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わーい!ハーゲン・クァルテット祭りの開幕だ・・・ベートーヴェン、モーツァルトもいいが、ラヴェルの豊饒さは圧巻@トッパンホール 2023.10.31

今年のハーゲン・クァルテットの〈ハーゲン プロジェクト 2023〉と銘打った3夜連続のコンサート・シリーズはベートーヴェンとモーツァルトの作品を軸にラヴェルとドビュッシーをプラスしたものです。何と言っても、彼らのベートーヴェンが注目されます。第3夜では、大フーガ付きの第13番 Op.130/Op.133が演奏され、今回の3回のコンサートはそれに向かって、上り詰めていくという配列になっていると感じます。そういう意味では、今夜はホップ・ステップ・ジャンプのホップの腕ならし、耳ならしのコンサートです。気楽に聴きましょう。4年ぶりのハーゲン・クァルテット祭りの開幕です。

最初のベートーヴェンの弦楽四重奏曲第11番《セリオーソ》は第1楽章は気魄と哀愁が交錯するような彼ら独特の表現。しっかりと堪能しました。第2楽章はクレメンスの印象的なチェロの演奏、そして、ヴェロニカのヴィオラから開始されるフーガに魅了されました。第3楽章は勢いのある演奏が圧倒的で、トリオは実に静謐。第4楽章は序奏の後、勢いのある情熱的なフレーズに魅了されました。最後は明るく〆。今回の3回のコンサートはこのベートーヴェンで開始し、明後日の第3夜はベートーヴェンの弦楽四重奏曲第13番で閉じるという構成になっています。それにふさわしい開幕演奏でした。

次はモーツァルトの弦楽四重奏曲第14番。ハイドン・セットの最初の曲です。作曲したモーツァルトの意気込みとハーゲン・クァルテットの気合いが実にマッチしていました。とりわけ、第4楽章の素晴らしさに感銘を受けました。やはり、弦楽四重奏曲に対位法はマッチしますね。ベートーヴェンも見事ですが、モーツァルトも素晴らしい音楽を書いています。

ここで休憩。

最後はラヴェルの弦楽四重奏曲。今日一番の演奏でした。一見、ハーゲン・クァルテットには似合いそうもないと思われますが、さすが、見事に弾きこなします。まず、響きの美しさに魅了されます。そして、緻密な音楽表現に引き込まれます。第1楽章のエスプリに満ちたフランス伝統の音楽表現。そして、第2楽章はピッツィカートの勢いに満ちた弾けるような音楽に魅了されます。ここまで、ハーゲン・クァルテットの素晴らしい演奏が光ります。極め付きは第3楽章の抑えに抑えた内省的な音楽の深みです。これこそ、音楽の醍醐味です。何と言う演奏、何と言う音楽。最後の第4楽章は一転して、激しい音楽。圧倒的な演奏でした。明日のドビュッシーも楽しみです。

これから、明日、明後日とハーゲン・クァルテットを堪能します。4年前のバルトークの素晴らしさを思い出しています。


今日のプログラムは以下のとおりでした。

 〈ハーゲン プロジェクト 2023〉ハーゲン・クァルテット 第1夜

ハーゲン・クァルテット Hagen Quartett
    ルーカス・ハーゲン Lukas Hagen (ヴァイオリン)
    ライナー・シュミット Rainer Schmidt (ヴァイオリン)
    ヴェロニカ・ハーゲンVeronika Hagen (ヴィオラ)
    クレメンス・ハーゲン Clemens Hagen (チェロ)

  ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第11番 ヘ短調 Op.95《セリオーソ》
  モーツァルト:弦楽四重奏曲第14番 ト長調 K387

   《休憩》

  ラヴェル:弦楽四重奏曲 ヘ長調

   《アンコール》

  モーツァルト:弦楽四重奏曲第21番 ニ長調 K575《プロシア王第1番》より 第4楽章


最後に予習したCDですが、もちろん、ハーゲン・クァルテットのCDを軸に聴きました。


 ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第11番 ヘ短調 Op.95《セリオーソ》
  ハーゲン・カルテット 1996~1998年 セッション録音

 モーツァルト:弦楽四重奏曲第14番 ト長調 K387
  ハーゲン・カルテット 1989~2004年 セッション録音

 ラヴェル:弦楽四重奏曲 ヘ長調
  ハーゲン・カルテット 1993年1月 スイス、ラッパースヴィル、リッターザール セッション録音

ハーゲンのベートーヴェン、モーツァルトは結構、癖のある独特のスタイルの演奏です。かなりの思い入れのある突っ込んだ演奏です。モダンと言えば、モダン。過去の伝統を振り切ったかのごとくです。
一方、ラヴェルは意外なほど、端正な演奏。フランスものは変な縛りがないのでしょう。



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       ハーゲン・カルテット,  

モーツァルトもドビュッシーもベートーヴェンも繊細で抑制された極上の音楽を聴かせてくれたハーゲン・クァルテット@トッパンホール 2023.11.1

今年のハーゲン・クァルテットの〈ハーゲン プロジェクト 2023〉、3夜連続のハーゲン・クァルテットのコンサート・シリーズの第2夜です。昨夜の演奏からは明らかにレベルの高い上質の音楽を聴かせてくれました。体調も精神状態も万全に整ったのでしょうか。やはり、海外の演奏家は来日後、次第に演奏レベルが上がるという一般的な傾向があります。時差の関係もあるのかもしれません。そうすると、最終日の明日の演奏はさらに期待できそうですね。

今日のモーツァルトは弦楽四重奏曲第15番 ニ短調 K421。ハイドンセットの第2曲で、希少な短調の作品です。何故にモーツァルトの短調の作品はこうも名曲が多いのでしょう。この作品も哀愁に満ちたもので、実に天才モーツァルトが丁寧に心を込めて作曲したことが分かる傑作です。ハーゲン・クァルテットの響きを抑えた繊細極まる演奏も最高です。基本、響きを抑えつつ、その中で起伏のある音楽を作り上げています。第1楽章の素晴らしさに続き、第2楽章の美しさは寂漠としたものがあります。

昨日のラヴェルに続き、今日はドビュッシー。その響きの豊穣なることは昨日のラヴェルの比ではありません。モーツァルトの抑えた響きをこのドビュッシーでは全開放しつつ、その響きの隙のなさは完璧です。常に4つの楽器が重なり合って作り出す響きの新しさはドビュッシーもまた天才作曲家であったことの証しでしょう。4つの楽章はそれぞれ個性を発揮しますが、循環形式によって統一感が感じられます。ハーゲン・クァルテットの演奏はドイツ・オーストリア系の音楽とは一線を画していますが、素晴らしいアンサンブルの妙を感じさせてくれます。

ここで休憩。

最後はベートーヴェンの弦楽四重奏曲第8番 ホ短調 Op.59-2《ラズモフスキー第2番》。ラズモフスキー3曲の中で唯一、短調で、少し、規模が小さいのですが、その凝縮度によって、ちっとも短さを感じさせない作品で、内省的な深さを感じさせます。ハーゲン・クァルテットは集中度の高い気魄、そして、ここでも抑制した美を発揮します。この作品の素晴らしさを十全に表現した稀有な演奏でした。圧巻の第1楽章に続き、第2楽章のモルト・アダージョの深く沈潜した内省的な表現はもう、中期の作品の枠を超えるような演奏です。芸術の何たるかを我々に語りかけてきます。ハーゲン・クァルテットは熟成の時を迎えました。第3楽章のリズム感のあるスケルツォを経て、第4楽章は推進力を持って熱いコーダで全曲を〆ます。圧倒的な演奏でした。
明日のベートーヴェンの大フーガ付きの第13番 Op.130/Op.133がますます楽しみになってきました。
まさにホップ・ステップ・ジャンプの3夜になりそうです。


今日のプログラムは以下のとおりでした。

 〈ハーゲン プロジェクト 2023〉ハーゲン・クァルテット 第2夜

ハーゲン・クァルテット Hagen Quartett
    ルーカス・ハーゲン Lukas Hagen (ヴァイオリン)
    ライナー・シュミット Rainer Schmidt (ヴァイオリン)
    ヴェロニカ・ハーゲンVeronika Hagen (ヴィオラ)
    クレメンス・ハーゲン Clemens Hagen (チェロ)

