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ヴァイグレの真骨頂、ベートーヴェンとワーグナーの真髄を抉り出す会心の演奏 読売日本交響楽団@ミューザ川崎シンフォニーホール 2023.8.1

ヴァイグレが振ると、読響は素晴らしい演奏を聴かせてくれます。ましてや、コンサートマスター席に日下紗矢子が座れば、一段と演奏の質が上がるのはいつものことです。チェロの遠藤 真理、ヴィオラの鈴木 康浩、第2ヴァイオリンの瀧村 依里がいないのだけが残念でした。

今日のメインはワーグナーですが、それに先立って演奏したのはベートーヴェンの交響曲第8番。何故かドイツ系の指揮者が好んで取り上げます。第1楽章の冒頭のトゥッティからピタッとアンサンブルが決まります。何とも演奏の質の高いことに仰天します。ヴァイグレの重心の低い指揮で律動的な音楽が次第に高潮していきます。第1楽章の終盤はレオノーレ序曲のような雰囲気でヒロイックな音楽に気持ちが高揚します。ヴァイグレが振ると、先週のモーツァルトの交響曲のようにオペラティックな音楽になります。
第2楽章は木管がリズムを刻んでいく中、読響の素晴らしい弦楽アンサンブルが美しい歌を奏でていきます。プレトークではヴァイグレがこの楽章はロッシーニをからかうような音楽ということを言っていましたが、saraiはベートーヴェンがウィーンで人気沸騰のロッシーニに影響を受けたのではないかと思っています。鮮やかなリズムに乗った音楽が展開されます。
第3楽章は優美な音楽。素晴らしい古典的な音楽が読響の見事の演奏で歌われて、うっとりします。トリオで、管楽器のメロディーに独奏チェロが伴奏したのにはびっくり。独奏チェロがまるで通奏低音のように響きます。このトリオはこんな風に演奏するんだっけ?
第4楽章はヴァイグレの強烈なまくりもあり、非常に高揚する圧巻の演奏。素晴らしい演奏に聴き入りました。

古典派の粋を聴いた思いになりました。まことにパーフェクトな演奏に恐れ入りました。素晴らしいベートーヴェンでした。


休憩後はワーグナーの序夜と3夜からなる超大規模な楽劇『ニーベルングの指環』の管弦楽音楽だけをつなぎ合わせたヘンク・デ・フリーヘル(Henk de Vlieger)による管弦楽編曲版「オーケストラル・アドヴェンチャー」です。これでも約60分の大作ですが、リング全曲は15時間くらいかかりますから、超圧縮版ですね。ちなみにsaraiは楽劇『ニーベルングの指環』全曲をまとめて聴いたのはたった1回だけです。一度はバイロイトで聴いてみようと思っていましたが、楽劇《トリスタンとイゾルデ》と楽劇《パルジファル》を聴いて、すっかり満足し、楽劇『ニーベルングの指環』全曲をバイロイトで聴く夢はあきらめました。
さて、今日の演奏ですが、ドイツのオペラ指揮者であるヴァイグレの名に恥じぬ見事な演奏でした。
まず、序夜《ラインの黄金》は低音から静かに盛り上がり、ライン川の雄大な流れを形成し、ニーベルハイムの地下世界を激しく描き出して、金床の響きが印象的です。そして、ヴァルハラ城の深遠な雰囲気が素晴らしいです。
そして、第1夜《ワルキューレ》は有名なワルキューレの騎行で日下紗矢子率いるヴァイオリンの素晴らしい響きに魅了されます。ブリュンヒルデが炎に包まれて眠るシーンが鮮やかに描き出されます。
第2夜《ジークフリート》は深い森のシーンに始まり、ジークフリートがホルン独奏で素晴らしく演奏されます。そして、ジークフリートがブリュンヒルデを炎の中から覚醒させる美しい音楽が奏でられます。このあたりから、ヴァイグレの腕が冴え渡り、読響の素晴らしい音響を引き出していきます。
第3夜《神々の黄昏》が圧巻の演奏、圧巻の音楽でした。美しくもあり、悲劇的でもあり、清澄でもある音楽がヴァイグレと読響の渾身の演奏で表現されます。今日の音楽の素晴らしさはすべて、ここに詰め込まれていました。壮絶な音楽の最後はまるでハリウッドの映画音楽のような美しいメロディーが日下紗矢子率いるヴァイオリン群が最高の響きで演奏されて幕。
とてもたった60分とは思えない長大かつ深遠な音楽に圧倒されました。ヴァイグレの本領を聴いた思いです。素晴らしいとしか言えないワーグナーでした。

こうなると、コンサート形式でよいので、是非、楽劇《トリスタンとイゾルデ》を聴かせてほしいものです。来シーズンあたり、いかがでしょう⇒読響関係者殿。


今日のプログラムは以下です。

  フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2023
  読売日本交響楽団

  指揮:セバスティアン・ヴァイグレ(読売日本交響楽団 常任指揮者)
  管弦楽:読売日本交響楽団  コンサートマスター:日下紗矢子(ダブルコンマス 林悠介)

  ベートーヴェン:交響曲第8番 ヘ長調 Op. 93
  
   《休憩》

  ワーグナー(デ・フリーヘル編曲):楽劇『ニーベルングの指環』 ~オーケストラル・アドヴェンチャー


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のベートーヴェンの交響曲第8番は以下の録音を聴きました。

 カール・シューリヒト指揮パリ音楽院管弦楽団 1957年5月7,10日 サル・ワグラム、パリ セッション録音

ドイツ人のシューリヒトがフランスのオーケストラでベートーヴェンの交響曲全集を録音した名盤。今回、聴き直しましたが、素晴らしい組み合わせに思えます。モノラルながら、非常に良好な音質です。今回、ドイツ人指揮者のヴァイグレが明るい響きの読響でベートーヴェンを演奏するので、あえて聴くことにしました。


2曲目のワーグナー(デ・フリーヘル編曲)の楽劇『ニーベルングの指環』 ~オーケストラル・アドヴェンチャーは以下の録音を聴きました。

 ネーメ・ヤルヴィ指揮ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団 2007年8月5-7日 セッション録音

ネーメ・ヤルヴィの意表を突くワーグナーの演奏。さすがに見事な演奏を聴かせてくれます。



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シフの骨太で優雅でもあるブラームスのピアノ協奏曲第2番、熱い共感で支えるペトレンコ指揮のベルリン・フィル@ベルリン・フィルハーモニー 2022年2月12日

旅のブログを終了して、音楽のブログのみに専念したため、これまでのように毎日欠かさず、ブログをアップすることがなくなり、ずい分、楽になりましたが、反面、saraiは怠惰になっています。少し、記事を増やすことを考えています。音楽関連では、生のコンサート以外に、ベルリン・フィルのデジタル・コンサートホールの映像から、気に入ったコンサートを視聴して、生のコンサート同様に感想をアップしていきます。PCで視聴するのではなく、OPPO DigitalのユニバーサルメディアプレーヤーBDP-103JPを50インチの4Kテレビとオーディオシステムに接続して、高画質、高音質で聴いています。生で聴くのと同様とまではいきませんが、驚くほどの臨場感で聴けます。それにドイツからネット配信しているとは思えない素晴らしい響きに驚愕しています。サブスク契約で毎月、それなりの費用は払いますが、生のコンサート1回にも満たない額で素晴らしい指揮者やソロ奏者の演奏を聴き放題です。飽きるまでは聴きましょう。ちなみに旅のブログも2007年の南仏・ウィーンの旅を書き始める予定で準備中です。古い旅で恐縮ですが、持ちネタは16年前に遡らないともう、ありませんので、ご了承ください。

