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ウォルトンの時代錯誤の名曲、交響曲第2番を山田和樹が完璧に鳴らす 日本フィルハーモニー交響楽団@サントリーホール 2023.9.1

お昼にメゾ・ソプラノの金子美香のミニリサイタル(ピアノ伴奏:石野真穂)を聴き、その透明な美声と柔らかな感性に魅了されました。間近な席で聴いた日本の歌・世界の歌は特に弱音の美しさが心に沁みました。石川啄木の初恋が素晴らしく、今もその歌声が耳に残っています。

夜は日本フィルの定期会員になって初めてのコンサート。サントリーホールの定期下院の席に行くと、何やら小さな紙が置いてあります。隣の席の人が置いたのかと思い、むっとしながら手に取ると、《日本フィル新規定期会員のみなさんへ》という挨拶状でした。新規会員の席に日本フィルがわざわざ置いたんですね。なかなかの心配りです。残念ながら、あまり席は埋まっていません。N響の定期のように満席状態とはならないようですね。それでも、saraiはあえてN響の定期から日本フィルの定期に乗り換えたんです。動機は新首席指揮者のカーチュン・ウォンへの期待です。カーチュン・ウォンの登場は来月で、今回は山田和樹の指揮。なかなか凝ったプログラムで演奏も上々です。日本フィルの響きも他の在京オケにひけをとりません。とりあえず、日本フィルの定期会員になってよかったというところ。

最初は弦楽だけで、超有名曲、モーツァルトのアイネ・クライネ・ナハトムジーク。大編成の弦楽オーケストラですが、演奏は入れ替わり立ち代わりでほぼ半数程度で演奏しています。もっと少数で演奏する部分もあります。実質、室内オーケストラのような演奏で実にピュアーな響きです。曲の最初と最後だけは全員の総奏で盛り上がります。まるでマーラーが考えそうな演奏ですね。演奏自体も冒頭だけはテンポが早く、あとは標準的なテンポ。山田和樹は肩の力の抜けた妥当な指揮で美しいモーツァルトを聴かせてくれました。超有名曲を面白い演出と美しいアンサンブルで聴かせてくれて、納得の演奏です。

次はJ.S.バッハ(齋藤秀雄編曲)のシャコンヌ。saraiとしては原曲の無伴奏ヴァイオリン以外は好みません。ブゾーニ編曲のピアノ版とか、あまり感心しません。まあ、指揮者の腕の見せ所でしょう。山田和樹は真摯な演奏で、バッハの本質に切り込んだ見事な演奏を聴かせてくれました。まるでこういうバッハの管弦楽曲があるみたいです。派手になり過ぎず、厳しい音楽を展開してくれました。斎藤秀雄先生もこれなら納得して優の成績を出してくれるでしょう。山田和樹はへらへらした印象ですが、やるときはやりますね。

休憩後はウォルトン。山田和樹のプレトークによると、イギリスのオーケストラはこのウォルトンの曲を選曲すると歓声を上げて喜ぶのだそうです。国民的人気の高い作曲家なんですね。

まず、戴冠式行進曲《宝玉と勺杖》。昨年崩御したエリザベス2世が1953年に戴冠したときに作曲したものだそうです。ファンファーレに続き、いかにもイギリスらしいマーチが耳に心地よく響きます。トリオにはいると、弦楽アンサンブルがこれもイギリスらしい雄渾で心に響く旋律を奏でます。うっとりとします。日本フィル、素晴らしい響きです。また、冒頭のマーチに戻りますが、再び、トリオの部分に戻り、うっとりと聴き入ります。最後はマーチで高らかに〆ます。エルガーの威風堂々を思い起こす素晴らしい音楽です。
最後は今日のメイン曲、ウォルトンの交響曲第2番。3楽章の交響曲ですが、時代的にもうリゲティが実験的な作品を作り上げていた頃に保守的で調性のある音楽というのはどうだかと誰しも思いますが、今になってみれば、何でもありになり、堂々と調性のある音楽も登場しています。要は様式の問題ではなく、音楽の中身を論じるべきかもしれません。
第1楽章は派手な映画音楽のように始まり、purchaseの音楽がスリル感たっぷりに展開されます。バルトークの中国の不思議な役人を想起します。現代音楽ではジョン・アダムスにつながりそうな感じです。ただし、調性音楽なんです。日本フィルが素晴らしい響きで演奏し、迫力たっぷりです。作曲した時代を考えなければ、なんとも素晴らしい作品に思えます。
第2楽章は一転して、抒情的な音楽が続きます。これも山田和樹の表現力が光ります。聴き映えしますね。
第3楽章はパッサカリア。終楽章がパッサカリアとはまるでブラームスですね。しかし、そんなロマンは微塵も感じさせない迫力の音楽です。変奏が続いた後はフーガに移行し、コーダは金管がファンファーレで華々しく音楽を盛り上げます。山田和樹の指揮というか、演出が素晴らしく、日本フィルも完璧な演奏を聴かせてくれました。
山田和樹のウォルトン、素晴らしいです。ウォルトンを聴き慣れないので、聴衆の盛り上がりに欠けますが、これをイギリスでやったら、聴衆が大興奮するでしょう。


日本フィル、期待できそうです。来月のカーチュン・ウォンのマーラーの交響曲第3番は待ちきれないほど、楽しみです。saraiの過大な期待は満足させてくれるでしょうか。


今日のプログラムは以下です。


  指揮:山田和樹
  管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団 コンサートマスター:扇谷 泰明

  モーツァルト:アイネ・クライネ・ナハトムジーク ト長調 K.525
  J.S.バッハ(齋藤秀雄編曲):シャコンヌ
  
   《休憩》

  ウォルトン:戴冠式行進曲《宝玉と勺杖》
  ウォルトン:交響曲第2番


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のモーツァルトのアイネ・クライネ・ナハトムジークを予習したCDは以下です。

 オットー・クレンペラー指揮ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 1964年 セッション録音

この曲はsaraiはワルター指揮コロンビア交響楽団の演奏をずっと聴いてきましたが、今回はちょっと浮気をして、このクレンペラーを聴いてみました。いかにも彼らしい明瞭で真摯な演奏です。


2曲目のJ.S.バッハ(齋藤秀雄編曲)のシャコンヌは以下のYOUTUBEを聴きました。

 小澤征爾指揮サイトウキネンオーケストラ 2004年9月 長野県松本 ライヴ録音

小澤征爾の熱過ぎるバッハの演奏はsaraiは苦手です。


3曲目のウォルトンの戴冠式行進曲《宝玉と勺杖》を予習したCDは以下です。

 エードリアン・ボールト指揮ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 1977年 セッション録音

素晴らしい演奏です。申し分なし。


4曲目のウォルトンの交響曲第2番を予習したCDは以下です。

 アンドレ・プレヴィン指揮ロンドン交響楽団 1973年 ロンドン、アビー・ロード・スタジオ セッション録音

プレヴィンの冴えた感覚の演奏が光ります。



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森 麻季、森谷真理、大西宇宙のオペラ・ガラの実に楽しい2時間を満喫 原田慶太楼&東京交響楽団@ミューザ川崎シンフォニーホール 2023.9.2

原田慶太楼&東京交響楽団の素晴らしい伴奏でオペラ・ガラ・コンサートを森 麻季、森谷真理、大西宇宙の3歌手が聴かせてくれました。何だか選曲が森 麻季に照準が合っていたようで、彼女の美しいソプラノがホールを響いていました。前半は彼女が歌ったプッチーニの名曲、「ドレッタの夢」が最高でした。それにいまだにお姫様ドレスがお似合いになっていました。

後半も最初の椿姫で森 麻季の美声が響きます。ところが、次のバーンスタインの『キャンディード』から「着飾って、きらびやかに」で、森谷真理がその真価を発揮します。その思い切りのよい歌唱、伸びのある歌声、それに演技力で破壊的なほどに凄まじい印象を受けます。まさに圧巻の演奏。彼女がクネゴンデ役を歌う『キャンディード』全曲を聴きたくなります。叶わぬ夢でしょうか?
このあたりから、今日のガラコンサートも佳境に入り、大西宇宙もコルンゴルトの『死の都』から「ピエロの歌」で素晴らしい歌唱を聴かせてくれます。そして、今日の主役の座を死守すべく、森 麻季がドヴォルザークの『ルサルカ』から「月に寄せる歌」で何とも美しい歌唱を聴かせてくれました。でも、やはり、森谷真理のキャンディードが今日の一番の華でした。

アンコールがありました。ソプラノ二人とバリトンの音楽は何?と思っていたら、やたらに有名な曲が鳴り始めます。ヨハン・シュトラウスの《こうもり》の1曲。ロザリンデ、アイゼンシュタイン、アデーレの3人が自分の思いを隠して、それでも、隠しきれないという抜群のセンスのヨハン・シュトラウスの渾身の1曲です。ロザリンデ役を森谷真理が歌いまくって、何とも楽しいアンコール曲。原田慶太楼の選曲のセンスが光りました。
ソプラノ二人とバリトンというレアな組み合わせのガラ・コンサートでしたが、やはり、ここにテノールがいれば、選曲の幅が広がったでしょう。しかし、それこそが原田慶太楼の狙いだったんでしょうね。


今日のプログラムは以下です。

  ミューザ川崎シンフォニーホール&東京交響楽団 名曲全集第190回

  指揮:原田慶太楼(東京交響楽団 正指揮者)
  ソプラノ:森 麻季 ♡
  ソプラノ:森谷真理 ♢
  バリトン:大西宇宙 ★
  管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:グレブ・ニキティン

