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菊池洋子の美しいモーツァルト、そして、原石の輝きを放つダイアモンドのような《春の祭典》 日本フィルハーモニー交響楽団@横浜みなとみらいホール 2023.7.1

来シーズンから日本フィルのサントリー定期会員になるので、その助走のようにこのコンサートに足を運びました。
お目当ては菊池洋子が弾くモーツァルトのピアノ協奏曲です。以前、今日の指揮者、川瀬賢太郎とのコンビでモーツァルトのピアノ協奏曲第21番を聴きました。素晴らしい演奏でした。その時以来、7年ぶりに菊池洋子が弾くモーツァルトのピアノ協奏曲を聴きます。第1楽章、日フィルの堂々とした演奏に続き、菊池洋子のピアノが入ってきます。最初は少しオーケストラにピアノの響きが埋没している印象ですが、天才モーツァルトはちゃんと独奏ピアノの響きが輝くように作曲しています。菊池洋子の美しいピアノが響き渡ります。以降、オーケストラ演奏とピアノ独奏が交互に美しく響きます。堂々としたパート、抒情的なパートが交錯し、得も言われぬモーツァルトの世界が展開します。オペラ《フィガロの結婚》と同時期に作曲された作品で、フィガロを思わせる部分も多々あり、とても充実した音楽です。菊池洋子はモーツァルトらしい粒立ちのよいピアノの響きとともに颯爽としたパッセージも見事に歌い上げます。第2楽章は美しい抒情の世界です。菊池洋子のピアノはさらに輝きを増します。そして、第3楽章は勢いのあるパッセージを活き活きと表現していきます。音楽が高潮してフィナーレ。圧巻の演奏でした。
日本人のピアニストのモーツァルトで初めて評価できたのはこの菊池洋子の演奏だったことを思い出します。その後、続々と日本人ピアニストの素晴らしいモーツァルトを聴きました。思い出すままに、岡田奏、伊藤恵、田部京子、北村朋幹、藤田真央、萩原麻未などです。今日のピアノ協奏曲第25番では岡田奏の演奏が最高でした。しかし、菊池洋子のピアノも輝きを失っていませんでしたね。

休憩後、ストラヴィンスキーの名曲、《春の祭典》です。オーケストラの実力を問われる作品でもあります。日フィルは素晴らしい響きを聴かせてくれました。ただ、原石の輝きを放つダイアモンドといった風情。実力の一端を内包することは分かりますが、もっと磨き上げる必要も感じます。今後、磨き上げてくれるのはカーチュン・ウォンにほかなりません。今日の川瀬賢太郎も見事な指揮ではありましたが、強烈な個性を発揮するところまではもう一つという感じ。
やはり、来シーズン以降、日フィルはカーチュン・ウォンの薫陶によって、もしかしたら、とんでもなく、素晴らしい演奏を聴かせてくれる予感がします。まず、サマーミューザでの《展覧会の絵》。そして、10月の【首席指揮者就任披露演奏会】でのマーラーの交響曲第3番で今後が占えるでしょう。楽しみです。


今日のプログラムは以下です。


  指揮:川瀬賢太郎
  ピアノ:菊池洋子
  管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団 コンサートマスター:田野倉 雅秋

  モーツァルト:歌劇《フィガロの結婚》K.492 序曲
  モーツァルト:ピアノ協奏曲第25番 ハ長調 K.503
   《アンコール》J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV 988 から アリア

   《休憩》

  ストラヴィンスキー:バレエ音楽《春の祭典》


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のモーツァルトの歌劇《フィガロの結婚》序曲を予習したCDは以下です。

 カール・ベーム指揮ベルリン・ドイツ・オペラ 1968年3月、イエス・キリスト教会、ベルリン セッション録音

有名な全曲盤から、序曲のみを聴きました。今となっては録音が今一つの感ですが、演奏の瑞々しさにはびっくりします。


2曲目のモーツァルトのピアノ協奏曲第25番を予習したCDは以下です。

 田部京子、飯森範親指揮山形交響楽団 2017年3月25-26日 山形テルサホール ライヴ録音

田部京子のピアノも美しく、飯森範親指揮山形交響楽団の演奏も冴え渡っています。


3曲目のストラヴィンスキーのバレエ音楽《春の祭典》を予習したCDは以下です。

 ピエール・ブーレーズ指揮クリーヴランド管弦楽団 1991年3月、マソニック・オーディトリアム、クリーヴランド セッション録音

1969年録音のソニー盤のおよそ20年後に同じコンビで録音したDG盤。この曲の代表盤のひとつ。パーフェクトな演奏です。



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

 

第3幕の素晴らしさに感動し、第4幕は涙なしには聴けない《ラ・ボエーム》@新国立劇場 2023.7.2

新国立劇場 開場25周年のシーズンの最終公演です。
歌手が小粒ですが、演出がスタンダードで第2幕の華やかさも素晴らしく、【ミミ】役のアレッサンドラ・マリアネッリは第3幕以降は素晴らしい歌唱で、第4幕終盤はもう涙なしには聴けませんでした。そもそも、saraiはこのラ・ボエームが大好きなんです。いつもは第1幕の愛の2重唱で感動して、うるうるで聴くのですが、残念ながら、今日の公演では愛の2重唱が不発。主役の二人の声量がもうひとつでした。
もっとも、ラ・ボエームはミレッラ・フレーニのミミで封印したオペラで、基本的には聴かないことにしていますが、新国立劇場のシーズンセット券を購入しているので、聴いちゃったんです。ちなみにフレーニのミミを初めて聴いたのはもう31年前のウィーン国立歌劇場でした。ラ・ボエームを初めて聴いたのもそのときでした。
今日の公演はミミを中村恵理が歌ってくれれば最高だったんですけどね。フレーニの封印を解いてくれたのは中村恵理だけです。4年前の宮崎芸術劇場のコンサート形式での公演でした。

【ミミ】役のアレッサンドラ・マリアネッリと【ロドルフォ】役のスティーヴン・コステロ、そして、【コッリーネ】役のフランチェスコ・レオーネは小粒と言えども、なかなかの歌唱で好印象でした。そして、【ムゼッタ】役のヴァレンティーナ・マストランジェロは見事な歌唱を聴かせてくれました。そのほか、【マルチェッロ】役の須藤慎吾が素晴らしい歌唱でステージを引き締めていました。
大野和士の指揮が素晴らしく、東フィルの美しいアンサンブルを引き出していました。今日はオーケストラの演奏が一番の聴きものだったかもしれません。実に繊細極まる演奏でした。


今日のキャストは以下です。

  新国立劇場 開場25周年記念公演
   ジャコモ・プッチーニ
    ラ・ボエーム 全4幕

  【指揮】大野和士
  【演出】粟國 淳
  【美術】パスクアーレ・グロッシ
  【衣裳】アレッサンドロ・チャンマルーギ
  【照明】笠原俊幸
  【舞台監督】髙橋尚史
  【合唱指揮】三澤洋史
  【合 唱】新国立劇場合唱団
  【児童合唱】TOKYO FM少年合唱団
  【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団 コンサートマスター:依田 真宣
  
  【ミミ】アレッサンドラ・マリアネッリ
  【ロドルフォ】スティーヴン・コステロ
  【マルチェッロ】須藤慎吾
  【ムゼッタ】ヴァレンティーナ・マストランジェロ
  【ショナール】駒田敏章
  【コッリーネ】フランチェスコ・レオーネ
  【べノア】鹿野由之
  【アルチンドロ】晴 雅彦
  【パルピニョール】寺田宗永
  

最後に予習について、まとめておきます。

 ザルツブルク音楽祭2012ライヴ、プッチーニ:歌劇「ラ・ボエーム」(全4幕)

  ロドルフォ(詩人):ピョートル・ベチャワ
  ショナール(音楽家):アレッシオ・アルドゥイーニ
  マルチェルロ(画家):マッシモ・カヴァルレッティ
  コルリーネ(哲学者):カルロ・コロンバーラ
  ミミ(ロドルフォの恋人):アンナ・ネトレプコ
  ムゼッタ(マルチェルロの恋人):ニーノ・マチャイゼ
  アルチンドロ(参事官):ペーテル・カールマーン
  ブノア(家主):ダヴィデ・フェルシーニ
  パルピニョール(おもちゃの行商人):パウル・シュヴァイネスター(歌)、シュテーヴン・フォルスター(パフォーマンス)

  管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 コンサート・マスター:ライナー・ホーネック
  合唱:ウィーン国立歌劇場合唱団
  指揮:ダニエレ・ガッティ
  美術:パオロ・ファンティン
  衣装:カルラ・テーティ
  照明:マルティン・ゲプハルト
  演出:ダミアーノ・ミキエレット

  収録時期:2012年8月1日
  収録場所:ザルツブルク祝祭大劇場(ライヴ)
  NHK-BSプレミアムをBD録画

ネトレプコがミミを歌った映画版も以前見ましたが、断然、この舞台収録のほうが好きです。第3幕以降は涙なしには聴けません。



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

 

Twitter、どうなったんだ!! 再度、連携設定・・・実に難解!

このこころ、Twitterが何か変だなと思っていました。調べてみると、「2要素認証」とかの設定が必要とのことで、認証アプリの設定をやりましたが、これが実に面倒。結局、うまくいったかどうかは謎です。連日、Twitter関連のニュースが流れていますが、イーロン・マスク氏の介入以来、Twitterは迷走していますね。

ところで、本論はこれから。当ブログはずっとTwitter連携の機能を使って、自動的に新しい記事をTwitterにも発信していて、それなりに「いいね!」をいただいていました。それが、最近はまったくその「いいね!」がいただけない状況が続き、それはsaraiの不徳の致すところとあきらめていました。でも、その状態があまりに続くので変だと思い、よくよくチェックしてみると、自動連携が無効になっているではありませんか。最後に連携したのは5月18日。実に1ヵ月以上も自動連携無効の状況が続いていました。
Twitter側でAPI連携がセキュリティ強化(その実、有料化のためのようです)で、変更になり、対応が必要になっていました。その対応というのが何ともややこしい。難解です。ブログ管理元のFC2の公式ページだけでは何ともなりません。公式ページは以下です。
 https://help.fc2.com/blog/manual/group100/2515
ご親切な方の記事を参考に何とか設定を終えました。その記事は以下です。
 https://0saft.blog.fc2.com/blog-entry-12061.html

その後、コンサートの記事だけをTwitterに1個ずつ発信しました。
で、今日は肝心のブログを書く時間がなくなりました。ごめんなさい。
かわいそうだと思った方はポチしてくださいね。


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テーマ : インターネット関連
ジャンル : コンピュータ

 

プラハ城へ入城!

