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アンガス・ウェブスターと東響による初々しいブラームスの交響曲第4番@東京オペラシティコンサートホール 2023.9.30

イギリスの若手指揮者アンガス・ウェブスターが前半は英国ものの音楽を披露し、後半はブラームスの名曲、交響曲第4番に挑戦するという期待のプログラム。

今日の東響のコンサートマスターは客演の関 朋岳。若手の弦楽四重奏団、チェルカトーレ弦楽四重奏団の第1ヴァイオリンとして、活躍している逸材です。なお、チェルカトーレ弦楽四重奏団の第2ヴァイオリンは戸澤采紀が弾くという豪華な顔ぶれで、いつも美しいアンサンブルを聴かせてくれています。今後、関 朋岳は東響のコンサートマスターとしても活動してくれるのでしょうか。

前半はまず、英国出身の現代音楽作曲家、アンナ・クラインの《彼女の腕の中で》です。弦楽5部、各3人ずつ、計15人で、立奏します。この曲はアンナ・クラインが彼女の母の死を悼みつつ、ベトナムの平和活動家のティク・ナット・ハンの詩(メッセージ)にインスピレーションを得て、書き上げたものです。詩の内容はベトナム戦争で亡くなった人は母なる大地の腕に抱きしめられて、野の花として再生するという感動的なものです。弦楽アンサンブルがレクイエムのように美しい演奏を聴かせてくれて、思わず、感動してしまいました。生きとし生けるものへ捧げる挽歌です。音楽を超えた何かがそこにありました。無論、現在進行中のウクライナ戦争への思いも込められて、聴く者はそこへの思いも新たにしなくてはなりません。

次はオーケストラ演奏へステージの模様替えをして、エルガーの海の絵が演奏されます。これは5曲からなるオーケストラ伴奏付きのコントラルト独唱曲です。イギリスの若手コントラルトのジェス・ダンディの気持ちのこもった歌唱でした。英国風の調べに心が浮き立つパートもあり、楽しく聴けました。2曲目の作詞はエルガーの妻アリスによるもの。エルガーの妻アリスへの思いを感じ、ほのぼのとします。

後半は一転して、本格的なドイツ・オーストリアもの。ブラームスの交響曲 第4番です。
どういう演奏になるか、第1楽章の冒頭、身構えます。うん、なかなか、よいテンポです。早からず、遅からず。理想的なテンポでアンガス・ウェブスターは手をゆらゆらさせながら、たゆたうような音の流れを形づくっていきます。しかしながら、弦のアンサンブルが少々、固くなっています。本来、もっと柔らかい響きが欲しいところです。第1楽章の再現部あたりになって、響きは固いなりにまとまった美しいものになります。この後は初々しさのある清々しい響きで見事な演奏が続きます。第2楽章のアンダンテの弦楽合奏は特に美しい演奏でうっとりと魅了されました。第4楽章は高潮して、コーダはなかなかの盛り上がり。こういう若々しい演奏もいいものです。


今日のプログラムは以下のとおりです。

  指揮:アンガス・ウェブスター
  コントラルト:ジェス・ダンディ
  管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:関 朋岳

  アンナ・クライン:彼女の腕の中で
  エルガー:海の絵 Op.37

   《休憩》
   
  ブラームス:交響曲 第4番 ホ短調 Op.98
  

最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のアンナ・クラインの彼女の腕の中でを予習した演奏は以下です。

  エリム・チャン指揮フィルハーモニア管弦楽団  2021年8月13日 ロンドン、ロイヤルフェスティバルホール ストリーミング コンサート(YouTube)

とても美しい演奏です。


2曲目のエルガーの海の絵を予習したCDは以下です。

  ジャネット・ベイカー、ジョン・バルビローリ指揮ロンドン交響楽団 1965年8月 セッション録音

ジャネット・ベイカーの名唱。


3曲目のブラームスの交響曲 第4番を予習した演奏は以下です。

  キリル・ペトレンコ指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 2020年8月28日、ベルリン・フィルハーモニー ライヴ映像(デジタル・コンサートホール)

首席指揮者キリル・ペトレンコ指揮による2020/21年シーズンのオープニング・コンサート。とても柔らかなアンサンブルによる素晴らしい演奏。今秋の来日公演でもこのコンビの演奏が聴けます。楽しみですね。



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アンドラーシュ・シフの2回の覆面コンサートは計7時間に及ぶマラソンコンサート・・・バッハもブラームスもシューマンもベートーヴェンも美しい響きで魅了@ミューザ川崎シンフォニーホール 2023.10.1

今日のリサイタルも一昨日のリサイタルに続き、事前に演奏曲目を発表しない覆面コンサート。演奏時にステージでレクチャーしながら、曲目を明かしていきます。今日も超ロングのコンサートになりました。

今日もシフ教授の講義を聴きながらのピアノ演奏になります。シフが英語で講義した内容を若い男性ピアニストが通訳する形です。それだけでも長いコンサートになります。おおよその内容は誰にでも分かるものになり、冗長になるのは致し方ありません。音楽の啓蒙も目的のひとつです。

まず、冒頭はレクチャー抜きで演奏が始まります。バッハの作品です。一昨日のアンコールで弾いたゴルトベルク変奏曲のアリアです。前回からの連続性のあるリサイタルになる模様です。それはもう美しさの限りを尽くした演奏です。鍵盤を弾くタッチは軽く触れているだけの繊細なもので、それでよく響くのですから、特別に調律されたベーゼンドルファーであることが分かります。わざわざ、ドイツからマーティン・ヘンという調律師を同道しています。演奏後、レクチャーが始まり、ゴルトベルク変奏曲全曲は弾きませんとわざわざことわって、場内をわかせます。saraiとしては、今日はゴルトベルク変奏曲全曲だけでも一向に構わないというか、むしろ、そうしてほしいと願わざるをえません。一度でいいから、シフの演奏でゴルトベルク変奏曲全曲を聴くのが夢です。

次は詳しいレクチャーの後、バッハのフランス組曲第5番です。実はゴルトベルク変奏曲のアリアを聴きながら、どうせ、ゴルトベルク変奏曲全曲は弾かないだろうから、せめて、フランス組曲を弾いてくれないかなと心の中で願っていました。シフのフランス組曲は絶品ですからね。実はこのフランス組曲はsaraiには思い出の曲なんです。初めてアンドラーシュ・シフの演奏をCDで聴いたのは、友人が是非聴いてほしいとフランス組曲のCDを貸してくれたときでした。それまではバッハの鍵盤音楽のピアノ演奏と言えば、グレン・グールド、そして、クラウディオ・アラウのファイナル・セッションのパルティータ4曲、それにマルタ・アルゲリッチの若い時のバッハ・アルバムだけを聴いていました。アンドラーシュ・シフのフランス組曲のアルバムを聴いて、いっぺんに魅了されました。すぐにパルティータのCDも購入し、聴いてみましたが、これは今一つ。後年、パルティータは新録音のアルバムが出て、大変満足していますけどね。そういうわけで、シフのバッハ演奏の原点はこのフランス組曲だと思っています。もっとも昨年もこのフランス組曲第5番を演奏してくれましたが、何度聴いてもよいものです。ともかく、最高に素晴らしい演奏でした。
続けて、モーツァルトのアイネ・クライネ・ジーグ K.574という珍しい曲も弾いてくれます。これも昨年と同様です。シフの解説の通り、まるで12音技法のセリーのような主題で始まりますが、曲としてはバッハ風のモーツァルトにちゃんとなっているのが不思議です。シフの演奏は贅沢過ぎるほどの美しさです。

次は何故か、ぽーんと時代が飛んで、ブラームスのインテルメッツォです。ブラームスの晩年の作品はsaraiが最も愛するピアノ曲のひとつです。コロナ禍で次々とコンサートが中止になる2020年、シフが強行来日して聴かせてくれたのがブラームスの晩年の孤高の作品群でした。それは期待以上に素晴らしい演奏だったことをまざまざと覚えています。
Op.117の3つの間奏曲のうっとりとするような演奏をシフの美しいピアノの響きで聴き、そして、さらに名作、Op.118の6つの小品から、第2曲。圧倒的に素晴らしい演奏です。とりわけ、中間部のファンタジーに満ちた魅惑の演奏に心がときめきます。最後はまた、最初の美しい間奏曲に戻り、静謐に終わります。何て素晴らしい演奏なんでしょう。この有名なOp.118-2を付け加えたのはアンコールの先取りみたいなものです。実際、2020年はアンコールで弾いてくれました。

前半の最後はシューマンのダヴィッド同盟舞曲集。これは長々としたレクチャーがあります。例のシューマンの中にいるフロレスタンとオイゼビウスうんぬんという話です。そして、ようやく、演奏・・・シフの弾くシューマンもいいですねー! 瑞々しくて、ロマンティックなシューマン・ワールドを満喫します。まさに心の琴線にふれる風情の演奏でした。シフは人が変わったように若々しい演奏を聴かせてくれました。saraiもこういうシューマンを聴くと、心だけは青年時代に戻ったような気になります。猛烈にシューマンのピアノ曲をこのほかにも聴きたくなりました。シューマンのピアノ曲はシューマンだけにしかない魅力に満ちています。幻想曲やクライスレリアーナといった超有名曲だけでなく、まだ、聴き足りてないピアノ曲をいっぱい聴きたくなりました。
もう、この前半だけで普通のコンサートの1回分を聴いた思いです。実際、5時に始まったコンサートはもう、6時半をゆうに過ぎています。今日も長くなりそうです。


後半のレクチャーが始まります。後半は3人の作曲家のニ短調の作品を弾くそうです。
まずは当然、バッハです。半音階的幻想曲とフーガです。幻想曲、すなわち、ファンタジーの素晴らしい演奏に魅了されます。幽玄な演奏がどこまでも続き、さすがに長いなと思ったところで、フーガが始まります。フーガ主題も半音階進行の旋律でゆったりしたフーガが波及するように連なっていきます。これは最高に素晴らしいフーガです。シフの演奏に魅惑されます。フーガはどこまで続いても長いなとは思いません。と思っていると、突然、フーガが終了。何とも素晴らしい演奏でした。シフの弾くバッハのフーガは絶品です。