  ロッシーニ:『セビリアの理髪師』から序曲、「それじゃ私だわ・・・嘘じゃないわね?」 ♡★
  モーツァルト:『コジ・ファン・トゥッテ』から「彼に向けてください、そのまなざしを」★
  モーツァルト:『フィガロの結婚』から「手紙の二重唱」 《そよ風に寄せて》♡♢
  プッチーニ:『つばめ』から「ドレッタの夢」 ♡
  レオンカヴァッロ:『道化師』から「鳥の歌」♢、「ネッダ!シルヴィオ!こんな時間に…?」 ♢★

  《休憩》

  ヴェルディ:『椿姫』から序曲、「ヴァレリー嬢ですね?」「そうです」 ♡★
  バーンスタイン:『キャンディード』から「着飾って、きらびやかに」 ♢
  ベッリーニ:『ノルマ』から「ご覧なさい、ノルマ」 ♡♢
  コルンゴルト:『死の都』から「ピエロの歌」 ★
  ドヴォルザーク:『ルサルカ』から「月に寄せる歌」 ♡、第2幕 ポロネーズ
  
  《アンコール》
   J. シュトラウス:喜歌劇「こうもり」より 第1幕 第4曲 三重唱「一人になってしまうのね」 (ロザリンデ、アイゼンシュタイン、アデーレ) ♡♢★


最後に予習について、まとめておきます。

 ロッシーニ:『セビリアの理髪師』から序曲
  
  トゥリオ・セラフィン指揮ローマ歌劇場管弦楽団 1963年10月 ローマRCAスタジオ セッション録音
  
   
 ロッシーニ:『セビリアの理髪師』から「それじゃ私だわ・・・嘘じゃないわね?」
  
  ヴィットーリオ・グイ指揮ロイヤル・フィル、グラインドボーン音楽祭合唱団
   ヴィクトリア・デ・ロス・アンヘレス、セスト・ブルスカンティーニ 1962年 セッション録音
  
   
 モーツァルト:『コジ・ファン・トゥッテ』から「彼に向けてください、そのまなざしを」
  
  ジェイムズ・レヴァイン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
   トーマス・ハンプソン 1988年6月 ウィーン、ムジークフェラインザール セッション録音
  
   
 モーツァルト:『フィガロの結婚』から「手紙の二重唱」 《そよ風に寄せて》
  
  ヤニック・ネゼ=セガン指揮ヨーロッパ室内管弦楽団
   ソーニャ・ヨンチェヴァ、クリスティアーネ・カルク 2015年7月 バーデン=バーデン祝祭劇場 演奏会形式 ライヴ録音
  
   
 プッチーニ:『つばめ』から「ドレッタの夢」
  
  ケント・ナガノ指揮リヨン国立歌劇場管弦楽団
   キリ・テ・カナワ 1996年 バーデン=バーデン祝祭劇場 プッチーニ:アリア集、歌曲集 セッション録音
  
   
 レオンカヴァッロ:『道化師』から「鳥の歌」
  
  アントニオ・パッパーノ指揮ローマ聖チェチーリア国立音楽院管弦楽団
   アンナ・ネトレプコ 2016年6月 ローマ セッション録音
  
   
 レオンカヴァッロ:『道化師』から「ネッダ!シルヴィオ!こんな時間に…?」
  
  ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ミラノ・スカラ座管弦楽団
   ジョーン・カーライル、ロランド・パネライ 1965年 セッション録音
  
   
 ヴェルディ:『椿姫』から序曲
  
  カルロス・クライバー指揮バイエルン国立歌劇場管弦楽団 1976,77年 セッション録音
  
   
 ヴェルディ:『椿姫』から「ヴァレリー嬢ですね?」「そうです」
  
  カルロス・クライバー指揮バイエルン国立歌劇場管弦楽団
   イレアナ・コトルバス、シェリル・ミルンズ 1976,77年 セッション録音
  
   
 バーンスタイン:『キャンディード』から「着飾って、きらびやかに」
  
  アンドルー・デイヴィス指揮ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
   ナタリー・デセイ 1997年 セッション録音
  
   
 ベッリーニ:『ノルマ』から「ご覧なさい、ノルマ」 ♡♢
  
  リチャード・ボニング指揮メトロポリタン歌劇場管弦楽団
   ジョーン・サザーランド、マリリン・ホーン 1974年4月4日 ニューヨーク、メトロポリタン歌劇場 ライヴ録音
  
  カルロ・フェリーチェ・チラーリオ指揮ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
   モンセラート・カバリエ、フィオレンツァ・コッソット 1972年9月 ロンドン、ウォルサムストウ・タウン・ホール セッション録音
   
   
 コルンゴルト:『死の都』から「ピエロの歌」
  
  ホルスト・シュタイン指揮ベルリン交響楽団
   ヘルマン・プライ 1961年10月 ベルリン セッション録音
   
   
 ドヴォルザーク:『ルサルカ』から「月に寄せる歌」
  
  ジャナンドレア・ノセダ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
   アンナ・ネトレプコ 2003年3月 ウィーン、ムジークフェラインザール セッション録音
   
   
 ドヴォルザーク:『ルサルカ』から第2幕 ポロネーズ

  イエジ・ビエロフラーヴェク指揮ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 2009年8月 イギリス、グラインドボーン ライヴ録音
  
  
いずれも選りすぐった演奏ばかりで、予習とはいえ、聴き惚れてしまいました。中でも素晴らしかったのがナタリー・デセイのキャンディード。美しい声で自在な歌唱は彼女ならではのものです。

  

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イザベル・ファウストの心に沁みる内省的なベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲 ベルナルト・ハイティンク&ベルリン・フィル@ベルリン・フィルハーモニー(配信) 2015年3月6日

ベルリン・フィルのデジタル・コンサートホールの久々の鑑賞記です。
近く、都響でヴァイオリンのネマニャ・ラドゥロヴィチでベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を聴くので、予習も兼ねて、聴くことにしました。
無論、巨匠ベルナルト・ハイティンク、ドイツを代表するヴァイオリニストのイザベル・ファウストの共演ということに心を惹かれたこともあります。

まず、8年前はハイティンクはこんなに元気だったことに驚きます。すたすたとファウストと連れ立って、ステージに歩いてきます。すっと立って、彼らしい自然な棒さばきでベルリン・フィルを指揮します。当時、86歳という高齢だったとは思えないお元気な姿です。もっとも、この年の秋、ロンドン交響楽団を引き連れて、来日公演したハイティンクもたっぷりと聴いています。さらにはその2年後、わざわざ、ザルツブルクまで遠征して、ザルツブルク音楽祭でのウィーン・フィル公演でマーラーの交響曲第9番を2回も聴きました。88歳の巨匠の告別の音楽を聴いたのがハイティンクとのお別れでした。その2年後、ハイティンクは引退し、さらに2年後、死去。2年前のことです。そういう感傷の念に駆られながら、映像を眺めます。冒頭は自然で抑制気味の演奏です。
そして、当時42歳の気鋭のヴァイオリニストだったファウストが独奏ヴァイオリンを弾き始めます。あまりの自然な表現に虚を突かれる思いです。巨匠ハイティンクが指揮するベルリン・フィルに対して、気負うこともなく、美しいヴァイオリンの響きで切々と音楽を奏でていきます。それは実に内省的な音楽を志向するものです。ベートーヴェンのこの協奏曲でこういう演奏を予期していなかったので、半ば唖然としてしまいます。しかし、よく考えてみれば、この曲はそういう音楽なのかもしれません。ベートーヴェンが晩年に達することになる孤高の境地、辛くさびしい諦念の音楽へ続く道です。そして、それこそが、ドイツ音楽の本流であろうと信じて疑いません。ファウストこそがドイツ本流の音楽の継承者として、こういう内省的な音楽(saraiは女々しい音楽と思っています。無論、いい意味です。)を奏でることのできる音楽家であり、それは、シューマン、ブラームスでも発揮されます。対して、ハイティンクは時折、オーケストラパートで重厚な響きに満ちたヒロイックな音楽を奏でます。ファウストの内的な表現と対比して、音楽の妙を感じます。第1楽章の終盤はカデンツァをファウストが弾き始めます。聴き慣れないカデンツァです。これはベートーヴェン自身によるピアノ協奏曲版のカデンツァをヴァイオリン用に移し替えたもので、クリスティアン・テツラフが編曲したものです。カデンツァの後半ではティンパニとの協奏になるという面白い趣向です。
第2楽章にはいると、ベルリン・フィルも情緒に満ちた表現の音楽を奏で、ファウストのさらなる内的な表現と絡み合っていきます。もう、うっとりとその精神性に満ちた音楽に耳を傾けるのみです。カデンツァの後、ファウストとハイティンクが目を合わせて、呼吸を合わせて、第3楽章のロンドの軽やかな音楽にはいっていきます。さすがにここでは内省よりも軽やかなステップの流れに乗っていきます。最後はまた弱音で内省的な音楽を極めた後、一気に音楽を終えます。
巨匠ハイティンクの古典に根差した安定した音楽表現と気鋭のファウストの個性的でかつ、ドイツ本流を思わせる内省的な音楽表現がマッチした素晴らしいベートーヴェンの協奏曲に深く心の感銘を受けました。

なお、アンコールのクルタークのヴァイオリン独奏曲は現代的な作品ですが、内省的な音楽ということで、今日のベートーヴェンの音楽と共通項を持ったものでした。ファウストがしばしばアンコールで好んで取り上げる作品ですね。


この日のプログラムは以下です。

  2015年3月6日、ベルリン・フィルハーモニー

  指揮:ベルナルト・ハイティンク
  ヴァイオリン:イザベル・ファウスト
  管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

  ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲ニ長調 Op.61
  
  《アンコール》ジェルジ・クルターグ:穏やかに、夢見ながら(シュテファン・ローマスカヌの思い出に)
  
  
なお、この日のコンサートでは、その他、以下の曲も演奏されました。(未聴)
  
  ベートーヴェン:交響曲 第6番 ヘ長調 Op.68《田園》
  


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       ハイティンク,        ファウスト,  