2008年5月7日水曜日@プラハ/2回目

今年の旅はドレスデンDresdenとライプツィヒLeipzigとプラハPrahaが目的地。
今日はプラハの2日目、旅の最終日です。

今日はプラハ城Pražský hradを訪ねます。トラムの最寄の停留所、マラー・ストラナ広場Malostranské náměstíから、プラハ城を目指します。結構、迷路のように道が入り組んでいて、少し、迷いますが、要は上に上に上っていけば、プラハ城の方です。路地のトンネルを抜けていきます。

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やがて、まともな道に出ます。

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またまた、狭い路地のトンネルに入り込みます。

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そのうちにそれらしき建物が見えてきます。それなりに上り坂が続き大変ですが、それでもトラムの停留所は丘の中腹なので、カレル橋から上るんだともっと疲れそうですね。実はトラムからだとプラハ城の裏門のほうが近かったのですが、正門からどうしても入りかったので、少し遠回りになりました。正門の前の広場からは、まず、下に広がるプラハの街の眺めに目がいきます。ヴルタヴァ川の流れを中心にカレル橋や旧市街広場のティーン教会など、プラハの街が広がっています。

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少し、ボーっと見ていましたが、さて、プラハ城へ。
「戦う巨人たち」の像がある正門Sousoší Souboj Titánůです。ここを抜けて、第一中庭に入ります。門には両側に衛兵が立っています。観光用にはぴったりです。

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そして、マティアスの門Matyášova bránaを抜けて、第2中庭へ。聖ヴィート大聖堂の尖塔も見えてきます。

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とりあえずは中にはいり、チケットを入手するためにチケット窓口に向かいます。中にはいると、両替の窓口もあり、ややこしいのですが、窓口は空いており、王宮ギャラリー(美術館)も見られるフルチケットを奮発。

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結構な値段ですが、成田の地下にある両替ショップで2万円も両替したので、今日中に使い切ってしまいたいと思って、気が大きくなっています。それにここで見たい絵もあります。フルチケットの料金を払って、窓口から離れると、すかさず、次に並んでいた人が窓口に向かって、「Do you speak Russian?」。ここは昔はソ連(ロシアではない)の支配下にあったし、やはり、今でも影響力があるんでしょうね。それにしても窓口の人はチェコ語はもちろん、英語、ロシア語、それにきっとドイツ語も話せないといけないのかも。まあ、チェコ語とロシア語は同じスラブ系の言葉らしいので、そんなに大変ではないかも知れません。日本では想像できませんが、やはり、このあたりは色んな民族・文化・習慣の坩堝なんでしょうね。

とりあえず、第2中庭Druhé nádvoří Pražského hraduを見物しています。

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さあ、この奥の聖ヴィート大聖堂Katedrála Sv. Vítaに向かいましょう。



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テーマ : ヨーロッパ
ジャンル : 海外情報

 

聖ヴィート大聖堂:美しいミュシャのステンドグラス

2008年5月7日水曜日@プラハ/3回目

今年の旅はドレスデンDresdenとライプツィヒLeipzigとプラハPrahaが目的地。
今日はプラハの2日目、旅の最終日です。

今日はプラハ城Pražský hradを訪ねています。第2中庭にあるインフォメーションセンターでフルチケットを購入したところです。大変、混雑していて、人種、民族の坩堝のようになっていました。
じゃ、見物です。まずは、やはり、ここのシンボルである聖ヴィート大聖堂Katedrála Sv. Vítaでしょう。第2中庭から第3中庭に入ると、目の前に聖ヴィート大聖堂の西側ファサードが聳えています。やはり、聖ヴィート大聖堂は巨大な建造物です。幅60m、高さは96.6mを誇ります。その存在感に圧倒されます。

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ところが、聖ヴィート大聖堂の入口の前に行くと、人が渦巻いています。なんだこれは・・・・!!ものすごい行列です。まだ、朝そんなに遅くないのにと思いますが、やはり、今日、少し、気が緩んで、朝ゆっくりしたのがアダになったようです。仕方がないので、大聖堂の建物に沿って回りこんでいる行列の最後尾につきます。どこかの高校生の団体の後ろです。一体、どこの国の高校生か、よく分かりませんが、英語で話しているようです。

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ほかにも、色んな言葉が飛び交っています。こちらも負けずに日本語で会話しましょう。何を言ったって、どうせ、周りの誰にも分かりはしないので、遠慮無用です。

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時々、すっと列が進み、思ったほどの時間は待たずに大聖堂に入場できます。ヨーロッパの教会・聖堂はどれも大規模ですが、この大聖堂もトップクラスの大きさの内部です。典型的なゴシック建築様式で、身廊の天井が高く感じます。聖ヴィート大聖堂内部の大きさは、全長124m、高さ33mの大きさです。天井のリブ・ヴォールトの網目が美しいですね。

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内部空間の周りの壁はすべて美しい色に輝くステンドグラスで覆われています。ぐるっと、1周しながら、お目当てのアルフォンス・ミュシャ作のステンドグラスを見つけ、上から下まで見入ります。

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このミュシャのステンドグラスは「聖キリルと聖メトディウス」で、チェコ芸術の最高傑作とも言われています。
ステンドグラスの下部中央を見ると、いかにもミュシャらしい美しい人物像が描かれています。女性のようにも見えますが、メトディウス・キリルの兄弟です。弟キリルは聖書のスラヴ語化のためにキリル文字のもとになるグラゴール文字を作りました。弟キリルが先に亡くなった後、兄メトディウスはチェコ(モラヴィア王国)でスラブ系言語での布教に尽力しました。
なお、下の四角く囲んだ文字はBANKA SLAVIE(スラヴ保険銀行)という企業名です。多額の寄付でこのステンドグラスの完成に貢献したことに感謝したのだそうです。このスラヴ保険銀行は早くからミュシャの絵画『スラヴィア』を保険証書のデザインに使っていました。

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どの部分も美しく描き込まれています。これは中央部分。聖ルドミラと聖ヴァーツラフです。目を閉じて手を広げているのが聖ルドミラ、その下で手を合わせているのが、聖ルドミラの孫、ヴァーツラフ王子です。ヴァーツラフ王子は成人後、ヴァーツラフ1世となり、この聖ヴィート大聖堂を建設しました。なお、ヴァーツラフ王子の絵のモデルとなったのはミュシャの息子イジーだそうです。

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中央上部のステンドグラスです。聖キリルと聖メトディオス(聖ツィリルと聖メトジェイ)。そして、右側に立つ兄メトディオスから洗礼を受ける、モラヴィア王国プシェミスル王朝のポジヴォイ1世の姿が描かれています。東ローマ帝国(ビザンツ帝国)が、モラヴィア王国から、「スラヴ語でキリスト教の信仰を広めてくれる人物を派遣してほしい」という依頼受けて、モラヴィアにメトディウス・キリルの兄弟を派遣したのでした。

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再び、ミュシャのステンドグラスの全体像を眺めます。スラヴをテーマにした極めて美しいステンドグラスです。

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しばし、この美しいステンドグラスに見入っていました。今日はこれを見ただけで満足の1日です。



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聖ヴィート大聖堂:プラハ国立美術館で素晴らしいデューラーやクラナッハを鑑賞

2008年5月7日水曜日@プラハ/4回目

今年の旅はドレスデンDresdenとライプツィヒLeipzigとプラハPrahaが目的地。
今日はプラハの2日目、旅の最終日です。

今日はプラハ城Pražský hradを訪ねています。プラハ城の華、聖ヴィート大聖堂Katedrála Sv. Vítaでアルフォンス・ミュシャのステンドグラスの美に魅了されています。
ほかのステンドグラスもそれぞれの作家の個性が出ており、美しく、まるでステンドグラスの美術館みたいです。全体の統一感には欠けますが、こんなところはほかにないでしょう。
無論、西側の壁面には素晴らしい薔薇窓もあります。

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主祭壇も美しいステンドグラスからの光りが差し込み、うっとりするほどの素晴らしさ。

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北側には素晴らしいパイプオルガンがあります。

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どうしても、ミュシャのステンドグラスに目がいってしまいます。何とも美しい。

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十分に聖ヴィート大聖堂の内部を拝見しました。
それではと、混み合う大聖堂を抜け出し、次のお目当ての古典絵画を鑑賞に王宮ギャラリーObrazárna Pražského hraduに向かいます。また、少し、迷いますが、王宮ギャラリーに到着。結構、こじんまりとしています。ここには、古典作品がいっぱい展示されているのですが、でも、いくら探しても、見たかったデューラーなどの名品が見つかりません。係りの人に訊いても、なかなか明快な答えが返ってきません。係りの人とやりとりをしていると、その話を聞きつけたらしく、女の人が「デューラー?」と言いながら、近寄ってきます。我々が入館したときにチケットをチェックした人です。どうやら、単なるチケット係りではなく、学芸員だったのでしょうか。彼女によると、ここではなく、プラハ城の外にあるシュテルンベルク宮殿Národní galerie Praha – Šternberský palácにデューラーなどが展示されているとのことで、詳しく場所を教えてくれます。プラハ国立美術館は6ヶ所ほどに分散されていることは知っていましたが、見事に勘違いしていたようです。これはいかんと、早速、教えられた場所に急遽、移動。すると、5分ほどのところにあります!でも、がらんとしていて、入り口の鉄の扉はしっかり閉まっています。誰も見当たらないし、今日は休みかなと思いますが、扉にわからないチェコ語と並んで「OPEN」の文字。扉の重いノブを回して、おそるおそる開けると、そこが美術館の受付のロビーです。扉くらいは開けとけよなとブツブツいいながらもほっとしたsaraiです。
無論、ここはプラハ城ではないので、プラハ国立美術館・シュテルンベルク宮殿のチケットを別途購入。結局、プラハ城のフルチケットはあまり意味のないことになります。

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ここにはお目当ての古典絵画がみんな揃っています。デューラー、クラナッハ等々、素晴らしい作品群です。特にこんなに素晴らしいクラナッハを見たのはウィーン以来でしょうか。プラハ城と違って、がらがらで、落ち着いて、鑑賞できます。この美術館の1階には中庭があり、オープンカフェで疲れた人たちが休んでいますが、saraiはまだ先を急ぎたいのでパス。

さて、シュテルンベルク宮殿を後にして、また、プラハ城に戻ります。といっても、目と鼻の先なので、すぐです。すると、正門の前が文字通り、黒山の人だかり。かすかにラッパの音も聞こえます。

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時計を見ると12時を少し過ぎています。そうそう、有名な衛兵の交代です。これはちょうどよいタイミング。予定していませんでしたが、これは見物しないとね。



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プラハ城:衛兵交代に遭遇

2008年5月7日水曜日@プラハ/5回目

今年の旅はドレスデンDresdenとライプツィヒLeipzigとプラハPrahaが目的地。
今日はプラハの2日目、旅の最終日です。

今日はプラハ城Pražský hradを訪ねています。プラハ城の華、聖ヴィート大聖堂Katedrála Sv. Vítaのステンドグラスの美に魅了された後、プラハ国立美術館Národní galerie Prahaで素晴らしいデューラーやクラナッハを鑑賞しました。
再び、プラハ城に戻ると、まさに有名な衛兵交代が行われるところです。
実はその衛兵交代の時間に合わせて行動するのは無理と思い観光予定から外していたのですが、偶然行き会うとはビックリ。急いで正門の前に向かうと、ちょうど交代した衛兵の一隊が正門から出て来るところです。

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凛々しい衛兵たちがまっすぐ正面を見据えて、脇目もふらずに目の前を通り過ぎていきます。若き美丈夫たちです。

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衛兵たちが出ていくための出口を空けようと整理しているところだったんです。はぁ~い、しっかり一番前で衛兵が出ていくのを見てしまいます。

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しかも、衛兵たちが出て行ったあとに、門を閉じるのにつられて第1中庭に引きこまれるようにして入ってしまい、最後のラッパの合図で建物に入って行く衛兵たちまで見てしまいます。なんとラッキー!!