次はメンデルスゾーンの厳格な変奏曲を弾くそうです。これには虚を突かれた思い。多分、シフの演奏を聴くのは初めてですし、あまり、聴かない曲です。まずはレクチャーでもメンデルスゾーンの不当な低い評価、それもドイツでの評価の話になり、リヒャルト・ワーグナー批判が延々と続きます。ユダヤ人差別の話です。まあ、それはともかく、メンデルスゾーンの演奏は素晴らしいの一語です。何とも素晴らしいベーゼンドルファーの素晴らしい響きでした。

最後は、ベートーヴェンのテンペストを聴かせてくれるそうです。ええっ、テンペストと嬉しくなります。saraiは無類のテンペスト好きです。シフによると、バッハの半音階ファンタジーとテンペストの冒頭のレシタティーヴォが類似していて、ベートーヴェンはバッハから影響を受けたそうです。もちろん、シェークスピアのテンペストからインスピレーションを受けた作品です。シフによると、この曲は各楽章ともピアノッシモで始まり、ピアノッシモで終わる静謐な作品だそうです。そうでしたっけ・・・。
まず、「テンペスト」の冒頭のレシタティーヴォが始まります。たしかにバッハの半音階ファンタジーとの関連を感じます。でも、すぐにベートーヴェンの決然とした世界に変わっていきます。いやはや、シフの弾くベートーヴェンの音の響きの素晴らしいこと。音楽も演奏も最高です。第2楽章のアダージョに入ります。何とも美しい歌が聴こえてきます。第2主題の気高い歌が歌われるところで、合いの手のように、低音域で不気味な響き。不安感をかきたてます。これって、シューベルトの遺作ソナタD960の第1楽章のトリルの雷鳴を想起します。終盤では、ひとつ間違えれば、そのまま、第31番のソナタの嘆きの歌に入っていきそうな気配さえ感じます。中期のソナタはもうすぐ先に後期のソナタの影が見えていたんですね。実に深く味わいのある演奏でした。そして、第3楽章に入ります。まるでソット・ヴォーチェのようにあの有名な第1主題が静謐に、そして、何とも優し気に弾かれます。ここでsaraiの心は崩壊します。じっと目をつむり、そのまるでコラールのように心の襞をいたわってくれるような、タラララ、タラララ、タラララ・・・という主題が反芻されるのを静かな感動で聴き入ります。シフの演奏はこの曲の真髄を見事に表現してくれました。提示部の繰り返しで再び、第1主題のタラララ、タラララ、タラララ・・・が戻ってきます。こんなに優しい表現でこの旋律が弾かれたことがあったでしょうか。展開部でも第1主題が徹底的に展開されて、再現部でも、またも、タラララ、タラララ、タラララ・・・。もう、saraiの心は総崩れ。そして、コーダでは、第1主題が高域に移されて、天上のような響きに舞い上がります。もう、感動で嗚咽するばかりです。
最高のベートーヴェンでした。


今日も長大なリサイタルになりました。しかし、アンコールは欠かせないのがシフです。定番の3曲を弾いて、お開き。
今日は最初から覚悟していたので、さほど、疲れず、素晴らしかったリサイタルの余韻にふけりました。また、来年も聴けるかな・・・


今日のプログラムは以下です。

 J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV988から アリア
 J.S.バッハ:フランス組曲第5番 ト長調 BWV816
 モーツァルト:アイネ・クライネ・ジーグ K.574
 ブラームス:3つのインテルメッツォ Op.117
       インテルメッツォ イ長調 Op.118-2
 シューマン:ダヴィッド同盟舞曲集 Op.6
 
   《休憩》

 J.S.バッハ:半音階的幻想曲とフーガ ニ短調BWV903
 メンデルスゾーン:厳格な変奏曲 ニ短調 Op.54
 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第17番 ニ短調 Op.31-2 「テンペスト」
 
   《アンコール》

    J.S.バッハ:イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV971から 第1楽章
    モーツァルト:ピアノ・ソナタ ハ長調 K.545から 第1楽章
    シューマン:「子供のためのアルバム」Op.68から 楽しき農夫


予習はプログラムが未発表だったので、もちろん、できませんでした。



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       シフ,  

秋の京都2023:テーマのあるようで、テーマのない旅

今日から秋の京都を訪れます。もう京都訪問はsarai夫婦の毎年の行事になっています。やはり、春と秋はよい季節ですね。

朝、新横浜から新幹線に乗ると、富士を通過するあたりで美しい富士山が見える筈ですが、今日は曇天。もっともsaraiは深い眠りに落ちていました。もうすぐ、名古屋というあたりで配偶者に起こされて、新横浜で買い求めた汽車弁を食べます。京都にはお昼頃に着くので、先にお昼ご飯を済ませておきます。

そうこうするうちに京都に到着。タクシーで今日のお宿に直行するところですが、京都のタクシー不足を聞いていたので、市バスに乗ります。今日は1日乗車券を運転手さんから買いますが、今月からバスだけの1日乗車券は廃止になり、バスと地下鉄共通の1日乗車券になり、1100円と高額になります。まあ、京都市への寄付と思いましょう。バスはすいすいと走り、さほど時間もかからずにホテル近くのバス停に到着。早速、チェックインして、部屋でインスタントコーヒーを飲み、一休みして、出かけます。

二条城近くまで歩き、その横にある神泉苑を拝見。

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神泉苑は延暦13年(794年)、桓武天皇により禁苑として造営され、平安京(大内裏)の南東隣りに位置した苑池でした。今ではその面影はあまり残っていませんが、綺麗な池に往時を偲びます。

ここから、地下鉄の東山線に乗り、東山駅まで一気に移動。今日の街歩きの目的である、京都の古い商店街を訪ねます。
今まで、賀茂川デルタにある出町桝形商店街、堀川から千本まで続く京都三条会商店街に行きましたが、今日は総仕上げで古川町商店街です。東山から祇園まで続く商店街です。
古川町商店街の入り口に立ち、びっくり。路地のような細い道の両側に商店が並んでいます。

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実はこの商店街の入り口は岡崎から三条京阪まで歩く度にいつも見かけて気になっていました。実際に商店街に足を踏み入れるのは初めてです。「レトロ&モダン」がコンセプトでアーケードから吊り下げられた「パステルランタン」が特徴で昭和の雰囲気漂うレトロな商店街です。民泊や総菜屋さん、カフェ、雑貨店など、雑多なお店が並び、ぶらぶらと楽しく散策しました。

商店街を抜けると、枝垂柳の並木が並ぶ白川沿いの道に出ます。

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外国人もこのあたりに宿泊しているようで、たむろしています。
ここから東山に向かうと知恩院、青蓮院。街に向かうと祇園を抜けて、賀茂川べりに出ます。街に向かいましょう。
祇園の中の高級なお店が並ぶ中、京都餃子のお店で一口餃子をテイクアウトします。さらに外国人で賑わう祇園をぶらぶらし、疲れたところで、京都の老舗のカフェで一休み。木屋町四条のソワレです。内装は70年以上も前の創業時と変わらないそうで、壁には東郷青児の絵が並んでいます。奥のひっそりした空間で名物のゼリーポンチをいただきながら、昭和の香りを満喫します。

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元気の出たところで、夕食用のおばんざいを買いそろえて、ホテルに戻ります。

あー、疲れた!! 今日は1万7千歩ほど歩きました。最後は足がふらふら。

明日は奈良に向かい、法隆寺界隈を歩きます。そして、明後日がこの旅の本当の目的・・・それはそのときに明かします。



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秋の京都2023:いまさらながら法隆寺、さすがの法隆寺

昨日から秋の京都を訪れています。

今日は京都を離れて、奈良の法隆寺を訪れます。今日は少し曇り日ですが、そのせいか、急に秋が深まったような気がします。

京都駅からJR奈良線、大和路線を乗り継いで法隆寺駅に到着。駅の観光案内所の方にすぐに法隆寺行きのバスが出ることを教えられ、徒歩15分と覚悟していたことから解放されて大喜び。早速、バスに乗り、法隆寺前のインフォメーションセンターに行き、情報をゲット。配偶者が知りたかった藤ノ木古墳の周り方も分かり、まずは斑鳩文化財センターへ向かいます。目立たない建物でうっかり通り過ぎてしまうような斑鳩文化財センターに寄り、古墳の発掘品のレプリカの展示や古墳のビデオ映像を鑑賞。大いに興味を掻き立てられて、勇躍、藤ノ木古墳に向かいます。直径50メートルの美しい円墳が見えてきます。

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周り込むと、玄室への入り口が見えてきます。

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入口のガラス窓からのぞき込むと、うっすらと照明された玄室の中に大型の家形石棺が見えます。未盗掘の状態で見つかったそうです。

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古代へのロマンを感じます。
それでは法隆寺に向かいます。
修学旅行の生徒たちで賑わう飛鳥時代の伽藍の中に入り、西院伽藍を囲む回廊の美しさに息を呑みます。柱はエンタシス。回廊のがっしりとした木組みも見事です。何となく、ヨーロッパのイタリア式回廊を連想します。

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回廊の北西の角から眺める五重塔と金堂の美しさに魅了されます。飛鳥時代の木造建築がこんなに完璧な姿で残っているのは奇跡です。

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金堂内部の釈迦三尊像、大宝蔵院に収められた玉虫厨子と百済観音像など、仏教芸術の素晴らしさも堪能します。
少し移動して、東院伽藍にある夢殿の八角形の建物も鑑賞します。

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帰りの時間も迫り、これで見学を終了しようと思いましたが、夢殿の係の方のアドバイスで中宮寺も歩いて2分とのことで、つい、そちらに向かいます。中宮寺には有名な半跏思惟像があります。その建物に上がります。

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その半跏思惟像に近づき、あまりの美しさに感動します。この美しさは仏像とは思えません。ミケランジェロのピエタ像にも匹敵する絶対的な美を感じます。