20世紀初頭のウィーンのあだ花、コルンゴルトのシンフォニエッタをゲッツェルと東京都交響楽団が美しくも儚い一夜の夢のように好演@サントリーホール 2023.9.8

ますます好調な東京都交響楽団は滅多に聴けないコルンゴルトのシンフォニエッタをサッシャ・ゲッツェルの見事な指揮で最高に美しく演奏してくれました。その後半の演奏に先駆けて、前半はセルビアの異様な風体のヴァイオリニスト、ネマニャ・ラドゥロヴィチの演奏するベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲。
サッシャ・ゲッツェルの指揮する都響は完璧に美しい演奏を聴かせてくれます。そして、何とも異様なスタイルのラドゥロヴィチですが、ヴァイオリンはとても美しくナイーヴな演奏を聴かせてくれます。この曲は高音パートが目立ちますが、ラドゥロヴィチの高音の冴えは素晴らしいものです。そして、ちょっと、溜めのきいた演奏は個性的にも感じます。第1楽章はラドゥロヴィチのナイーヴな演奏を聴いているうちに終了。ゲッツェル指揮の都響の演奏も見事です。そうそう、終盤のカデンツァはクライスラーの作になるものとのことですが、あきれるほどに超絶技巧の連続で、凄い技の冴えを聴かせてくれました。
第2楽章はラドゥロヴィチの極端に音量を抑えた綿々たる演奏にぐっと惹き付けられます。まさにラドゥロヴィチの一人舞台。ある意味、ラドゥロヴィチのやりたい放題のヴァイオリン演奏にゲッツェルが見事にオーケストラをつけます。ゲッツェル凄し!
第3楽章はエンジン全開の演奏で音楽が高潮する中、フィナーレ。
ラドゥロヴィチのヴァイオリン、ナイーヴな音楽性の美しい演奏。そして、ゲッツェルの見事な指揮と都響の会心の演奏も最高。素晴らしいベートーヴェンでした。

休憩後の後半はコルンゴルトのシンフォニエッタ。無論、初めて聴きます。20世紀の初頭、ウィーンで才能が開花した天才、コルンゴルトの若き日の作品です。弱冠15歳の少年の作品がワインガルトナー指揮のウィーン・フィルによって初演というのも凄いですね。
曲は後期ロマン派の範疇にはいるのでしょうが、なんとも初々しく、当時のウィーンを思わせる美しくも儚い夢のような音楽です。ゲッツェルの指揮が素晴らしく、都響の最高のアンサンブルを引き出して、美し過ぎる音響を聴かせてくれます。第1楽章は活気あふれる響きで華麗な音楽を展開します。第2楽章はスケルツォで力強い音楽が響き渡ります。
第3楽章が凄い。ファンタジックな響きで夢のような音楽が美しく歌い上げられます。ゲッツェルの表現力に驚嘆します。まさに美しく儚い夢のような音楽が心を魅了します。都響ならでは美しい響きで夢のような音楽が展開されます。
第4楽章は低弦からフーガが始まります。意外に短くフーガが終わり、勢いのある主部が始まります。都響の美しいアンサンブルに魅了されているうちに長大な楽章も終盤にはいります。美しいコラール風の音楽を経て、高潮したコーダに心躍りながら、フィナーレ。予習では分かりにくい音楽に思えましたが、今日のゲッツェルの見事な指揮、そして、都響の最高のアンサンブルで美しく儚い音楽をたっぷりと堪能しました。

サッシャ・ゲッツェルは都響に初登場でしたが、以前聴いた読響のときと同様に見事な指揮で都響の素晴らしい響きを引き出して、素晴らしい音楽を聴かせてくれました。今後、このコンビは期待できそうです。


今日のプログラムは以下のとおりです。

  指揮:サッシャ・ゲッツェル
  ヴァイオリン:ネマニャ・ラドゥロヴィチ
  管弦楽:東京都交響楽団 コンサートマスター:山本友重

  ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.61
   《アンコール》ヤドランカ・ストヤコヴィッチ:あなたはどこに
   
   《休憩》
   
  コルンゴルト:シンフォニエッタ ロ長調 Op.5
   

最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を予習した映像は以下です。

 イザベル・ファウスト、ベルナルド・ハイティンク指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 2015年3月6日、ベルリン・フィルハーモニー ライヴ収録 (ベルリン・フィルのデジタル・コンサートホール)

先日の記事でアップしましたが、ファウストの深く内省的な演奏です。


2曲目のコルンゴルトのシンフォニエッタを予習した映像は以下です。

 ジェイムス・コンロン指揮ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団 2021年11月16日 ケルン・フィルハーモニー ライヴ収録 (YouTube)

コンロンはツェムリンスキーやコルンゴルトという20世紀初頭のウィーン音楽のスペシャリストとして、ここでも豪華絢爛な演奏を聴かせてくれます。



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コバケン、圧巻のサン=サーンスの交響曲第3番《オルガンつき》 日本フィルハーモニー交響楽団@サントリーホール 2023.9.10

日本フィルの定期会員になりましたが、同時に名曲コンサートシリーズも聴くことにしました。カーチュン・ウォンに期待してのことです。彼は世界でひっぱりだこで、ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団『首席客演指揮者』にも就任し、2024年9月より英国マンチェスターに本拠を置くハレ管弦楽団の『首席指揮者』および『アーティスティック・アドバイザー』に就任することが決まっています。日本フィルはいいタイミングで首席指揮者に招聘しましたね。これから、世界でメジャーオーケストラで重責をにことになるでしょう。ともあれ、今日は我がコバケンの指揮を聴きます。コバケンももう83歳。これから、素晴らしい音楽を聴かせてくれるでしょう。

冒頭はオーケストラ演奏を封印して、石丸由佳のパイプオルガン独奏。これが素晴らしい。
名曲コンサートにふさわしいバッハの超名曲2曲を演奏しましたが、誰でもよく知っている曲で、芸術性の高い曲とあれば、満足できるレベルの演奏を聴かせるのはなかなか難しいところです。とりわけ、トッカータとフーガ ニ短調はバッハの最高峰とも言える作品ですが、トッカータの奔放性のある表現、フーガの厳しい表現を見事に実現してくれました。とても満足しました。

続くヴァイオリン独奏の3曲は楽しく聴かせてもらいました。これは芸術性をうんぬんするものではないでしょう。髙木凜々子のストラディヴァリウス「ロード・ボーウィック」(1702年)は美しい響きを堪能させてくれました。

休憩後、後半はいよいよ、今日のメイン、サン=サーンスの交響曲第3番《オルガンつき》です。83歳のコバケン、こと小林研一郎は老境の渋さなんていうものではない圧巻の演奏を聴かせてくれました。コバケンが振ると、日本フィルはよく鳴り、しかもコバケンの最高の美質であるメロディーラインが浮き立った演奏で魅了してくれます。とりわけ、弦の美しさはフォルティシモからピアノッシモまでゆるぐことがありません。第1楽章第1部では、循環主題が素晴らしく歌い上げられます。そして、第1楽章第2部では、パイプオルガンと弦楽が静謐さを湛えた音楽を敬虔とも言える表情で奏でられます。コバケンの面目躍如といった風情です。第2楽章第1部では、勇壮とも思えるスケルツォが響き渡ります。そして、いよいよ、第2楽章第2部では、荘厳なパイプオルガンの響きによって、華麗な音楽が開始されます。4手ピアノの響き、力強いファンファーレ、弦楽のフーガなど、循環主題に基づく多様な音楽表現を楽しみながら、オルガンとオーケストラが響き渡り、高潮したコーダに突入します。コバケン、圧巻のフィナーレです。
いやはや、素晴らしい演奏を聴かせてくれました。

アンコールの『カヴァレリア・ルスティカーナ』間奏曲も名曲コンサートを締め括るにふさわしいしみじみとした美しさ。久しぶりにこの名曲を堪能しました。そして、最後のしめはサン=サーンスの交響曲第3番の壮麗な終結部分。満足しました。


今日のプログラムは以下です。


  指揮:小林研一郎[桂冠名誉指揮者]
  ヴァイオリン:髙木凜々子
  オルガン:石丸由佳
  管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団 コンサートマスター:扇谷 泰明

  J.S.バッハ:G線上のアリア
  J.S.バッハ:トッカータとフーガ ニ短調 BWV565
   (以上2曲オルガン独奏:石丸由佳)
  エルガー:愛の挨拶
  マスネ:タイスの瞑想曲
  サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン
   (以上3曲ヴァイオリン独奏:髙木凜々子&オーケストラ)
   《アンコール》プッチーニ:オペラ『ジャンニ・スキッキ』より「私のお父さん」(髙木凜々子&小林研一郎(ピアノ伴奏))
  
   《休憩》

  サン=サーンス:交響曲第3番《オルガンつき》 ハ短調 Op.78
  
   《アンコール》
     マスカーニ:オペラ『カヴァレリア・ルスティカーナ』間奏曲
     サン=サーンス:交響曲第3番 ハ短調 Op. 78 「オルガンつき」より第2楽章第2部 終結部


最後に予習について、まとめておきます。

1~2曲目のJ.S.バッハのオルガン曲を予習した演奏は以下です。

 石丸由佳 りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館(G線上のアリア)、横浜みなとみらいホール(トッカータとフーガ ニ短調)ライヴ収録 (YouTube)

みなとみらいホールでのトッカータとフーガ ニ短調はまさに神のごとき演奏。圧倒的な迫力。


3~5曲目のヴァイオリン独奏曲は以下のYOUTUBEを聴きました。

 髙木凜々子 愛の挨拶《使用楽器:ストラディヴァリウス「ロード・ボーウィック」(1702年)》 ピアノ:河内恵理子 2022年11月10日 東京、すみだトリフォニーホール 小ホール
       タイスの瞑想曲《使用楽器:ストラディヴァリウス「ロード・ボーウィック」(1702年)》 ピアノ 五十嵐薫子 2023年1月26日 東京・Hakujuホール
       ツィゴイネルワイゼン ピアノ 高橋元子 2018年11月11日 県民文化センターふくやま