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さて、プラハ城は先ほど聖ヴィート大聖堂までしか行っていなかったので、その奥を見物に行きます。
聖ヴィート大聖堂の「南ファサード」の前の第3中庭を抜けていきます。
南ファサードの「黄金の門」と、その上部に描かれたモザイク画「最後の審判」をさっと眺めます。

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その先の聖イジー聖堂Bazilika svatého Jiříにある黄金の小路Zlatá uličkaと呼ばれるおとぎ話の家が立ち並ぶ路地に向かいます。ただし、単なる路地と思うなかれ。路地の入り口には門がありしっかり通行料を取られるんです。有料の路地なんて世界中でここだけじゃないかしら・・・。sarai達はあんまり必要じゃなかったフルチケットを持っているので、どこでもフリーパスです。

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この黄金の小路でお目当ては不条理文学のフランツ・カフカです。



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堀米ゆず子のグァルネリ・デル・ジェスの素晴らしい響きのバッハ、R.シュトラウスに魅了されたリサイタル@上大岡 ひまわりの郷 2023.7.8

高名な堀米ゆず子ですが、これまで機会がなく、初聴きです。ですから、それほどの期待もせずに聴き始めました。
ところが、冒頭のバッハのヴァイオリン・ソナタの最初の一音でうーんと唸らせられます。何ともよく響く美しいヴァイオリンの音色です。第1楽章のアダージョのゆったりした音楽が耳に心地よく響いてきます。そして、悠々迫らぬ演奏はバッハの真髄を余すところなく表現します。素晴らしいのは緩徐楽章だけではありません。第2楽章のアレグロも見事なテンポでの演奏、しかもヴァイオリンはよく響きます。とりわけ、素晴らしかったのは第3楽章のアダージョ。まさに心に沁みる最高の演奏です。最後の第4楽章もテンポのよい演奏で、バッハのソナタを堪能しました。

続くJ.S.バッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ 第2番はヴァイオリン作品の金字塔のような傑作です。もう、堀米ゆず子の素晴らしい演奏を信じて疑いませんが、期待通りの素晴らしい演奏。どの楽章も素晴らしかったのですが、強いて言えば、サラバンドとシャコンヌは圧巻の演奏。サラバンドはこのところ、ヒラリー・ハーン、庄司紗矢香と聴いてきましたが、今日の演奏が一番だったような気がします。それほどの演奏です。シャコンヌは一点の隙もない完璧な演奏で、グァルネリ・デル・ジェスの素晴らしい響きに魅了されるのみです。
前半のプログラムはバッハ尽くしで最高の演奏。これだけ聴いて帰っても満足です。

後半は滅多に聴けないR.シュトラウスのヴァイオリン・ソナタ。これが実にロマンあふれる演奏でバッハ以上に素晴らしかったんです。第1楽章はR.シュトラウスならではのロマンの感性に満ちた情念が歌い上げられます。R.シュトラウス好きにはたまりません。一転して第2楽章は美しさの限りを尽くしたような音楽が堀米ゆず子のよく響くヴァイオリンで奏で上げられます。うっとりと聴き入るのみです。中間部は少し騒々しいのですが、最後はまた、最初の美しい音楽が戻ってきます。最高の音楽です。そして、第3楽章は祝祭的に歌われます。このあたりはシューマン、ブラームスに連なる音楽ですね。そして、祝祭的に高潮してフィナーレ。素晴らしい演奏でした。ブラヴォー!

アンコールはショパンの有名なノクターン第8番。実に美しい演奏でした。

激しい感動こそありませんが、こんなに気持ちよく音楽を聴いたのも久しぶりです。こんな素晴らしいヴァイオリニストが日本にいたんですね。あっ、日本人だけど日本在住じゃありませんね。


今日のプログラムは以下です。


  ヴァイオリン:堀米ゆず子
  ピアノ:加藤 洋之

  J.S.バッハ:ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ホ長調 BWV1016
  J.S.バッハ: 無伴奏ヴァイオリン・パルティータ 第2番 ニ短調 BWV1004

   《休憩》

  R.シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 Op.18
  
   《アンコール》
     ショパン(ウィルヘルミ編):ノクターン第8番 Op.27-2
     

最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のJ.S.バッハのヴァイオリン・ソナタ 第3番は急にプログラム変更になったため、無駄にベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第6番のCDを聴きました。

 
2曲目のJ.S.バッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ 第2番は以下のCDを聴きました。

 チョン・キョンファ 2016年2月24-26日, 4月3-5日, 5月30-6月1日、UK, St George's Bristol セッション録音
 
チョン・キョンファの15年ぶりの復帰録音です。アルマンド、クーラントはあれっという感じですが、サラバンドは素晴らしく、次のジーグはさらに見事です。シャコンヌは貫禄の演奏でした。まるでライヴのような尻上がりの演奏です。


3曲目のR.シュトラウスのヴァイオリン・ソナタは以下のCDを聴きました。

 チョン・キョンファ、クリスティアン・ツィマーマン 1988年7月 ビーレフェルト,ルドルフ=エトガー=ハレ大ホール セッション録音

これはチョン・キョンファが飛ぶ鳥を落とす勢いの頃の古い録音です。あまり録音の多くない作品の貴重な録音で、演奏は素晴らしいものです。特にツィマーマンのしっかりしたピアノに感銘を覚えました。



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イリーナ・メジューエワのショパン・リサイタル、破格のバラード第1番@東京文化会館・小ホール 2023.7.9

メジューエワは昨年の暮れ、突然、久々の東京でのリサイタル、日本コンサートデビュー25周年記念リサイタルでブラームス、リストを中心にした演奏を聴かせてくれて、大変、満足しました。今回から4回シリーズで「ショパンの肖像」と銘打ったコンサートを催してくれます。saraiはショパンのファンではないので、ショパンに対する思い入れはありませんが、お気に入りのメジューエワの演奏を聴けるのが楽しみです。

1回目の今回はショパンの初期から中期ということですが、プログラムを眺めるとショパンのファンではないsaraiでもよく知っているショパンの名曲ばかりで、ショパンの名曲コンサートという感じです。

前半はまず、遺作のノクターンと幻想即興曲が嬰ハ短調つながりで演奏されます。極めて美しいタッチでの演奏です。メジューエワの力強いタッチは封印して、美しさを追求した演奏です。だからといって、通俗的に走るわけではなく、真摯な演奏です。これでメジューエワのショパンの世界の開幕です。

続いて、Op.18の「華麗なる大円舞曲」。ワルツの中で最も有名な作品ですが、これは美しさは影をひそめ、だからといって、力強さを前面に押し出したわけでもない疑問符のつく演奏です。演奏のスタイルの意図がつかめません。今日の演奏の中で一番、分からなかった演奏です。次のロ短調 Op.69-2のワルツは憂愁を秘めた美しい演奏で安心します。これでこそ、ショパンのワルツの面目躍如ですね。

続いて、マズルカ3曲。ポーランドの民俗的な雰囲気はあまりありませんが、とても美しい演奏です。

前半の最後はアンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ。これは大曲です。後半のポロネーズはまさに華麗極まるもので、素晴らしい演奏に魅了されました。

休憩後、後半はショパンの大傑作、バラード第1番です。ここでメジューエワは持てる力をすべて開放して、破格のショパンを聴かせてくれます。凄まじいエネルギーと情熱の演奏に深く感銘を覚えます。

続いて、エチュード10曲。メジューエワの技巧の確かさに裏打ちされた演奏です。「革命」や「木枯らし」は圧巻の演奏です。

気が付けば、名曲アワーも終了。メジューエワの真摯な演奏によるショパンの名曲の数々を堪能しました。


今日のプログラムは以下です。

  イリーナ・メジューエワ ピアノ・リサイタル 「ショパンの肖像」第1回(全4回)


  ノクターン 嬰ハ短調(遺作)
  幻想即興曲 嬰ハ短調 Op.66(遺作)
  ワルツ(2曲)(変ホ長調 Op.18「華麗なる大円舞曲」/ロ短調 Op.69-2)
  マズルカ(3曲)(ホ短調 Op.17-2/イ短調 Op.17-4/ハ長調 Op.24-2)
  アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ Op.22

   《休憩》

  バラード第1番 ト短調 Op.23 
  エチュード(10曲)
  (変イ長調 Op.25-1/嬰ハ短調 Op.25-7/ホ短調 Op.25-5/ハ短調 Op.10-12「革命」/
  ヘ短調 Op.25-2/ヘ長調 Op.25-3/ヘ短調 Op.10-9/変ト長調 Op.10-5「黒鍵」/
  イ短調 Op.25-11「木枯らし」/ハ短調 Op.25-12)
 
   《アンコール》
     ショパン:ノクターン第5番 嬰ヘ長調 Op.15-2
     ショパン :エチュード Op.10-3 ホ長調「別れの曲」


最後に予習について、まとめておきます。

すべて、イリーナ・メジューエワの録音したCDを聴きました。聴いたアルバムは以下です。

 ショパン・リサイタル 2010 2010年7月15日 クロスランドおやべ・セレナホール(富山県小矢部市) ライヴ録音
 ショパン:19のワルツ集 2015年7月 & 9月、新川文化ホール(富山県魚津市) セッション録音
 日本デビュー20周年記念リサイタル 2017~2018 2017年11月18日 東京文化会館・小ホール ライヴ録音
 京都リサイタル2016 (ショパン・リサイタル) 2016年9月29日、京都コンサートホール〈アンサンブルホールムラタ〉 ライヴ録音
 ショパン:エチュード集(24曲) 2009年7月&9月 新川文化ホール(富山県魚津市) セッション録音

いずれも素晴らしく美しい演奏です。セッション録音とライヴ録音の違いがほとんどないのに驚きます。なるべく最新の演奏を聴きましたが、メジューエワのすべてのCDを所有しているわけではないので、すべて最新の演奏を聴いたわけではありません。それでも一番古い2009年の録音でも完成度の高い演奏を聴かせてくれます。



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       メジューエワ,  

プラハ城:カフカの家@黄金の小路

2008年5月7日水曜日@プラハ/5回目

今年の旅はドレスデンDresdenとライプツィヒLeipzigとプラハPrahaが目的地。
今日はプラハの2日目、旅の最終日です。

今日はプラハ城Pražský hradを訪ねています。プラハ城の華、聖ヴィート大聖堂Katedrála Sv. Vítaのステンドグラスの美に魅了された後、プラハ国立美術館Národní galerie Prahaで素晴らしいデューラーやクラナッハを鑑賞しました。
再び、プラハ城に戻り、偶然に有名な衛兵交代に遭遇。
その後、プラハ城の奥にある黄金の小路Zlatá uličkaに向かい、有料の路地の入口で無駄に購入したフルチケットを振りかざし、路地内に入ります。おとぎ話のような家が立ち並ぶ路地の中でお目当てはフランツ・カフカの家。現在は小さな書店Vitalis, S.r.o.になっています。22番地の建物です。

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確かに家の壁にはフランツ・カフカの名前があります。

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壁にはショーウィンドウがあり、本が並んでいます。カフカ関連の書籍も見えます。

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この建物はカフカが創作活動に7カ月ほど使用した家です。住居としていたわけではなさそうです。自宅の環境がうるさくて執筆に集中できなかったので、この家を一時的に借りていたそうです。1916年、カフカ33歳の頃で、前年に『審判』を執筆終了し、『変身』も出版するという創作活動の頂点にあった頃です。ちなみに、カフカの『城』は、このプラハ城が舞台かと思いましたが、実際はもっと田舎の小さい城だそうです。イメージとしてはプラハ城のほうがいいのに・・・。この家で書いていたのは『田舎医者』などの短編だったようです。
また、この時期は第一次世界大戦が勃発していた頃ですが、カフカはプラハ市内の「労働者傷害保険協会(正式には「ボヘミア王国労働者傷害保険協会プラハ局)」に勤めており、有能な職員として、1913年に30人の部下を抱える書記官主任についていて、保険協会から「業務上不可欠」とされて兵役免除を申請されていたようです。保険局で働くかたわら、執筆活動を続行けていたんですね。
いずれにせよ、このカフカの家は主たる住居ではなく、明らかに観光用に利用されているだけみたいです。カフカは今やチェコを代表する有名人ですからね。まあ、saraiも若い頃、カフカの作品に熱中していました。

そうこうするうちに、どんどん帰国するために空港に向かう時間が迫ってきます。ちゃっちゃっと路地見物を終えます。

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次は、プラハ城のなかにあるロブコヴィッツ宮殿Lobkowiczký palácに向かいます。この中にあるレストランのテラスからプラハの街が見渡せるらしいのです。


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濃厚なロマンに満ちたブラームスの弦楽五重奏曲をカルテット・アマービレが熱演@ハクジュホール(Hakuju Hall) 2023.7.11

ハクジュホールで進行中のBRAHMS Plusシリーズの4回目。2回目までは聴き逃がしましたが、第3回目以降は聴いています。
今回はモーツァルトとブラームスの弦楽五重奏曲を中心としたプログラムです。

最初はモーツァルトの弦楽四重奏曲 第21番。安定したアンサンブルでモーツァルトの名曲を好演。うっとりと魅了されました。

次はモーツァルトの傑作中の傑作、弦楽五重奏曲 第4番。この名作は実演で聴けそうで聴けないもので、saraiの記憶のある限り、ライナー・キュッヒルとウィーン・フィルのメンバー、ミッシャ・マイスキーという豪華メンバーの演奏を聴いただけです。今日のカルテット・アマービレの演奏は第1楽章が早めのテンポで哀愁に満ちた音楽を奏でて、なかなかの演奏。第2楽章も雰囲気に満ちた美しい演奏。そして、第3楽章は抒情に満ちた抑制的な演奏で味わい深いもの。第4楽章は冒頭の悲哀に満ちた演奏に惹き付けられ、その後、一転して、明るい表情の美しい演奏で進行して、あっさりとフィナーレ。魅力にあふれた演奏でした。