  モーツァルト:弦楽四重奏曲第15番 ニ短調 K421(417b)
  ドビュッシー:弦楽四重奏曲 ト短調 Op.10

   《休憩》

  ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第8番 ホ短調 Op.59-2《ラズモフスキー第2番》

   《アンコール》

  モーツァルト:弦楽四重奏曲第14番 ト長調 K387より 第3楽章


最後に予習したCDですが、もちろん、ハーゲン・クァルテットのCDを軸に聴きました。


 モーツァルト:弦楽四重奏曲第15番 ニ短調 K421
  ハーゲン・カルテット 1989~2004年 セッション録音

 ドビュッシー:弦楽四重奏曲 ト短調
  ハーゲン・カルテット 1992年11月 ミュンヘン、マックス・ヨーゼフザール セッション録音

 ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第8番 ホ短調 Op.59-2《ラズモフスキー第2番》
  ハーゲン・カルテット 2010年5月&7月 ベルリン、ジーメンス・ヴィラ セッション録音 ハーゲン・カルテット結成30周年記念

ハーゲンのモーツァルトは実に端正なスタイルの演奏です。短調の作品の色彩が浮き彫りになっています。
一方、ドビュッシーは実に深い響きでエスプリに満ちた演奏。会心の演奏です。
ベートーヴェンはそれまでのハーゲン・クァルテットになかった熟成した深い音楽が聴こえてきます。



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       ハーゲン・カルテット,  

明日への元気と勇気を与えてくれた至高のベートーヴェンは、美を極めたカヴァティーナ、芸術の最高峰を成す大フーガ ハーゲン・クァルテットの第3夜@トッパンホール 2023.11.2

今年のハーゲン・クァルテットの〈ハーゲン プロジェクト 2023〉、3夜連続のハーゲン・クァルテットのコンサート・シリーズの第3夜です。期待通り、いや、それ以上の極上の演奏を聴かせてくれました。第1夜、第2夜とどんどん演奏の質が上がり、今夜は弦楽四重奏のこれ以上はないというアンサンブルの極み、音楽の最高のアプローチに達しました。1音、1音、頭に刻み付けるようにsaraiもこの3日間で最高の集中力を持って、彼らの演奏に対峙しました。ハーゲン・クァルテットの演奏を一言で表現するとしたら、“精妙”という言葉が頭に浮かびます。この“精妙”がどこから来るのかと言えば、無論、家族で結成したクァルテットの長年に渡る鍛錬と努力でしょうが、その結果として、第1ヴァイオリンのルーカス・ハーゲンの美しい弦の響きを基本に、驚くほど、他のメンバーの弦の響きの同質性が感じられます。目をつぶって聴いていると、ヴィオラのヴェロニカの響きがルーカスの響きと区別がつかないほどです。弦のこすりかたやヴィブラートのかけかたがまったく同じに思えます。これが最高のアンサンブルを産んでいると今夜、実感しました。

今日のモーツァルトは弦楽四重奏曲第21番 ニ長調 K575《プロシア王第1番》。今回はハイドンセットの2曲を演奏してくれました。それも見事な演奏でした。実はこのトッパンホールで以前、モーツァルト・チクルスで彼らはハイドンセット以降の10曲を披露してくれました。その折、都合でハイドンセットの最初の3曲だけは聴き逃がしていましたが、今回、そのうちの2曲を演奏してくれて、saraiにはまたとないプレゼントになりました。今夜の第21番はプロシア王セット3曲の1曲目。これは既にモーツァルト・チクルスで聴いた曲ですが、今夜の演奏はまさに“精妙”の極み。モーツァルトの室内楽の最高の演奏を聴かせてもらいました。モーツァルトの音楽を愉悦する特別のものがそこにあったとしか表現できません。あまりに集中して聴いていたので、もう、どこがどうだったというよりもすべてが心に響いたとしか言えません。音楽って、そんなものでしょう?

ラヴェル、ドビュッシーというフランスものに続き、今夜は何とウェーベルンの弦楽四重奏のための緩徐楽章です。この曲を選択した意図はこの後に演奏するベートーヴェンの弦楽四重奏曲第13番の第5楽章、カヴァティーナを睨んでのことでしょう。今夜聴いて思ったのは、ウェーベルンもカヴァティーナに触発されて、若き日にこのメロー過ぎるとも思える作品を作曲したのではないかということです。マーラーの交響曲の緩徐楽章もきっとベートーヴェンのカヴァティーナに思いを凝らして作曲したのではないかと思います。そんなことをつらつら考えながら、ハーゲン・クァルテットの見事な演奏に魅了されました。エマーソン・カルテットと優劣付けがたい素晴らしい演奏でした。

ここで休憩。

最後はベートーヴェンの弦楽四重奏曲第13番 変ロ長調 Op.130+大フーガ 変ロ長調 Op.13。西洋音楽の最高峰とも言えるベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲の中でも、この第13番と第14番、第15番は特別な作品です。saraiは昔、第15番を一番好んで聴いていました。ブダペスト弦楽四重奏団の名演があったからです。その後、ブッシュ四重奏団の第14番を聴いてからは、第14番が一番の好みになりました。そして、ハーゲン・クァルテットの大フーガ付きの第13番を聴いてからは、第13番が一番の好みです。無論、終楽章が大フーガでない演奏では、第14番に好みを譲ります。ハーゲン・クァルテットもベートーヴェンの後期四重奏曲では、この大フーガ付きの第13番に最高の席を与えているようです。以前、このトッパンホールでベートーヴェン全曲チクルスの演奏を行ったときもラストに演奏したのは第14番ではなく、この大フーガ付きの第13番でした。それは衝撃の演奏でした。今回の第3夜のラストをこの曲で〆るのは、彼らの並々ならぬ思いがあるのでしょう。実際、凄い演奏でした。まず、第1楽章の凄さ。普通は内省的なパートと決意に満ちたパートが交錯するという演奏でしょうが、そんな単純な演奏ではありません。内省的な演奏に連続して、思いのたけを吐露するような決意を表現しながら、しまいには、どちらも融合していくという素晴らしい演奏です。この演奏にまず、驚嘆しました。そして、短い第2楽章もチャーミング極まります。第3楽章は実に幽玄な演奏で魅惑されます。第4楽章はまたまたチャーミング。ここまでの演奏は完璧で最高。言葉もないほどです。この楽章が終わったところで、ルーカスが深呼吸。そして、メンバーも調弦しながら、一息つきます。そして、遂に第5楽章のカヴァティーナ。その優しく、悲しい旋律に心を打たれ、息もできないほどです。この素晴らしいカヴァティーナの後には、いつものフィナーレではなく、大フーガ。そう、それしかないでしょう。このカヴァティーナの後をあっさりとしたフィナーレで閉じてはいけません。ベートーヴェンが最初に意図した通りの大フーガこそ、ふさわしい音楽です。強烈な嵐が襲ってきます。当時としては革命的であったであろう不協和音の激しい嵐です。不協和音が収まっても、嵐が静まることはありません。凄絶な精神の叫びが響き渡ります。もう、これは音楽という枠で捉えられない人間の原初的な精神の昇華です。厳密なソナタ形式を確立したベートーヴェン自身が、芸術の根本に立ち返って、音楽の規則や形式から自由を獲得して、自らの内面をさらけだしたものです。それをハーゲン・カルテットが芸術の使徒として、我々、聴衆に提示してくれます。この精神の嵐に対して、saraiはもう無防備に立ち尽くすだけ。それ以上、何ができるでしょう。ベートーヴェンの魂がハーゲン・カルテットの魂を通して、saraiの魂に流れ込んできます。魂の一体化、芸術の神髄ですね。ハーゲン・クァルテットの超絶的な演奏に圧倒されつつも根源的な意味で共感しました。

無論、アンコールはなし。出来る筈もありません。何を弾いても野暮になります。

素晴らしい一夜になりました。明日への元気と勇気をもらって、杖を突きつつも足取りが軽くなって、秋の夜の中、帰途につきました。音楽のチカラはかくもありしかという思いです。