どれも美しい演奏です。とりわけ、ストラディヴァリウス「ロード・ボーウィック」での演奏は絶品です。


6曲目のサン=サーンスの交響曲第3番《オルガンつき》を予習した映像は以下です。

 ティエリー・エスケシュ(オルガン)、ズービン・メータ指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 2015年9月26日、ベルリン・フィルハーモニー ライヴ収録 (ベルリン・フィルのデジタル・コンサートホール)

当時79歳のメータが安定した指揮。終盤の熱い指揮は圧巻。壮大な演奏です。



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ブルックナーの交響曲第4番《ロマンティック》の圧巻の名演 ベルナルト・ハイティンク&ベルリン・フィル@ベルリン・フィルハーモニー(配信) 2014年3月15日

ベルリン・フィルのデジタル・コンサートホールの鑑賞記です。
近く、読響でマリオ・ヴェンツァーゴ指揮でブルックナーの交響曲第4番を聴くので、予習も兼ねて、聴くことにしました。
無論、巨匠ベルナルト・ハイティンクが振るブルックナーは過去の映像とは言え、聴き逃がせません。ベルリン・フィルのデジタル・コンサートホールでは、ハイティンク指揮によるブルックナーの交響曲第5番・第7番・第9番も聴くことができます。マーラーの作品と同様に順次、聴いていくことにしましょう。

冒頭、弦のトレモロの中、シュテファン・ドールのホルンのソロが響きます。続いて、その旋律を木管が引き継ぎます。フルートはエマニュエル・パユ、クラリネットはヴェンツェル・フックス、オーボエはアルブレヒト・マイヤーという鉄壁の布陣です。そして、トゥッティでこの第1主題が刻まれ、いきなり、高潮します。その後、いくつもの山や谷を形成しながら、長大な第1楽章は圧巻の展開を見せます。ハイティンクの堂々たるブルックナーが提示されます。
第2楽章は一転して、静謐で美しい音楽が展開されて、うっとりと魅了されます。ハイティンクの表現力の冴えが際立ちます。ベルリン・フィルの弦楽、木管、金管、すべてが最高に機能して、素晴らしい響きです。この楽章も長大ですが、ぐっと惹き付けられるような演奏です。
第3楽章は狩りの音楽を思わせるスケルツォ。シュテファン・ドール率いるホルン奏者たちの重奏が勇壮に響きます。次いで、金管すべてが咆哮します。トリオののんびりした音楽の後、また、ホルン、そして、金管が響き、比較的、短い楽章が終わります。
第4楽章は最も長大な楽章です。ここでもシュテファン・ドールのホルン、そして、木管トライアングルの名手たちの活躍が目立ちます。山も谷もあるブルックナー節が全編を覆い、ベルリン・フィルの強力なアンサンブルをハイティンクが導きながら、フィナーレに向かいます。コーダではトロンボーンの奏でるコラールが高揚し、最後はまた、シュテファン・ドールのホルンが締めくくります。そして、全楽器が怒涛の響きをあげて、圧巻のフィナーレ。ハイティンクの素晴らしいブルックナーでした。

ハイティンクとベルリン・フィルによる2010年以降のブルックナーとマーラーのいくつかの作品が聴けるだけでも、このベルリン・フィルのデジタル・コンサートホールは価値が大きいと言えます。大半はCDになっていないので、ここでしか聴けません。


この日のプログラムは以下です。

  2014年3月15日、ベルリン・フィルハーモニー

  指揮:ベルナルト・ハイティンク
  管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

  ブルックナー:交響曲第4番変ホ長調《ロマンティック》
  
  
なお、この日のコンサートでは、その他、以下の曲も演奏されました。(未聴)
  
  モーツァルト:ピアノ協奏曲第9番変ホ長調 K. 271《ジュノム》
  ピアノ:エマニュエル・アックス
  


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       ハイティンク,  

日本初演のスクロヴァチェフスキの交響曲とお馴染みのブルックナーの交響曲第4番 「ロマンティック」 ヴェンツァーゴ&読売日本交響楽団@サントリーホール 2023.9.12

このところ、読響の定期では本当に日本初演の演奏が続きます。今回はブルックナーの指揮で定評のあったスクロヴァチェフスキの作品とは驚きです。これが素晴らしかったんです。バルトークを思わせる切迫したところや清々しさを覚えるところなど、聴きどころ、満載で、それを読響の透明性のある音響が見事な演奏。ヴェンツァーゴの指揮も的を得たものに思えました。こういう作品が評判にならなかったのが不思議ですが、今回、スクロヴァチェフスキの生誕100年を記念して、日本初演されたのはよかったと思います。スクロヴァチェフスキの他の作品にも興味を覚えます。

休憩後は本当に演奏機会の多いブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」。ヴェンツァーゴの迫真の指揮で耳馴染みのあるフレーズが演奏されます。実演で聴く迫力は素晴らしいです。ブルックナーの有名曲で、格別に際立った表現があるわけではありませんが、逆に文句の付け所もありません。sarai的には、やはり、第2楽章の旋律美が読響の美しい弦楽セクションで演奏されるところが気持ちが昂ぶりました。それとヴェンツァーゴが金管を抑えた指揮で、うるさくならない表現をしていたところには感心しました。よほど、ブルックナーを知り尽くした指揮者なのでしょう。次は第8番でも聴かせて欲しいですね。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:マリオ・ヴェンツァーゴ
  管弦楽:読売日本交響楽団  コンサートマスター:林悠介

  スクロヴァチェフスキ:交響曲 (日本初演)〈生誕100年記念〉

   《休憩》

  ブルックナー:交響曲第4番 変ホ長調 「ロマンティック」WAB104(1878/80年稿・ノヴァーク版)


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のスクロヴァチェフスキの交響曲は以下の録音を聴きました。

 スタニスワフ・スクロヴァチェフスキ指揮ザールブリュッケン ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団 90th Birthday Collection スタニスワフ・スクロヴァチェフスキ/エームス・クラシックス全録音集 2006年1月12-14日 セッション録音

自作自演。美しい演奏です。


2曲目のブルックナーの交響曲第4番 「ロマンティック」は以下の映像を鑑賞しました。

 ベルナルト・ハイティンク指揮ベルリン・フィル 世界初演 2014年3月15日、ベルリン、フィルハーモニー ライヴ収録

昨日の記事で書いた通り、圧巻の名演です。指揮よし、オケよし。



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ショスタコーヴィチの最後の弦楽四重奏曲、第15番は鎮魂の名作 クァルテット・エクセルシオの暗く沈んだ薄明の演奏に静かな感動@鶴見サルビアホール 2023.9.15

日本を代表するカルテットの一つ、クァルテット・エクセルシオの初のショスタコーヴィチ全曲チクルスも今回で最終回。saraiは2回目の第6番までは聴きましたが、3回目と4日目のチクルスは都合で聴けず、第6番の後はいきなり、最後の第15番。

この第15番はショスタコーヴィチの死の前年に作曲されましたが、このとき、ショスタコーヴィチは自らの死を悟っていたそうです。最後にして、最長の告別の弦楽四重奏曲です。
暗く物悲しい雰囲気の演奏が全6楽章にわたって続きます。チェロの大友肇、ヴィオラの吉田有紀子が低域をきっちりと支えながら、暗い音楽の底を物語っていきます。そして、第1ヴァイオリンの西野ゆかが美しくも哀しい旋律を歌っていきます。クァルテット・エクセルシオの畢生の演奏にただただ聴き入っていきます。次第に音楽的に高潮していき、第4楽章のノクターンの後半の第1ヴァイオリンとチェロがデュオで美しい音楽を奏でるところでは感極まる思いです。そして、音楽はさらにヒートアップして、第5楽章の葬送行進曲の白熱の演奏で頂点を極めます。クァルテット・エクセルシオのここまで弾き込んだ成果が如実に現れて、ショスタコーヴィチの音楽の総決算のような果実があふれんばかりです。もう、これ以上の音楽は不要に思えますが、そのまま、第6楽章のエピローグに突入。これまでの音楽人生を振り返りつつも、奇っ怪なフレーズが出現します。ショスタコーヴィチは何を遺言に遺そうとしたのが、考え込みますが、それは暗黒のような謎です。決して死後の世界が明るいものであるとは思えなかったことだけは分かります。今、ロシアも世界も暗い現実に呑み込まれようとしています。
しかし、ショスタコーヴィチの将来への危惧を我々がそのままにしてはならないことは確かでしょう。クァルテット・エクセルシオの素晴らしい演奏は確実にショスタコーヴィチのメッセージを伝えてくれたような気がします。

我が日本のクァルテットがこれだけ精度の高いショスタコーヴィチのチクルスを展開してくれたのは、驚きであり、喜びでもあります。若手のクァルテットもこれに続いてほしいと思いました。


今日のプログラムは以下のとおりです。
  クァルテット・エクセルシオ
    西野ゆかvn  北見春菜vn  吉田有紀子va  大友肇vc  
    
  ピアノ:鈴木慎崇
  
  ラボ・エクセルシオ ショスタコーヴィチ・シリーズ#5
  
    
  ショスタコーヴィチ:未完の弦楽四重奏曲(アレグレット) 変ホ長調
  ショスタコーヴィチ:ピアノ五重奏曲 ト短調 Op.57
  
   《休憩》

  ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲 第15番 変ホ短調 Op.144
   
     
最後に予習について、まとめておきます。

1曲目の未完の弦楽四重奏曲を予習したCDは以下です。

 ボロディン弦楽四重奏団 2015年12月 モスクワ セッション録音

初演したボロディン弦楽四重奏団の演奏です。見事な演奏です。


2曲目のピアノ五重奏曲を予習した演奏は以下です。

 スビャストラフ・リヒテル、ボロディン弦楽四重奏団 1983年12月5日 モスクワ ライヴ録音 映像(YouTube)
 アレクセイ・ヴォロディン、ボロディン弦楽四重奏団 2015年12月 モスクワ セッション録音
 