後半はいつものように女性3人はドレスを着替えて登場。前半のモーツァルトとはまったく別のアンサンブルで、ブラームスの重層的な深い響きを聴かせてくれます。ともかく、ブラームスの弦楽五重奏曲 第1番の第1楽章の濃厚なロマンの響きに圧倒されました。各楽器で旋律がリレーされるように表現され、それぞれの味わいの深さにうっとりと魅了されます。中でもヴィオラの中 恵菜の演奏は白眉。中低域のアンサンブルが支えた構築性のある音楽はブラームスならではの素晴らしさを感じます。長大な第2楽章は緩徐楽章ですが、その抒情の深さに加えて、テンポの早い中間部での変化で、複雑な色合いを出しています。最後の第3楽章は田舎のお祭りのような賑わいを感じさせる意外性に満ちた音楽。ブラームスの諸相をたっぷりと堪能させてもらいました。

アンコールのモーツァルトは本編の演奏以上にとても美しい演奏で、単独で聴くとモーツァルトの天才性を感じさせてくれるものでした。

カルテット・アマービレの充実ぶりは今日もたっぷりと味わうことができました。彼らの今後にさらなる期待を寄せましょう。


今日のプログラムは以下です。

  カルテット・アマービレ BRAHMS Plus 〈 Ⅳ 〉

  弦楽四重奏:カルテット・アマービレ
   篠原悠那vn   北田千尋vn   中 恵菜va   笹沼 樹vc
  ヴィオラ:村上淳一郎

  モーツァルト:弦楽四重奏曲 第21番 ニ長調 K.575
  モーツァルト:弦楽五重奏曲 第4番 ト短調 K.516

   《休憩》

  J.コズマ(武満徹編):枯葉
  ブラームス:弦楽五重奏曲 第1番 ヘ長調 op.88

   《アンコール》
   モーツァルト:弦楽五重奏曲 第4番 ト短調 K.516 から 第3楽章 変ホ長調 Adagio ma non troppo


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のモーツァルトの弦楽四重奏曲 第21番は以下のCDを聴きました。

  アマデウス四重奏団 1969年 ベルリン セッション録音
 
定番中の定番。素晴らしいです。


2曲目のモーツァルトの弦楽五重奏曲 第4番は以下のCDを聴きました。

 アマデウス四重奏団、セシル・アロノヴィッツ  1969年9月、ベルリン、ミヒャエルスハイム セッション録音
 
これまた素晴らしいモーツァルト。アマデウス四重奏団の見事な演奏に耳を傾けるまでです。


3曲目のJ.コズマ(武満徹編)の枯葉は音源の見当がつかず、予習していません。


4曲目のブラームスの弦楽五重奏曲 第1番は以下のCDを聴きました。

 アマデウス四重奏団、セシル・アロノヴィッツ  1968年4月、ベルリン セッション録音
 
これもアマデウス四重奏団の演奏で聴きました。素晴らしい演奏です。



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       カルテット・アマービレ,  

プラハ城:ヴルタヴァ川の周りに広がるプラハ旧市街を眺める絶景ポイント

2008年5月7日水曜日@プラハ/5回目

今年の旅はドレスデンDresdenとライプツィヒLeipzigとプラハPrahaが目的地。
今日はプラハの2日目、旅の最終日です。

今日はプラハ城Pražský hradを訪ねています。プラハ城の華、聖ヴィート大聖堂Katedrála Sv. Vítaのステンドグラスの美に魅了された後、プラハ国立美術館Národní galerie Prahaで素晴らしいデューラーやクラナッハを鑑賞しました。
再び、プラハ城に戻り、偶然に有名な衛兵交代に遭遇し、その後、プラハ城の奥にある黄金の小路Zlatá uličkaでフランツ・カフカの家でカフカの不条理文学に思いを馳せました。

黄金の小路を出て、プラハ城の東の端までやってきます。東門の先からの素晴らしい眺めが見えます。手前には東門の前にある展望台がありますが、むしろ、ここから見下ろす風景のほうがよさそうです。ヴルタヴァ川の周りの美しいプラハの旧市街が眺められます。

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目を右に転じると、ヴルタヴァ川に架かるカレル橋Karlův mostが見えます。

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カレル橋の北側にはマーネス橋Mánesův mostが見えています。人影もまばらです。橋のほとりには、船上レストランのマリーナ・リストランテMarina Ristoranteが見えます。美味しいイタリア料理が食べられるそうです。

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そして、カレル橋です。昨日と同様に多くの観光客で混雑しています。橋の東端に立つ旧市街橋塔Staroměstská mostecká věžが黒々とした存在感を放っています。この塔はカール4世の命で1300年後半に建てられて、歴代のチェコ王が戴冠式の行列でくぐったゴシック様式の橋塔です。

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プラハの旧市街を見下ろす絶景ポイントで記念撮影。良い思い出になります。

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この絶景ポイントはダリボルカの塔Daliborkaの近くにあります。この塔は中世時代に牢獄として使われていたそうです。塔の名前である「ダリボルカ」は最初の囚人にして、首を切られた騎士ダリボル氏の名前に由来するものです。塔の左側にある階段を上ると、黄金の小路の突き当りにある12番の家に出ます。

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配偶者はいつもの調子で、屋台のお兄さんをからかっているのか、ものを尋ねていますね。

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さて、時間も時間なので、急いで、プラハ城の最後の目的地、ロブコヴィッツ宮殿Lobkowiczký palácに向かいましょう。



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プラハ城:ロブコヴィッツ宮殿にある眺めの良いレストランは洗練された盛り付けと味

2008年5月7日水曜日@プラハ/6回目

今年の旅はドレスデンDresdenとライプツィヒLeipzigとプラハPrahaが目的地。
今日はプラハの2日目、旅の最終日です。

今日はプラハ城Pražský hradを訪ねています。プラハ城の華、聖ヴィート大聖堂Katedrála Sv. Vítaのステンドグラスの美に魅了された後、プラハ国立美術館Národní galerie Prahaで素晴らしいデューラーやクラナッハを鑑賞しました。
再び、プラハ城に戻り、偶然に有名な衛兵交代に遭遇し、その後、プラハ城の奥にある黄金の小路Zlatá uličkaでフランツ・カフカの家でカフカの不条理文学に思いを馳せ、プラハ城の東端にある東門の上からの美しいプラハの旧市街の絶景を眺めました。

最後はロブコヴィッツ宮殿Lobkowiczký palácにある眺めの素晴らしいレストランに向かいます。広い広いプラハ城の中をうろうろしながら、ロブコヴィツ パレス レストラン & カフェRestaurace a kavárna Lobkowiczkého paláceをようやく見つけて中に入ると、ここだけは他の騒々しい空間とは別で、人もほとんどいなくてシ~ンとしており、テラス席もガラガラ。そして・・・・本当に眼下には素晴らしいプラハの街が見渡せ、そよそよと涼しい風まで吹いています。

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景色に見とれながらも、席に落ち着き、ちゃっかりこの旅最後の食事、スープやサンドイッチ、チキンシュニッツェルなどを注文。

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レストランの室内は豪華な内装。天井には植物の緑が描かれ、美しいシャンデリアもあります。

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出てきた料理を見てビックリします。今までのドイツの田舎料理とは違い、いかにもウィーンのハプスブルク家の影響と思われる洗練された盛り付けと味。ア~、ウィーンを思い出す!

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スープの後はメインのサンドイッチ、チキンシュニッツェルです。

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これはチェコ風ビーフグーラッシュです。素晴らしい味の料理でした。

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美味しいランチを堪能し、ロブコヴィッツ宮殿を出ます。後で悔やまれたのが、この宮殿の展示物を見なかったことです。その時はあまり気に留めなかったのですが、ロブコヴィッツ宮殿と言えば、ウィーンにも同名の宮殿があります(今はオーストリア演劇博物館Österreichisches Theatermuseumになっています。)。ベートーヴェンゆかりの場所です。フランツ・ヨーゼフ・マクシミリアン・フォン・ロプコヴィッツ(Franz Joseph Maximilian Fürst von Lobkowitz, 1772年12月7日 - 1816年12月15日)はベートーヴェンの2つ年下のオーストリアのボヘミア系貴族、ロプコヴィッツ家の7代目で、ウィーンに出てきたベートーヴェンを高く評価して、後援します。ルドルフ大公たちとベートーヴェンに終生、年金を与えました。ロプコヴィッツ侯爵は彼の死後もベートーヴェンが亡くなるまで年金を与えたそうです。そのロプコヴィッツ家のプラハの宮殿がこのロプコヴィッツです。プラハ城の中で唯一の私有の建物で現在もロプコヴィッツ家が所有しています。ウィーンのベートーヴェンの話に戻りますが、ベートーヴェンが飛躍した作品、交響曲第3番《英雄》はアン・デア・ウィーン劇場での公開初演に先立って、ウィーンのロプコヴィッツ宮殿でロプコヴィッツ家のオーケストラが1804年12月に非公開初演しました(1804年夏にロブコヴィッツ家がチェコに所有していた 「イェゼジー城」"Jezeří"(Zámek) で非公開初演したという情報もあります。)。ハイドン先生も立ち会ったそうです。当然、ベートーヴェンは交響曲第3番《英雄》をロプコヴィッツに献呈しています。そのほか、ベートーヴェンは以下の作品をロプコヴィッツに献呈しています。

 弦楽四重奏曲第1番~弦楽四重奏曲第6番(作品18の6曲)
 三重協奏曲
 交響曲第5番「運命」
 交響曲第6番「田園」
 弦楽四重奏曲第10番
 遥かなる恋人に(連作歌曲集作品98)
 
当然、このロプコヴィッツ宮殿にはベートーヴェンゆかりのものが充実しているそうです。少しだけ時間をさけば、展示物が見られたのにと臍をかみます。

ともあれ、帰国するために空港に向かう時間はどんどん迫っています。しかし、ここで粘るのがsaraiです。古典絵画は見たけど、近代・現代絵画は見てないよ! プラハ国立美術館の近現代部門はまったく別の場所です。ヴィレトゥルジェニー宮殿Veletržní palácにあるプラハ国立美術館Národní galerie v Prazeの分館にあります。プラハ城を出て、急いで、トラムで移動しましょう。何としても見たい作品があるんです。



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アラン・ギルバートと東京都交響楽団のコンビは最強! 素晴らしいニールセン@サントリーホール 2023.7.14

このところ、絶好調の演奏が続く都響はゲストコンサートマスターに水谷晃を迎えるという驚きの布陣ですが、やはり、アラン・ギルバートが指揮すると鉄壁のアンサンブルで豪放とも思える演奏を聴かせてくれます。キリル・ゲルシュタインのピアノによるラフマニノフは美しさに加えて、豪快な演奏を聴かせてくれました。

首席客演指揮者、アラン・ギルバートを迎えての都響スペシャルとあっては聴き逃がせません。アラン・ギルバートが指揮する都響はいつも会心の演奏を聴かせてくれます。今回はニールセンの作品。あまり、saraiとしては気持ちが乗りませんが、一応聴いてみることにしました。しかし、さすがにアラン・ギルバートは圧巻の演奏を聴かせてくれました。
最初のニールセンの序曲《ヘリオス》はエーゲ海の太陽の日の出から日の入りまでを描いたもので、まるでアルプス交響曲の圧縮版のような音楽です。アラン・ギルバートの剛腕の演奏が見事です。関係ありませんが、アラン・ギルバートの指揮でアルプス交響曲が聴きたくなります。ええっ・・・馬鹿ですね。そう言えば、来週、アラン・ギルバートの指揮でアルプス交響曲を聴くんでした。このプログラムは来週のアルプス交響曲へ向けての助走なんですかね。??

