クリソテミス:エファ=マリア・ウェストブローク(ソプラノ)
  エギスト:ロバート・ギャンビル(テノール)
  オレスト:ルネ・パーペ(バリトン)、他
  ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
  ダニエレ・ガッティ(指揮)

  演出:ニコラウス・レーンホフ
  装置:ライムント・バウアー(舞台装置)
  衣装:アンドレア・シュミット=フッテラー

  収録時期:2010年
  収録場所:ザルツブルク、大祝祭劇場(ライヴ)

さすがにウィーン・フィルで聴くR.シュトラウスは見事。キャストも豪華で隙もなく、特にガッティの指揮は特筆すべきものです。



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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
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金婚式、おめでとうございます!!!
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10/07 08:57 堀内えり

 ≪…長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さ…≫を、長調と短調の振り子時計の割り振り」による十進法と音楽の1オクターブの12等分の割り付けに

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じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
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07/08 18:59 sarai

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07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

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