今日のプログラムは以下のとおりでした。

 〈ハーゲン プロジェクト 2023〉ハーゲン・クァルテット 第3夜

ハーゲン・クァルテット Hagen Quartett
    ルーカス・ハーゲン Lukas Hagen (ヴァイオリン)
    ライナー・シュミット Rainer Schmidt (ヴァイオリン)
    ヴェロニカ・ハーゲンVeronika Hagen (ヴィオラ)
    クレメンス・ハーゲン Clemens Hagen (チェロ)

  モーツァルト:弦楽四重奏曲第21番 ニ長調 K575《プロシア王第1番》
  ウェーベルン:弦楽四重奏のための緩徐楽章

   《休憩》

  ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第13番 変ロ長調 Op.130+大フーガ 変ロ長調 Op.133

   《アンコール》なし


最後に予習したCDですが、もちろん、ハーゲン・クァルテットのCDを軸に聴きました。


 モーツァルト:弦楽四重奏曲第21番 ニ長調 K575《プロシア王第1番》
  ハーゲン・カルテット 1989~2004年 セッション録音

 ウェーベルン:弦楽四重奏のための緩徐楽章
  エマーソン・カルテット 1992年10月  ニューヨーク州立大学パーチェス校、パフォーミングアーツセンター セッション録音

 ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第13番 変ロ長調 Op.130+大フーガ 変ロ長調 Op.133
  ハーゲン・カルテット 2001年12月 モンドゼー、オーストリア セッション録音

ハーゲンのモーツァルトは実に端正なスタイルの演奏です。この全集は少し録音が古くなったのが残念です。再録音が望まれます。
ウェーベルンのこの作品はハーゲン・カルテットの録音が見当たりません。で、こういうロマンティックな曲を演奏させると、エマーソン・カルテットの美しい響きと最高のテクニックが光ります。手元に置いておきたい一枚です。
ベートーヴェンはハーゲン・クァルテットの最高の演奏。無論、終楽章には大フーガを置いています。



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       ハーゲン・カルテット,  

小林研一郎が素晴らしい指揮でカルミナ・ブラーナを凄演(怪演?) 日本フィルハーモニー交響楽団@サントリーホール 2023.11.3

オルフの世俗カンタータ《カルミナ・ブラーナ》はそもそも圧倒される作品ですが、老境の筈の小林研一郎が実に巧みで若々しい指揮で壮大に歌い上げてくれました。こんな壮絶な演奏は初めてです。
もう、冒頭の《おお、運命の女神フォルトゥナよ》で東京音大の合唱と日本フィルの演奏が物凄い音圧で圧倒します。この一撃でダウンです。やはり、この曲はこれぐらいの凄い演奏で聴くものですね。あとはひたひたとした合唱とフォルテシモの大合唱が交錯しながら、この怪しい音楽を歌い上げます。それにしても、大合唱とオーケストラを自在にあやつる小林研一郎の指揮が超見事です。とても80歳を超えたマエストロとは思えない若々しさです。独唱の3人も熱唱。ひたすら聴き慣れた音楽が進行し、終盤の山場にさしかかります。第22曲、《今は喜びの時》。バリトンソロと合唱が有名な曲をとっても調子よく歌い上げます。ボルテージが上がります。続いて、同じフレーズをソプラノソロと児童合唱(今回は女声合唱)が続けて、さらにボルテージが上がります。これが繰り返されて、音楽は最高潮に盛り上がります。そして、ソプラノソロの聴かせどころでもあり、最難関の箇所をソプラノの澤江衣里がハイトーンを駆使して、いともたやすく歌い切ります。ここはいつも聴くほうがハラハラするところですが、こんなに簡単に歌ってしまうとは・・・!! そして、再び、冒頭の合唱、《おお、運命の女神フォルトゥナよ》が感動の絶頂を作ります。凄い!!

定期演奏会というよりも名曲コンサートですね。思いっきり、楽しみました。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:小林研一郎[桂冠名誉指揮者]
  ソプラノ:澤江衣里 
  テノール:高橋 淳
  バリトン:萩原 潤
  合唱:東京音楽大学
  管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団 コンサートマスター:木野 雅之

  コダーイ:ガランタ舞曲
  
   《休憩》
   
  オルフ:世俗カンタータ《カルミナ・ブラーナ》


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のコダーイのガランタ舞曲を予習した演奏は以下です。

 イヴァン・フィッシャー指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 2009年10月24日 ベルリン・フィルハーモニー ライヴ収録 (ベルリン・フィル デジタル・コンサートホール)

ハンガリー出身のイヴァン・フィッシャーが絶妙な指揮でハンガリー音楽の粋を聴かせてくれます。


2曲目のオルフの世俗カンタータ《カルミナ・ブラーナ》を予習した演奏は以下です。

 サー・サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
  サリー・マシューズ(ソプラノ)
  ローレンス・ブラウンリー(テノール)
  クリスティアン・ゲルハーヘル(バス)
  ベルリン放送合唱団
  ベルリン国立大聖堂少年合唱団
    2004年のジルベスター・コンサート
    2004年12月31日 ベルリン・フィルハーモニー ライヴ収録 (ベルリン・フィル デジタル・コンサートホール)

若きラトルを始め。ソリストも皆若いメンバーで清新な演奏です。



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東京音大の清冽なラフマニノフ 東京藝大の熟達したレベルのチャイコフスキー 音楽大学オーケストラ・フェスティバル@東京芸術劇場 2023.11.4

先日、ミューザ川崎のフェスタで初めて、学生オケを洗足学園ニューフィルハーモニック管弦楽団で聴き、感心したので、少し、最近の学生オケを聴いてみようと、音楽大学オーケストラ・フェスティバルに足を運びました。今日、聴くのは東京音楽大学と東京藝術大学です。桐朋学園大学も聴きたかったのですが、スケジュールが折り合いませんでした。
期待は半ば満たされましたが、さすがに過大な期待は禁物でした。

最初は東京音楽大学によるラフマニノフの交響曲第2番です。学生オケがこんな曲を大丈夫なのって訝っていましたが、見事に演奏しきってくれました。弦は次第に調子を上げて、第4楽章では素晴らしい響き、鮮烈とも思える響きで魅了してくれます。もっともプロの在京オケと比較するのは酷です。それでも、若者らしく、活き活きした演奏を聴かせてくれました。

後半は東京藝術大学によるチャイコフスキーの交響曲第5番です。これは実に熟達したレベルの素晴らしく安定した演奏です。このオーケストラも徐々に調子を上げて、第4楽章は圧巻の出来で聴くsaraiも姿勢を正して聴き入りました。安定感の反面、挑戦的な突っ込みに欠けていたのが残念でしたが、それは贅沢というものでしょうか。無論、この学生オケもプロの在京オケと比較するのは酷です。それだけ、今のプロの在京オケのレベルは超高いということです。それに予習に世界に冠たるベルリン・フィル、それもキリル・ペトレンコの指揮を聴いたのは申し訳けなかったと思います。

両大学のオーケストラとも今の日本の音楽水準の高さを反映して、素晴らしいと思います。プロの演奏としても十分に通用するでしょう。ただ、saraiはいつも読響、都響、東響、日本フィルを一流指揮者の共演で聴いているので、さすがに同列に並べて、聴くわけにはいかないというのが正直なところです。もっとも、両大学とも第4楽章の演奏レベルで全曲を演奏してくれれば、saraiの思いも改まるかもしれません。なかなか面白い体験でした。ちなみに聴衆の質がかなり落ちたのは演奏者に気の毒でした。多分、演奏者の親族がかなり詰め掛けてきていたのでしょう。


今日のプログラムは以下のとおりでした。

 第14回 音楽大学オーケストラ・フェスティバル
 
  東京音楽大学(指揮:ジョン・アクセルロッド、コンミス:遠井 彩花)
  
  東京藝術大学(指揮:迫 昭嘉、コンミス:足利 水月)
  
    
 ファンファーレ
  中村陽太:「序奏とファンファーレ」(東京藝術大学)
 ラフマニノフ:交響曲第2番 ホ短調 作品27(東京音楽大学)

  《休憩》
  
 ファンファーレ
  髙井亮佑:「鐘のファンファーレ」(東京音楽大学)
 チャイコフスキー:交響曲第5番 ホ短調 作品64(東京藝術大学)