次はニールセンの交響曲第5番。これはブロムシュテットの素晴らしい指揮でウィーン響、N響との演奏を聴いています。その演奏が頭に焼き付いていましたが、アラン・ギルバートもやるものですね。どっちがいいとかいうものではなく、それぞれの音楽が輝いています。今日の演奏は第1楽章の小太鼓に代表される戦争の圧倒的迫力と芸術的な音楽美の大抗争の凄まじい音楽で一気に高揚します。まるで悪の代表のような戦争にいかに芸術が立ち向かうかというイメージがウクライナ戦争をつい連想してしまいます。アラン・ギルバートの剛腕がうなるような凄い演奏でした。一転して、第2楽章はひたすら都響のアンサンブルが素晴らしい音響美を奏でます。4部編成のうち、第3部のアンダンテがフーガの美しい展開を見せて、弦楽の美しさの限りを感じさせます。アラン・ギルバートが美を追求するような素晴らしい指揮をみせてくれました。圧巻のニールセンでした。これなら、すべてのニールセンを聴かせてもらいたいと思いますが、彼は既にニューヨーク・フィルとニールセン全集を完成させているのですね。そのうちにブロムシュテットのサンフランシスコ響の全集と聴き比べてみましょう。

休憩後の後半はキリル・ゲルシュタインのピアノでラフマニノフのピアノ協奏曲第3番。ゲルシュタインのダイナミックな演奏を堪能しました。とても美しい演奏でしたが、フォルテッシモが鳴らし過ぎで音が濁ってしまったのだけが残念でした。それ以外は完璧だったのにね。まあ、久しぶりにラフマニノフのピアノ協奏曲第3番の演奏を楽しみました。


今日のプログラムは以下のとおりです。

  指揮:アラン・ギルバート
  ピアノ:キリル・ゲルシュタイン
  管弦楽:東京都交響楽団 コンサートマスター:水谷晃(ゲスト)

  ニールセン:序曲《ヘリオス》Op.17
  ニールセン:交響曲第5番 Op.50
   
   《休憩》
   
  ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番 ニ短調 Op.30
   

最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のニールセンの序曲《ヘリオス》を予習したCDは以下です。

 ヘルベルト・ブロムシュテット指揮デンマーク放送交響楽団 1975年2月10-14日 デンマーク放送コンサートホール、コペンハーゲン セッション録音
 
ニールセンを得意にするブロムシュテットが本場のオーケストラを振ったニールセン作品集のうちの1曲。熱い演奏です。


2曲目のニールセンの交響曲第5番を予習したCDは以下です。

 ヘルベルト・ブロムシュテット指揮デンマーク放送交響楽団 1973年12月3-4日 デンマーク放送コンサートホール、コペンハーゲン セッション録音
 
上記と同じく、ニールセンを得意にするブロムシュテットが本場のオーケストラを振ったニールセン作品集のうちの1曲。これも燃えるような演奏です。ブロムシュテットはサンフランシスコ交響楽団との素晴らしい交響曲全集もありますが、saraiはこの本場のデンマーク放送交響楽団との旧盤のほうが楽しめます。


3曲目のラフマニノフのピアノ協奏曲第3番を予習したCDは以下です。

 ユジャ・ワン、グスターボ・ドゥダメル指揮シモン・ボリバル交響楽団 2013年2月 カラカス エル・システマ創設38周年特別コンサート ライヴ録音
 
案外に期待ほどの衝撃度はありませんが、それでもユジャ・ワンのピアノは冴え渡っています。



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明るい陽光の下での遠景のプラハ城の姿

2008年5月7日水曜日@プラハ/7回目

今年の旅はドレスデンDresdenとライプツィヒLeipzigとプラハPrahaが目的地。
今日はプラハの2日目、旅の最終日です。

今日はプラハ城Pražský hradを訪ねています。プラハ城の華、聖ヴィート大聖堂Katedrála Sv. Vítaのステンドグラスの美に魅了された後、プラハ国立美術館Národní galerie Prahaで素晴らしいデューラーやクラナッハを鑑賞しました。
再び、プラハ城に戻り、偶然に衛兵交代を見て、プラハ城の奥にある黄金の小路Zlatá uličkaを見て、東門の上から美しいプラハの絶景を眺め、最後はロブコヴィッツ宮殿Lobkowiczký palácにある眺めのよいレストランで美味しいチェコ料理のランチをいただきました。

プラハの本当に最後はヴィレトゥルジェニー宮殿Veletržní palácにあるプラハ国立美術館Národní galerie v Prazeの分館で近代・現代絵画を鑑賞します。何としても見たい作品があるんです。
プラハ城を出て、急いで、トラムで移動しましょう。

すると、同行者が「まだ、明るいところで(逆光ではなく)、遠景のプラハ城を見ていない」と鋭い指摘。いかん、いかん、急がないといかん。交通マップをチェックし、とりあえず、地下鉄でヴルタヴァ川に移動することに。プラハ城を出て、坂を下っていきます。

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城から下ると、すぐにメトロの表示。素早く地下鉄に乗りますが、なんだかおかしい。こりゃ、逆向きだ。1駅目で乗り換えて、時間ロスは5分くらい。無事に明るいところで遠景のプラハ城を眺めることができます。

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もう少し、ヴルタヴァ川に近づいてみましょう。

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ヴルタヴァ川の河畔から、橋の先に見える美しいプラハ城をパチリ。

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ふと、横を見ると、カレル橋Karlův most。この橋はカレル橋の隣の橋、マーネス橋 Mánesův mostです。ついでに横から見たカレル橋もパチリ。

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これでミッションはひとつクリアー。もっとも同行者からは写真に電線が写り込むという指摘もあります。確かにもっともですが、もう、別のポイントに移動する時間はありません。ここは妥協しましょう。カレル橋ならば、電線はありませんけどね。

いよいよ、最後のミッション、近代・現代絵画を鑑賞するためにヴィレトゥルジェニー宮殿にあるプラハ国立美術館の分館に向かいましょう。アクセス手段をチェックすると、トラム1本で行けそうです。最寄りのトラムの停留所に急行します。



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君はウィンブルドン男子決勝を見たか?

もう、ニュースで流れているので、結果は分かっているでしょうが、20歳の新鋭アルカラスがスーパースター、ジョコビッチをフルセットの末、破って、新しいチャンピオンになりました。ずっと、ウィンブルドンではビッグ4が優勝を分かち合ってきたので、ビッグ4以外の優勝者は実に久々です。
saraiは実は長年のテニスファン。今回も4K放送にかじりついて、5時間近い試合を見てしまいました。配偶者も3セット目までは一緒に見ていましたが、あまりの長い試合に途中脱落し、就寝。ジョコビッチに頑張るようにという言葉を残していきました。そのせいか、形勢不利だったジョコビッチが4セット目は取返し、5セット目も善戦。36歳という年齢を考えれば、奇跡のような頑張りでした。これでジョコビッチのウィンブルドン5連覇、ウィンブルドン優勝8回目(最多タイ)、年間グランドスラムという夢も潰えてしまいましたが、今後もまだまだ、やれそうな感じです。
saraiがテレビでウィンブルドンテニスを見始めたのは、コナーズ、ボルグ、マッケンローという選手たちが活躍していた頃です。一度は生でウィンブルドンテニスを見てみたいと思っていた時期もありましたが、ヨーロッパ遠征ではオペラの魅力にはまって、結局、生で見る夢は叶いませんでした。まあ、そのかわり、4Kテレビなんていうとんでもなく高精細のテレビが登場し、観客の顔まで識別できるほど、臨場感にあふれるライヴが見られるようになり、これは素晴らしいことです。

とまあ、以上、言い訳めいた言葉を連ねましたが、そういうことで、今日はジョナサン・ノット&東響の素晴らしいブラームスの交響曲第2番の記事を書く筈でしたが、それは明日書くことにして、今日はもう寝ます。悪しからず。

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深く味わいのあるブラームスの交響曲第2番にじっくりと聴き入る ジョナサン・ノット&東京交響楽団@サントリーホール 2023.7.16

久し振りのジョナサン・ノットに思えますが、たった2カ月前に素晴らしいマーラー、さらには楽劇《エレクトラ》を聴いたばかりです。

今回はまず、ヴァイオリンの神尾真由子と、本場イギリスの作曲家エルガーのヴァイオリン協奏曲。神尾真由子の繊細で情熱的なヴァイオリンを見事にサポートしたジョナサン・ノットが印象的です。時として、オーケストラも美しく燃え上がる演奏を聴かせてくれます。エルガーの熱情的な音楽にうっとりしていて、ぼーっと聴き入ってしまいます。何とも神尾真由子のヴァイオリンが内省的で内に秘めた情愛を表現していきます。ジョナサン・ノットの指揮する東響はそっと寄り添うような演奏です。しかし、saraiは音楽の本質にうまく集中できないまま、フィナーレを迎えてしまいます。この曲は初聴きですから、うまく理解できませんでした。もっと聴き込めば、この音楽の良さが見えてくるかもしれません。演奏自体は神尾真由子のヴァイオリンも東響の演奏も素晴らしかったような気がします。

後半は有名なブラームスの交響曲第2番。saraiの好きな曲でもあります。身構えて聴き始めますが、ジョナサン・ノットの多様なニュアンスにあふれたブラームスの音楽に魅了され続けます。ジョナサン・ノットの譜面を丹念に読み込んだと思える分析的とも思える演奏はsaraiにとって、とても刺激的です。あくまでも冷静に東響をコントロールして、激することのない演奏ですが、これまで聴こえてこなかった声部がバランスよく響いてきて、驚きながらノット流のブラームスに聴き惚れます。第1楽章のチェロが奏でる第2主題の木々の間を流れるそよ風のような趣きにはほれぼれとします。再現部でもこのチェロのメロディーに茫洋として聴き入ります。要所に第2ヴァイオリンが不意に美しい演奏を聴かせてくれるのもノットの見事な演出に思えます。そうそう、今日は古典的対向配置ですが、あまり、演奏機会のない第2ヴァイオリンを活かす配置にもなっています。弦と木管のバランスも実に効果的です。冒頭のホルンの弱音の表現も難しそうでしたが、実に音楽的に成功していました。

第2楽章のアダージョ・ノン・トロッポは極めて抒情的な味わいに満ちていて、ブラームスを聴く喜びを覚えます。ノットは決して羽目を外さずに折り目の正しい音楽を奏でていきます。ここでも東響の美しい弦楽アンサンブルと木管が素晴らしい演奏を聴かせてくれます。

第3楽章は荒絵理子の見事なオーボエのソロで始まり、束の間の賑わいを感じさせます。

第4楽章は弦のソット・ヴォーチェで静かに始まり、たちまち、トゥッティで圧倒的な響きで盛り上がり、高潮した音楽を聴かせてくれます。この後、弱と強が入れ替わりつつ、音楽が展開されて、最後は金管楽器の圧倒的なコラール風の旋律で高潮し、コーダが華々しく結ばれます。終始、ノットのコントロールの効いたバランスよく抑制された音楽が落ち着いたブラームスを感じさせてくれました。

あまり目立ちませんが、ノットのブラームスも素晴らしいです。抑制がきいていて、きっちり、スコアを読み込んだ大人のブラームスを毎回聴かせてくれます。もっとも初心者にはちょっと難しい演奏かもしれません。


今日のプログラムは以下のとおりでした。

  指揮:ジョナサン・ノット
  ヴァイオリン:神尾真由子
  管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:小林壱成

  エルガー:ヴァイオリン協奏曲 ロ短調 Op.61

  《休憩》
  
  ブラームス:交響曲 第2番 ニ長調 Op.73


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のエルガーのヴァイオリン協奏曲を予習したCDは以下です。

 ヒラリー・ハーン、サー・コリン・デイヴィス指揮ロンドン交響楽団 2003年10月、ロンドン セッション録音

ヒラリー・ハーンの若い頃のクールで初々しい演奏。


2曲目のブラームスの交響曲 第2番を予習したCDは以下です。

  ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団 1967年1月6日 クリーヴランド、セヴェランス・ホール セッション録音