リヒテルのピアノによる演奏は音質は最低ながら、曲の本質を突く素晴らしい名演。
新しいボロディン弦楽四重奏団(ピアノ:ヴォロディン)は素晴らしい音質の切れ味鋭い演奏ですが、音楽としてはリヒテルと比べるものではありません。


3曲目の弦楽四重奏曲 第15番を予習したCDは以下です。

 ボロディン弦楽四重奏団 2017年2月 モスクワ セッション録音
 
ボロディン弦楽四重奏団の3回目の全集盤(1回目は第13番まで)。演奏は素晴らしいのですが、2回目のような迫真の音楽とまではいきません。



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シューベルトの交響曲第7番《未完成》、自然体で深い味わいの名演 ベルナルト・ハイティンク&ベルリン・フィル@ベルリン・フィルハーモニー(配信) 2016年10月8日

ベルリン・フィルのデジタル・コンサートホールの鑑賞記です。
明日、鈴木雅明指揮のバッハ・コレギウム・ジャパンでシューベルトの交響曲第7番《未完成》を聴くので、予習も兼ねて、聴くことにしました。
内田光子の語るところでは、この曲は死を間近にした指揮者が振ると名演になるのだそうです。
巨匠ベルナルト・ハイティンクはこの時、亡くなるまで、まだ、5年もあったので、それにはあたらないでしょうが、87歳という高齢だったので、あるいは基準にあてはまるのかもしれません。
ところで、saraiはこれまでハイティンクのシューベルトを聴いた覚えがありません。多分、これが初めての経験になります。なお、ベルリン・フィルのデジタル・コンサートホールには、このほか、交響曲第5番の演奏も残されています。《ザ・グレイト》の演奏が聴きたいものです。(ということで、saraiの未聴のCDライブラリを調べてみると、何と1975年録音のコンセルトヘボウ管弦楽団との《未完成》と《ザ・グレイト》が見つかりました!)

冒頭、コントラバスが極めて小さな音で奏されて、静かな開始。ハイティンクはいつものようにほとんど大きな動作はせずに自然体の演奏です。ポイントポイントでは、軽く指揮棒で指示して、鋭い視線を送ります。実に静寂な弱音を中心に味わい深いシューベルトの音楽を聴かせてくれます。弱音でもベルリン・フィルのアンサンブルは超絶的に揃っていることに驚愕します。ロマンというよりも暗い翳を帯びた悲哀を感じる音楽です。それだけにトゥッティで強く高潮するときは凄まじい響きを感じます。管のソロもホルンはシュテファン・ドール、フルートはエマニュエル・パユ、クラリネットはアンドレアス・オッテンザマー、オーボエはアルブレヒト・マイヤーという達人たちが素晴らしい演奏を聴かせてくれます。とりわけ、アルブレヒト・マイヤーのオーボエの味わい深い響きに魅了されます。第1楽章は提示部の繰り返しも入れて、ゆったりとした演奏を聴かせてくれました。ほぼ16分という長さは最長レベルでしょう。第2楽章は穏やかなアンダンテが情感豊かに、しかし、静謐に奏されて、悲哀に満ちた味わいがますます深くなります。コーダではそっとそっと静かに音楽を閉じます。ハイティンクのシューベルトは初めて聴きますが、感動するような素晴らしい演奏でした。ハイティンクがシューベルトを好んで取り上げなかったのが不思議です。シューベルト交響曲全集を録音していなかったのが残念です。
ハイティンクの描き出した未完成交響曲は決して未完成には感じない充足した音楽でした。


この日のプログラムは以下です。

  2016年10月8日、ベルリン・フィルハーモニー

  指揮:ベルナルト・ハイティンク
  管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

  フランツ・シューベルト:交響曲第7番ロ短調 D 759《未完成》
  
  
なお、この日のコンサートでは、その他、以下の曲も演奏されました。(未聴)
  
  グスタフ・マーラー:《大地の歌》
    クリスティアン・エルスナー(テノール)
    クリスティアン・ゲルハーヘル(バリトン)
  


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       ハイティンク,  

深い感銘を覚えるシューベルトのミサ曲第5番 鈴木雅明指揮バッハ・コレギウム・ジャパン@東京オペラシティコンサートホール 2023.9.17

バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)の演奏も素晴らしかったのですが、それ以上にシューベルトのミサ曲の素晴らしさに深い感銘を覚えました。予習のアーノンクールでは、第1曲のキリエの清澄さにひきかえ、第2曲以降は妙に力強さばかりが感じられましたが、今日の演奏ではBCJの美しい合唱の力、そして、鈴木雅明も見事な指揮でシューベルトの宗教曲の美しさが十全に表現されていました。

今日の演奏を振り返ってみましょう。

第1曲のキリエは美しいオーケストラ演奏に続き、すぐにBCJの合唱がそっとピアノではいってきます。静謐な合唱が美しく響きます。なかでもソプラノパートの美しさは際立っています。それもその筈、合唱といいながら、ソプラノパートにはいつもは独唱しているメンバーが揃っています。澤江衣里、中江早希、松井亜希という豪華なメンバーです。これがBCJの合唱の魅力のひとつです。バッハのカンタータや受難曲では、合唱のメンバーがソロも担当しますが、今日はシューベルトのミサ曲なので、合唱のメンバーはアリアなどのソロは歌わずに合唱に専念しています。ソプラノ・アルトパートがそれぞれ7名、テノール・バスパートがそれぞれ6名という少数精鋭の合唱団ですが、その質は極めて高いものです。後半には独唱4名も歌いますが、これも実力者揃い。素晴らしいソロ・重唱を聴かせてくれます。ソプラノの独唱を歌った安川みくの透明な歌唱が耳に心地よく響きます。キリエは終始、清澄な歌唱で清々しく心に響き、さすがシューベルトという感じで魅了してくれます。

第2曲のグローリアは冒頭から力強い合唱でキリエとは雰囲気が一変します。神の栄光をたたえる祝祭的な合唱ですが、シューベルトらしい精細さも感じられます。弦楽器の素早いパッセージで楽興も盛り上がります。終盤のフーガ《精霊とともに》は絶妙な演奏です。シューベルトのこのような素晴らしいフーガは初めて聴きました。シューベルトはフーガの技法も体得していたのですね。最後は合唱のアーメンで終わります。

第3曲のクレドは鋭い合唱で始まり、信仰の強さを表現する合唱が続きます。終盤では力強く盛り上がり、最後はまた、アーメンで終わります。

第4曲のサンクトゥスは合唱のサンクトゥスの響きが美しく歌い上げられます。シューベルトの純粋な思いが音楽に結実しています。そして、牧歌的な美しさのホザンナが続きます。

第5曲のベネディクトゥスは独唱と合唱でかみしめるように歌われます。最後はまた、ホザンナが歌われます。

第6曲のアニュス・デイは感銘に包まれた合唱と独唱で歌われて、感動が高まります。最後は《われらに平安をあたえたまえ》と愛と平和を希求するメッセージがシューベルトの美しい旋律で歌われて、深い感動を呼びます。

宗教曲の分野でもシューベルトは秀でた才能を発揮します。この素晴らしいミサ曲は何とベートーヴェンのミサ・ソレムニスに先駆けて作曲されたものだそうです。シューベルトはピアノ曲とリートで物凄い才能を発揮しましたが、他の分野でも天才ぶりをみせています。これから、シューベルトの音楽の再評価がもっともっと進みそうです。

あっ、書き洩らしましたが、独唱はソプラノの安川みくをはじめ、アルトの清水華澄、テノールの鈴木 准、バスの大西宇宙が素晴らしい歌唱を聴かせてくれました。もちろん、今日の主役はBCJの合唱団ですけどね。BCJのオーケストラも達人揃いの見事な演奏でした。最初に演奏された未完成については、あえて、感想を書きません。saraiの感性には合わなかったとだけ、書きます。


今日のプログラムは以下です。


  指揮:鈴木雅明
  ソプラノ:安川みく
  アルト:清水華澄
  テノール:鈴木 准
  バス:大西宇宙
  合唱:バッハ・コレギウム・ジャパン
  管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン コンサートマスター:寺神戸亮
   ヴァイオリンⅠ:高田あずみ
   ヴァイオリンⅡ:若松夏美
   ヴィオラ:成田寛
   チェロ:山本徹、上村文乃
   コントラバス:今野京
   フラウト・トラヴェルソ:鶴田洋子  
   オーボエ:三宮正満、荒井豪
   ホルン:福川伸陽
   トランペット:斎藤秀範
   オルガン:中田恵子 


  シューベルト:交響曲第7番 ロ短調《未完成》D 759

 《休憩》

  シューベルト:ミサ曲第5番 変イ長調 D 678



最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のシューベルトの交響曲第7番《未完成》は以下の演奏を聴きました。

 ベルナルト・ハイティンク指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 2016年10月8日、ベルリン・フィルハーモニー ライヴ映像

昨日書いたベルリン・フィルのデジタル・コンサートホールの配信映像です。自然体で深い味わいの名演です。


2曲目のシューベルトのミサ曲第5番は以下の演奏を聴きました。

 ニコラウス・アーノンクール指揮ヨーロッパ室内管弦楽団 1995年 セッション録音
  リューバ・オルゴナソーヴァ(ソプラノ)
  ビルギット・レンメルト(アルト)
  デオン・ヴァン・デル・ヴァルト(テノール)
  ヴォルフガング・ホルツマイアー(バリトン)
  アントン・シャリンガー(バス)
  アルノルト・シェーンベルク合唱団

