夜は日本フィルの定期会員になって初めてのコンサート。サントリーホールの定期下院の席に行くと、何やら小さな紙が置いてあります。隣の席の人が置いたのかと思い、むっとしながら手に取ると、《日本フィル新規定期会員のみなさんへ》という挨拶状でした。新規会員の席に日本フィルがわざわざ置いたんですね。なかなかの心配りです。残念ながら、あまり席は埋まっていません。N響の定期のように満席状態とはならないようですね。それでも、saraiはあえてN響の定期から日本フィルの定期に乗り換えたんです。動機は新首席指揮者のカーチュン・ウォンへの期待です。カーチュン・ウォンの登場は来月で、今回は山田和樹の指揮。なかなか凝ったプログラムで演奏も上々です。日本フィルの響きも他の在京オケにひけをとりません。とりあえず、日本フィルの定期会員になってよかったというところ。
最初は弦楽だけで、超有名曲、モーツァルトのアイネ・クライネ・ナハトムジーク。大編成の弦楽オーケストラですが、演奏は入れ替わり立ち代わりでほぼ半数程度で演奏しています。もっと少数で演奏する部分もあります。実質、室内オーケストラのような演奏で実にピュアーな響きです。曲の最初と最後だけは全員の総奏で盛り上がります。まるでマーラーが考えそうな演奏ですね。演奏自体も冒頭だけはテンポが早く、あとは標準的なテンポ。山田和樹は肩の力の抜けた妥当な指揮で美しいモーツァルトを聴かせてくれました。超有名曲を面白い演出と美しいアンサンブルで聴かせてくれて、納得の演奏です。
次はJ.S.バッハ(齋藤秀雄編曲)のシャコンヌ。saraiとしては原曲の無伴奏ヴァイオリン以外は好みません。ブゾーニ編曲のピアノ版とか、あまり感心しません。まあ、指揮者の腕の見せ所でしょう。山田和樹は真摯な演奏で、バッハの本質に切り込んだ見事な演奏を聴かせてくれました。まるでこういうバッハの管弦楽曲があるみたいです。派手になり過ぎず、厳しい音楽を展開してくれました。斎藤秀雄先生もこれなら納得して優の成績を出してくれるでしょう。山田和樹はへらへらした印象ですが、やるときはやりますね。
休憩後はウォルトン。山田和樹のプレトークによると、イギリスのオーケストラはこのウォルトンの曲を選曲すると歓声を上げて喜ぶのだそうです。国民的人気の高い作曲家なんですね。
まず、戴冠式行進曲《宝玉と勺杖》。昨年崩御したエリザベス2世が1953年に戴冠したときに作曲したものだそうです。ファンファーレに続き、いかにもイギリスらしいマーチが耳に心地よく響きます。トリオにはいると、弦楽アンサンブルがこれもイギリスらしい雄渾で心に響く旋律を奏でます。うっとりとします。日本フィル、素晴らしい響きです。また、冒頭のマーチに戻りますが、再び、トリオの部分に戻り、うっとりと聴き入ります。最後はマーチで高らかに〆ます。エルガーの威風堂々を思い起こす素晴らしい音楽です。
最後は今日のメイン曲、ウォルトンの交響曲第2番。3楽章の交響曲ですが、時代的にもうリゲティが実験的な作品を作り上げていた頃に保守的で調性のある音楽というのはどうだかと誰しも思いますが、今になってみれば、何でもありになり、堂々と調性のある音楽も登場しています。要は様式の問題ではなく、音楽の中身を論じるべきかもしれません。
第1楽章は派手な映画音楽のように始まり、purchaseの音楽がスリル感たっぷりに展開されます。バルトークの中国の不思議な役人を想起します。現代音楽ではジョン・アダムスにつながりそうな感じです。ただし、調性音楽なんです。日本フィルが素晴らしい響きで演奏し、迫力たっぷりです。作曲した時代を考えなければ、なんとも素晴らしい作品に思えます。
第2楽章は一転して、抒情的な音楽が続きます。これも山田和樹の表現力が光ります。聴き映えしますね。
第3楽章はパッサカリア。終楽章がパッサカリアとはまるでブラームスですね。しかし、そんなロマンは微塵も感じさせない迫力の音楽です。変奏が続いた後はフーガに移行し、コーダは金管がファンファーレで華々しく音楽を盛り上げます。山田和樹の指揮というか、演出が素晴らしく、日本フィルも完璧な演奏を聴かせてくれました。
山田和樹のウォルトン、素晴らしいです。ウォルトンを聴き慣れないので、聴衆の盛り上がりに欠けますが、これをイギリスでやったら、聴衆が大興奮するでしょう。
日本フィル、期待できそうです。来月のカーチュン・ウォンのマーラーの交響曲第3番は待ちきれないほど、楽しみです。saraiの過大な期待は満足させてくれるでしょうか。
今日のプログラムは以下です。
指揮:山田和樹
管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団 コンサートマスター:扇谷 泰明
モーツァルト:アイネ・クライネ・ナハトムジーク ト長調 K.525
J.S.バッハ(齋藤秀雄編曲):シャコンヌ
《休憩》
ウォルトン:戴冠式行進曲《宝玉と勺杖》
ウォルトン:交響曲第2番
最後に予習について、まとめておきます。
1曲目のモーツァルトのアイネ・クライネ・ナハトムジークを予習したCDは以下です。
オットー・クレンペラー指揮ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 1964年 セッション録音
この曲はsaraiはワルター指揮コロンビア交響楽団の演奏をずっと聴いてきましたが、今回はちょっと浮気をして、このクレンペラーを聴いてみました。いかにも彼らしい明瞭で真摯な演奏です。
2曲目のJ.S.バッハ(齋藤秀雄編曲)のシャコンヌは以下のYOUTUBEを聴きました。
小澤征爾指揮サイトウキネンオーケストラ 2004年9月 長野県松本 ライヴ録音
小澤征爾の熱過ぎるバッハの演奏はsaraiは苦手です。
3曲目のウォルトンの戴冠式行進曲《宝玉と勺杖》を予習したCDは以下です。
エードリアン・ボールト指揮ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 1977年 セッション録音
素晴らしい演奏です。申し分なし。
4曲目のウォルトンの交響曲第2番を予習したCDは以下です。
アンドレ・プレヴィン指揮ロンドン交響楽団 1973年 ロンドン、アビー・ロード・スタジオ セッション録音
プレヴィンの冴えた感覚の演奏が光ります。
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