セルはいつものように精密なアンサンブルに重きを置いた演奏をするわけではなく、実に熱っぽい表現に心を注いだ演奏をしています。



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       ジョナサン・ノット,  

ヴィレトゥルジェニー宮殿にあるプラハ国立美術館で名画の数々に感銘、そして、帰国

2008年5月7日水曜日@プラハ/8回目

今年の旅はドレスデンDresdenとライプツィヒLeipzigとプラハPrahaが目的地。
今日はプラハの2日目、旅の最終日です。

今日はプラハ城Pražský hradを訪ねています。プラハ城の華、聖ヴィート大聖堂Katedrála Sv. Vítaのステンドグラスの美に魅了された後、プラハ国立美術館Národní galerie Prahaで素晴らしいデューラーやクラナッハを鑑賞しました。
再び、プラハ城に戻り、偶然に衛兵交代を見て、プラハ城の奥にある黄金の小路Zlatá uličkaを見て、東門の上から美しいプラハの絶景を眺め、最後はロブコヴィッツ宮殿Lobkowiczký palácにある眺めのよいレストランで美味しいチェコ料理のランチをいただきました。
プラハの本当に最後はヴィレトゥルジェニー宮殿Veletržní palácにあるプラハ国立美術館Národní galerie v Prazeの分館で近代・現代絵画を鑑賞します。何としても見たい作品があるんです。しかし、その前に明るいところで(逆光ではなく)、遠景のプラハ城を眺めました。やはり、プラハ城はプラハのランドマークですね。どこからもその美しい姿を眺められます。

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いよいよ、最後のミッション、近代・現代絵画を鑑賞するためにヴィレトゥルジェニー宮殿にあるプラハ国立美術館の分館に向かいましょう。アクセス手段をチェックすると、トラム1本で行けそうです。17番のトラムです。最寄りのトラムの停留所、スタロムニェスツカー駅(旧市街駅)Staroměstskáに急行します。すぐにトラムに乗って、美術館へ。トラムの車窓からもマーネス橋Mánesův mostの前の公園越しにプラハ城が見えています。

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トラムはヴルタヴァ川沿いを走り、すぐにチェコ橋Čechův mostでヴルタヴァ川を渡ります。

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何とこのチェコ橋からもヴルタヴァ川越しにプラハ城が眺められます。それも念願?の電線なしの風景です。

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トラムは乗車時間が10分もかからずに美術館の最寄りの停留所、ヴィレトゥルジェニー宮殿Veletržní palácに到着。
停留所のすぐ前がヴィレトゥルジェニー宮殿です。すぐに歩み寄り、さっさと入館。ここもがらがらに空いています。
まずはチケットを購入。

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ここは中が吹き抜けになったすごくモダンな建物で、その吹き抜けをガラス張りのエレベータで上っていきます。7階から下りながら、展示を見るわけですが、もう、既にタイムオーバーの状態。お目当てのものを探して、どんどん下に下りていきます。一番下まで行っても、またしても見つかりません。係り(警備)の人に聞いても、なかなか分かりませんが、何とか、見つかります。途中、急ぎ過ぎて、見落としていたようです。どーんと、クリムトの大きな絵が目に飛び込んできます。クリムトの後期の代表作、《乙女たち》です。クリムトのファンには見逃せないような素晴らしい作品です。あるわ、あるわ、シーレ、ココシュカ、ゴッホ、マネ、ピカソ、ルソー、ルノアール、・・・・。超特急で、名画の数々を鑑賞し、とりあえず、満足。お目当てのミュシャの《スラーヴィア》は見つかりませんでしたが、昨日、ミュシャ美術館に行ったので、よしとしましょう。

ところで、この訪問では、多分、写真撮影不可だったので、1枚も写真を撮っていません。名画の数々をお見せできないのが残念です。実はこのときの超特急での名画鑑賞がいかにも残念だったので、この5年後の2013年に再度の訪問を果たしました。そのときはたっぷりと時間をとって、じっくりと名画鑑賞し、ミュシャの《スラーヴィア》もちゃんと見て、さらには、ミュシャの渾身の名作、大作にして連作の《スラヴ叙事詩》全20枚を特別展でみることができました。そのときはちゃんと名画の数々を写真に収め、当ブログできちんと紹介しています。その記事は以下です。

 プラハ国立美術館① https://sarai2551.blog.fc2.com/blog-category-131.html
 プラハ国立美術館② https://sarai2551.blog.fc2.com/blog-category-132.html
 プラハ国立美術館③ https://sarai2551.blog.fc2.com/blog-category-133.html

ちなみにこの美術館の一押しの作品は配偶者はアンリ・ルソーの《私自身、肖像=風景》だそうです。アンリ・ルソーの傑作中の傑作で、この名画はここにあったのねと驚かされました。5年後の訪問時の写真をご紹介します。

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saraiは・・・クリムトの《乙女たち》かな。

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ミュシャの《スラーヴィア》もここでしか見られない素晴らしい作品ですけどね。

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さて、美術鑑賞を終え、ホテルに戻ります。実はこの美術館はホテルの近くで、17番のトラムでわずか2停留所です。美術館の最寄りの停留所、ヴィレトゥルジェニー宮殿Veletržní palácからトラムに乗り、ホテル近くの停留所、ホレショヴィッチェ駅Nádraží Holešoviceで降りて、急ぎ、ホテルに戻りますが、予定していた空港行のバスの時間にはもう間に合いません。仕方がないので、30分後のバスにしましょう。バスの停留所、ホレショヴィッチェ駅Nádraží Holešoviceは鉄道のホレショヴィッチェ駅の脇にありますが、例の地下鉄ホーム経由での移動で重い荷物を持った移動も今度は楽です。荷物を持って、空港バスに乗って、一安心。
空港バスの座席シートの絵柄は無論、カレル橋から見たプラハ城の景色です。最後まで、プラハ城はプラハのランドマークです。

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バスに乗ったはいいのですが、結構、道が混んでいて、バスがなかなかスムーズに走りません。プラハの町は大きく、立派で、どこまで行っても、石造りの重厚な建物が続きます。プラハを甘くみてはいけないようです。パリやウィーンに匹敵するような大規模で立派な街です。やっと、快調にバスが走り出した時には、もう、空港が近くなっています。結局、空港まで45分ほどかかりました。まあ、それでも、飛行機の出発の1時間半前くらいには着いたので、急いで、チェックインカウンターに行くと、誰も並んでおらず、すっとチェックインできます。まあ、結果的には余裕です。

プラハからフランクフルトまでは1時間半の順調なフライトで、フランクフルトの空港で免税の手続きももたもたしながらも無事完了。フランクフルトから成田はANAで、もう日本に帰ったも同然。12時間のフライトも3人ともぐっすり(疲れ切って?)。目がさめると(実際は食事で起こされた!)、もうすぐ、日本海というところです。楽しかった旅も終わりました。また、行きたいね!!



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旅ブログの終了のお知らせ

今年の4月3日付けの記事で宣言したとおり、昨日終了したドレスデン・プラハの旅をもって、旅ブログを終了します。
これまでのご愛読を感謝します。
2008年に開始して以来、15年も続けてこれたのは読者の方の見えないご支援のおかげでした。
saraiのブログ《定年男と愛する妻の二人旅》という名称を使うのも今回を限りとします。

明日以降は従来から書いてきたクラシックコンサートの感想・感動を主たるものにします。
新名称は

 saraiのブログ《音楽を愛する日々》
 
ブログランキングも続けますが、カテゴリーをクラシック音楽に変更します。

しかし、そうは言いながら、15年前のドレスデン・プラハの旅の記事は書いていても面白かったので、変則的ではありますが、その1年前、2007年のゴールデンウィークに行った《南仏・ウィーンの旅》を細々と書いていきたいと思います。この記事はブログランキングには参加しないので、子熊ちゃんマークは付けません。準備が出来次第、書き始めますが、今後、ブログを毎日毎日きちんと書くのは止めます。悪しからず。

また、今後、記事の発信時間はバックデートせずにリアルな発信時間にします。ということはsaraiが何時に寝たか、バレバレになります(笑い)。

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アラン・ギルバートと東京都交響楽団の壮麗なアルプス交響曲に深く感動@東京文化会館 2023.7.20

先週に引き続き、アラン・ギルバートと東京都交響楽団のコンビの演奏を聴きます。アラン・ギルバートが指揮すると鉄壁のアンサンブルで豪放とも思える演奏を聴かせてくれますが、それがますます磨きがかかった感じに思えます。期待通り、いや、それ以上の素晴らしい音楽が展開されました。それにしても、演奏もさることながら、プログラムが実に凝ったものと言えます。先週のニールセンの序曲《ヘリオス》はエーゲ海の太陽の日の出から日の入りまでを描いたもので、まるでアルプス交響曲の圧縮版のような音楽でしたが、後期ロマン派の音楽でもあり、今日の最初の曲、ウェーベルンの《夏風の中で》へのつながりも感じます。先週と今週で後期ロマン派の大回顧展という構成になっており、その中にアクセントとして、モーツァルトのホルン協奏曲を組み入れた効果は甚大です。無論、マーラー、ブルックナー、R.シュトラウスの作品の前にモーツァルトの協奏曲を置くというのはよくある構成ですが、さらにその前にウェーベルンが無調作品を書く前の後期ロマン派の爛熟した《夏風の中で》を置くという小憎らしいとも思える演出には唸らせられます。そして、これらを実際に聴いてみると、何ともぴたっとはまり、次第に楽興が高まり、最後のアルプス交響曲で最高の感銘に至るという完璧な仕掛けになっていました。すべてはアラン・ギルバートの音楽構成力とアンサンブル力が絶頂に達したとも思える都響の最強コンビのなせる業ではありました。それに今日はベルリン・フィルのホルンの達人、シュテファン・ドールというスペシャルゲストもいました。秋のキリル・ペトレンコ率いるベルリン・フィルの来日公演の予告でもありますね。
さすがに今日はsaraiのお知り合いの音楽ファンも集結し、この公演への期待の高さも感じられます。

まずはウェーベルンの《夏風の中で》。20歳の学生だったウェーベルンの何とも才能豊かな作品にも感心しますが、それよりもアラン・ギルバートが繊細かつスケール感に満ちた音楽に仕立てあげていく様に驚嘆します。後期ロマン派の香気にあふれた音楽を展開し、まるでR.シュトラウスの交響詩にも匹敵する高まりを味わわせてくれます。この作品が生まれた20世紀初頭、才能ある音楽家の間にR.シュトラウスの交響詩がいかに衝撃を与えていたのかということも実感します。同時期にバルトークもR.シュトラウスの交響詩に衝撃を受け、自ら、ピアノ独奏用に編曲して演奏していたのは有名な話です。話が横道にそれてしまいましたが、この曲を冒頭に置いたのは後半のプログラム、アルプス交響曲に向けての周到な布陣であり、ウェーベルンの隠れた名作をR.シュトラウスを暗に感じさせるような素晴らしい演奏で奏でてくれました。都響の弦楽アンサンブルの見事な演奏は今更、讃える必要はありませんが、とりわけ、弦のトップ奏者たちの達人ぶりは健在で、矢部達哉の存在の大きさを再認識しました。この演奏でsaraiはインスパイアされて、ぐっと音楽に前のめりの気持ちにさせられます。

次いで、ぐっと編成を縮小して、モーツァルトのホルン協奏曲第4番。若干の管楽器奏者はいますが、ほぼ、弦楽オーケストラ。それも室内オーケストラの規模です。満を持して、ホルンの達人、シュテファン・ドールの登場。モーツァルト後期のピアノ協奏曲を思わせるような充実した弦の響きに続いて、シュテファン・ドールのホルンが軽やかに入ってきます。弦が軽く刻んでいく上をドールのホルンが余裕で駆け抜けていきます。第1楽章終盤のカデンツァも微塵の重さもなく、さわやかに演奏。と思っていたら、何とドールの顔には汗が浮かんでいます。それでも第1楽章は見事にフィナーレ。第2楽章は独奏ホルンが緩徐楽章のメロディーを歌い上げていきます。ドールの顔はますます汗が浮かんできますが、音楽は余裕の演奏に思えます。間を置かずに第3楽章に突入。狩りのような勢いのある旋律。そのまま、完璧な演奏でフィナーレ。都響のアンサンブルも素晴らしく、何とも見事なホルン協奏曲でした。余裕に思えたシュテファン・ドールの演奏でしたが、大粒の汗を見ると実際はなかなか大変だったのでしょうね。
ところで、R.シュトラウスのアルプス交響曲に先駆けて、モーツァルトの協奏曲が演奏されたのは、R.シュトラウスがモーツァルトを崇敬しており、その音楽の根幹にはモーツァルトの音楽があることと無縁ではないでしょう。もっとも、R.シュトラウスの音楽からモーツァルトを連想するものはほとんどありませんけどね。