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のラフマニノフの交響曲第2番を予習した演奏は以下です。

 キリル・ペトレンコ指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 2021年3月20日 ベルリン・フィルハーモニー ライヴ収録 (ベルリン・フィル デジタル・コンサートホール)

いやはや、見事な演奏です。実に芸術的。


2曲目のチャイコフスキーの交響曲第5番を予習した演奏は以下です。

 キリル・ペトレンコ指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 2019年3月9日 ベルリン・フィルハーモニー ライヴ収録 (ベルリン・フィル デジタル・コンサートホール)

キリル・ペトレンコの登場でベルリン・フィルも新時代を迎えたとの感を強くする素晴らしい演奏です。



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ベートーヴェンのラズモフスキー・セット全曲演奏は熱く高揚した「ラズモフスキー第3番」で圧巻のフィナーレ:関西弦楽四重奏団@鶴見サルビアホール 2023.11.6

鶴見サルビアホールでその名の通り、関西で活躍する関西弦楽四重奏団の演奏を久しぶりに聴きました。とても実力のあるカルテットの演奏で、ベートーヴェンの中期の傑作、ラズモフスキーセット全3曲を堪能しました。

前半の弦楽四重奏曲 第7番 ヘ長調 Op.59-1「ラズモフスキー第1番」は第1楽章、第2楽章はあまり、ピンとこない演奏でアンサンブルも今一つです。第3楽章は抒情味あふれる演奏で盛り返して、第4楽章もそのままの勢いでフィナーレ。

後半は第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが交代。このカルテットのいつものパターンです。そして、いつもこの第1ヴァイオリンを田村 安祐美が弾く構成になると、俄然、アンサンブルがよくなり、素晴らしい響きになります。これなら、いつもこの構成で演奏すればいいのにね。
弦楽四重奏曲 第8番 ホ短調 Op.59-2「ラズモフスキー第2番」は冒頭の和音がピタリと決り、響きが素晴らしいです。そのまま、素晴らしい演奏でこの曲を終えます。
最後の弦楽四重奏曲 第9番 ハ長調 Op.59-3「ラズモフスキー第3番」はさらに素晴らしい演奏。第4楽章は全曲、フーガ風の激しい曲調ですが、その演奏の凄まじさはラズモフスキーセット3曲全体のフィナーレとして、ふさわしいもものです。演奏者も聴衆も一体になって、熱く高揚します。終わりよければ、すべてよしというパターンで、大満足のコンサートになりました。

以前、彼らの演奏でベートーヴェンの第16番と第14番を聴きましたが、それも後半に演奏された第14番が素晴らしい演奏でした。
彼らの演奏でベートーヴェンの後期をすべて聴いてみたいものです。特に第13番(大フーガ付き)と第15番。 → 平井さん


今日のプログラムは以下です。

  弦楽四重奏:関西弦楽四重奏団
    林 七奈vn  田村 安祐美vn  小峰 航一va  上森 祥平vc


  ベートーヴェンのラズモフスキー・セット全曲演奏
  
  ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第7番 ヘ長調 Op.59-1「ラズモフスキー第1番」 (第1ヴァイオリンは林 七奈)

   《休憩》

  ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第8番 ホ短調 Op.59-2「ラズモフスキー第2番」 (第1ヴァイオリンは田村 安祐美)
  ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第9番 ハ長調 Op.59-3「ラズモフスキー第3番」 (第1ヴァイオリンは田村 安祐美)

   《アンコール》
    なし

最後に予習について触れておきます。

3曲とも以下のCDを聴きました。

 リンゼイ弦楽四重奏団
  ピーター・クロッパー(ヴァイオリン)、ロナルド・バークス(ヴァイオリン)、ロビン・アイルランド(ヴィオラ)、バーナード・グレガー=スミス(チェロ)
   第7番 Op.59-1「ラズモフスキー第1番」2001年1月24/25日,2月6/7日 ホーリー・トリニティ教会、ウェントワース、ヨークシャー セッション録音
   第8番 Op.59-2「ラズモフスキー第2番」2001年11月21/22日 ホーリー・トリニティ教会、ウェントワース、ヨークシャー セッション録音
   第9番 Op.59-3「ラズモフスキー第3番」2001年1月24/25日,2月6/7日 ホーリー・トリニティ教会、ウェントワース、ヨークシャー セッション録音

リンゼイ弦楽四重奏団の2回目のベートーヴェン弦楽四重奏曲全集です。1回目の全集と演奏コンセプトは基本的には変わりませんが、より精密な演奏です。
このラズモフスキーセットは後期四重奏曲を見据えたような情緒の深い音楽になっています。
彼らは1965年に活動を始め、2005年に解散します。解散前にこの素晴らしい録音を残してくれたのが嬉しいですね。なお、saraiはこのカルテットの実演は未聴です。残念です。


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ジョナサン・ノットと東響の流麗な田園交響楽の響き@サントリーホール 2023.11.11

ジョナサン・ノットが振ると、東響は素晴らしい響きで音楽を奏でてくれます。
前半はベートーヴェンのピアノ協奏曲 第2番。冒頭から、美しい弦の響きにうっとりと聴き惚れます。そして、ゲルハルト・オピッツは意外にも肩の力の抜けたピアノの響きで、モーツァルトのようなタッチで軽やかな演奏を聴かせてくれます。東響と共演するときのオピッツはいつも素晴らしい演奏で驚かせてくれます。きっと相性がいいんですね。第2楽章にはいると、ベートーヴェンらしい深い音楽を聴かせてくれます。そして、第3楽章はシャープな演奏で締め括ってくれます。オピッツのピアノもノット指揮の東響も見事な演奏で満足させてくれました。

後半はベートーヴェンの交響曲 第6番「田園」。第1楽章はジョナサン・ノットの美しい指揮姿に惹き付けられます。その指揮のもと、東響は実に流麗な演奏を聴かせてくれます。第2楽章はさらに美しい響きの演奏で小川のあたりの風景を彷彿とさせてくれます。第3楽章にはいると、途中から音楽が高潮していきます。第4楽章の雷鳴と電光の後、第5楽章は天国的な響きで満たされます。音楽の響きも高まっていき、感動的なフィナーレ。ノットらしさが発揮された「田園」でした。ただ、saraiはこの曲は苦手。美しい標題音楽ですが、心に高まる感動はありませんね。この曲で唯一、saraiを魅了してくれるのは、フルトヴェングラーだけです。


今日のプログラムは以下のとおりでした。

  指揮:ジョナサン・ノット 
  ピアノ:ゲルハルト・オピッツ
  管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:グレブ・ニキティン
  

  ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第2番 変ロ長調 Op.19

  《休憩》
  
  ベートーヴェン:交響曲 第6番 ヘ長調 Op.68 「田園」


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のベートーヴェンのピアノ協奏曲 第2番を予習した演奏は以下です。

 内田光子、サー・サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 2010年2月10日 ベルリン・フィルハーモニー ライヴ収録 (ベルリン・フィル デジタル・コンサートホール)

内田光子の奏でる響きはまるでモーツァルト。とても素晴らしい演奏に魅了されました。


2曲目のベートーヴェンの交響曲 第6番「田園」を予習した演奏は以下です。

 ベルナルド・ハイティンク指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 2015年3月6日 ベルリン・フィルハーモニー ライヴ収録 (ベルリン・フィル デジタル・コンサートホール)