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最後、粘った甲斐がありました。
しかし、もう、時間ギリギリ。痛む足でバス停まで急ぎ、出発数分前に着き、セーフ。

素晴らしい1日でした。しかし、この人類の大遺産に修学旅行の生徒以外の姿はまばらでした。観光地はコロナ以前の活況なのに、なぜかしらね。外国人観光客の姿さえもありませんでした。

明日は大事なイベントの日。早く寝ましょう。



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秋の京都2023:あれから50年、金婚式のディナーはたん熊北店 本店で

一昨日から秋の京都を訪れています。

今日は記念の日。歳月流れて50年、saraiと配偶者は晴れて金婚式を迎えることができました。
二人の原点というべき京都で記念の日を過ごすことにしました。ウィーンという案もありましたが、もう海外遠征は卒業しました。

京都はsaraiが学生生活を送った地。そのときの彼女(今の配偶者)との間でタブーにしていたのは、saraiの大学キャンパスを二人で歩くこと。だって、誰に見られるか分かりませんからね。
ようやく、この記念の日に二人でsaraiの母校の大学キャンパスを堂々と歩くことにしました。誰も知る人はいませんものね。

じゃーん、配偶者が初めて見る京大時計台です。saraiも卒業以来、50年ぶりに見ます。

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しばし、京都大学百周年時計台記念館の中を探索します。これはsaraiも初めて改装された内部を見て、驚くことばかり。
歴史展示室の映像で流れているのは、1969年の大学紛争時の記録映像です。機動隊に守られての入試。大学運動家たちがなだれこんでこんで、1分間で中止になった入学式。ある意味、衝撃でもあり、なつかしさもあります。入学後、半年間授業がなく、そのときに知り合ったのが配偶者でした。半年後、授業が始まったのは時計台の封鎖が機動隊によって解除されたためと記録映像で知りました。
時計台の地下でタリーズコーヒーを飲み、今どきの学生はそんなに贅沢なのかと呆れます。
が、キャンパスを歩いていると、偶然、生協食堂を発見。

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中に入って、メニューを見ると、納得の価格設定です。これなら、次世代の若者たちも安心して、学業に励めそうです。
我々もデザートと飲み物をご相伴します。

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saraiが勉強した理学部の構内をぶらぶらし、女子学生が台車に圧力容器を載せているのに遭遇します。saraiも毎日、実験で液体窒素をくんでいたことを思い出します。構内には偉大な先輩の湯川秀樹の湯川記念館がありました。

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さあ、大学キャンパスの散策の総仕上げに吉田山に登ってみましょう。実はsaraiも登ったことがありません。
吉田山の麓にある吉田神社に到着。

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ところが、ここでsaraiは疲れ切って、到底、登れそうにありません。しばらく、神社のベンチで一休み。歩数を見ると、既に1万歩を超えています。しばらく、休んで、元気回復。さあ、登りましょう。あまり、案内板が親切でなく、人に訊きながら、登っていきます。そして、山頂休憩所の東屋に到着。やったね。

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山頂から降りるときに大文字山も見えます。

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そして、登るときに見逃した三高の寮歌の歌碑も発見。「紅萌ゆる丘の花、早緑匂ふ岸の色、都の花に嘯けば、月こそかかれ吉田山」

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さあ、そろそろ、金婚式の記念の食事を予約した時間です。ぴったり、6時にたん熊北店 本店の前に到着。

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玄関先で待っていてくれた仲居さんに導かれて、2階の個室に案内されます。個室といっても広間の大きなテーブルにぽつんと置かれた2脚の椅子に腰かけて、見事な内装を眺めます。

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飲み物はシャンパンをお願いし、二人で乾杯。

さあ、料理です。まずはお店からの金婚式のお祝いのサービスのあんかけ金箔入りのお赤飯。無論、美味しいです。

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【先付】
鱧 松茸 菱蟹 生雲丹
秋野菜のジュレ酢

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先付けから、豪華な料理です。


【造り】
天然白身薄造り
車海老 中トロ あしらい

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鯛の薄造りが絶品です。社長で総料理長の栗栖正博氏が自ら包丁を握った一品です。
さらに車海老の殻焼きもついてきますが、絶妙の焼き加減でぱりぱり。

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【吸物】
土瓶蒸し
鱧 松茸 三つ葉 酢橘

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これは言わずもがなの美味しさ。
蓋を開けてみると、びっしりと、松茸と鱧が入っています。美味しいわけです。

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【焼物】
ぐじ焼 檸檬
銀杏松葉

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皮は別に焼くか揚げるかしたようで、ぱりぱり。ぐじも最高の味。


【中八寸】
菊菜菊花浸し 鱒 いくら
キャビア 魳小袖寿司
いちょう麩 海老
しし唐 床節 玉子松風 珍味

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お腹も満たされつつあるところに、どーんと豪華な中八寸。食べるスピードもぐんと落ちます。


【強肴】
和牛網焼 あしらい

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中八寸と格闘しているところに、若い料理人さんが炭火のコンロを持って登場。
その場でヒレ肉を切り分けて、焼いてくれます。なんとも美味しいです。中八寸を食べる箸を休めて、一気にいただきます。

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【蒸物】
丹波蒸し 銀餡
甘鯛 百合根

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もう、苦しい・・・


【御飯】
松茸御飯 三つ葉

【香の物】
三種盛り
柴漬 小蕪 昆布

【止椀】
赤出汁
焼茄子 三つ葉 豆腐

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楽しみにしていた松茸御飯。少しだけいただいて、残りは折に詰めてもらいます。


【水物】
メロン 巨峰
アイスクリーム

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記念の「おめでとう」のプレートを付けてもらいます。メロンは果物の王様。やはり、美味しいです。


【菓子・抹茶】
胡桃餅・長久の白

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苦しいといいながら、美味しい和菓子は別物。最後は抹茶で〆。


高額な支払いをクレジットカードで済ませ、総料理長と仲居さんに見送られながら、木屋町から河原町への路地を進みます。

最高の料理で節目の日を締めくくりました。



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秋の京都2023:相国寺と承天閣美術館

秋の京都、四日目です。

本来、昨日、書く筈でしたが、横浜の自宅に戻り、夜、どっと疲れが出たようで、眠くて眠くて、宵っ張りのsaraiでも深夜まで起きていられませんでした。ということで、1日遅れですが、以下、当日に書いたような記事になっていますが、ご容赦ください。

予定が未定の最終日。もう、大事なイベントは無事、終わったし、これまでsaraiが気になっていた承天閣美術館に行ってみましょう。合わせて、承天閣美術館のある相国寺の秋の特別展示も見ておきましょう。
相国寺と承天閣美術館の資料は昨日、京大近くの古書店で配偶者が見つけてくれました。《古寺行こう》というシリーズの1冊で綺麗な図版の多い雑誌ですが、何と200円という掘り出し物。前日にきっちりとこの資料で予習して、相国寺に向かいます。
最終日ということで気が緩み、昨日までは市バスに乗って移動していましたが、ホテル前でスマホを取り出し、スマホアプリ、GOでタクシーを呼びます。たった3分でタクシーが来ます。凄く便利ですね。
相国寺前にあっという間に着きます。タクシー料金はアプリ清算ですから、何もせずにすぐに降車。いやはや便利。
相国寺の総門です。さすが、京都五山の第2位という貫禄です。ちなみに相国寺は臨済宗相国寺派の本山として、山内塔頭のほか、山外塔頭として、金閣寺、銀閣寺を擁しています。

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長い参道を歩いていくと、異形の建物があります。鐘楼(洪音楼)です。入母屋造、本瓦葺の建物で袴腰を付けています。

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やがて、禅宗の伽藍に突き当たります。正面には切妻の白い壁が印象的な庫裏(香積院)が目を惹きます。

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現在、秋の特別展で法堂(はっとう)、方丈、開山堂の内部が公開されています。シニア料金の700円を払って、まず、法堂に入ります。
法堂の中に入ると、天井に描かれた狩野光信の蟠龍図(ばんりゅう図)が目に飛び込みます。

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案内の方の説明では、どの方向から見ても龍の顔がこちらを向くということですが、やはり、一番、表情が豊かなのはピンポイント。それは下で手を叩くと音が反響する鳴き龍という現象が起きるポイントと一致しています。絵師はそこから見ることを想定して描いたんだろうということでsaraiと配偶者の意見が一致します。
ご本尊の釈迦如来坐像もそのあたりからは比較的近くに見えます。

次いで、方丈に入ります。方丈は25m×16mという広さで室内は全168畳という大規模な建物で四方に広い縁が巡らせてあります。その縁の正面には白砂を敷き詰めた前庭があり、その先に法堂の巨大な建物が威容を誇ります。

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法堂の建物は大きな裳階(もこし)の上に反り上がった瓦屋根が載る堂々とした外観です。
前庭の白砂は光を反射して方丈の室内を照らす仕掛けになっています。

最後に開山堂に入ります。縁の前面には白砂を敷き詰めた枯山水の南庭があり、その奥には名木が配された築山があります。しばらくすると、紅葉が赤く染まり、さらに美しさを極めそうです。

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さて、いよいよ、承天閣美術館に向かいましょう。美しい庭の中を抜けていきます。
おっ、ツマグロヒョウモンが花の蜜を吸っています。

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承天閣美術館は現在、若冲と応挙という企画展のⅠ期目です。円山応挙の傑作、重要文化財《七難七福図巻》全三巻と画稿、下絵を一挙公開中です。なお、第Ⅱ期は伊藤若冲の傑作、重要文化財の《鹿苑寺大書院障壁画》五十面を一挙公開するそうです。

まずは若冲の動植綵絵(コロタイプ複製)全30幅。オリジナルは三の丸尚蔵館所蔵(要するに皇室ゆかりの品)。心なしか、オリジナルに比べて、精彩を欠くような気がしますが、鶏の描かれたものは素晴らしいです。なお、コロタイプ複製というのは、顔料による写真プリント技法です。オフセットに比べて、網目のないのが特徴ですが、多色印刷が難しいようです。京都の便利堂という専門店が文化財の複製制作で秀でているそうです。

動植綵絵全30幅中、saraiが心酔する3幅をご紹介しましょう。

《群鶏図》です。凄まじい構図です。そして、あふれかえるような色彩です。さらに、若冲の特徴である徹底した精密な写生が素晴らしいです。

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《芦雁図》です。これは驚くような構図ですね。芸術性では動植綵絵中、随一かもしれません。それにとても美しい!