休憩後の後半はR.シュトラウスのアルプス交響曲。第1ホルンはシュテファン・ドールが吹くという贅沢さ。
大編成の都響をアラン・ギルバートが完璧にコントロールして、とても分厚い響きでゆったりとスケールの大きな演奏を聴かせてくれました。冒頭の夜から分厚い響きが続き、圧倒的な日の出には目が眩む思いです。そして、山登りを開始。カウベルが鳴ったり、バンダとの掛け合いがあったりしながら、アラン・ギルバートのスケールの大きな音楽が展開されていきます。そして、遂に圧倒的な響きで《山頂にて》。音楽的にも頂点を極めます。その荘厳な響きは大自然の雄大さを描き尽くし、心が震えます。アルプスの自然以上に強烈とも思える音楽は神を超えるようなレベルに達します。そして、《ヴィジョン》では太陽の光を浴びて美しい景観が広がります。芸術が創り出した神を超える美の世界です。何故か、この美しい風景に《エレジー》を感じるのは人間の弱さなのか、繊細さのか。強烈な嵐の中、下山。そして、太陽も沈みます。これも大自然の雄大さ。《終末》です。オルガンの響きはコラールのように宗教的です。そして、美しいホルンの響き。最高に素晴らしい音楽です。瞑想的な音楽が続き、静かな感動を覚えます。夜の帳が落ちていき、静かに曲を閉じます。言葉を失います。わずか50分で大自然と人間の究極のドラマが描き尽くされました。

音楽の素晴らしさをアラン・ギルバートと都響は最高に与えてくれました。音楽の楽しみを味わい尽くす究極の2時間でした。


今日のプログラムは以下のとおりです。

  指揮:アラン・ギルバート
  ホルン:シュテファン・ドール
  管弦楽:東京都交響楽団 コンサートマスター:矢部達哉

  ウェーベルン:夏風の中で―大管弦楽のための牧歌
  モーツァルト:ホルン協奏曲第4番 変ホ長調 K.495
   
   《休憩》
   
  R.シュトラウス:アルプス交響曲 Op.64
   

最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のウェーベルンの《夏風の中で》を予習したCDは以下です。

 ベルナルド・ハイティンク指揮シカゴ交響楽団 2009年4月23,24,25,28日 シカゴ、シンフォニーセンター、オーケストラ・ホール ライヴ録音

R.シュトラウスの交響詩『英雄の生涯』の素晴らしい演奏とカップリングされたアルバムで、これも丁寧で美しい演奏です。


2曲目のモーツァルトのホルン協奏曲第4番を予習したCDは以下です。

 ギュンター・ヘーグナー、カール・ベーム指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1978年11月 ウィーン、ムジークフェラインザール セッション録音

ウィンナーホルンのへーグナー、そして、ベーム指揮ウィーン・フィルとくれば、よい演奏に決まっていますが、とりわけ、無理のない自然体の演奏は晩年のベームならではと言えるかもしれません。


3曲目のR.シュトラウスのアルプス交響曲を予習したCDは以下です。

 フランソワ=グザヴィエ・ロト指揮バーデン=バーデン&フライブルクSWR交響楽団(南西ドイツ放送交響楽団) 2014年11月5,6日 フライブルク、コンツェルトハウス セッション録音
 
ロトの精密で精妙な音楽作りが光ります。R.シュトラウス交響詩全集(全5枚)からの1枚です。



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ジョナサン・ノット、八面六臂で東京交響楽団をドライブし、美しく整ったチャイコフスキーを創造@ミューザ川崎シンフォニーホール 2023.7.22

ジョナサン・ノットにとって、日本でチャイコフスキーを演奏するのは初めてのこと。交響曲第3番に至ってはノット自身、初めてタクトをとるのだそうです。それだけに周到な準備を経て、どのような表現のチャイコフスキーを聴かせてくれるのか、興味津々で期待します。

まず、前半はチャイコフスキーの交響曲第3番『ポーランド』です。この曲を実演で聴くのは多分、3回目くらいでしょうか。そんなに聴く曲ではありません。5楽章構成の長大な曲です。第1楽章の序奏が始まりますが、若干、抑えた感じの演奏です。ノットらしい丁寧な表現で曲想が明快に示されます。saraiがそんなに聴き込んだ曲ではありませんが、すべてのフレーズがすっと受容されて、どの楽節も耳馴染みがよく感じられます。ある意味、啓蒙的な演奏です。アンサンブルがきっちり整っているとずっと感じます。第2楽章以降も印象は変わらず、美しく聴きやすい演奏が続きます。尖ったところのないまろやかな音楽が心地よく響きます。全体の5楽章はいわゆるアーチ構造になっており、第3楽章のアンダンテ・エレジアーコが中心的な位置を占めます。ノットはこの第3楽章をゆったりと素晴らしく美しく演奏していきます。牧歌的な音楽ですが、それほどロシア的な表現ではなく、それでもどこか懐かしさを感じさせるような演奏です。うっとりと聴き入ります。続く第4楽章のスケルツォで軽やかな音楽に転じた後、第5楽章のポロネーズに入ります。民俗的な雰囲気も感じる音楽ですが、途中、弦楽の各声部によるフーガが見事なアンサンブルで展開されます。対向配置の効果が発揮されて、弦の各声部がくっきりと浮かび上がるような演奏に魅了されます。そして、最後は壮大なコーダで盛り上がります。ノットがこの曲を初めて演奏するとは思えないほど、完璧に把握して、東響をきっちりとコントロールしていました。そして、個人的な感覚ですが、今までになく、この曲の全楽章の曲想がすっぽりと脳内に入り込みました。ある意味、この曲を《理解》したと言えそうです。

休憩後、チャイコフスキーの交響曲第4番です。これは誰でも知っている有名な作品。冒頭、金管のファンファーレが運命の動機を歌い上げます。突っ込んだ演奏ではなく、マイルドでカンタービレしているような演奏で始まります。主部も暗い音楽ではありますが、美しいアンサンブルの表現が続きます。耳馴染みした音楽が続いていきますが、流石に先ほどの第3番とは異なり、整ってはいますが、それなりに突っ込んだ表現で高潮していきます。対向配置の弦の各声部が明確に演奏されるのは先ほどの第3番以上です。弦の響きは高音部が美しく響き渡ります。ノットはこの第4番は第3番からいかにチャイコフスキーが音楽表現の幅を広げたのかを明確に示そうとしているようです。実際、その試みは成功し、楽章をおうごとに音楽は高潮していきます。第4楽章は華やかな祝祭的な盛り上がりを演出し、それまでの抑えた表現はほぼ開放したような演奏です。第1楽章冒頭の金管のファンファーレが回帰するところもそれなりに強い演奏に変化し、最後のコーダも大いに盛り上がります。しかしながら、野放図な音楽表現までの盛り上がりではなく、音楽的に十分なレベルまでの盛り上がりです。それで十分でしょうとノットは言わんばかり。確かに納得です。
普通に聴いていれば、いつもの第4番と変わりがないようにも聴こえますが、なるほどと思えるノットのこだわりにつまった第4番でした。

今後、ノットはチャイコフスキーの第5番、第6番も演奏しそうな雰囲気を感じました。多分、交響曲全曲の演奏になるのでしょう。さすがにマンフレッド交響曲はないかもしれませんね。第6番《悲愴》はマーラー風の演奏になるのではないかとひそかに予想しています。


今日のプログラムは以下のとおりでした。

 フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2023 オープニングコンサート

  指揮:ジョナサン・ノット
  管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:グレブ・ニキティン

  チャイコフスキー:交響曲第3番 ニ長調 Op. 29 『ポーランド』

  《休憩》
  
  チャイコフスキー:交響曲第4番 ヘ短調 Op. 36


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のチャイコフスキーの交響曲第3番『ポーランド』を予習したCDは以下です。

 ベルナルト・ハイティンク指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 1979年10月15-19日、アムステルダム、コンセルトヘボウ セッション録音

ハイティンクがコンセルトヘボウ菅を完全に掌中に収めた時期の円熟して、自然な表現のチャイコフスキーと言えます。


2曲目のチャイコフスキーの交響曲第4番を予習したCDは以下です。

 ベルナルト・ハイティンク指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 1978年12月18-19日、アムステルダム、コンセルトヘボウ セッション録音

ハイティンクは自然な表現ながら、それなりに熱い演奏も聴かせてくれます。ロシア的ではありませんが、バランスのとれた一聴の価値ある演奏です。



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       ジョナサン・ノット,  

洗足学園音大バレエコースのうら若きバレリーナたちの瑞々しい饗宴@ミューザ川崎シンフォニーホール 2023.7.25

白状すると、フェスタ サマーミューザで、谷桃子バレエ団、東京シティ・バレエ団、牧阿佐美バレヱ団という日本を代表するバレエ団のガラ公演を見るのもいいだろうという気持ちでチケットを購入しましたが、プログラムがはっきりすると、何と洗足学園音大バレエコースのメンバーがほとんどでプロのバレエ団は数名の男性ダンサーがサポートにはいるものと分かり、がっかりしたんです。オーケストラも洗足学園音大でまるで洗足学園音大の学生の発表会のようです。

しかし、洗足学園音大の学生は頑張って、踊ってくれました。音大のバレエコースって、ほとんどが女性。したがって、うら若きバレリーナたちが大挙して登場した舞台は華やかさがありました。デュエットではプロの男性ダンサーがサポートしたので、リフトも危なげなく見事にバランスして高い位置で演技が決まります。特に最初の演目の『タンホイザー序曲』の東京シティ・バレエ団の西澤一透がサポートしたリフトが素晴らしく、能勢舞香が美しい姿勢を決めていました。西澤一透は洗足学園音大バレエコースを出て、現在、東京シティ・バレエ団のファーストアーティストとして、活躍中です。
東京シティ・バレエ団のソリスト、植田穂乃香も美しい肢体でベルリオーズの劇的交響曲『ロメオとジュリエット』を踊ってくれました。
谷桃子バレエ団のファーストアーティストの昂師吏功はショパンの『ロマンティック組曲』できっちりしたリフトのサポート、そして、ロマンあふれる踊りを見せてくれました。
それらのプロに交じって、学生のバレリーナたちが元気よく躍動を見せてくれました。群舞もしっかりと同期し、ソロ、デュエットなどは見事なバレエを見せてくれました。

バレエの後ろでは洗足学園ニューフィルハーモニック管弦楽団が素晴らしい演奏を聴かせてくれました。秋山和慶の指導がよいのでしょうが、弦楽のレベルも高く、驚いたのはタンホイザーでの素晴らしい金管の迫力です。音大オーケストラの実力も高くなったものですね。(実はこれまで聴いたことがありません(笑い))


今日のプログラムは以下のとおりでした。

 フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2023
  洗足学園音楽大学
  バレエとオーケストラで魅せる物語
  
  指揮:秋山和慶(洗足学園音楽大学 芸術監督・特別教授)
  管弦楽:洗足学園ニューフィルハーモニック管弦楽団
  バレエ:
    洗足学園音楽大学バレエコース
    谷桃子バレエ団
    東京シティ・バレエ団
    牧阿佐美バレヱ団
    
