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深い感銘を覚えるシューベルトのミサ曲第5番 鈴木雅明指揮バッハ・コレギウム・ジャパン@東京オペラシティコンサートホール 2023.9.17

バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)の演奏も素晴らしかったのですが、それ以上にシューベルトのミサ曲の素晴らしさに深い感銘を覚えました。予習のアーノンクールでは、第1曲のキリエの清澄さにひきかえ、第2曲以降は妙に力強さばかりが感じられましたが、今日の演奏ではBCJの美しい合唱の力、そして、鈴木雅明も見事な指揮でシューベルトの宗教曲の美しさが十全に表現されていました。

今日の演奏を振り返ってみましょう。

第1曲のキリエは美しいオーケストラ演奏に続き、すぐにBCJの合唱がそっとピアノではいってきます。静謐な合唱が美しく響きます。なかでもソプラノパートの美しさは際立っています。それもその筈、合唱といいながら、ソプラノパートにはいつもは独唱しているメンバーが揃っています。澤江衣里、中江早希、松井亜希という豪華なメンバーです。これがBCJの合唱の魅力のひとつです。バッハのカンタータや受難曲では、合唱のメンバーがソロも担当しますが、今日はシューベルトのミサ曲なので、合唱のメンバーはアリアなどのソロは歌わずに合唱に専念しています。ソプラノ・アルトパートがそれぞれ7名、テノール・バスパートがそれぞれ6名という少数精鋭の合唱団ですが、その質は極めて高いものです。後半には独唱4名も歌いますが、これも実力者揃い。素晴らしいソロ・重唱を聴かせてくれます。ソプラノの独唱を歌った安川みくの透明な歌唱が耳に心地よく響きます。キリエは終始、清澄な歌唱で清々しく心に響き、さすがシューベルトという感じで魅了してくれます。

第2曲のグローリアは冒頭から力強い合唱でキリエとは雰囲気が一変します。神の栄光をたたえる祝祭的な合唱ですが、シューベルトらしい精細さも感じられます。弦楽器の素早いパッセージで楽興も盛り上がります。終盤のフーガ《精霊とともに》は絶妙な演奏です。シューベルトのこのような素晴らしいフーガは初めて聴きました。シューベルトはフーガの技法も体得していたのですね。最後は合唱のアーメンで終わります。

第3曲のクレドは鋭い合唱で始まり、信仰の強さを表現する合唱が続きます。終盤では力強く盛り上がり、最後はまた、アーメンで終わります。

第4曲のサンクトゥスは合唱のサンクトゥスの響きが美しく歌い上げられます。シューベルトの純粋な思いが音楽に結実しています。そして、牧歌的な美しさのホザンナが続きます。

第5曲のベネディクトゥスは独唱と合唱でかみしめるように歌われます。最後はまた、ホザンナが歌われます。

第6曲のアニュス・デイは感銘に包まれた合唱と独唱で歌われて、感動が高まります。最後は《われらに平安をあたえたまえ》と愛と平和を希求するメッセージがシューベルトの美しい旋律で歌われて、深い感動を呼びます。

宗教曲の分野でもシューベルトは秀でた才能を発揮します。この素晴らしいミサ曲は何とベートーヴェンのミサ・ソレムニスに先駆けて作曲されたものだそうです。シューベルトはピアノ曲とリートで物凄い才能を発揮しましたが、他の分野でも天才ぶりをみせています。これから、シューベルトの音楽の再評価がもっともっと進みそうです。

あっ、書き洩らしましたが、独唱はソプラノの安川みくをはじめ、アルトの清水華澄、テノールの鈴木 准、バスの大西宇宙が素晴らしい歌唱を聴かせてくれました。もちろん、今日の主役はBCJの合唱団ですけどね。BCJのオーケストラも達人揃いの見事な演奏でした。最初に演奏された未完成については、あえて、感想を書きません。saraiの感性には合わなかったとだけ、書きます。


今日のプログラムは以下です。


  指揮:鈴木雅明
  ソプラノ:安川みく
  アルト:清水華澄
  テノール:鈴木 准
  バス:大西宇宙
  合唱:バッハ・コレギウム・ジャパン
  管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン コンサートマスター:寺神戸亮
   ヴァイオリンⅠ:高田あずみ
   ヴァイオリンⅡ:若松夏美
   ヴィオラ:成田寛
   チェロ:山本徹、上村文乃
   コントラバス:今野京
   フラウト・トラヴェルソ:鶴田洋子  
   オーボエ:三宮正満、荒井豪
   ホルン:福川伸陽
   トランペット:斎藤秀範
   オルガン:中田恵子 


  シューベルト:交響曲第7番 ロ短調《未完成》D 759

 《休憩》

  シューベルト:ミサ曲第5番 変イ長調 D 678



最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のシューベルトの交響曲第7番《未完成》は以下の演奏を聴きました。

 ベルナルト・ハイティンク指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 2016年10月8日、ベルリン・フィルハーモニー ライヴ映像

昨日書いたベルリン・フィルのデジタル・コンサートホールの配信映像です。自然体で深い味わいの名演です。


2曲目のシューベルトのミサ曲第5番は以下の演奏を聴きました。

 ニコラウス・アーノンクール指揮ヨーロッパ室内管弦楽団 1995年 セッション録音
  リューバ・オルゴナソーヴァ(ソプラノ)
  ビルギット・レンメルト(アルト)
  デオン・ヴァン・デル・ヴァルト(テノール)
  ヴォルフガング・ホルツマイアー(バリトン)
  アントン・シャリンガー(バス)
  アルノルト・シェーンベルク合唱団

アーノンクールにしては、もう一つの出来でしょうか。



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10/07 08:57 堀内えり

 ≪…長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さ…≫を、長調と短調の振り子時計の割り振り」による十進法と音楽の1オクターブの12等分の割り付けに

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じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
その後、ザル

07/08 18:59 sarai

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クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
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07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

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