老巨匠ハイティンクはいつもの自然体の指揮で無理のないベートーヴェンを奏でます。シュテファン・ドールのホルンが見事です。



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       ジョナサン・ノット,  

最高レベルのバッハの無伴奏チェロ組曲、アントニオ・メネセスの深い響きのチェロの音色に強く感銘@上大岡 ひまわりの郷 2023.11.12

アントニオ・メネセスはボザール・トリオの最後のメンバーとして、知っていたので、一度は聴きたいと思っていました。その演奏は未知数なので、とりあえず、予習しましたが、バッハの無伴奏チェロ組曲のあまりに素晴らしい演奏に感銘を覚えました。saraiがこれまで聴いたなかで、最高の演奏です。で、大変、期待して、コンサートに臨みましたが、その期待通りの素晴らしいバッハでした。
バッハの組曲の前に弾いた短い3曲はブラジルの現代作曲家がバッハの組曲の前奏曲のようなものを作曲したそうです。これもなかなか聴き応えがありましたが、やはり、バッハの無伴奏チェロ組曲の演奏は別次元の素晴らしさです。
第1番、第3番、第6番の各6曲はいずれも肩の力の抜けた見事な演奏でバッハの偉大さを満喫させてくれるものでした。どの曲の演奏も素晴らしく、1曲1曲の感想を綴るのも野暮なので、やめます。とにかく、まず、チェロの響きが最高に深く美しいものでした。特に低弦の深い響きには強く魅了されました。その美しい響きで自然な流れの音楽を奏でます。余計な思い入れがまったくないのがとても好感を持てました。バッハの音楽は譜面通り弾けば、最高の音楽になります。テンポは全体に早めに感じますが、自然な演奏だから、そう感じたのかもしれません。どの曲もたっぷりと聴いたという満足感がありました。事前には残りの第2番、第4番、第5番も聴きたいと思っていましたが、今日の3曲で充足感を得られました。これ以上聴くと、聴き過ぎになるかもしれません。

こんなに素晴らしい無伴奏チェロ組曲をかぶりつきで聴くという贅沢を味わい、これ以上のことはありません。バッハの素晴らしさに酔いました。音楽って最高です。


今日のプログラムは以下です。


アントニオ・メネセス 無伴奏チェロ・リサイタル

  チェロ:アントニオ・メネセス

  R.ミランダ:エティウス・メロス~バッハへのオマージュ
  J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲 第1番 BWV1007
  A.プラド:プレアンブルム
  J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲 第3番 BWV1009

   《休憩》

  M.パディーリャ:インヴォカシオ 第1番
  J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲 第6番 BWV1012
  
   《アンコール》
     クロビス・ペレイラ:カント・ド・セーゴ
     

最後に予習について、まとめておきます。

いずれも、アントニオ・メネセスのチェロ独奏でYouTubeを聴きました。

R.ミランダ:エティウス・メロス、A.プラド:プレアンブルム、M.パディーリャ:インヴォカシオ 第1番は以下の演奏を聴きました。

 フェスティバル・デ・マイオでのアントニオ・メネセスのチェロ独奏

J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲は以下の演奏を聴きました。

 J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲全曲
  アントニオ・メネセス(チェロ)
  使用楽器:1840年頃のJean-Baptiste Vuillaumme(Paris)作
  録音:2004年6月2-5日、イギリス、バークシャー、セント・マーティン教会
 
このバッハの全曲録音は彼自身、2回目のものです。あまりの素晴らしさに感動しました。ヨーヨー・マ、マイスキーにも優るとも劣らない演奏です。ちなみに今年、3回目の全曲録音が発売されました。これはまだ、聴いていません。



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ベルリン・フィルの来日公演プログラム キリル・ペトレンコの素晴らし過ぎる指揮で聴くブラームスの交響曲第4番@ベルリン・フィルハーモニー(配信) 2023年11月3日

ベルリン・フィルの来日公演に先立って、ベルリンで来日公演プログラムが11月3日に演奏されました。モーツァルト、ベルク、ブラームスという多彩なプログラムです。早速、デジタル・コンサートホールでもその公演が配信されたので、鑑賞してみました。
もっとも、本来はライヴ配信もされたので、それを聴くべきだったのですが、今月は東京でのコンサートがたてこんでいて、とても日程的に聴けなかったという事情があります。

来日公演は2つのプログラムが用意されていて、R.シュトラウスの交響詩の最高傑作《英雄の生涯》を含むプログラムは既にベルリン・フィルの2023/2024年新シーズン開幕コンサートをライヴで視聴済です。首席指揮者キリル・ペトレンコの実力を遺憾なく発揮した超素晴らしい演奏でした。

で、今回のもう一つのプログラムはというと、これまた、モーツァルトもベルクもブラームスもあり得ないほどの最高レベルの演奏ですっかり感動して聴き入ってしまいました。もう、来日公演を聴く必要がないほど、感銘を受ける演奏でした(笑い)。
とりわけ、ブラームスの交響曲第4番はsaraiの最も愛する作品のひとつなので、これまで、CDなどで古今の名演の数々を聴き込んでいます。saraiは頭の中で理想とするイメージを持っていますが、それとほぼ同じ演奏が繰り広げられて、ここはこう演奏してほしいと思う気持ちが満足されて、こんなに気持ちよく、この曲を聴けたことはありません。言い過ぎを承知で言えば、この演奏を超えるのはフルトヴェングラーの神のような演奏しかありません。詳細は来日演奏を聴いた後に書きましょう。

モーツァルトの交響曲第29番も笑ってしまうほど、素晴らしい演奏。ペトレンコのモーツァルトの交響曲は第35番「ハフナー」も聴きましたが、それも同様に素晴らしい演奏。ペトレンコによるモーツァルト交響曲全集の録音が望まれるほどです。せめて、第25番以降の主要作品の録音が聴きたい!

ベルクの管弦楽のための3つの小品 Op.6ですが、この曲は実は初聴きです。しかし、初めてとは言え、この演奏がベルクの音楽の真髄を抉り出す会心の演奏であることは明確です。とても小品とは言えない完成度の高い類稀な演奏に圧倒されました。以前、ペトレンコが指揮したオペラ「ルル」のBlu-rayディスクを猛烈に聴きたくなりました。あのオペラのオーケストラの間奏曲的なパートを連想したからです。


この日のプログラムは以下です。

  2023年11月3日、ベルリン・フィルハーモニー

  指揮:キリル・ペトレンコ
  管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

 ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
   交響曲第29番イ長調 K.201
   
 アルバン・ベルク
   管弦楽のための3つの小品 Op.6(1929年改訂版)  
   
 《休憩》
 
 ヨハネス・ブラームス
   交響曲第4番ホ短調 Op.98
   
   
明日から、saraiの黄金の週間が始まります。ウィーン・フィルもベルリン・フィルも聴きます。ワクワク!!!

 11月 17日 (金曜日) ノット&東響
 11月 18日 (土曜日) 新国立劇場 オペラ《シモン・ボッカネグラ》
 11月 19日 (日曜日) ソヒエフ&ウィーン・フィル
 11月 20日 (月曜日) キリル・ペトレンコ&ベルリン・フィル
 11月 21日 (火曜日) キリル・ペトレンコ&ベルリン・フィル
 11月 22日 (水曜日) お休み
 11月 23日 (木曜日) 庄司紗矢香、イスラエル・フィル ⇒中止
 11月 24日 (金曜日) バルナタン、都響
 11月 25日 (土曜日) キリル・ペトレンコ&ベルリン・フィル
 11月 26日 (日曜日) クリスティ指揮 レザール・フロリサン 《ヨハネ受難曲》
  


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       キリル・ペトレンコ,  

ジョナサン・ノット教授の現代音楽実験工房という風情の格調高いコンサート@東京オペラシティコンサートホール 2023.11.17

ジョナサン・ノットが近現代作品を振ると、その素晴らしさには脱帽ものです。
前半の4曲はドビュッシーを除くと、古いものでもリゲティ。新しいものはまだ、作曲して10年経っていないアマンの作品という現代作品。それも最近はやりのやわな現代作品ではなく、ばりばりの格調高い作品。現代ものを得意にするジョナサン・ノットはいともたやすく流れるような美しい指揮でこなします。ノットの知性の高さには恐れ入ります。凄い演奏に圧倒されました。

まずは今年、生誕100年のリゲティ。このアパリシオンはノットがベルリン・フィルを指揮して世界初録音したものです。いわば、ノットはリゲティの権威です。その演奏は理解したとは正直言えませんが、自信みなぎる流麗な指揮で微塵もゆるがないものでした。リゲティの作品によくあるような、宇宙空間の無の世界から開始して、次第に原子、分子、生命体が出現するというイメージが浮かび上がるような難解でありながら、心を励起させる音楽です。題名のアパリシオンはフランス語で幻影とか出現という意味なので、美術の世界のギュスターヴ・モローの《出現L'Apparition》を連想して、イメージしていました。この絵はサロメが指さす先に突然、出現した洗礼者ヨハネの生首が浮かび上がっています。