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《牡丹小禽図》です。鮮やかな花の色彩の乱舞に魅了されます。

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次に若冲の釈迦三尊像は仏画とは言え、若冲らしさが横溢しています。以前見たときはそのよさが分かりませんでしたが、今回、初めて、この作品の素晴らしさが分かりました。

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左から、普賢菩薩像、釈迦如来、文殊菩薩。とりわけ、左の普賢菩薩は白象の上に座し、色鮮やかな衣を纏い、人間的な表情が印象的です。

続いて、円山応挙の《七難七福図巻》全三巻を見ますが、その膨大な絵巻物に舌を巻きます。こんなものをよく描いたものです。応挙の画力の凄さを実感しました。上巻が天災、中巻が人災、下巻が福寿ですが、特に中巻の人災の凄惨な絵に驚愕しました。とてもここに公開できるような絵ではありません。

今日の予定はここで終了。ちょうど、門内から出るタクシーをつかまえて、京都駅に直行。無性に食べたくなった京都ラーメンを拉麺小路にある名店、北白川のますたにでいただきます。

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久し振りに最後の一滴まで、美味しく感じながら食べました。うーん、満足。
帰りましょう。新幹線の指定を1時間早めて、なおかつ、土産物をきっちり買い集めて、乗車。
素晴らしい旅になりました。

1万7千歩、1万4千歩、1万9千歩、8千歩が4日間の歩数。こんなに歩いたのは久しぶり。足の痛みがぶり返さなければいいのですが・・・。



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テーマ : 国内、史跡・名勝巡り
ジャンル : 旅行

 

いずれも共通するプッチーニとラヴェルの音楽の際立つ美しさ《修道女アンジェリカ》《子どもと魔法》@新国立劇場 2023.10.9

新国立劇場 2023/2024シーズンの開幕を飾る公演はダブルビル、プッチーニ《修道女アンジェリカ》とラヴェル《子どもと魔法》です。

普通、考えれば、プッチーニ《修道女アンジェリカ》を後に置いて、感動的に終幕するところですが、何故、この順番なのか、結局、よく分かりませんでした。
ということで、まず、プッチーニ《修道女アンジェリカ》で幕が開きます。最初は修道院の場面の静謐なシーンで後半の劇的な展開への予感を孕んでいます。そして、侯爵夫人とのはりつめた空気の中、アンジェリカの未婚の子供の死が知らされて一瞬のうちに緊張の糸が切れて、キアーラ・イゾットンの劇唱が始まります。そして、まるでコラールのように心を慰めるオーケストラの間奏が美しく響きます。プッチーニの書いた最高の音楽を沼尻竜典指揮の東フィルが見事に歌い上げます。そして、絶望したアンジェリカのアリア「母もなしに」をキアーラ・イゾットンが透明な声で最高の歌唱を聴かせてくれます。どんどん、音楽も劇的に高潮し、毒をあおったアンジェリカが聖母マリアの許しを願います。最後のシーンは聖母マリアの恩寵による奇跡・・・あれっ、起こらない。奇跡が起こり、誰しもが感動するシーンなのに、奇跡で我が子の姿が現れるシーンがありません。ここで涙するところなのに、不発で終わります。一体、どういう演出? きっちり、台本通り、やってほしかったのに。キアーラ・イゾットンの絶唱が素晴らしかっただけに、おかしな演出で台無しになりました。ぐすん・・・。

次はラヴェルのファンタジーオペラ、《子どもと魔法》。これは素直な演出で色んな被り物や創意工夫にあふれた舞台で楽しめました。ラヴェルの美しい音楽を活かしきった演出でした。こういうコミカルな演出のほうが得意なのかな。先ほどのシリアスなオペラよりも百倍素晴らしい演出です。【子ども】役のクロエ・ブリオの見事な歌唱、【火/お姫様/夜鳴き鶯】の3役を美し過ぎる声で聴かせてくれた三宅理恵の最高の歌唱もあり、素晴らしいオペラでした。そして、何と言っても沼尻竜典の素晴らしい指揮による音楽の美しさがすべてでした。

まあ、一部の問題はありましたが、新国立劇場の2023/2024シーズンのオペラは上々の滑り出しと言えるでしょう。今シーズンの最大の楽しみは中村恵理の《椿姫》。2022年公演で聴かせてくれた最高の歌唱は今でもありありと思い出されます。《トリスタンとイゾルデ》も豪華キャストで楽しみです。何と藤村実穂子がお得意の【ブランゲーネ】役ですからね。ヴェストブルックのイゾルテ、ケールのトリスタンもよさそうです。オーケストラも都響です。


今日のキャストは以下です。

  【指 揮】沼尻竜典
  【演 出】粟國 淳
  【美 術】横田あつみ
  【衣 裳】増田恵美
  【照 明】大島祐夫
  【振 付】伊藤範子
  【舞台監督】髙橋尚史
  【合唱指揮】三澤洋史
  【児童合唱指揮】掛江みどり
  【合 唱】新国立劇場合唱団
  【児童合唱】世田谷ジュニア合唱団
  【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団 コンサートマスター:依田 真宣
  
  
   ジャコモ・プッチーニ
    修道女アンジェリカ 全1幕

  【アンジェリカ】キアーラ・イゾットン
  【公爵夫人】齊藤純子
  【修道院長】塩崎めぐみ
  【修道女長】郷家暁子
  【修練女長】小林由佳
  【ジェノヴィエッファ】中村真紀
  【オスミーナ】伊藤 晴
  【ドルチーナ】今野沙知恵
  【看護係修道女】鈴木涼子
  【托鉢係修道女1】前川依子
  【托鉢係修道女2】岩本麻里
  【修練女】和田しほり
  【労働修道女1】福留なぎさ
  【労働修道女2】小酒部晶子


   モーリス・ラヴェル
    子どもと魔法 全2部
  
  【子ども】クロエ・ブリオ
  【お母さん】齊藤純子
  【肘掛椅子/木】田中大揮
  【安楽椅子/羊飼いの娘/ふくろう/こうもり】盛田麻央
  【柱時計/雄猫】河野鉄平
  【中国茶碗/とんぼ】十合翔子
  【火/お姫様/夜鳴き鶯】三宅理恵
  【羊飼いの少年/牝猫/りす】杉山由紀
  【ティーポット】濱松孝行
  【小さな老人/雨蛙】青地英幸
  

最後に予習について、まとめておきます。

 ザルツブルク音楽祭2022ライヴ、プッチーニ:歌劇《修道女アンジェリカ》

  アスミク・グリゴリアン(アンジェリカ)
  カリタ・マッティラ(公爵夫人)
  ハンナ:シュヴァルツ(修道院長)
  エンケレイダ・シュコサ(修道女長)
  カテリーナ・ピーヴァ(修練女長)
  ジューリア・セメンツァート(ジェノヴィエッファ)
  マルティナ・ルッソマンノ(修練女オスミーナ)
  ダリル・フリードマン(修道女ドルチーナ)

  フランツ・ウェルザー=メスト(指揮)
  ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
  ウィーン国立歌劇場合唱団
  ザルツブルク音楽祭・劇場児童合唱団

  演出:クリストフ・ロイ
  舞台装置:エティエンヌ・プリュス
  衣装:バルバラ・ドロシン
  照明:ファブリス・ケブール
  ドラマトゥルグ:イヴォンヌ・ゲバウアー
  映像監督:ミヒャエル ベイヤー

  収録時期:2022年8月
  収録場所:ザルツブルク祝祭大劇場(ライヴ)
  NHKオンデマンド

グリゴリアンの終盤での絶唱は涙なしには聴けません。


 ラヴェル:歌劇《子どもと魔法》 リヨン国立歌劇場 2019年
 
  子ども:クレマンス・プッサン
  安楽椅子/フクロウ:ベス・モクソン
  夜鳴きウグイス/王女さま:マルゴ・ジュネ
  火/羊飼いの少女/コウモリ:エリカ・バイコフ
  母親/中国茶わん/トンボ:クレール・ガスコワン
  羊飼いの少年/雌猫/リス:アイラ・ヒューゼ
  ティーポット/小さな老人/カエル:ケリグ・ボシェ
  柱時計/雄猫:クリストフ・エンゲル
  肘掛け椅子/木:マシュー・バスウェル
  演出:ジェームズ・ポナス
  合唱:リヨン国立歌劇場合唱団
  管弦楽:リヨン国立歌劇場管弦楽団
  指揮:ティトゥス・エンゲル

  収録時期:2019年11月14・15・19日
  収録場所:リヨン国立歌劇場(フランス)
  NHK BS プレミアムシアターの録画
  
ファンタジーにあふれた公演です。



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

 

日本でこれほど素晴らしいバロック・オペラが聴けるとは ヘンデル 歌劇 《ジュリオ・チェーザレ》 鈴木優人指揮バッハ・コレギウム・ジャパン@東京オペラシティコンサートホール 2023.10.11

昨年の新国オペラの開幕公演でこのヘンデルの歌劇《ジュリオ・チェーザレ》の素晴らしい公演を聴いたことが記憶に新しいですが、今日はセミ・ステージ形式とは言え、すべてにおいて、素晴らしい公演で最高の満足感に浸ることができました。