さて、ベルリン・フィルのデジタル・コンサートホールの記念すべき第1回目はハイティンクのマーラーと思い、交響曲第2番《復活》を聴きました。しかし、これは1990年代の古い画像で実はsaraiも所有しているものでした。1990年代のハイティンクがベルリン・フィルを振ったマーラーは第1番から第7番まであり、映像が残されているのは、第5番と第6番を除いたものです。演奏は素晴らしいのですが、いかにもベルリン・フィルのデジタル・コンサートホールにふさわしいものではなく、それに既聴のものばかりです。2000年以降は第7番と第9番があります。今後、それを聴くことにします。

ということで、聴き直したのは、今秋、来日予定のキリル・ペトレンコ指揮で、やはり、9月末から10月初めに来日するアンドラーシュ・シフのピアノでブラームスのピアノ協奏曲第2番という豪華プログラムです。
冒頭、シュテファン・ドールのホルンとシフのピアノが協奏しながら、輝かしいブラームスが奏でられます。そして、シフの意外にも骨太で熱く突っ込んだピアノ独奏が繰り広げられます。そして、それを引き継いだキリル・ペトレンコ指揮のベルリン・フィルがシフのピアノ以上に熱く燃え上がるような素晴らしい演奏です。実質、ペトレンコの指揮は初聴きですが、ベルリン・フィルを完全に掌握して、完璧なアンサンブルで密度の濃いブラームスを展開します。そして、何と言ってもペトレンコの顔の表情がいいです。完全に音楽に入り込んでいます。ベルリン・フィルは素晴らしい指揮者を獲得しましたね。秋の来日公演が待ち遠しくなります。
以降、シフとペトレンコが互いにインスパイアしながら、素晴らしいブラームスを演奏していきます。圧巻だったのは第3楽章。ソロのチェロとオーケストラがロマンあふれる演奏を展開し、シフのピアノも加わって、究極のロマンを表現していきます。
そして、決然としたピアノが主導して、第4楽章が始まり、音楽はどんどん高潮していきます。最後はヴィルトゥオーゾ的にピアノがコーダを奏でながら、フィナーレ。
感銘を受けながら、聴き入っていました。シフのピアノはもちろん、素晴らしかったのですが、それ以上にペトレンコ指揮のベルリン・フィルの恐るべき合奏力が見事でした。秋は生でブラームスの交響曲第4番が聴けるのが楽しみです。


この日のプログラムは以下です。

  2022年2月12日、ベルリン・フィルハーモニー

  指揮:キリル・ペトレンコ
  ピアノ:アンドラーシュ・シフ
  管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

  ブラームス:ピアノ協奏曲第2番変ロ長調 Op.83
  
   《アンコール》ブラームス:3つの間奏曲 Op.117 より第1曲 アンダンテ・モデラート 変ホ長調

なお、その他、以下の曲も演奏されました。(未聴)

  ヨゼフ・スーク:管弦楽と女性合唱のための交響詩《人生の実り》



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       シフ,        キリル・ペトレンコ,  

南仏・ウィーンの旅の連載スタート・・・企画・準備編

旅ブログは終了しましたが、読者の方々からの励ましの声もあり、ぼつぼつと過去の旅も書き綴っていこうかと思います。
ただし、以前のように毎日きっちりとはいかないのでよろしくお願いします。

新シリーズ、南仏・ウィーンの旅をスタートです。ドレスデン・ライプツィヒ・プラハの旅の前年、2007年の旅です。もう、16年前になります。
当時はsaraiはまだ現役でしたので、基本的にゴールデンウィークを利用した数年に1度の旅で、連休を使った短い旅です。定年後のように気ままな長旅というわけにはいきませんでした。

この頃は2002年、2005年、そして、この年、2007年と2~3年置きにウィーンを絡めた旅をしていました。ウィーンシリーズの3回の旅です。無論、目的はウィーンでオペラを鑑賞することにありました。なお、この2007年以降はコロナ禍で旅を止めるまで、2019年まで毎年、1回、もしくは2回の旅を続けることになります。その旅の記事はすべて、当ブログにアップ済です。
 
この年、ゴールデンウィーク(2007-04-28〜2007-05-06)の9日間という恵まれたカレンダーも今年限り・・・来年からはしばらくはまとまったお休みとはなりません。というわけで、カレンダーに恵まれた最後のゴールデンウィークをめいっぱい利用して、南仏・コートダジュールとおまけにウィーンを巡る旅をsaraiと配偶者2人で楽しんできました。行き帰りはスターアライアンスの特典航空券を活用しましたが、行きは南仏ニースに最適に乗り継ぐ航空券をゲットできなかったので、コペンハーゲンで一泊することになりました。
南仏はシャガール、ピカソ、マティスの美術に触れるために前から1度行ってみたかったのですが、ようやく今回、その夢を実現できることになりました。写真は南仏で見たシャガールの名画、《黄色い太陽》です。


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おまけのウィーンはどうしてもヨーロッパに行ったときにはオペラを見たいので、無理して、日程に追加しました。前回は北イタリアを巡りましたが、そのときも帰りはウィーンってことで、習慣になりつつあります。
でも、もちろん、ウィーンだけじゃなく、ニースでもしっかりとオペラを見ましたよ。
では、始まり、始まり・・・

さて、翌年の旅に向けて、準備作業にはいりましょう。
まだ、1年先の旅ですが、スターアライアンスの特典航空券は330日前からの予約になります。で、翌年のゴールデンウィークの予約は通勤途上で抜かりなく予約スタート時間に電話します。
貯めてきたANAのマイルを使って、翌年分の特典航空券をゲットしました。

 行き1:4月28日 成田発、コペンハーゲン行き(スカンジナビア航空)
 行き2:4月29日 コペンハーゲン発、ニース行き(スカンジナビア航空)
 途中:5月3日 ニース発、ウィーン行き(オーストリア航空)
 帰り:5月5日(6日着) ウィーン発、北京経由、成田行き(オーストリア航空/ANA)

夫婦2人分で計12万マイル(エコノミー)でした。
航空券は無料ですが、燃油特別付加等で2人で6万円ちょっととられました。翌年からはこの燃油特別付加が高騰することになります。