2023111701.jpg

 
 By Gustave Moreau - Gustave Moreau, 1876, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=19585188


ともあれ、何とも素晴らしいリゲティでした。


次のドビュッシーの3つの夜想曲より 「祭」は一転して、分かりやすい音楽に聴こえます。ここではノットは浮き立つような音楽を披露してくれました。時代を少しだけ遡ると、音楽はこんなに形を変えます。

次はブーレーズのメサジェスキス。 独奏チェロと6つのチェロという7人と指揮者ノットだけの演奏。チェロのさざ波のような音響、そして、無窮動的な音楽です。ブーレーズにしてはとっても分かりやすい音楽ですが、演奏は超難しそうです。東響のチェロ・セクションが総力を上げての演奏でした。伊藤文嗣の素晴らしいチェロ演奏が印象的でした。

前半の最後はディーテル・アマンが2016年に完成させたグラットGlut。まだ、作曲されて、7年ほどの現代音楽。オーケストラが様々な音響を奏でる派手な作品です。これも演奏が難しそうですが、ノットはまるでモーツァルトでも演奏するように流麗な指揮です。その美しい指揮を見ていると何とも簡単そうですが、オーケストラは汗をかいて演奏していました。

この前半だけでも聴きものでした。こんなものが演奏できるのはジョナサン・ノットを音楽監督に持つ東響だけですね。ジョナサン・ノットを聞き始めてから、現代音楽が近い存在になりました。とりわけ、リゲティは素晴らしい。


後半はごくふつーの音楽。ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番《皇帝》です。ゲルハルト・オピッツが予想を上回る美しい演奏を聴かせてくれました。まあ、前半ほどのインパクトはありませんでしたけどね。


今日から、saraiの黄金の10日間がスタートします。明日は新国立劇場でオペラ。そして、ウィーン・フィル、ベルリン・フィルと続きます。東京は素晴らしく音楽文化が享受できる街です。


今日のプログラムは以下のとおりです。

  指揮:ジョナサン・ノット
  ピアノ:ゲルハルト・オピッツ
  チェロ:伊藤文嗣(東響ソロ首席奏者)
  管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:景山昌太郎(客演)

  リゲティ:アパリシオン 
  ドビュッシー:3つの夜想曲より 「祭」
  ブーレーズ:メサジェスキス ~独奏チェロと6つのチェロのための~
  アマン:グラット
  
   《休憩》
   
  ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 op.73 「皇帝」
  

最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のリゲティのアパリシオンを予習した演奏は以下です。

  ジョナサン・ノット指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 リゲティ・プロジェクト2 2001年 セッション録音

リゲティの晩年に録音されたアルバム、リゲティ・プロジェクト(5CD)に含まれるリゲティのスペシャリスト、ジョナサン・ノットがベルリン・フィルを振って世界初録音した演奏。リゲティも立ち会ったようです。


2曲目のドビュッシーの3つの夜想曲より 「祭」を予習したCDは以下です。

  フランソワ=グザヴィエ・ロト指揮ル・シエクル 2018年1月、フィルハーモニー・ド・パリ セッション録音

ロトとル・シエクルによる作曲当時のオリジナル楽器を使った演奏。色彩感あふれる演奏です。


3曲目のブーレーズのメサジェスキスを予習したCDは以下です。

  ジャン=ギアン・ケラス、ピエール・ブーレーズ指揮パリ・チェロ・アンサンブル 1999年10月、シテ・ド・ラ・ムジーク、パリ セッション録音

ブーレーズ監修による決定盤。


4曲目のアマンのグラットを予習した演奏は以下です。

  チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団 YOUTUBE
  https://www.youtube.com/watch?v=pDNyvfoHjdE&list=PLFWHEZH48SJpkygeD-Km0yPv5MIqY-81l&index=1

音響の洪水。


5曲目のベートーヴェンのピアノ協奏曲 第5番「皇帝」を予習した演奏は以下です。

  内田光子、サー・サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 2010年2月14日、ベルリン・フィルハーモニー ライヴ収録 (ベルリン・フィル デジタル・コンサートホール)

内田光子は冒頭こそ、スケール感不足に感じますが、第1楽章終盤あたりから、ピアノが鳴り始め、第2楽章の美しさは筆舌尽くし難しの感があります。ラトル指揮ベルリン・フィルも熱い演奏です。



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       ジョナサン・ノット,  

男のオペラ、ヴェルディの歌劇「シモン・ボッカネグラ」なれど、ソプラノのイリーナ・ルングが舞台を支配@新国立劇場 2023.11.18

新国立劇場 2023/2024シーズンで最も期待したオペラですが、その期待通りの素晴らしい公演でした。まあ、ヴェルディのこの作品自体の持つ力が最高なんですけどね。このシモン・ボッカネグラを聴くのは3回目ですが、以前は海外でのみ、聴きましたが、今日の公演が一番よかったかもしれません。

このオペラはバリトン、バスという男声が中心の特異なオペラですが、まあ、十分にその黒光りのするような舞台が楽しめました。タイトルロールの【シモン・ボッカネグラ】役のロベルト・フロンターリはその複雑な性格描写をこなして、聴き応えがありました。他のバス、バリトン陣も及第点ですが、迫力という点ではもう少しというところでしょうか。

紅一点の【アメーリア(マリア・ボッカネグラ)】役のイリーナ・ルングは男声陣を押しのけて、見事な歌唱で魅了してくれました。最初は声の出がもう一つでしたが、すぐに美しい声を聴かせてくれて、光り輝くような歌唱で舞台を支配しました。繊細な表現が実に見事でした。以前、この新国立劇場でルチアを歌ったときも素晴らしかったのですが、今回も最高の歌唱でした。

唯一のテノールの【ガブリエーレ・アドルノ】役のルチアーノ・ガンチも素晴らしい高音を聴かせてくれました。イリーナ・ルングとの2重唱は最高でした。

ということで、このヴェルディの傑作オペラを十分に楽しむことができました。

大野和士指揮の東フィルも美しい演奏でとてもよかったと思います。

付録のアフタートークも大野和士、ロベルト・フロンターリ、イリーナ・ルングが参加して、予想外の楽しさ。これは今後も続けてほしいものです。井内美香(音楽ライター)さんの司会進行が素晴らしかったです。


今日のキャストは以下です。

  ジュゼッペ・ヴェルディ
   シモン・ボッカネグラ<新制作> プロローグ付き全3幕

  【指 揮】大野和士
  【演 出】ピエール・オーディ
  【美 術】アニッシュ・カプーア
  【衣 裳】ヴォイチェフ・ジエジッツ
  【照 明】ジャン・カルマン
  【舞台監督】髙橋尚史
  【合唱指揮】冨平恭平
  【合 唱】新国立劇場合唱団
  【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団 コンサートマスター:近藤 薫
  
  【シモン・ボッカネグラ】ロベルト・フロンターリ
  【アメーリア(マリア・ボッカネグラ)】イリーナ・ルング
  【ヤコポ・フィエスコ】リッカルド・ザネッラート
  【ガブリエーレ・アドルノ】ルチアーノ・ガンチ
  【パオロ・アルビアーニ】シモーネ・アルベルギーニ
  【ピエトロ】須藤慎吾
  【隊長】村上敏明
  【侍女】鈴木涼子
  

最後に予習について、まとめておきます。

 ヴェルディ:歌劇「シモン・ボッカネグラ」(ミラノ・スカラ座合唱団&管弦楽団/アバド)

  【指 揮】クラウディオ・アバド
  【合 唱】ミラノ・スカラ座合唱団
  【管弦楽】ミラノ・スカラ座管弦楽団
  
  【シモン・ボッカネグラ】ピエロ・カプッチルリ
  【アメーリア(マリア・ボッカネグラ)】ミレッラ・フレーニ
  【ヤコポ・フィエスコ】ニコライ・ギャウロフ
  【ガブリエーレ・アドルノ】ホセ・カレーラス
  【パオロ・アルビアーニ】ジョゼ・ヴァン・ダム
  【ピエトロ】ジョヴァンニ・フォイアーニ