アーノンクールにしては、もう一つの出来でしょうか。



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       バッハ・コレギウム・ジャパン,  

ロレンツォ・ヴィオッティ&東京交響楽団による覇気のあるベートーヴェン《英雄》とR.シュトラウス《英雄の生涯》は聴き応え十分@サントリーホール 2023.9.23

前半はベートーヴェンの交響曲 第3番 「英雄」。かなり、テンポの早いきびきびした演奏で勢いがあります。惜しむらくはアンサンブルがもう一つびしっと決まっていません。ただ、気持ちのよい演奏ではありました。

後半は超大編成のオーケストラがステージ狭しと並び、壮観です。対向配置で両翼のヴァイオリン奏者は16人。管楽器奏者はホルンの8人を始め、膨大な人数です。スコアの指定通りだとすると、総勢105名になります。

冒頭の英雄のテーマは低弦とホルンで颯爽と演奏されます。なかなか素晴らしい滑り出しです。このテーマは何度も繰り返されますが、聴くたびに心が高揚します。最初の《英雄》のセクションを聴いているだけで、この大編成の管弦楽のための凄い作品を書いたR.シュトラウスは創作力の頂点にあったことを思い知らされ、その天才の偉大さに深い感銘を覚えます。同時代の音楽家たちに凄い衝撃を与えたことが想像に難くありません。

次のセクションの《英雄の敵》では木管群が目覚ましい活躍を見せます。東響の木管がなかなか好調です。

次のセクションの《英雄の伴侶》では、グレブ・ニキティンの独奏ヴァイオリンが活躍。若干、気負いのせいか、響きが濁るところもありますが、好演です。その独奏ヴァイオリンとオーケストラが次第に高潮し、頂点を作り、英雄と伴侶の愛を歌い上げます。このあたりは壮大な演奏です。

舞台裏からトランペットが鳴り響き、《英雄の戦場》のセクションが開始されます。管弦楽が激しく鳴り響きながら、英雄と敵の戦が繰り広げられます。特に弦楽パートの響きが素晴らしいのですが、次第に一糸乱れずという感じではなくなるのも正直な感想です。ここまでの大編成になると、東響の正規メンバーだけでは不足して、相当のエキストラが加わり、ヴィオッティの指揮に即座に反応するのは困難でしょう。それでも十分に善戦しているとは思います。ヴィオラのがっがっという力強い響きには感銘を受けます。最後は英雄の勝利が華々しく歌い上げられます。壮大な管弦楽による絵巻です。R.シュトラウスの才能、ここに極まれりという感じです。

次のセクションの《英雄の業績》はこの作品以前にR.シュトラウスが書いた作品の断片が引用されて、英雄が自身の内面を回想するという雰囲気に変わっていきます。ヴィオッティはこの感傷的なシーンをうまく表現していきます。そして、そのまま、テンポを落として、最後のセクションに入っていきます。

最後は《英雄の隠遁と完成》では、描かれた音楽は諦念的とも思える雰囲気にあります。創作力の絶頂にあった筈のR.シュトラウスが人生の最後を見据えたような音楽を書いたことにいつも驚きを禁じ得ません。最後は伴侶(独奏ヴァイオリン)に優しく抱かれながら、英雄はその生涯を終えます。この最後のシーンをヴィオッティは見事に表現しきっていました。

今日の主役は交響曲 第3番 「英雄」で長大で大規模な音楽に発展的な転換を完成させたベートーヴェン、そして、その路線の超大規模な音楽の完成形、交響詩 「英雄の生涯」を創り上げたR.シュトラウスでしょう。
ヴィオッティと東響はその2つの巨大な音楽を我々に見事に提示してくれました。素晴らしいコンサートでした。


今日のプログラムは以下のとおりでした。

  指揮:ロレンツォ・ヴィオッティ
  管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:グレブ・ニキティン

  ベートーヴェン:交響曲 第3番 変ホ長調 Op.55 「英雄」

  《休憩》
  
  R.シュトラウス:交響詩 「英雄の生涯」 Op.40


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のベートーヴェンの交響曲 第3番 「英雄」を予習した演奏は以下です。

 ベルナルト・ハイティンク指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 2012年10月6日、ベルリン・フィルハーモニー ライヴ映像(デジタル・コンサートホール)

ハイティンクの落ち着きのある指揮で重厚な演奏。


2曲目のR.シュトラウス:交響詩 「英雄の生涯」を予習した演奏は以下です。

  キリル・ペトレンコ指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 2023年8月25日、ベルリン・フィルハーモニー ライヴ映像(デジタル・コンサートホール)

ベルリン・フィルのデジタル・コンサートホールの配信による今シーズンの開幕コンサートです。素晴らしい演奏でした。詳細は以下の記事に書きました。

  https://sarai2551.blog.fc2.com/blog-entry-4808.html



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ピアノの鍵盤を凝視しながら弾くベンジャミン・グローヴナーの完成度の高いショパンとリストのピアノ・ソナタ@上大岡 ひまわりの郷 2023.9.24

ベンジャミン・グローヴナーは初めてその名を聞くピアニストで、明日の庄司紗矢香のリサイタルの単なるピアノ伴奏者とばかり思っていましたが、その演奏を聴き、美しい響き、完璧な打鍵、そして、高い音楽表現力を合わせ持つ稀有なレベルのピアニストであることを知ることになりました。音楽は聴いてみないと分からないものです。それほど期待せずに聴き始めたリサイタルでしたが、次第に前のめりになって、ショパンとリストの音楽を聴き入りました。後で調べたら、イギリスでは神童と騒がれ、イギリス人ピアニストとしては60年ぶりにDECCAと専属契約を結んだそうです。CDアルバムも多数出ています。まだ、30歳そこそこですが、ヨーロッパではよく知られているようです。

冒頭、予定にないショパンの夜想曲第20番をサプライズのように弾き出して、その美しい響きにびっくりします。その後、予定の曲目の舟歌を弾きます。表情を変えずに一心に鍵盤を見ながらの演奏は実に真面目そうな演奏ですが、ちゃんと音楽の表情は表現出来ています。

そして、大曲、リストのピアノ・ソナタ ロ短調を弾き始めます。一切の虚飾を排した演奏ですが、それでいて、超絶技巧はきちんとこなしています。派手さもなく、ほとんど表情も変えないので、リストらしさがないようにも思えますが、見事な演奏ではあります。ビジュアル的には損しているような気もしますが、目をつむって聴くとちゃんとリストの巨大な音楽が流れてきます。とても素晴らしい演奏ですが、以前聴いた美貌のピアニストのエレーヌ・グリモーの喘ぐようなロマンティックな演奏に比べると、何かピアノ演奏以外の魅力が欠落しているような気もします。陶酔感がこの曲には必要な気もしますが、グローヴナーはあくまでもピアノ演奏のみに集中して、ピアノの響きだけで勝負しているんでしょう。それもこの曲のひとつの表現でしょう。ピアノ演奏としては完璧でした。

休憩後、リストの子守歌。予習した子守歌ではなかったので、まったくの初聴きです。素晴らしい響きの演奏でした。

最後はまた、大曲。ショパンのピアノ・ソナタ 第3番。これは妙な陶酔感は不要なので、鍵盤だけをじっと見つめながら、最高のピアノの響きを聴かせてくれるグローヴナーの演奏に聴き入って、とても満足できました。第1楽章の甘美な第2主題、第3楽章のノクターンのような魅力的な旋律に酔ってしまいそうになります。そして、第4楽章の情熱的な音楽の盛り上がりに感銘を受けます。

アンコールはてっきり、リストとショパンの有名曲を弾くと思っていたら、何やら知らない曲です。ヒナステラのアルゼンチン舞曲でした。アルゲリッチが同郷のヒナステラの曲をCDに収めていたので、以前聴いた筈ですが、すっかり忘れていました。お洒落な作品を素晴らしい演奏で聴かせてくれました。
2曲目も何か分かりませんでしたが、何とこれは有名なラヴェルの水の戯れ。これもアルゲリッチのCDでさんざん聴いた筈ですが、頭から抜け落ちています。グローヴナーの演奏は今日、最高の演奏でした。素晴らしいタッチで素晴らしい響き。これなら、今日のプログラムももっと多彩なものを弾いたほうがよかったのでは・・・。

明日の庄司紗矢香とのデュオが楽しみになりました。ドビュッシーのヴァイオリン・ソナタの演奏が素晴らしいものになりそうです。

今日のプログラムは以下です。


  ピアノ:ベンジャミン・グローヴナー

  ショパン:夜想曲第20番 嬰ハ短調 BI. 49「レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ」(遺作)
  ショパン:舟歌 嬰へ長調 Op.60
  リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調 S.178

   《休憩》

  リスト:子守歌 S.174
  ショパン:ピアノ・ソナタ 第3番 ロ短調 Op.58
  
   《アンコール》
     ヒナステラ:アルゼンチン舞曲集 Op.2~第2曲 粋な娘の踊り
     ラヴェル:水の戯れ
     

最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のショパンの夜想曲第20番は当日、急にプログラム追加になったため、予習していません。

 
2曲目のショパンの舟歌は以下のCDを聴きました。

 イリーナ・メジューエワ 京都リサイタル2011 2011年7月24日、京都コンサートホール・小ホール(アンサンブルホールムラタ) ライヴ録音
 
今回はすべて、メジューエワの演奏で予習します。ライヴとは思えない質の高い演奏です。


3曲目のリストのピアノ・ソナタ ロ短調は以下のCDを聴きました。

 イリーナ・メジューエワ 日本デビュー20周年記念リサイタル 2017~2018 2018年2月24日、東京文化会館・小ホール ライヴ録音

これは素晴らしい演奏です。このリサイタルを聴き逃がしたのが残念です。


4曲目のリストの子守歌は事前にどの子守歌かを公表されなかったので、誤って、S.198を聴きました。実際はS.174でした。

 
5曲目のショパンのピアノ・ソナタ 第3番は以下のCDを聴きました。

 イリーナ・メジューエワ 日本デビュー20周年記念リサイタル 2017~2018 2017年11月18日、東京文化会館・小ホール ライヴ録音
これも素晴らしい演奏です。ショパンの真髄に迫るような演奏です。