《ジュリオ・チェーザレ》はストーリー展開よりも、ダ・カーポ・アリアの連続が主たるものですが、そのダ・カーポ・アリアを歌う主要キャスト8人が皆素晴らしく、とても聴き応えがあるなんてものではありませんでした。とりわけ、出番の多いタイトルロールのチェーザレ役のティム・ミードとヒロインのクレオパトラ役の森 麻季の歌唱が見事で、アジリタも気持ちよく聴けました。これでこそ、ヘンデルのオペラです。コーネリア役のマリアンネ・ベアーテ・キーラントは大人の魅力たっぷりで、憂いを帯びた歌唱には魅了されました。最後に明るい歌唱を聴かせてくれましたが、これは逆に違和感を感じてしまいました。そういう持ち味の歌手ですね。ともかく存在感を放っていました。そのコーネリアの息子セスト役は松井亜希ですが、そのズボン姿でいつもの松井亜希とは全く違って見えますし、彼女の新境地を聴いた思いです。その透明感のある高域の美しい声で歌われるセストは実にフレッシュ。ある意味、今日、一番、輝きを放っていました。彼女はソプラノですが、意外にフィガロのケルビーノを歌っても素晴らしいのではと予感しました。トロメーオ役のアレクサンダー・チャンスは初めて聴きますが、なかなかよいカウンターテナーです。その名前から連想しましたが、やはり、カウンターテナーの有名歌手マイケル・チャンスのご子息です。親子2代のカウンターテナーですね。カウンターテナーも今後、続々と親子2代の歌手が出てくるのでしょう。カウンターテナーと言えば、ニレーノ役の藤木大地。歌唱もさることながら、おどけた演技で客席を沸かせました。彼のこんな一面、初めて見ましたし、そもそもその扮装で藤木大地とはとても思えませんでした。数少ない男声歌手ですが、アキッラ役の大西宇宙は見事な歌唱と見事な体躯で素晴らしい仕事をしました。このところ、彼は大活躍ですね。

今回の演出は佐藤美晴が、ステージ上のBCJのオーケストラを四方の通路で囲み、そこを歌手たちが巡るという形式での演技です。衣装は凝ったものを着ていたので、通常のオペラを見る感覚でした。バロックオペラはこれで十分ですね。こんな感じでバロックオペラの上演の頻度を高めていってほしいと思います。

最後に、このヘンデルの歌劇《ジュリオ・チェーザレ》の素晴らしい公演が聴けたのは、BCJの素晴らしい演奏があったればこそです。鈴木優人の指揮とチェンバロも素晴らしく、BCJの若松夏美率いる弦楽アンサンブル、そして、フラウト・トラヴェルソの菅きよみやオーボエの三宮正満などの木管、ホルンの福川伸陽、そして、何と言っても素晴らしい通奏低音群。これらのオーケストラ陣がしっかりしていなければ、ヘンデルの美しい音楽を楽しむことができません。バッハ・コレギウム・ジャパン改め、ヘンデル・コレギウム・ジャパンを名乗ってもいいのではないかと思いながら聴いていました。

ヘンデルのオペラの連続公演を鈴木優人とBCJが企画してくれることを切に願うものです。


今日のプログラムは以下です。

 鈴木優人プロデュース/BCJオペラシリーズ Vol.3
 
  ヘンデル 歌劇 《ジュリオ・チェーザレ》 全3幕 セミ・ステージ形式

  指揮・チェンバロ:鈴木優人
  チェーザレ:ティム・ミード(カウンターテナー)
  クレオパトラ:森 麻季(ソプラノ)
  コーネリア:マリアンネ・ベアーテ・キーラント(アルト)
  クーリオ:加藤宏隆(バス・バリトン)
  セスト:松井亜希(ソプラノ)
  トロメーオ:アレクサンダー・チャンス(カウンターテナー)
  アキッラ:大西宇宙(バリトン)
  ニレーノ:藤木大地(カウンターテナー)

  佐藤美晴(演出)

  管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン コンサートマスター:若松夏美
   フラウト・トラヴェルソ:菅きよみ
   リコーダー:太田光子、浅井愛
   オーボエ:三宮正満、小花恭花
   ホルン:福川伸陽、根本めぐみ、大野雄太、藤田麻理絵
   ヴァイオリンⅠ:若松夏美、荒木優子、廣海史帆
   ヴァイオリンⅡ:高田あずみ、堀内由紀、山内彩香
   ヴィオラ:成田寛、秋葉美佳
   チェロ:山本徹、上村文乃
   コントラバス:今野京
   ファゴット:河府有紀
   ヴィオラ・ダ・ガンバ:福澤宏 
   テオルボ・ギター:佐藤亜紀子
   リュート:野入志津子
   ハープ:伊藤美恵
   チェンバロ:重岡麻衣、根本卓也
   
予習は時間がなくて、できませんでした。



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

       バッハ・コレギウム・ジャパン,  

カーチュン・ウォンの空前絶後のマーラー3番 日本フィルハーモニー交響楽団@サントリーホール 2023.10.13

saraiが過大な期待を持って臨んだカーチュン・ウォンのマーラーの交響曲第3番は見事に期待通りの素晴らしい演奏でした。

第1楽章から、恐るべき演奏が続きましたが、本当に素晴らしかったのは第6楽章。静謐に弦楽の演奏が続き、その繊細過ぎる表現に心が痺れるようです。そして、次第に音楽が高潮していき、もう、息もできないほどの感動と緊張感。このまま、倒れてしまいそうになります。そして、凄かったのは圧倒的なコーダ。こういうマーラーが聴きたかったんです。音楽と自分が一体化して、天上の世界に上り詰めそうです。カーチュン・ウォンの天才的とも言えるマーラーでした。これ以上、何を望むものがあるでしょうか。

カーチュン・ウォンの日本フィルへの要求水準は高過ぎるほどで、正直、どんなオーケストラも完璧な演奏は困難でしょう。しかし、日本フィルはほぼ、最高水準の演奏を聴かせてくれました。とりわけ、弦楽パートの素晴らしさは驚嘆すべきものでした。よく、破綻せずに持ちこたえたものです。カーチュン・ウォンの日本フィルのドライブも見事でした。どれだけ、リハーサルを重ねたんでしょうか。ヴィオラの健闘が印象的でした。何故、首席奏者の席にカルテット・アマービレの中恵菜がいたんでしょう。彼女は新日フィルの首席奏者の筈ですが・・・。
第3楽章の舞台裏のポストホルン独奏はオッタビアーノ・クリストーフォリ。素晴らしい演奏でした。ポストホルンをコルネットで代用したようです。
第1楽章の冒頭から、ホルンが響き渡りました。第3楽章あたりから、若干、不安定なところもありましたが、最後まで素晴らしい演奏を聴かせてくれました。
アルト独唱の山下牧子は最前面ではなく、舞台の右手の奥にちょっと引っ込んだところで歌いましたが、十分な声量で素晴らしい歌唱を聴かせてくれました。
女声合唱と児童合唱はP席に陣取って、しっかりした合唱を聴かせてくれました。

第6楽章以外では、長大な第1楽章でアッター湖の自然を思う存分に表現してくれました。シュタインバッハの作曲小屋を訪れたのは、もう10年前になりますが、脳裏に美しいアッター湖の自然がありありと蘇ります。続く第2楽章の自在とも思える演奏と表現は超絶的でした。ここまでの表現は聴いたことがありません。凄いの一語です。

語れば、きりがないような素晴らしいマーラーの第3番でした。カーチュン・ウォンの才能に惹かれて、今シーズンから日本フィルの定期会員になりましたが、その期待に応えてくれました。下期にはマーラーの交響曲第9番も聴かせてくれます。saraiが最も愛する音楽ですが、きっと、耽溺させてくれるような凄い演奏を聴かせてくれるでしょう。
カーチュン・ウォンが日本フィルを振ると、ヨーロッパの超一流オーケストラに匹敵する音が響きます。ジョナサン・ノットの東響とカーチュン・ウォンの日本フィル。目を離せない存在です。


今日のプログラムは以下です。

 【カーチュン・ウォン 首席指揮者就任披露演奏会】

  指揮:カーチュン・ウォン[首席指揮者]
  メゾ・ソプラノ:山下牧子
  女声合唱:harmonia ensemble
  児童合唱:東京少年少女合唱隊
  管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団 コンサートマスター:田野倉 雅秋

  マーラー:交響曲第3番 ニ短調
  
   《休憩なし》


最後に予習について、まとめておきます。

マーラーの交響曲第3番を予習したCDは以下です。

 ベルナルド・ハイティンク指揮シカゴ交響楽団 2006年10月19、20&21日 シカゴ、シンフォニーセンター、オーケストラ・ホール ライヴ録音
   ミシェル・デ・ヤング(Ms)
   シカゴ交響楽団女声合唱団
   デュアイン・ウルフ(合唱指揮)
   シカゴ児童合唱団
   ジョセフィン・リー(児童合唱指揮)

2006年よりシカゴ交響楽団の首席指揮者に就任した巨匠ハイティンクがシーズンのオープニングコンサートで取り上げたマーラー第3交響曲ライヴ録音です。カーチュン・ウォン同様、マーラーの演奏に絶対の自信を持つハイティンクも奇しくも同じ第3番を首席指揮者就任披露演奏会に選びました。演奏は実に自然でゆるぎないもので、終楽章のフィナーレの壮大で圧倒的な演奏に驚嘆しました。



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       カーチュン・ウォン,  

ファウストにはシューマンが似合う・・・瑞々しいシューマンのヴァイオリン協奏曲 大野和士&東京都交響楽団@サントリーホール 2023.10.1

たびたび来日して素晴らしい演奏を聴かせてくれるイザベル・ファウストですが、今回もお得意のシューマンを聴かせてくれるので、聴き逃がせません。その期待に応えてくれたシューマンのヴァイオリン協奏曲はとても聴き応えのある見事な演奏でした。