  収録時期:1977年1月
  収録場所:イタリア、ミラノ

映像のないCDですが、この豪華キャストとアバドの素晴らしい指揮はこれぞ、ヴェルディと唸らせられる凄さです。主要4役の素晴らしさは言うまでもありませんが、特にタイトルロールを歌ったピエロ・カプッチルリは最高の光沢のある歌唱で、彼は唯一、実演で聴いていないことが残念です。今後、映像版を含めて、これを凌駕する演奏が出現することは考えられません。



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ウィーン・フィルの豊穣な音の奔流を見事にコントロールしたソヒエフの音楽の才に驚嘆 色彩感あふれる絵巻物のようなR.シュトラウスの《ツァラトゥストラはかく語りき》に没我の心地@サントリーホール 2023.11.19

ウィーン・フィルはいつ聴いても素晴らしい演奏を聴かせてくれますが、今日の演奏のように冒頭からアンコールに至るまで最高の状態で演奏してくれたのは覚えていません。多分、ソヒエフの指揮が実に丁寧で的確、かつ、素晴らしかったからだと思います。明日聴くベルリン・フィルも首席指揮者はロシア人のペトレンコなのだからということもありませんが、ウィーン・フィルも久々に首席指揮者として、ロシア人のソヒエフを据えればよいとsaraiは強く思いました。実はソヒエフがウィーン・フィルを振るのはちょうど10年前にウィーン楽友協会グローサーザールで聴いています。当時はソヒエフは30代半ばの若手でしたが、物凄い色彩感あふれるベルリオーズの幻想交響曲を振って、あまりの凄さにsaraiは高笑いしました(笑い)。

 https://sarai2551.blog.fc2.com/blog-entry-180.html
 
そして、10年ぶりに聴いた今日の演奏はさらに高レベルのものになっていました。ですから、ウィーン・フィルの首席指揮者に推挙したわけです。ウィーン・フィルは実質的な首席指揮者だったカール・ベームが1981年に亡くなってからは決まった首席指揮者はいません。カール・ベームの前はフルトヴェングラーだったことを考えれば、そうそう、そのあたりの指揮者が重責を担うわけにはいきませんけどね。

ともあれ、今日の最初の曲、R. シュトラウスの交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』は冒頭のトランペットの響きが美しく、ぐっと惹き付けられます。《2001年 宇宙の旅》で有名になった冒頭部分が圧巻の演奏で背中がぞくぞくします。そして、続くVon den Hinterweltlern(世界の背後を説く者について)にはいると、ウィーン・フィルのまろやかな弦の響きで「人間」を象徴する“憧憬の動機”が何とも魅力的に奏でられます。コラールの陶酔の響きに魅了されて、もう、ウィーン・フィルの世界にどっぷりと引き込まれます。ソヒエフの指揮、表現も見事としか言えません。夢のような世界を彷徨いつつ、Von der Wissenschaft(学問について)では弦の対位法的展開にまたまた、魅了されて、第1ヴァイオリンの奏でる高音の美しさはウィーン・フィルを体現するものです。続くDer Genesende(病より癒え行く者)の長大なパートを味わいながら、次も長大なDas Tanzlied(舞踏の歌)に入ります。ウィーン・フィルの面目躍如たるワルツのリズムを刻みつつ、コンサートマスターのライナー・ホーネックの独奏ヴァイオリンが美しく響きます。昔、ウィーン・フィルでこの曲を聴いたときはライナー・キュッヒルの独奏ヴァイオリンだったことを思い出します。そして、音楽が高潮していき、突如、真夜中の12時を告げる鐘の音が響きます。うーん、これは夢のような時間が終わりを告げるようなシンデレラの世界だななんて、馬鹿なことを思いつつ、音楽は終焉していきます。第1ヴァイオリンがロ長調の和音(「人間」)を奏で、低音のハ音(「自然」)と結局は調和することなく、美しくも暗黒の未来を象徴しながら、音が途絶えます。凄い演奏でした。交響詩としては、明日、ベルリン・フィルで聴く《英雄の生涯》と肩を並べる傑作であることを実感しました。

休憩後、おまけのようなドヴォルザークの交響曲第8番がウィーン・フィルの贅沢過ぎる音響で奏でられました。saraiが子供の頃から愛する曲です。とりわけ、第3楽章の舞曲の高弦と木管の美しさは究極の響きです。ソヒエフの巧みな表現で各楽章が素晴らしく演奏されます。そして、第4楽章のコーダの盛り上がりの凄まじさはどうでしょう。もったいないような演奏に恐れ入りました。

アンコールは無論、ウィンナーワルツ。これは凄いね! 文句なし。

今回がウィーン・フィルを聴く33回目のコンサートでした。ほとんどはこの10年間にウィーン、ザルツブルク、東京で聴きました。もっとも、実質、ウィーン・フィルのウィーン国立歌劇場はほぼ40回聴いているので、やっぱり、ウィーン・フィルはオペラを聴くオーケストラかな。オペラはこの30年間、まんべんなく聴いてきましたが、もう、ウィーンに行かないので、これからはウィーン・フィルのコンサートを東京で聴くのみですね。

明日からはベルリン・フィルを聴くモードに移行します。これもワクワク。


今日のプログラムは以下のとおりです。

  指揮:トゥガン・ソヒエフ
  管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 コンサートマスター:ライナー・ホーネック

  R. シュトラウス:交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』Op.30

   《休憩》

  ドヴォルザーク:交響曲第8番 ト長調 Op.88(B 163)

   《アンコール》
    J. シュトラウスⅡ世:ワルツ『芸術家の生活』Op.316
    J. シュトラウスⅡ世:ポルカ・シュネル『雷鳴と稲妻』Op.324


最後に予習について、まとめておきます。

R. シュトラウスの交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』を予習したCDは以下です。

  ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(ヴァイオリン・ソロ:ウィリー・ボスコフスキー) 1959年 ウィーン、ゾフィエンザール セッション録音

カラヤンがウィーン・フィルとの録音をとりわけ、DECCA録音で熱望して、実現した第1弾のアルバム。1950年代のウィーン・フィルの爛熟した響きと壮年期でかっこよかった頃のカラヤンの名演が聴けます。普通はカラヤンの録音は避けますが、この頃のウィーン・フィルとのR.シュトラウスだけは例外です。実に素晴らしい演奏です。キューブリック監督の《2001年 宇宙の旅》(1968年)でも、この演奏の冒頭部分が使われています。太陽、月、地球が直列したシーンです。以来、この曲のアルバムは宇宙をイメージするデザインが多くなっています。


ドヴォルザークの交響曲第8番を予習した演奏は以下です。

  ジョージ・セル指揮チェコ・フィル 1969年 ライヴ録音(ルツェルン音楽祭) audite 48kHz/24bit PCM ダウンロード音源

ハイレゾで聴くセルとチェコ・フィルの一期一会の圧倒的名演。セルがこんなにオーケストラを伸び伸びと演奏させているのは、いつものクリーヴランド管弦楽団ではなく、チェコ・フィルとのライヴだからでしょう。それでいて、セルらしく、きっちりと統率しているのは見事。これもカラヤンとウィーン・フィルで聴こうと準備はしましたが、やはり、空前絶後のこの演奏は何度聴いても凄いと言わざるを得ません。



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       ウィーン・フィル,  

凄過ぎるキリル・ペトレンコ指揮のベルリン・フィルのR.シュトラウスの《英雄の生涯》にただただ、得心の笑いがこみあげるだけ@サントリーホール 2023.11.20

今日のベルリン・フィルのプログラムは今年8月25日のベルリン・フィルの2023/2024年新シーズン開幕コンサートをベルリン・フィルのデジタル・コンサートホールのネット配信で聴いたばかりで、その素晴らしさは分かっていました。あとは果たして、ベルリン・フィルがベストメンバーで来日してくれるかを心配するくらいです。
で、いよいよ、サントリーホールのステージにメンバーが入ってきます。
コンサートマスターは我が樫本大進、フルートはエマニュエル・パユ、クラリネットはヴェンツェル・フックス、オーボエはアルブレヒト・マイヤー、ホルンはシュテファン・ドール・・・。凄い! スーパースターの勢揃いです。
そして、いよいよ、待ちかねた首席指揮者のキリル・ペトレンコの登場です。例によって、柔和な笑顔です。彼はいわゆるカリスマ指揮者のような威厳はなく、音楽的実力で勝負というタイプです。初めて生で聴く彼の実力のほどをご披露願いましょう。