旅行の詳細は今後1年かけて、じっくり練りますが、航空券さえゲットできれば、それほどの懸念事項はありません。
しいていえば、オペラのチケットを取ることくらいです。ニースで1回(ヴォルフ・フェラーリの《利口な後家》)、ウィーンで2回(ドニゼッティのルチア、R.シュトラウスのダフネ)、計3回オペラを見ます。ウィーン国立歌劇場は余裕でチケットを取れますが、ニース歌劇場はなかなかチケットが取れず、最後は俄かフランス語のメールを書いて、ようやくチケットを取れました。もっとも、腹立たしいことに返事のメールは英語でした。これがフランス人ですね。



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対照をなすベートーヴェンの交響曲、第6番と第5番を完璧に表現 広上淳一&新日本フィルハーモニー交響楽団@ミューザ川崎シンフォニーホール 2023.8.6

今日、満員の聴衆のほとんどは井上道義の最後になるかもしれないベートーヴェンの交響曲第6番と第5番の演奏が聴きたくて、チケットを買った人たちでしょう。saraiもその一人です。普通はこの有名曲の組み合わせのコンサートはウィーン・フィルの来日公演とか、よほどのことがなければ、敬遠するでしょう。残念ながら、井上道義氏は急病で入院されて、タクトを振れなくなりました。幸い既に退院されて元気になられたようなので、もしかしたら、またの機会があるかもしれません。
ということで、今日は普通はチケットを買わないコンサートになってしまいました。ところが、何と井上道義の当初のたくらみがそのまま踏襲されて、素晴らしいコンサートになりました。当初のたくらみというのは、交響曲第6番は第1ヴァイオリン・第2ヴァイオリンがそれぞれ6人ずつという小編成のオーケストラによる演奏。交響曲第5番は16型の大編成のオーケストラによる演奏で弾き比べをするというものです。ここで気付かれたかたはいると思いますが、第6番はオリジナル演奏、第5番はモダン演奏で弾き分けるのかということです。井上道義の当初のたくらみは分かりませんが、実は編成は違っていてもどちらもモダン演奏だったんです。意外に井上道義の当初のたくらみもその路線だったかもしれません。それはそれで意外性がありますものね。

最初の第6番《田園》は小編成ですが、新日本フィルの弦がよく鳴って、小編成とは思えない響き。それでいて、小編成のメリットであるアンサンブルがすこぶる揃って、素晴らしく美しい演奏です。広上淳一の指揮も見事で活き活きとした演奏で、第6番のふわっともたつくところもなく、気持ちよく聴けます。特上レベルの演奏です。第1楽章、第2楽章は美しい響きに聴き惚れて、第3楽章からは追加の金管も加わって、響きがリッチになります。さすがに第4楽章は大編成オーケストラのような迫力は不足しますが、その分、アンサンブルが美しく響きます。第5楽章は金管も加わったままの響きで、美しく荘厳な響きで厳粛な音楽が奏でられました。
素晴らしい演奏に魅了されました。

後半の第5番《運命》は16型の大編成オーケストラ。ミューザ川崎の広いステージがオーケストラに埋め尽くされます。先ほどの倍以上の編成。ベートーヴェンが想定していなかったスケールの大オーケストラです。では響きも倍以上のレベルかというと、そんなことはありません。それはそうですね。先ほどは小編成でばりばり弾いていた弦も大編成だと余裕の演奏で抑えて響きを調整しています。ですから、大編成とは思えない素晴らしいアンサンブルで完璧に揃った演奏を展開します。第1楽章はトゥッティが多いですが、驚異的に揃った演奏です。逆に言うと、こんなに大編成にしなくても、小編成でも十分に響きは確保できる印象です。よく考えてみれば、マーラーやブルックナーのような大編成の音楽と違い、ベートーヴェンは古典派の音楽ですから、大編成のオーケストラは必要ないことが納得できます。てなことを考えながら、第3楽章まで聴いていました。第5番はハ短調に始まり、ハ長調に転じる勝利の方程式の開祖となる音楽です。第4楽章に至り、すべての悩みは解消されて、高らかに勝利の音楽に帰結します。ここで大編成オーケストラの能力は一気に開放されます。凄い迫力です。そして、アンサンブルもぴたっと揃っています。怒涛の迫力でコーダがこれでもか、これでもかと歌い上げられます。

成程ね。第6番は小編成で穏やかに音楽が展開し、第5番は大編成で怒涛のコーダに流れ込むというわけです。名曲のつぼを押さえた井上道義のたくらみはそのあたりにあったんでしょうか。井上道義の指揮であったとしても、大筋はこんな演奏だったのかな。でも、音楽の深さはそれだけではありませんね。やはり、井上道義の指揮で聴きたかった・・・。


今日のプログラムは以下です。

  フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2023

  指揮:広上淳一(井上道義の代演)
  管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団  コンサートマスター:崔文殊

  ベートーヴェン:交響曲第6番 ヘ長調 「田園」 Op. 68
  
   《休憩》

  ベートーヴェン:交響曲第5番 ハ短調 「運命」 Op. 67


最後に予習について、まとめておきます。

ベートーヴェンの交響曲第6番/第5番は以下の録音を聴きました。

 ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル 1954年5月23日、ベルリン、ティタニア・パラスト ライヴ録音
  (TAHRA、「残響付加無し、24bitリマスター盤」4枚組FURT1054/57)

フルトヴェングラーの最晩年のこの2曲(ベートーヴェンの交響曲第6番/第5番)の最後の録音です。ベートーヴェンの交響曲で数々の名演を残したフルトヴェングラーですが、最晩年は枯れた芸風になります。saraiはそれを好んでいます。フルトヴェングラーはとりわけ、ベートーヴェンの交響曲第3番/第5番/第9番で途轍もない名演を残しており、第5番《運命》は全部で12種類の録音が残っています。すべてが聴き逃がせない名演ばかりです。1926年のベルリン・フィルに始まって、この1954年のベルリン・フィルとの最後の録音まで、ほぼ30年の軌跡です。
フルトヴェングラーのベートーヴェンの交響曲第5番の一連の録音の詳しい感想は以下のブログ記事に書きました。

 https://sarai2551.blog.fc2.com/blog-entry-245.html



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次期首席指揮者カーチュン・ウォンと日本フィルハーモニー交響楽団によるプレ披露公演は明快で雄大な《展覧会の絵》、そして、素晴らしきアンコール@ミューザ川崎シンフォニーホール 2023.8.9

次期首席指揮者カーチュン・ウォンの就任記念コンサートは10月のマーラー、交響曲第3番ですが、それに先駆けての言わば、プレ披露コンサートみたいなものなので、これは聴き逃がせません。

メインは後半のムソルグスキー(ラヴェル編曲)の組曲『展覧会の絵』です。ここから、緊張して聴きます。冒頭の金管によるプロムナードは無難な入り。第1曲の小人はアンサンブルの揃った明快な演奏です。以降もカーチュン・ウォンの丁寧な指揮で引き締まった演奏が続いていきます。第9曲のバーバ・ヤガーあたりから、高潮した演奏になっていきます。そして、最後のキエフの大門(キーウの大門?)は圧巻の演奏です。期待に違わぬカーチュン・ウォンの素晴らしい演奏と言いたいところですが、saraiはもう一つ上の演奏を期待していました。カーチュン・ウォンならば、もっと凄い演奏になる筈でしたが、もしかしたら、リハーサル不足だったのでしょうか。