イザベル・ファウストはお洒落ないでたちでステージに登場します。
第1楽章から、彼女のヴァイオリンはよく響きます。1704年製ストラディヴァリウス[スリーピング・ビューティー]なのでしょうか。CDでは、このヴァイオリンにガット弦を張って演奏していましたが、今日は通常の弦のようです。
第1楽章はシューマンの万年青年ぶりを感じさせる溌剌とした表現でポジティブな雰囲気の演奏です。第2主題の何とも言えない雰囲気がたまりません。長大な楽章を爽やかに弾き抜きます。とても素晴らしい。これぞシューマンです。
第2楽章は一転して、小さな音量で抒情的な音楽を内面的に演奏します。実に繊細極まりない表現に聴き入ります。これこそ、シューマンの魅力ですね。この楽章は聴いていて哀しくなります。
第3楽章はファウストの身振りも音楽に合わせて、踊るような感じに変わります。舞曲のように聴いていながら体がスイングしそうになります。ファウストの演奏は実にノリのよい流麗なものです。
結局、彼女の演奏は各楽章の特性に合わせて最適化されたような素晴らしいものでした。ここには3人のシューマンがいて、それを最高に表現してくれました。ファウストのシューマンの行き着くところといった風情の音楽に魅惑された演奏でした。
今日はこれが聴けただけで満足。大野和士指揮の都響も素晴らしいサポートでした。
あっ、アンコールに触れるのを忘れるところでした。バッハの無伴奏に似ているようで、明確に違う曲が実に繊細に演奏されました。これはバッハの前の世代のヨハン・パウル・フォン・ヴェストホフの無伴奏の作品でした。バッハ以前にもこういう無伴奏曲があったのですね。よいものを聴かせてもらいました。

シューマン以外にも一言。

マグヌス・リンドベルイのアブセンスは現代音楽ですが、ベートーヴェンにオマージュした作品。混沌とした現代音楽風の中に現れるタータターという跳躍音型がベートーヴェンのピアノ・ソナタ《告別》から引用したものでしょうか。この音型がヴィオラによって再三登場しますが、その印象が鮮烈に響きます。

後半のベートーヴェンの交響曲第7番は都響のアンサンブルがよく響き、気持ちのよい演奏でした。大野和士の感性的な表現もよかったと思います。最近の大野和士は以前のような知性に偏った表現が影を潜め、感性のおもむくままという傾向が好感を持てます。


今日のプログラムは以下のとおりです。

  指揮:大野和士
  ヴァイオリン:イザベル・ファウスト
  管弦楽:東京都交響楽団 コンサートマスター:矢部達哉

  マグヌス・リンドベルイ:アブセンス-ベートーヴェン生誕250年記念作品-(2020)[日本初演]
  シューマン:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調
   《アンコール》ヴェストホフ:無伴奏ヴァイオリンのための組曲 イ長調より サラバンド
   
   《休憩》
   
  ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 Op.92
   

最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のマグヌス・リンドベルイのアブセンスは予習していません。


2曲目のシューマンのヴァイオリン協奏曲を予習したCDは以下です。

 イザベル・ファウスト、パブロ・エラス=カサド指揮フライブルク・バロック・オーケストラ 2014年5,8,9月 テルデックス・スタジオ・ベルリン セッション録音

ファウストの瑞々しい演奏はシューマンにぴったりです。


3曲目のベートーヴェンの交響曲第7番を予習した映像は以下です。

 キリル・ペトレンコ指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 2018年8月24日 ベルリン・フィルハーモニー ライヴ収録 (ベルリン・フィル デジタル・コンサートホール)

キリル・ペトレンコのダイナミックな指揮に完璧に反応するベルリン・フィルの高レベルな演奏能力による素晴らしいベートーヴェン。



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       ファウスト,  

新しい響きを引き出したドビュッシーの「ペレアスとメリザンド」、ノット流のシャープで明確なヤナーチェクのグラゴル・ミサ・・・ジョナサン・ノット&東響@サントリーホール 2023.10.15

また、ジョナサン・ノットがやってきました。やはり、ノットが振ると、東響は凄い響きで音楽を奏でてくれます。
前半はドビュッシーのオペラ「ペレアスとメリザンド」をノット自身が編曲したオーケストラヴァージョンが奏でられます。冒頭の森のシーンだけは聴き慣れた「ペレアスとメリザンド」の響きが耳に残りますが、その後はこんなオーケストラの響きがあったのかと首をひねるばかりです。その新しい響きに魅惑されているうちに音楽が進行し、恐れていた眠気などは一切、吹き飛びます。オペラの編曲版というよりもドビュッシーの新たなオーケストラ曲が誕生したという思いに駆られます。ミステリアスな雰囲気で魅力に満ちた傑作オーケストラ曲です。saraiにとっては交響詩《海》などよりもよっぽど素晴らしい作品に思えます。素晴らしい音楽、素晴らしい演奏でした。弦楽パートも木管パートも素晴らしい演奏でした。

後半はヤナーチェクの奇想のミサ曲、グラゴル・ミサです。本場チェコを中心にソロ歌手を呼び、万全の体制での演奏です。それにしてもノットがヤナーチェクとは虚を突かれた思いです。かなり、イメージが違います。しかし、さすがにジョナサン・ノットは超絶的とも思える指揮と音楽作りで素晴らしいグラゴル・ミサを実現してくれました。こんなにシャープな表現のヤナーチェクを聴くのは初めてかもしれません。ノットの高い要求水準に応えた東響の弦楽アンサンブルの凄さにも感嘆しました。しかし、見方を変えれば、ヤナーチェクの音楽へのアプローチというよりもノットの得意とする現代音楽へのアプローチのようにも思えました。まあ、聴き応えのある音楽ならば、そんな些細なことに拘泥する必要もありませんね。東響の演奏、そして、東響コーラスの健闘に加えて、ソプラノ・ソロのカテジナ・クネジコヴァが張りのある声で素晴らしい歌唱。本場チェコ出身の彼女はオペラのカーチャ・カバノヴァーを彷彿とするような見事な歌唱で、ヤナーチェクの本質に切り込むような表現と響きで魅了してくれました。テノールのマグヌス・ヴィギリウスも高域の声がよく出ていて、聴き映えのする歌唱でした。オルガンの大木麻理も第8曲で素晴らしいソロを響き渡らせてくれました。彼女は一週間後のオペラシティシリーズでもリゲティのハンガリアン・ロックのオルガン・ソロ演奏を聴かせてくれるようです。楽しみですね。

今後、ジョナサン・ノットが取り上げていくはずのヤナーチェクの音楽にも注目desu.


今日のプログラムは以下のとおりでした。

  指揮:ジョナサン・ノット 
  ソプラノ:カテジナ・クネジコヴァ 
  メゾソプラノ:ステファニー・イラーニ
  テノール:マグヌス・ヴィギリウス
  バス:ヤン・マルティニーク
  オルガン:大木麻理
  合唱:東響コーラス
  管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:小林壱成
  

  ドビュッシー/ノット編:交響的組曲 「ペレアスとメリザンド」

  《休憩》
  
  ヤナーチェク:グラゴル・ミサ(Paul Wingfieldによるユニヴァーサル版)


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のドビュッシー/ノット編の交響的組曲 「ペレアスとメリザンド」は予習していません。
オペラから編曲箇所を抽出して聴けばよかったのかもしれませんが、その手間をかける気力がありませんでした。


2曲目のヤナーチェクのグラゴル・ミサを予習した演奏は以下です。

  カレル・アンチェル指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 1963年 セッション録音
    ドマニーンスカー(S)、ソウクポヴァー(A)、ブラフト(T)、ハーケン(Bs)、
    チェコ・フィルハーモニー合唱団、ヴォドラーシカ(org)

本場ものの演奏。しかも指揮はカレル・アンチェルとくれば、悪かろう筈がありません。熱い演奏です。



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       ジョナサン・ノット,  

牙をむいたヴァイグレ 戦慄のアイスラー:ドイツ交響曲 読売日本交響楽団@サントリーホール 2023.10.17

今回もまた、読響の定期では日本初演。それも旧東ドイツのユダヤ系ドイツ人、アイスラーの渾身の大作にして問題作のドイツ交響曲を同じく旧東ドイツ出身のセバスティアン・ヴァイグレが超本気モードで演奏しました。キャストはずらっとドイツ系の名歌手を揃えて、圧倒的な迫力で有無を言わせぬ会心の音楽を聴かせてくれました。題名は交響曲となっていますが、反ファシズム(ナチズム)を掲げた壮大なカンタータで、一部、純管弦楽曲も含みます。
そのメッセージ性の高さもさることながら、音楽的にも、無調風のパートやロマンティックなパートも織り交ぜながら、ともかく、読響の素晴らしいアンサンブルと音響に魅了されました。新国立劇場合唱団の美しい合唱はいつもの通りのレベルの高さです。ソロ歌手は実績のある名歌手たちなので、みな素晴らしかったのですが、なかでもバリトンのディートリヒ・ヘンシェルの真摯で劇的な歌唱はたまりません。バスのファルク・シュトルックマンはひさしぶりにオペラ以外で聴きましたが、その声の響きは健在ですね。メゾ・ソプラノのクリスタ・マイヤーは実に安定した歌唱でした。若手?のソプラノのアンナ・ガブラーも力のある歌唱を聴かせてくれました。
セバスティアン・ヴァイグレが骨のある演奏を聴かせてくれたの一語で、この大作に釘付けになって、聴き入りました。こんな音楽と演奏、saraiは好きですよ。ふにゃふにゃした現代音楽よりもずっと聴き応えがあります。

前半はアイスラーと同じく、ナチスによってアメリカへの亡命を余儀なくされたヒンデミットの作品。ヒンデミットと言えば、ドイツ表現主義的な作風を思い起こしますが、この作品は聴きやすい新古典主義的なピアノ協奏曲。ここでも読響の素晴らしいアンサンブル力が発揮されます。初めて聴くピアノのルーカス・ゲニューシャスは素晴らしい響きとタッチで、初めの部分は上質なプロコフィエフを思わせます。彼のプロコフィエフは凄そうですね。ともかく、この曲の演奏はゲニューシャスの美しいピアノを軸に進行しました。アンコール曲はショパンのような美しい調べです。後の曲名発表で「なつかしきウィーン」と知りました。ウィーン、懐かしいですね!


