お目当ては菊池洋子が弾くモーツァルトのピアノ協奏曲です。以前、今日の指揮者、川瀬賢太郎とのコンビでモーツァルトのピアノ協奏曲第21番を聴きました。素晴らしい演奏でした。その時以来、7年ぶりに菊池洋子が弾くモーツァルトのピアノ協奏曲を聴きます。第1楽章、日フィルの堂々とした演奏に続き、菊池洋子のピアノが入ってきます。最初は少しオーケストラにピアノの響きが埋没している印象ですが、天才モーツァルトはちゃんと独奏ピアノの響きが輝くように作曲しています。菊池洋子の美しいピアノが響き渡ります。以降、オーケストラ演奏とピアノ独奏が交互に美しく響きます。堂々としたパート、抒情的なパートが交錯し、得も言われぬモーツァルトの世界が展開します。オペラ《フィガロの結婚》と同時期に作曲された作品で、フィガロを思わせる部分も多々あり、とても充実した音楽です。菊池洋子はモーツァルトらしい粒立ちのよいピアノの響きとともに颯爽としたパッセージも見事に歌い上げます。第2楽章は美しい抒情の世界です。菊池洋子のピアノはさらに輝きを増します。そして、第3楽章は勢いのあるパッセージを活き活きと表現していきます。音楽が高潮してフィナーレ。圧巻の演奏でした。
日本人のピアニストのモーツァルトで初めて評価できたのはこの菊池洋子の演奏だったことを思い出します。その後、続々と日本人ピアニストの素晴らしいモーツァルトを聴きました。思い出すままに、岡田奏、伊藤恵、田部京子、北村朋幹、藤田真央、萩原麻未などです。今日のピアノ協奏曲第25番では岡田奏の演奏が最高でした。しかし、菊池洋子のピアノも輝きを失っていませんでしたね。
休憩後、ストラヴィンスキーの名曲、《春の祭典》です。オーケストラの実力を問われる作品でもあります。日フィルは素晴らしい響きを聴かせてくれました。ただ、原石の輝きを放つダイアモンドといった風情。実力の一端を内包することは分かりますが、もっと磨き上げる必要も感じます。今後、磨き上げてくれるのはカーチュン・ウォンにほかなりません。今日の川瀬賢太郎も見事な指揮ではありましたが、強烈な個性を発揮するところまではもう一つという感じ。
やはり、来シーズン以降、日フィルはカーチュン・ウォンの薫陶によって、もしかしたら、とんでもなく、素晴らしい演奏を聴かせてくれる予感がします。まず、サマーミューザでの《展覧会の絵》。そして、10月の【首席指揮者就任披露演奏会】でのマーラーの交響曲第3番で今後が占えるでしょう。楽しみです。
今日のプログラムは以下です。
指揮:川瀬賢太郎
ピアノ:菊池洋子
管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団 コンサートマスター:田野倉 雅秋
モーツァルト:歌劇《フィガロの結婚》K.492 序曲
モーツァルト:ピアノ協奏曲第25番 ハ長調 K.503
《アンコール》J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV 988 から アリア
《休憩》
ストラヴィンスキー:バレエ音楽《春の祭典》
最後に予習について、まとめておきます。
1曲目のモーツァルトの歌劇《フィガロの結婚》序曲を予習したCDは以下です。
カール・ベーム指揮ベルリン・ドイツ・オペラ 1968年3月、イエス・キリスト教会、ベルリン セッション録音
有名な全曲盤から、序曲のみを聴きました。今となっては録音が今一つの感ですが、演奏の瑞々しさにはびっくりします。
2曲目のモーツァルトのピアノ協奏曲第25番を予習したCDは以下です。
田部京子、飯森範親指揮山形交響楽団 2017年3月25-26日 山形テルサホール ライヴ録音
田部京子のピアノも美しく、飯森範親指揮山形交響楽団の演奏も冴え渡っています。
3曲目のストラヴィンスキーのバレエ音楽《春の祭典》を予習したCDは以下です。
ピエール・ブーレーズ指揮クリーヴランド管弦楽団 1991年3月、マソニック・オーディトリアム、クリーヴランド セッション録音
1969年録音のソニー盤のおよそ20年後に同じコンビで録音したDG盤。この曲の代表盤のひとつ。パーフェクトな演奏です。
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