10月のマーラーの交響曲第3番は万全の演奏を期待しています。

ところで、今日は何とアンコール曲が演奏されました。予想外のことで、saraiも肩の力が抜けていました。ウーン、これは何の曲だ? 何やら厳粛な雰囲気の曲。よく知っている曲です。記憶を辿ります。あー、エルガーのエニグマですね。英国では、この第9変奏のニムロッドは戦没者の追悼などに演奏されるそうです。米国のバーバーの『弦楽のためのアダージョ』みたいなものです。何とも素晴らしい演奏に感銘を受けます。本編で演奏された曲よりも素晴らしい演奏です。これぞ、カーチュン・ウォンの実力! じっと聴き入りました。よく考えてみれば、本編の組曲『展覧会の絵』の終曲の《キエフの大門(キーウの大門?)》はウクライナ戦争に思いを馳せる曲です。その後にこのニムロッドということは、明らかにウクライナ戦争の被害者への追悼。それに今日は長崎の原爆投下の日でもありました。これほど、アンコールにふさわしい曲はありません。カーチュン・ウォンと日本フィルの素晴らしい演奏に感謝しつつ、戦争の犠牲者に追悼の心を送ります。カーチュン・ウォン、ありがとう・・・。


前半のヴェルディの歌劇『運命の力』序曲も圧倒的に素晴らしい演奏でした。そして、菅野祐悟のサクソフォン協奏曲はサックスの須川展也の素晴らしい演奏にうっとりしていました。ちょっと甘過ぎる曲ですが、まあいいでしょう。


今日のプログラムは以下です。

  フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2023

  指揮:カーチュン・ウォン(首席客演指揮者、次期首席指揮者)
  サックス:須川展也
  管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団  コンサートマスター:田野倉雅秋

  ヴェルディ:歌劇『運命の力』序曲
  菅野祐悟:サクソフォン協奏曲『Mystic Forest』
   《アンコール》真島俊夫:シーガルより
  
   《休憩》

  ムソルグスキー(ラヴェル編曲):組曲『展覧会の絵』
  
   《アンコール》
    エルガー:『エニグマ変奏曲』Op.36 より 第9変奏 "Nimrod" (ニムロッド) 変ホ長調、アダージョ
     
最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のヴェルディの歌劇『運命の力』序曲は以下のCDを聴きました。

  ジョルジュ・プレートル指揮スカラ座フィルハーモニー管弦楽団 2016年2月22日 ミラノ、スカラ座 ライヴ録音

プレートルは高齢になった後、思い出に残る数々の演奏を聴かせてくれました。ベートーヴェン、ヴェルディ、オッフェンバックとラヴェルの作品のプログラムで聴衆と演奏者を魅了し大成功を収めたこの2016年2月22日のミラノ・スカラ座でのコンサートが最後のコンサートとなりました。この『運命の力』序曲はラストコンサートとは思えぬ、勢いに満ちた、いかにもプレートルらしい素晴らしい演奏です。


2曲目の菅野祐悟のサクソフォン協奏曲は予習していません。


3曲目のムソルグスキー(ラヴェル編曲)の組曲『展覧会の絵』は以下のCDを聴きました。

  セルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィル 1986年9月23日 ベルリン ライブ録音

レーベルはAUDIORの伝説的なCDです。最後のキエフの大門でチェリビダッケの気合を入れるような声が響き渡り、ぞくぞくってします。中古盤を大枚をはたいて入手した宝物です。チェリビダッケのファンならば、このCDとブルックナーの交響曲第8番のリスボンライブは必聴です。いずれもレーベルはAUDIORで高価な海賊盤の中古盤を購入することになりますが・・・報われることはsaraiが保証します。と言いつつ、配偶者には、その遅い演奏が不評でした。残念です。やはり、個性的な演奏ですから、好みが分かれます。



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       カーチュン・ウォン,  

ペトレンコの個性的で陰影濃いマーラーの交響曲第6番 ベルリン・フィル@ベルリン・フィルハーモニー 2020年1月25日

キリル・ペトレンコはこのコンサートのあった2019/2020年シーズンからベルリン・フィルの首席指揮者に就任しました。直後、コロナ禍に襲われるという波乱の幕開けになりましたが、着々と実績を積み重ねています。このマーラーの交響曲第6番でも、個性的かつ感銘に満ちた演奏で聴くものを魅了しています。決して、ロシアものだけではないレパートリーの広さを見せ始めている時期の演奏です。
当ブログのベルリン・フィルのデジタル・コンサートホールの第2回目の鑑賞記です。

第1楽章は穏当な表現で開始されます。強力なベルリン・フィルのアンサンブルが明快な行進曲を刻み、ほぼ、楽譜通り、そして、オーケストラの自発性に任せた演奏で、ペトレンコはこのまま、曲を進行するのかと思い、先行きが見えない展開が続きます。ペトレンコの意図はまったく見えません。展開部あたりから、徐々にではありますが、少しずつ暗い色調も見えてきます。

中間楽章はアンダンテ、スケルツォの順に演奏されます。
その第2楽章のアンダンテは美しさよりも陰影濃い表現に驚かされます。ロシア的な暗さが次第に主調になっていきます。気持ちは高揚せず、暗く沈み込んでいきます。こういう演奏を聴いたのは初めてです。ベルリン・フィルのメンバーも超絶的な演奏を繰り広げます。この曲はこんなに難しい曲だったでしょうか。そう言えば、マケラが都響を振ったときもマケラの要求水準の高さに都響のメンバーも100パーセント、応えられなかったと感じました。ベルリン・フィルは完璧な演奏水準での演奏です。しかし、気持ちが滅入るくらいに暗過ぎる。

第3楽章のスケルツォも暗い気分を続けていきます。トリオに入って、ますます暗くなります。しかし、ベルリン・フィルの演奏の上手いことには恐れ入ります。人間業には思えません。不安な感情のまま、沈み込みます。

第4楽章は圧巻の演奏。序奏は凄い! オーケストラ演奏の粋のようです。主部に入ると、それまでの暗さを振り切るような劇的な行進曲が強い調子で演奏されます。ここに至って、ペトレンコの指揮がベルリン・フィルを鼓舞して、ドラマチックで、それでいて、陰影の幅の大きな圧巻の演奏を繰り広げます。何度も頂点を作り上げ、2度のハンマーも打ち下ろされます。そして、劇的な再現部を経て、コーダに入ります。3度目のハンマーは打たれません。苦悩に沈むように暗い表現が回帰して、イ短調の強烈な和音の後、ティンパニがリズムを刻んで、暗い、暗い穴の奥に沈み込みます。

実に個性的な演奏。ペトレンコの音楽芸術とベルリン・フィルの名人芸がマッチアップした印象深いマーラーです。この後に来る第7番の交響曲が予感されるような演奏で、しかも、この第6番の交響曲がそれまでの5曲の交響曲の総決算であることを実感するような凄い演奏でした。とともに、ペトレンコはいい意味でも悪い意味でも、決して、マーラー指揮者ではありませんね。これでは、マーラー信者は増えないでしょう。むしろ、マーラー信者が、マーラーとは何かということを己に問うような深い味わいの演奏です。