今日のプログラムは以下です。

  指揮:セバスティアン・ヴァイグレ
  ピアノ:ルーカス・ゲニューシャス
  ソプラノ:アンナ・ガブラー
  メゾ・ソプラノ:クリスタ・マイヤー
  バリトン:ディートリヒ・ヘンシェル
  バス:ファルク・シュトルックマン
  合唱:新国立劇場合唱団(合唱指揮:冨平恭平)
  管弦楽:読売日本交響楽団  コンサートマスター:長原幸太

  ヒンデミット:主題と変奏 「4つの気質」
  
   《アンコール》ゴドフスキ:トリアコンタメロン 第11番「なつかしきウィーン」

   《休憩》

  アイスラー:ドイツ交響曲 Op.50(日本初演)


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のヒンデミットの主題と変奏 「4つの気質」は以下の録音を聴きました。

 クララ・ハスキル、パウル・ヒンデミット指揮フランス国立管弦楽団  1957年9月22日 モントルー ライヴ録音

ハスキルとは思えない力強い演奏。


2曲目のアイスラーのドイツ交響曲は以下の録音を聴きました。

 マックス・ポンマー指揮ベルリン放送交響楽団 1987年10月30日 ベルリン、シャウシュピールハウス セッション録音
  マルティン・ザイフェルト(語り)
  シュテファン・リゼウスキ(語り)
  ギーゼラ・ブルクハルト(ソプラノ)
  ウタ・プリエフ(メゾ・ソプラノ)
  ローズマリー・ラング(アルト)
  アンドレアス・ソンマーフェルト(バリトン)
  トマス・メーヴェス(バス)
  ベルリン放送合唱団

明快な演奏。



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熱狂と壮大な自然を表現 クラウス・マケラ&オスロ・フィル@東京藝術劇場コンサートホール 2023.10.18

クラウス・マケラがお国もののシベリウスを手兵オスロ・フィルとともに演奏します。しかし、待てよ。オスロって、ノルウェーだよね。シベリウスはフィンランド。何故、フィンランドのオーケストラじゃなくて、ノルウェーのオーケストラなんだろう。マケラがヘルシンキ・フィルなどの首席指揮者にならないのが不思議です。最高のシベリウスになる筈でしょう。

これまで、マケラは都響とパリ管を指揮するのを聴き、その天才ぶりを存分に感じました。今回も彼は天才の片鱗を見せましたし、オスロ・フィルも健闘して、素晴らしいシベリウスを聴かせてくれましたが、正直なところ、都響やパリ管ほどの能力をオスロ・フィルは何分にも持ち合わせていないようで、静謐なところでの繊細なアンサンブルやトゥッティでの美しい音響は今一つ。それでも、前半の交響曲第2番の第4楽章では、マケラの煽るような物凄い指揮で勢いあふれる熱狂を高弦が聴かせてくれました。響きの美しさよりも音楽の持つ力で素晴らしい演奏でした。後半の交響曲第5番は幾分、アンサンブル力も向上して、春の息吹を感じさせる壮大な自然を美しく聴かせてくれました。マケラはどのオーケストラでもその持てる能力を最大限引き出す力を示してくれます。無論、能力の高いオーケストラならば、彼の天才が遺憾なく発揮できます。映像だけですが、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団を指揮したシベリウスの交響曲第4番は圧倒的な演奏でした。

いずれにせよ、クラウス・マケラの凄い指揮能力は疑いなく、それなりに満足できたコンサートでした。次は是非、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団とともに来日してほしいものです。ウィーン・フィル、ベルリン・フィルよりも聴きたい・・・といいつつ、次は来月のウィーン・フィル、ベルリン・フィルのコンサートを期待しているsaraiです。



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       マケラ,  

クァルテット・ベルリン=トウキョウのハイドン、シュルホフ、そして、ベートーヴェンの後期は素晴らしい高みに達した心の震える演奏@鶴見サルビアホール 2023.10.20

クァルテット・ベルリン=トウキョウのコンサートは昨年、コロナ禍で2度に渡る延期の後で、ようやく聴けて、今年も昨年に続いてのコンサート。今後も毎年1回のペースで聴けそうです。彼らは北海道の六花亭札幌本店・ふきのとうホールのレジデント・アンサンブルですから、安定した来日が期待できます。テレビのCMでも彼らの演奏が流れると、はっと気になります。

彼らはベートーヴェンの弦楽四重奏曲を初期、中期とじっくりと取り組んできて、そして、遂に満を持して、昨年、後期の作品を演奏しました。まず第15番 Op.132でした。てっきり、後期の傑作、第13~15番を作曲順に演奏していくと思っていたら、後期の最初の曲、弦楽四重奏曲 第12番 Op.127がプログラムに組み込まれました。じっくりと後期の作品に取り組むのですね。
第1楽章の冒頭の分厚い和音が圧倒的な響きで、もう、それを聴いただけで満足という感じです。ベートーヴェンの、いや、人類の到達した音楽の最高峰とも言える、後期弦楽四重奏曲の幕開きを告げる響きです。主部に入ると、瞑想的な哲学とも思える音楽が彼ら4人によって、粛々と演奏されていきます。第2楽章はベートーヴェン後期様式を代表する変奏曲となります。静謐で精神性の高い音楽がゆったりとしたテンポで奏でられます。彼ら4人の集中力は大変なもので、聴いているsaraiも深く惹き込まれていきます。人間がこんなに崇高な音楽に到達したとは信じられない思いで聴き入ります。第5変奏までの道のりは気が遠くなるような時間の経過があったように思いました。ベートーヴェンの後期の本質に切り込んだ大変な力演でした。もう、ここまででsaraiの精神力は使い果たした思いです。第3楽章のスケルツォも自由闊達な音楽ですが、もう疲れ切ったsaraiは集中力が切れています。第4楽章の前の休みで体制を立て直して、最後の力をふりしぼって聴き入ります。溌剌とした精力的な音楽が進行していきます。ここではsaraiも音楽に乗っていきます。そして、最後のコーダが高潮して曲が閉じられます。聴衆の拍手まで一瞬の時間があります。そこにこそ、後期弦楽四重奏曲の感動があります。素晴らしい演奏でした。来年は順番でいけば、いよいよ、第13番。大フーガ付きでお願いしたいものです。あるいは、いきなり、第14番でしょうか。いずれにせよ、来年は彼らの記念碑的演奏が聴けるでしょう。

前半は、明快で完璧なハイドンの弦楽四重奏曲 第53番 Op.64-5「ひばり」。こんな素晴らしいハイドンはなかなか聴けません。それにやはり、名曲です。第1楽章の美しさには心が震えました。第2楽章以降も最高の演奏でした。

前半はシュルホフの弦楽四重奏のための5つの小品で〆ます。多分、初聴きです。何と素晴らしい音楽でしょう。第4曲のタンゴ、第5曲のタランテラで気持ちが高揚しました。同時代のユダヤ人作曲家、コルンゴルトとこのシュルホフは今後、もっと演奏されていくでしょう。

やはり、楽しみにしていたクァルテット・ベルリン=トウキョウは期待を裏切らない素晴らしい演奏を聴かせてくれました。


今日のプログラムは以下のとおりです。
  クァルテット・ベルリン=トウキョウ
    守屋剛志 vn  モティ・パヴロフ vn  グレゴール・フラーバル va  松本瑠衣子 vc
    
  ハイドン:弦楽四重奏曲 第53(67)番 ニ長調 Op.64-5「ひばり」
  シュルホフ:弦楽四重奏のための5つの小品
  
   《休憩》

  ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第12番 変ホ長調 Op.127
  
   《アンコール》
     エルガー:愛の挨拶
     グラズノフ:弦楽四重奏のための5つのノヴェレッテ Op.15 より 第2曲 オリエンタル風   
     
最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のハイドンの弦楽四重奏曲 第53番 Op.64-5「ひばり」を予習したCDは以下です。

 リンゼイ弦楽四重奏団 1999年4月28日 聖トリニティ教会、ウェントワース、ヨークシャー、英国 セッション録音
  ピーター・クロッパー vn、ロナルド・バークス vn、ロビン・アイルランド va、バーナード・グレガー=スミス vc

実に素晴らしい演奏です。思わず聴き惚れてしまいました。


2曲目のシュルホフの弦楽四重奏のための5つの小品を予習したCDは以下です。

 エルサレム弦楽四重奏団 2018年12月 テルデック・スタジオ・ベルリン セッション録音
  アレクサンドル・パヴロフスキー vn、セルゲイ・ブレスレル vn、オリ・カム va、キリル・ズロトニコフ vc
  
切れ味鋭い演奏。録音もよい。


3曲目のベートーヴェンの弦楽四重奏曲 第12番 Op.127を予習したCDは以下です。

 リンゼイ弦楽四重奏団 2001年6月27日 聖トリニティ教会、ウェントワース、ヨークシャー、英国 セッション録音
  ピーター・クロッパー vn、ロナルド・バークス vn、ロビン・アイルランド va、バーナード・グレガー=スミス vc

リンゼイ弦楽四重奏団の2回目のベートーヴェン弦楽四重奏曲全集の1枚。彼らの後期四重奏曲はまったくもって素晴らしい。



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ジョナサン・ノットと東響による瑞々しさにあふれるブルックナーの交響曲第1番@東京オペラシティコンサートホール 2023.10.21

ジョナサン・ノットのブルックナーもいよいよ第1番です。昨年の第2番では、極めて美しい演奏を聴かせてくれましたが、今回の第1番はそれ以上の美しさでした。それにブルックナーの第1番は実に若々しい響きの音楽で、第2番以降とはかなり趣きが異なって、ブルックナーの別の一面を聴くことができます。saraiは第00番を除くと、この第1番だけは実演で聴いていなかったので、これで第0番~第9番まですべて、実演で聴いたことになります。