 ワーグナー:オペラ『タンホイザー』から「序曲」
 ショパン:『ロマンティック組曲』 ~ピアノ曲による~(ピアノ:福島未紀)
  プレリュード第17番 変イ長調 Op. 28-17、
  ノクターン第20番 嬰ハ短調[遺作]、
  エチュード 変ト長調 Op. 25-9「蝶々」、
  ワルツ第10番 ロ短調 Op. 69-2、
  プレリュード第16番 変ロ短調 Op.28-16、
  ワルツ(華麗なる円舞曲)第2番 変イ長調 Op. 34-1

  《休憩》
  
 ベルリオーズ:劇的交響曲『ロメオとジュリエット』Op. 17から
 グノー:オペラ『ファウスト』から


最後に予習について、まとめておきます。予習は音楽を中心にしました。

1曲目のワーグナーの楽劇『タンホイザー』の「序曲」を予習したビデオは以下です。

 ・ワーグナー:歌劇『タンホイザー』全曲から序曲とヴェーヌスベルクの場面
 ベルリン・ドイツ交響楽団
 フィリップ・ジョルダン(指揮)
 演出:ニコラウス レーンホフ
 装置:ライムンド・バウアー
 照明:ドゥアン・シューラー

 収録時期:2008年
 収録場所:バーデン=バーデン祝祭劇場(ライヴ)

シンプルな演出で素晴らしいタンホイザーが楽しめます。ジョルダンの指揮が見事。


2曲目のショパンの『ロマンティック組曲』を予習したCDは以下です。

 ショパン・リサイタル 2010 2010年7月15日 クロスランドおやべ・セレナホール(富山県小矢部市) ライヴ録音
 ショパン:19のワルツ集 2015年7月 & 9月、新川文化ホール(富山県魚津市) セッション録音
 ショパン:エチュード集(24曲) 2009年7月&9月 新川文化ホール(富山県魚津市) セッション録音
 京都リサイタル2018 ショパン:24のプレリュード 2018年11月9日、京都コンサートホール〈アンサンブルホールムラタ〉 ライヴ録音
  いずれもイリーナ・メジューエワの録音したCD

いずれも素晴らしく美しい演奏です。セッション録音とライヴ録音の違いがほとんどないのに驚きます。なるべく最新の演奏を聴きましたが、メジューエワのすべてのCDを所有しているわけではないので、すべて最新の演奏を聴いたわけではありません。それでも一番古い録音でも完成度の高い演奏を聴かせてくれます。


3曲目のベルリオーズの劇的交響曲『ロメオとジュリエット』を予習したCDは以下です。

 カルロ・マリア・ジュリーニ指揮シカゴ交響楽団 1969年10月13-15日、メディナ・テンプル セッション録音

抜粋盤ですが、たっぷりした内容です。素晴らしく美しい演奏です。


4曲目のグノーのオペラ『ファウスト』から第5幕の《ワルプルギスの夜》のバレエ場面を予習したヴィデオは以下です。

 ニューヨーク・シティ・バレエ in パリ 『バランシン・ガラ』
  「ワルプルギスの夜」 歌劇「ファウスト」のバレエ音楽
  サラ・マーンズ
  アドリアン・ダンチヒ・ウォリング
  ローレン・ラヴェット
  ミーガン・フェアチャイルド
  ホアキン・デ・ルス
  スターリング・ヒルティン
  ジャレッド・アングル
  アマル・ラマサール
  タイラー・ペック
  アンドリュー・ヴィエット
  テレサ・ライクレン
  タイラー・アングル
  アルストン・マクギル
  アンソニー・ハクスリー
  ブリタニー・ポラック
  テイラー・スタンリー

  管弦楽:オーケストラ・プロメテ
  指揮:ダニエル・キャップス
  収録:2016年7月12・16日 シャトレ座(パリ)
  NHK BS プレミアムシアター(2019年1月28日)放送録画
  
ジョージ・バランシンが創立したニューヨーク・シティ・バレエのパリ公演のライヴ収録。バランシンが振り付けた物語性のない「プロットレス・バレエ」のひとつですが、クラシックバレエの伝統を引き継ぎ、バレエの美しさの究極に迫る見事なバレエです。バランシンが亡くなって30年以上も経ちますが、その先進性は今は変わりません。



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同時代の聴衆の心をインスパイアする細川俊夫のヴァイオリン協奏曲の日本初演 読売日本交響楽団@サントリーホール 2023.7.27

このところ、読響の定期では日本初演の演奏が続きます。意欲的なチャレンジですね。
その細川俊夫の新作はヴァイオリン独奏の樫本大進の見事な演奏も相俟って、凄い演奏に背筋がゾクゾクする思いです。コロナ禍、ウクライナ戦争という全世界を揺るがす問題、そして、作曲者の母の死、ついでに言うならsaraiの母の死という個人的な衝撃をまっこうから見据えたとも思える作品は同時代を生きるすべての人々の心を揺るがせ、そして、鎮魂をこめた大変な傑作に仕上がっています。ベルクのヴァイオリン協奏曲を下敷きにしたかのように、限界状況下で悩み苦しむ実存を独奏ヴァイオリンが演じ、その実存と対峙する世界を管弦楽が奏でます。冷酷とも言える世界の中でもがき苦しみつつ、実存は世界にメッセージを発信し続けて、最後は鎮魂の中に浄化されていきます。リゲティを継承したような音響を連想する音楽は世界を救えるかという究極のテーマに挑戦した真摯な作品です。この音楽に襟を正される思いになりました。細川俊夫の最高傑作の誕生だと実感しました。そうそう、ヴァイグレが指揮した読響のサポートの素晴らしさはベルリン・フィルの世界初演を上回るような演奏に思えました。樫本大進の演奏も世界初演のとき以上にこなれていたように感じました。そして、サントリーホールの聴衆もベルリンフィルハーモニーの聴衆以上に受容力があったのではないかしらね。saraiの勝手な想像です。(なお、ベルリンフィルハーモニーでの3月2日のパーヴォ・ヤルヴィ指揮ベルリン・フィルの世界初演に続き、ルツェルンのコングレスセンターでマイケル・ザンデルリンク指揮ルツェルン交響楽団が樫本大進をソリストに迎え、6月15日にスイス初演を終えています。)

この作品に先立って演奏されたモーツァルトのフリーメイソンのための葬送音楽も鎮魂の音楽。ヴァイグレの素晴らしい指揮で実に内容のある音楽として演奏されました。深い味わいを感じました。

後半はまた、モーツァルト。モーツァルトがパリ滞在時に作曲した交響曲第31番「パリ」です。モーツァルトはオペラとピアノ協奏曲で傑作を生み出しましたが、この交響曲はまるで、オペラのような味わいでヴァイグレが絶妙な演奏を聴かせてくれました。第1楽章は《フィガロの結婚》序曲を連想するような活き活きとした演奏で、心を浮き立たせてくれます。やはり、ヴァイグレはオペラ指揮者なのですね。第1楽章が終わると、これからオペラの幕が開くような気分になります。緩徐楽章の第2楽章はソプラノのアリア、あるいはレシタティーボが歌われているような感慨に陥ります。歌がないのが不思議な気分です。たっぷりとオペラを聴いたような気持ちになったところで、第3楽章はオペラの閉幕の圧巻のフィナーレです。沸き立つような音楽で気持ちが高揚します。読響の弦楽のアンサンブルが素晴らしいモーツァルトの響きを奏でてくれました。もう、笑ってしまうような見事なアンサンブルに魅了されました。ヴァイグレが振ると、読響の響きが何倍も美しく響きます。ドイツ的な重厚感のあるヴァイグレと明るい響きの読響が何とも素晴らしくマッチします。連想するのは、シューリヒトがパリ音楽院管弦楽団を振って、ベートーヴェンの交響曲の全集を録音した素晴らしい演奏です。こういう組み合わせは意外と成功しますね。

最後はシュレーカーのあるドラマへの前奏曲。シュレーカーのオペラ《烙印を押された人々》の音楽を使って構成した作品だということです。色んな美しい曲がリッチな響きで演奏されます。そのオペラを知っていたら楽しめるのでしょうが、なんだか、脈絡のない音楽に思えます。どの曲も美しく、ヴァイグレが指揮する読響の音響も冴え渡るので、それを楽しめばよいのでしょうが、残念ながら、音楽自体には集中できません。ところではたと気が付きますが、来週、ミューザ川崎のフェスタ サマーミューザで、このヴァイグレが読響を指揮して演奏するのが、ワーグナー(デ・フリーヘル編曲)の楽劇『ニーベルングの指環』 ~オーケストラル・アドヴェンチャーです。要は楽劇『ニーベルングの指環』の全4夜から抜粋して、管弦楽だけで音楽を構成するものです。今日のシュレーカーのあるドラマへの前奏曲がオペラの楽曲を構成したものですから、同じ発想のものですね。最もナチスに退廃音楽という烙印を押されたシュレーカーと、ナチス総統のヒトラーが愛好してやまなかったワーグナーという皮肉な対照ではあります。考えてみれば、実に凝った内容のプログラムのコンサートが続きます。どういう気持ちで聴けばよいのか、悩ましいところではあります。

今日のプログラム自体も凝った内容でした。前半はモーツァルトと細川俊夫の日本初演。後半はモーツァルトと滅多に演奏されないシュレーカーの退廃音楽。何とも音楽愛好家向けの上級プログラムでした。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:セバスティアン・ヴァイグレ
  ヴァイオリン:樫本大進
  管弦楽:読売日本交響楽団  コンサートマスター:長原幸太

  モーツァルト:フリーメイソンのための葬送音楽 ハ短調 K. 477
  細川俊夫:ヴァイオリン協奏曲「祈る人」(国際共同委嘱/日本初演)
   《アンコール》イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第4番より 第2楽章 サラバンド

   《休憩》

  モーツァルト:交響曲第31番 ニ長調 K. 297 「パリ」
  シュレーカー:あるドラマへの前奏曲


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のモーツァルトのフリーメイソンのための葬送音楽は以下の録音を聴きました。

 オットー・クレンペラー指揮ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 1964年11月 ロンドン、アビー・ロード・スタジオ セッション録音

素晴らしい演奏です。さすがにクレンペラーですね


2曲目の細川俊夫:ヴァイオリン協奏曲「祈る人」は以下の映像を鑑賞しました。

 樫本大進、パーヴォ・ヤルヴィ指揮ベルリン・フィル 世界初演 2023年3月2日、ベルリン、フィルハーモニー ライヴ収録

凄い音楽を聴いて感銘を受けました。樫本大進の物に取り憑かれたような異常な集中力によるヴァイオリン独奏が細川俊夫の新作の素晴らしさを表現します。この細川俊夫の新作もこれまでにないような傑作です。予習の枠を超えて、3回も聴いてしまいました。


3曲目のモーツァルトの交響曲第31番「パリ」は以下の録音を聴きました。

 オットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団 1963年10月 ロンドン、アビー・ロード・スタジオ セッション録音

クレンペラーがこんなに素晴らしいモーツァルトを聴かせてくれるとは驚きました。クレンペラー没後40年を記念したアニヴァーサリー・エディション、8CDの充実したコレクションです。クレンペラーが得意としたモーツァルト作品から交響曲と管弦楽曲を収録しています。さきほどのフリーメイソンのための葬送音楽もこのコレクションに含まれています。


4曲目のシュレーカーのあるドラマへの前奏曲は以下の録音を聴きました。

 ミヒャエル・ギーレン指揮ベルリン放送交響楽団 1981年5月 ベルリン セッション録音

豊かな響きの演奏です。初聴きですが、なかなかの演奏レベルに思えます。



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金婚式、おめでとうございます!!!
大学入学直後からの長いお付き合い、素晴らしい伴侶に巡り逢われて、幸せな人生ですね!
京都には年に2回もお越しでも、青春を過ごし

10/07 08:57 堀内えり

 ≪…長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さ…≫を、長調と短調の振り子時計の割り振り」による十進法と音楽の1オクターブの12等分の割り付けに

08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
その後、ザル

07/08 18:59 sarai

CDでしか聴いてはいません。
公演では小沢、ショルティだけ

ベーム、ケルテス、ショルティ、クーベリック、
クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
、チェリブ

07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

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