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庄司紗矢香と仲間たちによる高貴な芸術の香りに深く感銘@サントリーホール 2023.9.25(未完)

庄司紗矢香を久しぶりに聴いたような気がしましたが、今年6月にノセダ指揮N響との共演で聴いたばかり。どれほど聴いても聴き足りない思いです。
庄司紗矢香の奏でる音楽はもはや音楽という範疇を超えて、高貴な芸術の香りを天空の彼方から伝えてくれる巫女のような存在に思えます。今回はフランス音楽の衣を纏って、何とも香り立つような芸術の真髄を感じさせてくれました。実はこれ以上のことを書くことはエセ芸術信奉家のsaraiには到底、無理なのですが、素人故の恥知らずで芸術論議を書いてみましょう。

まずは、圧倒的な名演だった後半のショーソンのヴァイオリン、ピアノと弦楽四重奏のための協奏曲についてです。
これはプルーストに登場願ったほうがよさそうです。プルーストの《失われた時を求めて》の中にヴァントゥイユの七重奏曲を聴くシーンが描かれていますが、そこで人が音楽を芸術として受容するとはどういうことかについて、長々と論じられています。今日の演奏はまさにそのとおりのような演奏でした。ここにプルーストがいれば、この演奏について、数十ページの論述を書き連ねてくれたことでしょう。しかし、昨年2022年がプルースト没後100年でした。いまさら、生き返ってくれるものでなく、恐れながら、saraiがなりかわって、駄文を書くしかありません。
第1楽章、ピアノが強い打鍵で主となる動機を奏でて、それを弦楽四重奏が引き継いで、動機を主題に発展させます。そして、その主題を庄司紗矢香が引き継いで演奏しますが、最初は何とも物足りない感じなんです。しかし、彼女が弾いていくうちにその主題は美しく磨き上げられます。これこそ、プルーストがヴァントゥイユのソナタの中で繰り返し、憧れ続けた小楽節のように光り輝きます。それはどれほど繰り返されても色褪せることなく、更に輝きを放っていきます。庄司紗矢香を中心に色んな楽器の組み合わせで発展させられていく小楽節に魅了されながら、長大な楽章が終わります。

 ・・・というところで、saraiの筆力つたなく、タイムオーバーです。明日の地域コミュニティ活動のための体力を残すために、これ以降の記述は明日以降に書きます。中途半端なところで終わって、ごめんなさい。でも、saraiを元気づけるためにブログランキングのポチは忘れずにお願いします。


今日のプログラムは以下のとおりです。
  庄司紗矢香「フランスの風」

  ヴァイオリン:庄司紗矢香
  モディリアーニ弦楽四重奏団
  ピアノ:ベンジャミン・グローヴナー
  
    
  武満徹:妖精の距離
  ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ
  ラヴェル:弦楽四重奏曲 ヘ長調
  
   《休憩》

  ショーソン:ヴァイオリン、ピアノと弦楽四重奏のための協奏曲 ニ長調 Op. 21
   
     




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       庄司紗矢香,  

庄司紗矢香と仲間たちによる高貴な芸術の香りに深く感銘@サントリーホール 2023.9.25 (完成版)

庄司紗矢香を久しぶりに聴いたような気がしましたが、今年6月にノセダ指揮N響との共演で聴いたばかり。どれほど聴いても聴き足りない思いです。
庄司紗矢香の奏でる音楽はもはや音楽という範疇を超えて、高貴な芸術の香りを天空の彼方から伝えてくれる巫女のような存在に思えます。今回はフランス音楽の衣を纏って、何とも香り立つような芸術の真髄を感じさせてくれました。実はこれ以上のことを書くことはエセ芸術信奉家のsaraiには到底、無理なのですが、素人故の恥知らずで芸術論議を書いてみましょう。

まずは、圧倒的な名演だった後半のショーソンのヴァイオリン、ピアノと弦楽四重奏のための協奏曲についてです。
これはプルーストに登場願ったほうがよさそうです。プルーストの《失われた時を求めて》の中にヴァントゥイユの七重奏曲を聴くシーンが描かれていますが、そこで人が音楽を芸術として受容するとはどういうことかについて、長々と論じられています。今日の演奏はまさにそのとおりのような演奏でした。ここにプルーストがいれば、この演奏について、数十ページの論述を書き連ねてくれたことでしょう。しかし、昨年2022年がプルースト没後100年でした。いまさら、生き返ってくれるものでなく、恐れながら、saraiがなりかわって、駄文を書くしかありません。
第1楽章、ピアノが強い打鍵で主となる動機を奏でて、それを弦楽四重奏が引き継いで、動機を主題に発展させます。そして、その主題を庄司紗矢香が引き継いで演奏しますが、最初は何とも物足りない感じなんです。しかし、彼女が弾いていくうちにその主題は美しく磨き上げられます。これこそ、プルーストがヴァントゥイユのソナタの中で繰り返し、憧れ続けた小楽節のように光り輝きます。それはどれほど繰り返されても色褪せることなく、転調されるたびに更に輝きを放っていきます。庄司紗矢香を中心に色んな楽器の組み合わせで発展させられていく小楽節に魅了されながら、長大な楽章が終わります。
第2楽章、シシリエンヌの旋律が庄司紗矢香のヴァイオリンを中心に抒情に満ちた響きをかそけく聴かせてくれます。詩情に満ちた世界に感銘を受けます。
第3楽章、半音階で特異な印象の音楽が荘重に奏されていきます。その中でも庄司紗矢香のヴァイオリンが輝きを放っています。
第4楽章、早いテンポで音楽が奏でられて、色んな旋律も回想されて、華やかに音楽が高潮して、この複雑な構成の音楽の幕が閉じます。
この庄司紗矢香と仲間たちの冴えた演奏は何と表現すればいいのでしょう。フランス的なエスプリ、高貴な芸術の昇華、いずれにせよ、あり得ないような音楽的技量を発揮して、その演奏した音楽はまるで夢のようなポエムです。プルーストが提起した「芸術の中には人生よりももっと深い現実が存在するのだろうか」という根源的な問いに答えてくれるような演奏と音楽ではなかったかと自分の心に刻み付けるような時間でした。sarai流に言い換えるならば、この音楽が奏されている時間には、saraiは現実を離れて、芸術の中に現実では味わうことのできないもう一つの人生を生きていたような気がします。それはとても深い精神的な体験でした。こういう稀有な時間を体験させてくれた庄司紗矢香と仲間たちに特別な感謝を送りたい気持ちです。

さて、前半のプログラムに戻りましょう。
まず、武満徹の妖精の距離ですが、詩の朗読に続いて、その余韻の中にグローヴナーの美しいピアノの響きと庄司紗矢香の少し耳障りな弦をこする音のするヴァイオリンの響きで、武満徹のドビュッシー的な感覚の音楽が展開されます。一つの主題が少しずつ変容しながら繰り返されます。庄司紗矢香はあえて、ただ美しいだけのヴァイオリンの響きを抑えて、独特な美を発散させます。彼女がバッハの無伴奏でも用いた表現ですが、厳しく、音楽の本質に切り込むような魂の燃焼を感じさせます。聴く者は彼女の演奏に対峙して、真剣勝負するような気持ちになります。主題のさまざまな変容は高潮したり、沈潜したり、自在な演奏に翻弄されながら、詩情に満ちた時間を過ごしました。武満徹の若き日の傑作に心が昂ぶりました。

次はそのまま続けて、ドビュッシーのヴァイオリン・ソナタが演奏されます。これは深く内容に触れませんが、最高に素晴らしい演奏でした。ドビュッシーが苦しい闘病の中、残した最後の作品とは信じられない清澄さを湛えた美しい音楽です。この素晴らしい演奏だけは多くを語らず、そっと心の奥にしまっておきたい・・・そんな演奏でした。お察しください。

前半の最後はモディリアーニ弦楽四重奏団が登場して、ラヴェルの若き日の名作、弦楽四重奏曲を演奏します。この曲はsaraiの最近のお気に入りの曲のひとつです。それというのも、今回も予習で聴きましたが、エベーヌ・クァルテットの最高の演奏をCDで聴いて、この曲の何たるかが分かったんです。エベーヌ・クァルテットの実演で聴きたい曲、No.1です。さて、モディリアーニ弦楽四重奏団の演奏はエベーヌ・クァルテットと同じくフランス風ですが、全く性格を異にする演奏。エベーヌ・クァルテットは粋で派手で明確な素晴らしい演奏ですが、モディリアーニ弦楽四重奏団はエスプリを内に秘めて、内向的な演奏です。コンセルヴァトワール出身の彼らは無論、フランス的な雰囲気そのものの演奏で高貴な奥ゆかしさに満ちています。これはこれでまったく納得できる演奏です。ただ、ある意味、受容するのが難しい音楽かもしれません。この曲をさらに聴き込んでいけば、彼らの演奏の素晴らしさの一端が理解できるのかもしれません。庄司紗矢香があえて、フランスの仲間たちとして、彼らと行動を共にしたのも分かるような気がします。庄司紗矢香が内向的な音楽をフランス音楽に求めているのかもしれません。

庄司紗矢香の芸術的な進歩が体感できるコンサートでした。庄司紗矢香は次に11月、イスラエル・フィルと共演するベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を聴きます。きっと内省的な演奏になるような予感がします。