第1楽章の冒頭から、素晴らしい響きで魅了されます。低弦できっちりと行進曲風のリズムを刻みながら、第1ヴァイオリンが実に美しく第1主題を奏でていきます。木管も美しく響き、第1ヴァイオリンが第2主題を美しく響かせます。ブルックナー風ではありますが、これまでのブルックナーでは聴いたことのない実に瑞々しい響きです。そして、ノットが美しくも激しく棒を振り、音楽は高潮していきます。いったん落ち着きますが、今度は金管が咆哮し、再び、音楽が盛り上がります。こういう波が繰り返されながら、音楽は進行していきます。そして、ノットの気魄の掛け声とともにコーダに突入し、圧巻の高揚で曲を閉じます。その凄まじさに拍手したい気分です。

第2楽章のアダージョは抒情的な音楽。弦の各パートの対位法的な展開が印象的です。弦を中心に木管が絡んで優しい調べにうっとりと聴き惚れます。

第3楽章のスケルツォは後のブルックナーを思わせる躍動した音楽が展開されていきます。牧歌的なトリオを含めて、すべて反復があり、思いのほか、長い楽章です。ちょっと冗長かもしれません。

第4楽章は極めて速いテンポで音楽が進行します。東響の見事なアンサンブルに魅了されます。この楽章の途中から、素晴らしい演奏になり、陶然として聴き惚れます。弦に木管、そして、金管が加わり、素晴らしく高潮していきます。そして、コーダに入ります。木管、金管から弦の圧倒的な盛り上がりをみせて、ハ短調からハ長調に転調して、盛大な完結を迎えます。ノットの気魄が東響に乗り移って、凄いしめくくりになりました。

ブルックナーの交響曲第1番がこんなに素晴らしいとは・・・ノット&東響の演奏は最高でした。
来シーズンのノットのブルックナーは第00番を期待していましたが、第7番を演奏する予定です。無論、第7番も楽しみです。

前半は大木麻理のオルガン独奏によるリゲティのハンガリアン・ロック。素晴らしい演奏でした。難しいリズムも難なく決めて、ノリのよい音楽が続き、最後はカタルシスのような和音を響かせて終わります。
続いて、ベリオの声(フォーク・ソングⅡ)。ヴィオラのディミトリ・ムラトの熱演とノットのあり得ないような見事な指揮による2群のオーケストラの超絶的な演奏で圧倒されました。2群のオーケストラはステージ上と2階の客席に分かれて配置。この配置で演奏すること自体、無理がありそうですが、ノットは完璧にドライヴ。こういう現代曲になると、ノットは真価を発揮します。実に明快なベリオでした。大変、感銘を覚えました。リゲティの独奏曲とセットで演奏するというアイディアもノットらしい見事な発想です。


今日のプログラムは以下のとおりです。

  指揮:ジョナサン・ノット
  ヴィオラ:ディミトリ・ムラト
  オルガン:大木麻理
  管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:グレブ・ニキティン

  リゲティ:ハンガリアン・ロック(オルガン独奏)
  ベリオ:声(フォーク・ソングⅡ) ~ヴィオラと2つの楽器グループのための

   《休憩》
   
  ブルックナー:交響曲 第1番 ハ短調 リンツ稿ノヴァーク版
  

最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のリゲティのハンガリアン・ロックを予習した演奏は以下です。

  ピエール・シャリアル  1995年10月31日-11月2日、ドイチュラント放送、ケルン放送局スタジオ セッション録音

1997年にリゲティ生誕75年を記念して発売された「リゲティ・エディション」で、リゲティ自身が監修したものです。
とても見事な演奏です。これはバレル・オルガン独奏ですが、この「リゲティ・エディション」内には、チェンバロ版も含まれています。


2曲目のベリオの声(フォーク・ソングⅡ)を予習したCDは以下です。

  キム・カシュカシャン、デニス・ラッセル・デイヴィス指揮ウィーン放送交響楽団 1999年11月 ORFスタジオ、ウィーン セッション録音

カシュカシャンの見事な演奏。


3曲目のブルックナーの交響曲 第1番を予習した演奏は以下です。

  エリアフ・インバル指揮フランクフルト放送交響楽団 ブルックナー:交響曲全集 1982~88年、フランクフルト、アルテ・オーパー セッション録音

00番、0番も含めた原典版、第1稿を主体にしたユニークなブルックナー交響曲全集です。第1番もリンツ稿ノヴァーク版を用いた演奏で安定したインバルらしい演奏です。録音も結構良い方です。



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       ジョナサン・ノット,  

カーチュン・ウォンのがっちりした古典的様式感とロマンが交錯した最高のブラームス1番 日本フィルハーモニー交響楽団@サントリーホール 2023.10.22

カーチュン・ウォンのブラームス、初めて聴きますが、交響曲第1番の第1楽章の冒頭の序奏の分厚い響きを聴いただけで、すっかり、魅了されます。実に力強くて美しいです。まさにブラームスの世界観を体現した響きにうっとりと魅了されるのみです。序奏冒頭部が再び奏されて、これだけで1曲聴いたような満足感です。主部のアレグロに入り、ベートーヴェンを意識したような堂々たる古典的様式感にブラームスのロマンが付け加わった独特な音楽が粛々と進行していきます。カーチュン・ウォンは指揮棒を大きく使ったスケール感のある指揮で日本フィルを鼓舞して、腰の据わったブラームスを奏でます。コーダはハ長調に転じて静かに曲を閉じます。うーん、やりますね。

第2楽章のアンダンテ・ソステヌートは抒情的な音楽が弦で奏でられた後、オーボエのソロが物哀しい旋律を歌い上げます。トリオでもオーボエのソロが活躍します。再現部では、ホルンに続いて、コンサートマスターの扇谷 泰朋の美しく、よく響くソロが主導して、この楽章を閉じます。カーチュン・ウォンの見事な表現力に感銘を受けます。

第3楽章は間奏曲風の短い楽章です。牧歌的な雰囲気を醸し出しながら、続く第4楽章を暗示しつつ、優雅な音楽を奏でます。

そして、間を置かず、すぐに第4楽章の重い序奏が始まります。やがて、序奏の第2部でホルンが朗々とした主題を歌い上げ、金管がコラール風に展開していきます。第1楽章の序奏をさらに拡大したような序奏をカーチュン・ウォンと日本フィルは堂々と演奏。
長い序奏が静かに終わると、ベートーヴェンの第9番の歓喜の歌を想起する第1主題が弦楽合奏で美しく奏で上げられます。日本フィルの弦楽アンサンブルの素晴らしさを感じずにはいられません。続いて、第2主題も弦楽合奏で演奏され、提示部の小結尾は高らかに高潮していきます。次いで、再び、第1主題がさきほどと同じ形で弦楽合奏で奏でられて、その後、展開されていきます。そして、音楽は高揚していきます。カーチュン・ウォンが凄まじい勢いで弦の各パートを鼓舞して、圧倒的に盛り上がります。そして、再現部を経て、コーダに入ります。そして、コラール風主題がファンファーレのように高らかに奏で上げられて、音楽の頂点を形成していきます。そして、主和音の四連打を経て、劇的に曲を閉じます。実に壮大なフィナーレでした・・・拍手が早過ぎる! 言いたくありませんが、このような素晴らしい演奏の後は感動をかみしめたいものです。ここはサントリーホールですよ!

ともあれ、素晴らしいカーチュン・ウォンのブラームスでした。
カーチュン・ウォンの存在感が次第に大きくなってきました。今後がますます楽しみです。

前半のショパンのピアノ協奏曲第1番、亀井聖矢は好演でしたが、むしろ、アンコール2曲目のリストのラ・カンパネラが素晴らしい演奏でした。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:カーチュン・ウォン[首席指揮者]
  ピアノ:亀井聖矢
  管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団 コンサートマスター:扇谷 泰朋

  ショパン:ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 Op.11
  
   《アンコール》ショパン:マズルカ Op. 59-2
          リスト:ラ・カンパネラ

   《休憩》
   
  ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 Op.68


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のショパンのピアノ協奏曲第1番を予習した演奏は以下です。

 マウリツィオ・ポリーニ、クリスティアン・ティーレマン指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 2016年1月16日 ベルリン・フィルハーモニー ライヴ収録 (ベルリン・フィル デジタル・コンサートホール)

老境のポリーニ、流石のショパンに聴き惚れました。


2曲目のブラームスの交響曲第1番を予習した演奏は以下です。

 サー・サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 2018年5月27日 ベルリン・フィルハーモニー ライヴ収録 (ベルリン・フィル デジタル・コンサートホール)

ベルリン・フィルの達人たち、見事な演奏です。管のソロはホルンはシュテファン・ドール、フルートはエマニュエル・パユ、クラリネットはアンドレアス・オッテンザマー、オーボエはアルブレヒト・マイヤーという豪華な布陣。コンマスはダニエル・シュタブラーヴァ。



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       カーチュン・ウォン,    

今日も続く、この感動の一枚!!

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山中湖から見たダイヤモンド富士です。連日、ダイヤモンド富士を見られる僥倖にあずかりました。
明日も懲りずに山中湖からのダイヤモンド富士を見る予定です。運よく3日連続の幸運に遭遇できるでしょうか。
昨日も今日も数分前まで富士山は雲に覆われていましたが、太陽が富士山の山頂に沈み始める瞬間にぱーっと雲が晴れました。



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今日の一押し!!

2023102701.jpg



山中湖にダイヤモンド富士を見に来ています。今日は3日目です。
自然の驚異に今日も圧倒されます。一瞬のうちに眺めが変わります。この素晴らしい輝きも実は一瞬後に雲が邪魔するんです。
それにしても、素晴らしい3日間でした。



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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
たまには、旅ブログも書きます。

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金婚式、おめでとうございます!!!
大学入学直後からの長いお付き合い、素晴らしい伴侶に巡り逢われて、幸せな人生ですね!
京都には年に2回もお越しでも、青春を過ごし

10/07 08:57 堀内えり

 ≪…長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さ…≫を、長調と短調の振り子時計の割り振り」による十進法と音楽の1オクターブの12等分の割り付けに

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じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
その後、ザル

07/08 18:59 sarai

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公演では小沢、ショルティだけ

ベーム、ケルテス、ショルティ、クーベリック、
クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
、チェリブ

07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

もろともにあはれとおもへ山ざくら 花よりほか

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