さて、次はベルリン・フィルのデジタル・コンサートホール、何を聴こうかな・・・


この日のプログラムは以下です。

  2020年1月25日、ベルリン・フィルハーモニー

  指揮:キリル・ペトレンコ
  管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

  グスタフ・マーラー:交響曲第6番イ短調《悲劇的》
  


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       キリル・ペトレンコ,  

南仏・ウィーンの旅、スタート

2007年4月28日土曜日@成田空港~コペンハーゲン/1回目

今回は2007年(4月28日~5月6日)のゴールデンウィークを利用した南仏・コートダジュールとウィーンを巡る旅の記録をご報告します。既に今回の旅は事前の企画・準備状況は報告済ですが、これからはいよいよ、旅の詳細の報告になります。よろしくお付き合いくださいね。では、始まり、始まり・・・

今年も我が家恒例の5月の連休をフル活用したヨーロッパを巡る美術とオペラを楽しむ旅に出かけます。4月28日~5月6日です。今年の連休はうまくお休みがつながり、9連休の日程で、出発することにしました。

スターアライアンスのマイル特典券を利用したので、なかなかこの時期では最適の航空券をゲットするのが困難で当日に南仏(ニース)着の便は取れず、コペンハーゲン経由となり、コペンハーゲンKøbenhavnで1泊することになりました。まあ、望んで、コペンハーゲンに立ち寄るわけではありませんが、これも何かの出会いみたいなものでしょう。

今回の旅のテーマは南仏をニースNiceを拠点にして巡り、最後にお決まりのウィーンWienに寄ってきます。南仏はヴァンスVence、サンポールSaint Paul、モナコMonaco、カンヌCannes、アンティーブAntibes、ビオットBiot、ヴァロリスVallaurisと巡りますが、どこも初めての訪問地です。美術が主目的です。もちろん、オペラもニースとウィーンで計3回観る予定です。

まずは旅のルートを地図で確認しておきましょう。

成田空港から出発して、スカンジナビア航空でコペンハーゲンに夕方4時過ぎに到着。少しだけ街歩きを楽しみます。1泊して翌日、空路でニースに移動します。
ニースに4泊して、そこを拠点に主にバスで南仏・コートダジュールの各地を巡ります。
ニースの後は空路でウィーンに移動。ウィーンに2泊して、オペラを楽しみます。
最後はウィーンから北京経由でオーストリア航空とANAを乗り継いで成田空港に戻ります。

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ではいざ、出かけましょう!
旅の初日はまず、成田空港からコペンハーゲンです。コペンハーゲンの町に立ち寄るのは初めてです。

早起きして9時過ぎに成田空港に着くと・・・あら???ガラ~ンとしてる。2年前の北イタリア行きのときはあまりの混雑振りにあきれたのに。あれ~なんだか変だなと思いながらも、あっという間にチェックインと荷物預け完了。両替もスイスイと済ませます。

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ついでにJCBカウンターにも寄っていきます。この頃はJCBも結構、現地のお得情報があったりしたんです。

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空港ロビーも閑散としたものです。

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出国手続きカウンターに行くと、ここもほとんど人がいない!係りの人に「どうしたの?」と聞くと、「10分ほど前は混んでましたよ」との返事。それにしてもおかしい・・・。

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まあ、空いていて文句を言うこともないね。

2年前の旅でもフィレンツェでおち合ったオペラ仲間のお嬢さんとまたまた出発が一緒になった(彼女はロンドン行き)のですが、余裕で出発の時間までお茶を楽しむことができました。働いている者同士、どうしても海外旅行はこの時期になるので、偶然とは言え、こうして一緒になることが多いですね。

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お互いの旅の安全を願い、別れた後、sarai、配偶者のそれぞれの親に出発挨拶の携帯電話をしながら出発ロビーに向かい、搭乗前のしきたりでおトイレに座ったら、「sarai様、お急ぎ搭乗口においで下さい」のアナウンス!エ~何かしらと搭乗口に急ぐと、何と最後の乗客になってました!

あまりの時間の余裕に、ゆっくりしすぎたようでした・・・。

今回は、スカンジナビア航空の便に乗ります。

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最後に我々が搭乗したスカンジナビア航空機は成田空港を無事に離陸して、一路、コペンハーゲンに向かいます。
12時間の空の長旅の始まりです。長いと言えば長いですが、これもヨーロッパ遠征の儀式みたいなものですね。



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コペンハーゲン国際空港に到着

2007年4月28日土曜日@成田空港~コペンハーゲン/2回目

2007年のゴールデンウィークを利用した南仏・コートダジュールとウィーンを巡る旅の記録です。

無事、成田空港からスカンジナビア航空機でコペンハーゲンKøbenhavnに向けて飛び立ちました。

スカンジナビア航空でヨーロッパ渡航は初めてです。ストライキ中ということで客室乗務員の人数が少なかったせいもあるけど、サービスも今一、食事も今一です。ま、アルコールが2本まで無料というのは、今時珍しいのが救いです。機内食を紹介しておきます。
まずは飲み物とスナック。

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次はメインの機内食。これは肉ですね。

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最後に目的地到着前の軽食です。なんだか、すべて、あっさりしていますね。

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淡々と我慢の12時間を過ごします。でも、しっかり、映画2本を見ながらコペンハーゲン国際空港Københavns Lufthavnに到着。飛行機を降りて、空港の窓から乗ってきたスカンジナビア航空機を眺めます。コペンハーゲンは雨です。

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コペンハーゲンは今までにも乗換えで何度か降りたことがあります。今回も、ニースへの直行便がないので、このコペンハーゲンで乗換えなのですが、本日のニース行きの便がないのでここで一泊します。
コペンハーゲン空港は、どっしりとした、いかにも北欧という感じが第一印象。空港の床も『木』です。この空港は大きなハブ空港なので人はいっぱいいるけど、乗り換えの人ばかり。コペンハーゲンで出国する人は本当にチラホラで、多くの日本人乗客ともここでお別れです。

我々はターンテーブルの前で荷物が出てくるのを待ちます。

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saraiは荷物を待つ間も無駄にせず、これからの予定のチェックに没頭しています。

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無事にスーツケースをピックアップして、空港内を歩き始めます。おっ、わが国を代表するコンピューターメーカーの名前の入ったカートがありますね。

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今夜宿泊するホテルは明日の朝の乗換えを考慮して、空港に直結したヒルトンエアポートホテル(現在はクラリオン ホテル コペンハーゲン エアポートと名前を変えています)を予約しました。少し宿泊料金が高いけど、場所が最高に便利なので仕方ないですね。空港からは立派なガラス張りで広々としたコンコースがホテル近くまで続いており、途中からはヒルトンホテルの雄姿が見えてきて、迷いようがありません。

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ヒルトンホテル近くから、振り返って、コペンハーゲン空港を見ると、北欧らしいお洒落なデザインの建物です。