今日のプログラムは以下のとおりです。
  庄司紗矢香「フランスの風」

  ヴァイオリン:庄司紗矢香
  モディリアーニ弦楽四重奏団
  ピアノ:ベンジャミン・グローヴナー
  
    
  詩の朗読 瀧口修造:妖精の距離 (朗読:大竹直)
  武満徹:妖精の距離
  ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ
  ラヴェル:弦楽四重奏曲 ヘ長調
  
   《休憩》

  ショーソン:ヴァイオリン、ピアノと弦楽四重奏のための協奏曲 ニ長調 Op. 21
   
     
最後に予習について、まとめておきます。

1曲目の武満徹の妖精の距離を予習したCDは以下です。

 デュオ・ガッツァーナ 2011年3月、 スイス・イタリア語放送オーディトリオ、ルガーノ、スイス セッション録音

姉妹デュオ、ナターシャとラファエラ・ガッツァーナによる見事な演奏。


2曲目のドビュッシーのヴァイオリン・ソナタを予習した演奏は以下です。

 オーギュスタン・デュメイ、マリア・ジョアン・ピリス 1993年9、10月、 ミュンヘン セッション録音

デュメイの名演。


3曲目のラヴェルの弦楽四重奏曲を予習したCDは以下です。

 エベーヌ・クァルテット 2008年2月 セッション録音
 
これは素晴らし過ぎる演奏です。冒頭から美しい響きに魅了されます。音楽的表現も最高です。この作品の本命盤でしょう。


4曲目のショーソンのヴァイオリン、ピアノと弦楽四重奏のための協奏曲を予習したCDは以下です。

 イザベル・ファウスト、アレクサンドル・メルニコフ、サラゴン・カルテット 2016年6月、9月/テルデックス・スタジオ・ベルリン セッション録音
 
ファウストが「ヴュータン」と愛称のついたストラディヴァリで美しくも繊細な演奏を聴かせ、2004年結成、18世紀のレパートリーを中心に活動を展開する中堅のアンサンブル、サラゴン・カルテットもしっかりとファウストの独奏ヴァイオリンを支えます。メルニコフはいつも演奏を共にするファウストと息の合ったピアノの響きで、この録音の少ない名曲を気持ちよく聴かせてくれます。



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超ロングのアンドラーシュ・シフ ピアノ・リサイタルにへとへと、されど、シフの磨き抜かれた響きのベートーヴェンのピアノ・ソナタ第30番は超絶的@東京オペラシティ コンサートホール 2023.9.29

今日のリサイタルは昨年に引き続き、事前に演奏曲目を発表しない覆面コンサート。演奏時にステージでレクチャーしながら、曲目を明かします。レクチャーコンサート自体はザルツブルク音楽祭で何度も聴かせてもらいました。シフ教授の講義を聴きながらのピアノ演奏です。ザルツブルク・モーツァルテウムの小さなホールだったので、マイクも使わずにお話ししてくれました。さほど英語が堪能でないsaraiにも聞き取れる平易な英語、そして、音楽関係の用語が多いので分かりやすい講義でした。開始前には地元のおばあさんにあなたはドイツ語が分かるのって、脅かされましたが、さすがに世界中から聴衆が集まるザルツブルク音楽祭では英語での講義でした。ウィーンのレクチャーコンサートはドイツ語での講義だったようです。昨年は英語で講義した内容を奥様の塩川悠子さんが通訳する形でしたが、今回は日本人の若い男性ピアニストが通訳。塩川さんと違って、ストレートな通訳でした。
こんな形での異例のコンサートで、しかも、曲目がとても多く、20分の休憩時間を含めると、コンサート時間が何と3時間半ほど。7時に始まったリサイタルも終わった時刻は10時半。ワーグナーの楽劇ほどではありませんが、超ロングのコンサート。saraiが自宅に戻ったのは午前様。実に久々の午前様です。ということで、もう、へとへと・・・普通なら、ブログ記事は翌日まわしにしたいところですが、明日も明後日もコンサート。何とか、今日のうちにさっと書いておきましょう。

今日のレクチャーコンサートはまず、冒頭は平均律クラヴィーア曲集からの有名な第1番です。シフにしては響きがもうひとつで、節回しも滞る部分もあります。今日のコンサート、ちょっと心配です。
そこから、レクチャーが始まります。レクチャーでバッハに心酔していることを言った後で、次に弾くバッハの作品について、ピアノで実例を示しながら、詳細な解説。そして、カプリッチョ「最愛の兄の旅立ちに寄せて」を演奏。先ほどの心配を吹き飛ばす見事な演奏。いやはや、ベーゼンドルファーの響きが冴え渡り、素晴らしい演奏。この曲は何度も聴いていますが、美しいピアノの響きに魅了されます。シフの弾くバッハは最高です。
次は変ロ長調つながりでモーツァルトのピアノ・ソナタ第17(16)番 変ロ長調 K.570。これも6年前にシフの演奏を聴いていますが、とびっきり美しい演奏で以前よりもさらに熟達したように思えます。先ほどバッハを聴いたときはシフはやはり、バッハのスペシャリストに思えましたが、今度は一転して、モーツァルト弾きに思えます。
続いて、ハイドンを2曲。シフ教授はハイドンが不当に低い評価を受けているけれども、ハイドンはもっと正当な評価を受けて然るべきと強調して、ハイドンのアンダンテと変奏曲 へ短調を弾き始めます。この曲は多分、初聴きですが、シフの演奏は何とも美しいです。隠れた名曲ですね。うっとりと聴き入ります。今度はシフはハイドンのスペシャリストに思えます。こんな素晴らしいハイドンを弾けるピアニストは世界中探してもいないでしょう。特に高域の音の響きの美しさに耳を奪われます。
続くハイドンのピアノ・ソナタ 変ホ長調 Hob.XVI:52、ハイドンの最後のソナタは聴くのは2度目ですが、これも以前よりも熟成した響きです。

前半だけで十分、1回のコンサートに値する演奏を聴かせてもらい、贅沢ではありますが、結構、疲れました。しかし、後半の演奏こそが圧巻だったんです。
まず、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第21番 「ワルトシュタイン」、名曲中の名曲です。打鍵のくっきりした明快な演奏で魅了させられます。
そして、最後にベートーヴェンの後期ピアノ・ソナタ3曲中の1曲。第30番が控えていました。シフのピアノの響きは理想的なベートーヴェンの響きです。第1楽章も第2楽章も美し過ぎる響きで進行します。第2楽章は第1楽章から切れ目なく演奏されるので、2つの楽章はひとつのセットのように響きます。
そして、長大な第3楽章の変奏曲が始まります。本当に素晴らしい音楽、そして、演奏です。荘重で内面的な音楽が歌われます。色々なタイプの変奏がシフの演奏で綴られていきます。ここに至り、シフとベートーヴェンが一体化し、saraiの心は感動でいっぱいになります。そして、すぐに対位法による変奏が続き、純粋な器楽の饗宴に音楽は昇華していきます。そして、再び、内向的な音楽に戻り、さりげなく、音楽は収斂します。しばらく、静けさがホールを包みます。素晴らしいベートーヴェンでした。

さすがに今日のアンコールは1曲だけ。バッハのゴルトベルク変奏曲からアリアをしみじみと弾いてくれました。今日の〆にふさわしい音楽です。

こんな形での異例のコンサートで、コンサートの終わりでは疲れも忘れて、気持ちが高揚していましたが、家に帰り着いたところでぐったりでした。でも、最高のリサイタルでした。明後日のリサイタルももちろん聴きます。同じ曲目でも構いませんが、できたら、違う曲が聴きたいな・・・。特にシューベルトの遺作ソナタのどれかを聴きたいです。


今日のプログラムは以下です。

 J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻から 前奏曲とフーガ第1番 ハ長調 BWV846
 J.S.バッハ:カプリッチョ「最愛の兄の旅立ちに寄せて」BWV992
 モーツァルト:ピアノ・ソナタ第17(16)番 変ロ長調 K.570
 ハイドン:アンダンテと変奏曲 へ短調 Hob.XVII:6
 ハイドン:ピアノ・ソナタ 変ホ長調 Hob.XVI:52

   《休憩》

 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第21番 ハ長調 op.53 「ワルトシュタイン」
 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第30番 ホ長調 op.109
 
   《アンコール》

    J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV988から アリア


予習はプログラムが未発表だったので、もちろん、できませんでした。



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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
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最後までレビューありがとうございます。最後は時間の都合がつかず視聴できず、非常に残念でした。

アンコールも含め好評のレビューを見てますます残念ですが、お陰様でど

04/02 12:33 

michelangeloさん

saraiです。大変、ご無沙汰しています。
このたびは過分なご評価いただき、恐縮しています。

よいコンサート、オペラを聴くと、興奮して、記事を書き過

03/31 01:42 sarai

sarai様

こんばんは。

3月に8回も《トリスタンとイゾルデ》公演が開催される東京は音楽都市です。再び御感想を拝読し、改めて感じるのはsarai様のクラシック音楽オペラ公

03/29 21:28 michelangelo

《あ》さん、saraiです。

結局、最後まで、ご一緒にブッフビンダーのベートーヴェンのソナタ全曲をお付き合い願ったようですね。
こうしてみると、やはり、ベートーヴェン

03/22 04:27 sarai

昨日は祝日でゆっくりオンライン視聴できました。

全盛期から技術的衰えはあると思いましたが、彼のベートーヴェンは何故こう素晴らしいのか…高齢のピアニストとは思えな

03/21 08:03 

《あ》さん、再度のコメント、ありがとうございます。

ブッフビンダーの音色、特に中音域から高音域にかけての音色は会場でもでも一際、印象的です。さすがに爪が当たる音

03/21 00:27 sarai

ブッフビンダーの音色は本当に美しいですね。このライブストリーミングは爪が鍵盤に当たる音まで捉えていて驚きました。会場ではどうでしょうか?

実は初めて聴いたのはブ

03/19 08:00 
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