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5分ほど歩くと、ホテルに到着。さあ、チェックインしましょう。



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ガーディナーの熱い共感のメンデルスゾーンの交響曲第2番《讃歌》 ベルリン・フィル@ベルリン・フィルハーモニー(配信) 2022年3月19日

ベルリン・フィルのデジタル・コンサートホールの第3回目の鑑賞記です。
東響のサントリー定期(鈴木優人指揮)の予習も兼ねて、ベルリン・フィルのメンデルスゾーンを聴きます。
このメンデルスゾーンの交響曲第2番《讃歌》はsaraiの人生の中でまったくの初聴きになります。考えてみれば、saraiはメンデルスゾーンのよい聴き手ではなかったような気がします。まあ、一般にメンデルスゾーンはその業績に比べて、特に日本では正当な評価を受けてこなかった作曲家の一人ですね。今日、この大作を聴いて、メンデルスゾーンの天才ぶり、何よりも音楽への深い情熱を感じ取ることができました。

メンデルスゾーンの交響曲第2番《讃歌》は前半は純器楽作品、後半は声楽を伴う大宗教曲で、全体は70分を超える大作です。こういう構成の作品としては、過去にはベートーヴェンの交響曲第9番、その後にはマーラーの交響曲群があり、それらは現在、よく演奏されますが、この曲はあまり演奏されません。宗教性が強過ぎるのかもしれません。ドイツではそれなりに演奏されるようです。
メンデルスゾーンのこの曲はスペシャリストと言えるような指揮者がいて、アバド、シャイーなどですが、これから聴くジョン・エリオット・ガーディナーもその一人です。それでも、彼がベルリン・フィルを振って、メンデルスゾーンを演奏するのは珍しい感じがしてしまいます。基本的にオリジナル演奏の指揮者ですからね。無論、ベルリン・フィルがオリジナル演奏をするとは思えません。

実際、第1部が始まると、弦はガット弦ではなく、普通にヴィブラートをかけています。初めて聴くにもかかわらず、どこかで聴いたような懐かしいメロディーが奏でられます。そして、ベルリン・フィルはとても美しいアンサンブルの演奏です。コンサートマスターは大柄なアジア系の女性。見たことのない人です。ガーディナーが臨時に連れてきた人でしょうか。時として、ガーディナーは情熱的な指揮をします。この曲への思い入れは半端ではない印象です。第1部は序奏と3つの楽章から成りますが、やがて、第2楽章に休みなく移行します。アレグレットで穏やかな主題が奏されます。そして、中間部では序奏で提示されたモットー動機を含む印象的なコラールが奏でられます。うっとりとしますね。休みなく第3楽章に入ります。雰囲気は第2楽章を引き継ぎます。宗教的な民謡が奏でられます。メンデルスゾーンらしい音楽が横溢します。この優しく穏やかな音楽が時として高潮しますが、だんだんと静まっていきます。
そのまま、第2部です。ここからは声楽が入るカンタータです。また、モットー動機から始まり、ガーディナーが激しい勢いで合唱を鼓舞して、第2曲を演奏します。ところで、序奏から登場するモットー動機は再三、各所で演奏される印象的な旋律です。一緒に聴いていた配偶者が急に笑いながら、唱和します。何と、《箱根の山は天下の嶮 函谷關も ものならず》。瀧 廉太郎の歌曲『箱根八里』です。まあ、そう言えば、否定できませんね。無論、メンデルスゾーンが『箱根八里』のメロディーを取り込んだわけではなく、瀧 廉太郎がこの曲から旋律を取り、『箱根八里』を作ったのでしょう。saraiが初めて聴いたのに、どこかで聴いたような気がしたのは瀧 廉太郎の歌曲『箱根八里』に似ていたからですね。
話を戻し、モンテヴェルディ合唱団の素晴らしい合唱に感銘を受けます。そして、途中から、ルーシー・クロウの澄み切ったソプラノ独唱が入ってきて、素晴らしい音楽が展開されていきます。

第3曲はテノール独唱がレシタティーボを歌います。まるで福音史家みたいな雰囲気です。でも、バッハのような音楽ではなく、あくまでもメンデルスゾーンの世界です。ヴェルナー・ギューラは見事な美声を聴かせてくれます。
このテノール独唱がそのまま、合唱に歌い継がれて、第4曲が進みます。

第5曲はソプラノとメゾソプラノの掛け合いのデュエット。このデュエットが素晴らしく、聴き惚れます。音楽もよし、歌手もよし。この曲のひとつの頂点です。

第6曲はテノール独唱で闇の恐怖が劇的に歌われて、《師よ、夜は間もなく明けますか?》と何度も歌われて、最後にステージの後方の上段からソプラノが《夜は過ぎ去れり!》と返答します。そして、そのまま、第7曲で合唱が《夜は過ぎ去れり》と晴れやかに連呼します。

第8曲はアカペラの合唱が祝典的なコラールを歌います。モンテヴェルディ合唱団、素晴らしい! 途中からオーケストラも加わり、晴れやかに高潮します。

第9曲はテノール独唱とソプラノ独唱の掛け合いですが、清らかなソプラノに心が洗われる思いです。

最後の第10曲はフーガ合唱に始まり、《すべての者は主に感謝せよ!》という感動の大合唱。そして、また、フーガ合唱。最後はモットー動機、すなわち、《箱根の山は天下の嶮》で締め括られます。

あっという間の70分でした。懐かしいモットー動機もあり、全然、退屈せずに楽しく聴けました。ガーディナーの熱い思い、そして、ベルリン・フィルの素晴らしいアンサンブルで、メンデルスゾーンの隠れた傑作を深く味わうことができました。

ベルリン・フィルのメンデルスゾーンに感銘を受けて、ベルリン・フィルのデジタル・コンサートホールでほかのメンデルスゾーンの作品も聴きたくなりました。もちろん、ありました。それもキリル・ペトレンコの指揮したメンデルスゾーンの交響曲第3番《スコットランド》。メンデルスゾーンの作曲した最後の交響曲ですね。次はこれを聴きましょう。


この日のプログラムは以下です。

  2022年3月19日、ベルリン・フィルハーモニー

  指揮:サー・ジョン・エリオット・ガーディナー
  ルーシー・クロウ(ソプラノ)
  アン・ハレンベリ(メゾソプラノ)
  ヴェルナー・ギューラ(テノール)
  モンテヴェルディ合唱団
  管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

  フェリックス・メンデルスゾーン:交響曲第2番変ロ長調 Op. 52《讃歌》
  
なお、その他、以下の曲も演奏されました。(未聴)
  
  ヨハネス・ブラームス:《運命の歌》Op. 54
  


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キリル・ペトレンコの明朗快活なメンデルスゾーンの交響曲第3番《スコットランド》 ベルリン・フィル@ベルリン・フィルハーモニー(配信) 2021年10月29日

ベルリン・フィルのデジタル・コンサートホールの第4回目の鑑賞記です。
ガーディナーの熱い共感のメンデルスゾーンの交響曲第2番《讃歌》を聴いて、ベルリン・フィルのほかのメンデルスゾーンにも俄然、興味が出てきて。ペトレンコのメンデルスゾーンのアーカイブがあることが分かり、即、聴くことにしました。交響曲第1番と第3番の演奏記録があり、とりあえず、第3番を聴きます。

キリル・ペトレンコは肩の力の抜けた見事な指揮でこの名曲を奏でます。第1楽章の有名な序奏は何度聴いても心がほっこりします。タイトルのスコットランドの名前の通り、メンデルスゾーンがスコットランドのエディンバラにあるホリールード宮殿Palace of Holyroodを訪れた際、隣にあるホリールード寺院Holyrood Abbeyの廃墟を眺めて、日本風に言えば、世の無常を感じて、このメロディーが頭に浮かんだそうです。ついでに言えば、saraiのオーディオシステムのスピーカーは英国のタンノイTANNOY社製のエディンバラなので、このスピーカーから響いてくる懐かしいメロディーにも何となく親近感を覚えます。それにメンデルスゾーンの交響曲第2番《讃歌》で滝廉太郎の箱根八里のメロディーが登場したのと同様に、序奏の静かな旋律は滝廉太郎の荒城の月を連想します。
第1楽章は懐かしい雰囲気のまま、素晴らしいアンサンブルの演奏が続いていきます。この曲はさほどに名人芸を要するようなものではありませんが、ペトレンコが指揮するとベルリン・フィルは凄技を繰り出した演奏を聴かせてくれます。役者も揃っています。コンサートマスターは我が樫本大進、フルートはエマニュエル・パユ、クラリネットはヴェンツェル・フックス、オーボエはアルブレヒト・マイヤー、ホルンはシュテファン・ドール・・・。1970年代のベルリン・フィルのスタープレイヤー揃いだった頃に比べても(コンサートマスターのミシェル・シュヴァルベ、フルートのゴールウェイ、クラリネットのライスター、オーボエのローター・コッホ、ホルンのザイフェルト)、現在も負けず劣らずですね。彼らが素晴らしい技術・音楽性を競い合っての演奏には度肝を抜かれそうになります。ペトレンコは軽く合わせるような指揮で自然な表現ですが、顔の表情から、音楽への愛を感じます。一見、オーケストラの自発性に任せたような指揮にも思えますが、どっこい、押さえるところは押さえた指揮で、瑞々しい音楽を表現していきます。
第2楽章のヴィヴァーチェ・ノン・トロッポは活き活きとした表情の音楽がそよ風のように吹き抜けます。
第3楽章のアダージョはまず、樫本大進を中心とした第1ヴァイオリンが抒情的な演奏で魅了した後、管楽器の首席奏者たちが静謐な音楽を奏でます。ペトレンコとベルリン・フィルの息はぴったりと合っています。
第4楽章はアレグロの勢いのよい音楽が進行し、いったん、静まり、コーダで第1楽章の序奏の動機を回想した後、壮大に高まって、明るく曲を閉じます。

キリル・ペトレンコの新たな一面を見たようなメンデルスゾーンの交響曲第3番でした。ただ美しいだけの演奏ではなく、本物の音楽がそこには息づいていました。オーケストラも個人それぞれの個性を活かしつつ、きっちりアンサンブルが整った理想に近い演奏を聴かせてくれました。キリル・ペトレンコとベルリン・フィルの行き着くところはどういう世界になるのでしょう。


この日のプログラムは以下です。

  2021年10月29日、ベルリン・フィルハーモニー

  指揮:キリル・ペトレンコ
  管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

  フェリックス・メンデルスゾーン:交響曲第3番イ短調 Op. 56《スコットランド》
  
なお、その他、以下の曲も演奏されました。(未聴)
  
  ディミトリ・ショスタコーヴィチ:交響曲第10番ホ短調 Op. 93
  


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       キリル・ペトレンコ,  

鈴木優人&東京交響楽団、瑞々しいメンデルスゾーンの交響曲第2番/第5番に静かな感銘@サントリーホール 2023.8.19

鈴木優人のメンデルスゾーン、整った演奏の中にも熱い気持ちの込められた感銘のある演奏でした。

まずはメンデルスゾーンの交響曲 第5番「宗教改革」。第1楽章の厳かな雰囲気の演奏に心を打たれます。弦楽器に「ドレスデン・アーメン」が現れると、まるでワーグナーの楽劇《パルジファル》の世界にいるかのようです。そして、主部に入っても、信仰の熱い気持ちが続きます。そして、再び、「ドレスデン・アーメン」が現れて、《パルジファル》の世界です。
第2楽章はメンデルスゾーンらしい軽快なスケルツォ。心が明るくなります。
第3楽章は抒情的な雰囲気の短い音楽で、すぐに第4楽章に入ります。
ルターのコラール「神はわがやぐら」を主題にして、音楽が展開していきます。そして、コーダはそのコラール主題が壮大に盛り上がって、〆。鈴木優人の音楽表現が丁寧に東響をコントロールして、時として、熱い高揚もある素晴らしい演奏でした。

後半は合唱と独唱も加わった交響曲第2番『讃歌』。交響曲というよりもシンフォニックな宗教曲と言ったほうがよさそうです。
第1部は管弦楽だけのシンフォニア。3本のトロンボーンによって厳かに奏される序奏で祝典的な雰囲気が醸し出されます。この序奏動機が全曲を支配的にまとめることになります。第1楽章から第3楽章まで、明快な音楽が続きますが、東響の見事なアンサンブルが爽やかな音楽を奏でてくれます。

第2部は声楽を中心にしたカンタータです。また、印象的な序奏動機が奏されて、合唱が歌われます。大人数の東響コーラスが満を持して、立ち上がって熱唱します。
独唱はソプラノの中江早希がいつものような鋭い歌唱ではなく、優し気で温かみのある歌唱で心を癒してくれます。
テノールの櫻田亮は福音史家のような雰囲気の素晴らしい歌唱。鈴木優人の指揮も含めて、バッハ・コレギウム・ジャパンの世界のようです。でも、音楽はバッハではなく、あくまでもメンデルスゾーンらしい明快で明るい音楽です。
アリアや合唱が続き、最後はフーガの終末合唱。形式はバッハの構成を借りて、メンデルスゾーンの世界が展開されました。
第2部の音楽構成は一昨日、ベルリン・フィルの演奏の記事で書いたばかりなので、ここでは割愛します。
ちなみにベルリン・フィルの演奏との比較なんていう野暮なことはやめておきます。ただ、ベルリン・フィルの演奏では、モンテヴェルディ合唱団があまりにも強力な合唱を聴かせてくれたのが脳裏に刻み付けられています。

全体として、鈴木優人と東京交響楽団のメンデルスゾーン尽くしのプログラム、非常に気持ちよく聴けました。これも曲よし、演奏よしと評価できました。大満足のコンサートでした。


今日のプログラムは以下のとおりでした。

  指揮:鈴木優人
  ソプラノ:中江早希
  ソプラノ:澤江衣里
  テノール:櫻田亮
  合唱:東響コーラス
  合唱指揮:辻博之
  管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:小林壱成

  メンデルスゾーン:交響曲 第5番 ニ短調 Op.107 「宗教改革」

  《休憩》
  
  メンデルスゾーン:交響曲 第2番 変ロ長調 Op.52 「讃歌」


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のメンデルスゾーンの交響曲 第5番「宗教改革」を予習したCDは以下です。

 ロリン・マゼール指揮ベルリン・フィル 1961年4月4-6日、イエス・キリスト教会 セッション録音

若きマゼールの熱い演奏が聴きものです。


2曲目のメンデルスゾーンの交響曲 第2番「讃歌」を予習した演奏は以下です。

  サー・ジョン・エリオット・ガーディナー指揮ベルリン・フィル
    ルーシー・クロウ(ソプラノ)
    アン・ハレンベリ(メゾソプラノ)
    ヴェルナー・ギューラ(テノール)
    モンテヴェルディ合唱団
            2022年3月19日、ベルリン・フィルハーモニー セッション録音

ベルリン・フィルのデジタル・コンサートホールの配信を聴きました。素晴らしい演奏でした。詳細は以下の記事に書きました。

  https://sarai2551.blog.fc2.com/blog-entry-4804.html



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ベルリン・フィルの新シーズンがまもなく開幕!

何かと忙しく、忙しさとsaraiの怠慢にかまけて、ブログの更新を怠っていました。saraiは至って、元気です!

あと1時間足らずでベルリン・フィルの新シーズンがベルリンのフィルハーモニーで開幕します。初めてライヴ配信でその演奏を視聴します。日本時間では真夜中の2時なので、いかに防音室とは言え、大型スピーカーで聴くのは非常識なので、ヘッドフォンで聴こうと思いましたが、そのヘッドフォンが見つかりません。家中、家探ししましたが、何ともなりません。困ったので、モバイル用のヘッドフォンで代用することにしましたが、何とこれも見つかりません。うーん、困った。Bluetoothのイヤフォンも見つかりません。
冷静になって、カバンをひっくり返すとモバイル用のヘッドフォンを発見。ほっ・・・。

オーディオシステムで聴こうとしますが、どこにもヘッドフォンジャックがありません。テレビの裏に何とか見つけて、早速接続して、聴きますが、少し音量不足。あきらめて、PCで聴くことにします。PCはアンプ付きのスピーカーを接続しているので、そのスピーカーのヘッドフォンジャックに繋ぐと十分過ぎる音量で聴けます。ペトレンコ指揮のベルリン・フィルのハフナー交響曲を聴いてみると素晴らしい音質で音楽が聴けます。これで準備完了。

今日のシーズン開幕コンサートは今秋の日本公演でも聴ける以下のプログラムです。指揮はもちろん、キリル・ペトレンコ

 マックス・レーガー
   モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ op. 132
 リヒャルト・シュトラウス
   交響詩《英雄の生涯》op. 40


そろそろ、30分前です。聴く準備にはります。ではこれで。
  


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       キリル・ペトレンコ,  

ベルリン・フィルの新シーズンは首席指揮者、キリル・ペトレンコの指揮で開幕:夢見心地で聴く《英雄の生涯》@ベルリン・フィルハーモニー(ライヴ配信) 2023年8月25日19時(ベルリン時間) 26日2時/20時(日本時間、ライヴ配信/再配信)

ベルリン・フィルのデジタル・コンサートホールの第5回目の鑑賞記です。
今回は初のライヴ鑑賞。ベルリン時間で19時のコンサートですから、日本時間では真夜中の2時。いつものように防音室でオーディオシステムの大型スピーカーで聴くわけにはいかず、PCにヘッドフォンを繋いで聴きます。しかし、どんな形で聴こうとも、素晴らしい音楽は心に響くものです。

今日のベルリン・フィルの2023/2024年新シーズン開幕コンサートでは首席指揮者キリル・ペトレンコ指揮でR.シュトラウスの交響詩の最高傑作《英雄の生涯》が演奏されます。キリル・ペトレンコは、2019/20年のシーズンからベルリン・フィルの首席指揮者兼芸術監督に就任していますから、今シーズンは5シーズン目になります。ペトレンコとベルリン・フィルの息もぴったりと合って、蜜月状態になってくる頃です。R.シュトラウスの素晴らしい演奏が楽しみです。

夜中のコンサートは聴いたことがないせいか、夜更かしはお手の物のsaraiですが、少し、頭がぼーっとしています。
1曲目はレーガーの《モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ》です。最初に主題がオーボエで奏でられます。懐かしい旋律です。あれっ、これ、何だろう? 徐々に脳裏にその旋律が定着して、雰囲気を探り始めます。そして、その懐かしい旋律が何かが分かります。何と、ピアノ・ソナタ第11番 イ長調 K. 331の第1楽章の変奏曲の主題です。ピアノ独奏曲から管弦楽曲の主題をとったんですね。オーボエで主題を演奏しているのは、アルブレヒト・マイヤー。名人ですね。そして、変奏が始まりますが、第2変奏あたりで仰天します。頭が混乱するような響きです。明快で美しい響きですが、まるで無調のような調子外れの響きで頭がおかしくなりそうです。しかし、変奏が進むにつれて、その奇妙な響きに慣れてきて、美しく感じ始めます。第8変奏は素晴らしい演奏です。そして、圧巻だったのはフーガです。弦楽器が軽快に受け継いでいくフーガは素晴らしい響き。管楽器も加わって、音楽が高潮していきます。最後は全楽器で主題が壮大に歌い上げられます。見事な演奏でした。

20分ほどの休憩があり、いよいよ、リヒャルト・シュトラウスの交響詩《英雄の生涯》です。冒頭から、低弦とホルンの素晴らしい響きで英雄の主題。もう、この時点で心が持っていかれます。もう、あとは何も語る言葉がありません。キリル・ペトレンコ率いる強大なベルリン・フィルの凄まじい響きを夢見心地で聴き入るのみです。大編成のオーケストラの隙のない完璧な演奏。saraiの生涯でこれに並ぶ演奏はベルナルト・ハイティンク指揮のシカゴ交響楽団の圧倒的な演奏をみなとみらいホールで聴いただけです。一生、これを超える演奏は聴けないと思っていましたが、今日の演奏も凄い! 無論、翌日の夜の8時からの再配信も聴いてしまいました。恐れ入るような演奏です。完璧を通り超したようなスーパーな演奏であることを再確認しました。これが11月に本当のライヴでサントリーホールで聴けるとは・・・。英雄のテーマでは何度も心が震えました。何と言う素晴らしい音楽でしょう。


この日のプログラムは以下です。

  2023年8月25日19時(ベルリン時間)、ベルリン・フィルハーモニー

  指揮:キリル・ペトレンコ
  管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

 マックス・レーガー
   モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ op. 132
   
 《休憩》
 
 リヒャルト・シュトラウス
   交響詩《英雄の生涯》op. 40

  


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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
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 ≪…長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さ…≫を、長調と短調の振り子時計の割り振り」による十進法と音楽の1オクターブの12等分の割り付けに

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07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

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