まずはレーガーの《モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ》です。最初に主題がオーボエで奏でられます。懐かしい旋律です。モーツァルトのピアノ・ソナタ第11番 イ長調 K. 331の第1楽章の変奏曲の主題です。ピアノ独奏曲から管弦楽曲の主題をとったんです。オーボエで主題を演奏しているのは、アルブレヒト・マイヤー。達人中の達人です。そして、弦楽パートがはいってきます。恐ろしいくらいの弱音です。トップ奏者だけで演奏しているのかと思うと、何と全員で弾いています。何と言う静謐でピタッと合った合奏でしょう。驚嘆します。キリル・ペトレンコの柔らかい指揮で変奏が進んでいきます。聴き惚れているうちにたちまち、最後の第8変奏。既に主題の姿は消え去っていますが、実に心に響く繊細な表情が印象的です。そして、最終のフーガが始まります。第1ヴァイオリンが音型を示し、それが次々と他の弦楽パートに受け継がれます。さらに木管、金管も加わり、音楽が物凄く高潮します。鉄壁のベルリン・フィルのアンサンブルがうなりをあげていきます。美しい音響のまま、強烈なフォルテシモ。硬質で鋭角のベルリン・フィルが牙をむきます。最後は全楽器で主題が壮大に歌い上げられます。バロックの雰囲気を醸し出しつつ、音響の芸術が終焉。凄いね!

長い休憩後、最も期待していたリヒャルト・シュトラウスの交響詩《英雄の生涯》です。16型の構成で、コントラバスが8本に強化。4管編成でホルンは8本、トランペットは5本。ハープが2台。強力な布陣で、ステージは団員で埋め尽くされます。
冒頭から、低弦が凄い響きを上げます。さらに高弦も加わり、ホルンと一緒に強烈な響きで英雄の主題。いや、これは凄いね!もう、この時点で心が持っていかれます。英雄の主題はさらに高潮していき、最後は爆発的な響き。もう、かっこいいの何の。思わず、saraiは声を出さず、会心の笑いがこみあげます。指揮のキリル・ペトレンコもきっと会心の笑みを浮かべていたでしょう。もう、あとは何も語る言葉がありません。キリル・ペトレンコ率いる強大なベルリン・フィルの凄まじい響きを夢見心地で聴き入るのみです。大編成のオーケストラの隙のない完璧な演奏。saraiの生涯で最高に素晴らしい演奏です。音楽って、こんなに心が浮き立つものなんですね。第1部の《英雄》の最高の高レベルアンサンブルの後、第2部の《英雄の敵》では、木管の達人たち、パユ、マイヤー、フックスがあり得ない美しい響きの饗宴を聴かせてくれました。第3部の《英雄の伴侶》では、コンマスの樫本大進が素晴らしい技巧と響きのヴァイオリン独奏を聴かせてくれます。もう、コンマスというよりも、ヴァイオリンのソロ奏者の風情で、渾身の独奏。あっけに取られて聴き入りました。そうそう、saraiは最前列中央なので、目の前で樫本大進のすべての響きを漏らさずに聴き取りました。圧巻でした。第4部の《英雄の戦場》は、強烈な金管が鳴り響き、勇壮そのものの圧倒的な響きに圧し潰されそうです。第5部の《英雄の業績》はキリル・ペトレンコの巧みな棒さばきでオーケストラ芸術の粋を味わいます。ゲネラルパウゼを効果的に使い、緊張感を高め、物凄い気魄の指揮でベルリン・フィルを鼓舞し、超絶的な演奏を聴かせてくれます。そこまでやるかって、またまた、高笑い。第6部の《英雄の隠遁と完成》は音楽的にも演奏的にもカタルシスを感じ入ります。美し過ぎる弦楽合奏に心が癒されます。心を慰撫するような樫本大進のヴァイオリン独奏の果てに金管がうなりをあげてフィナーレ。
リヒャルト・シュトラウスの最高傑作のひとつ、交響詩《英雄の生涯》を、キリル・ペトレンコが音楽的実力を遺憾なく発揮して、達人集団のベルリン・フィルを最高にドライブして、もう笑うしかないような見事な演奏を聴かせてくれました。脱帽です。


今日のプログラムは以下のとおりです。

  指揮:キリル・ペトレンコ
  管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 コンサートマスター:樫本大進

 マックス・レーガー
   モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ Op. 132
   
 《休憩》
 
 リヒャルト・シュトラウス
   交響詩《英雄の生涯》Op. 40


最後に予習について、まとめておきます。

いずれもベルリン・フィルのデジタル・コンサートホールで聴きました。

  ベルリン・フィルの2023/2024年新シーズン開幕コンサート
  2023年8月25日19時(ベルリン時間)、ベルリン・フィルハーモニー

  指揮:キリル・ペトレンコ
  管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

詳しい視聴記事は以下に書きました。

  https://sarai2551.blog.fc2.com/blog-entry-4808.html
  
このとき、2度視聴しましたが、その後、1回、そして、本日ももう1回、計4回も聴きましたが、聴けば聴くほど、素晴らしい演奏です。



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       キリル・ペトレンコ,        ベルリン・フィル,  

キリル・ペトレンコ指揮のベルリン・フィルの燃え上がる炎のような圧巻のブラームス:交響曲第4番@ミューザ川崎シンフォニーホール 2023.11.21

今日も引き続き、ベルリン・フィルの来日公演を聴きます。昨日のサントリーホールから、ミューザ川崎シンフォニーホールに場所を移します。今日もチケットは完売でベルリン・フィルの人気ぶりがうかがい知れます。今日のプログラムはモーツァルト、ベルク、ブラームスと多彩なものです。特に滅多に演奏されないベルクのオーケストラのための3つの小品 Op.6が注目されます。もっともsaraiはブラームスの交響曲第4番が聴きたくて、この公演に足を運びました。

お目当ての指揮者、キリル・ペトレンコは既に昨日、その実力をいやというほど見せつけられました。今日は余裕で彼の指揮を楽しませてもらいましょう。

まず、モーツァルトの交響曲第29番です。弦の編成は10-10-6-5-3という小編成。管はオーボエとホルンが二人ずつ。その編成で透き通るような響きが立ち上がります。特に低域をしぼっているために、高域の美しさが際立ちます。もう、笑ってしまうほど、素晴らしい演奏。とりわけ、第1楽章の魅惑的な演奏に感銘を覚えます。ペトレンコの指揮は実に柔らかく、軽いです。モーツァルトはこうでなくっちゃね。小編成の割には驚くほどのダイナミズムです。抑え気味の音量で透明な演奏が主体ですが、ここぞというときにはびっくりするほどの大音量にスイッチします。ペトレンコの音楽表現は生半可なものではありません。

次は同じウィーンの作品ですが、時代は飛んで、20世紀初頭の新ウィーン楽派のアルバン・ベルク。一気に4管編成の巨大なオーケストラになります。弦は16型。曲はベルクの管弦楽のための3つの小品 Op.6です。この曲は初聴きです。演奏の難度は超大変そうですが、ベルリン・フィル、そして、キリル・ペトレンコの前ではうってつけの作品でしょう。演奏はベルクの音楽の真髄を抉り出す会心の演奏です。ベルクらしい濃密で表現主義的な音楽がコンサートホールの空気を包み込みます。とても小品とは言えない完成度の高い強烈な演奏に圧倒されました。(予習でも同じ感想で、そのときも書きましたが、ペトレンコが指揮したオペラ「ルル」のBlu-rayディスクを猛烈に聴きたくなり、購入しました。あのオペラのオーケストラの間奏曲的なパートを聴きたくなったからです。)
20分ほどの短さを感じさせない密度の高いベルクの傑作をペトレンコがベルリン・フィルを鮮やかにドライブして、圧巻の音楽に仕立て上げました。

長い休憩後、最も期待していたブラームスの交響曲第4番です。これは14型の弦で2管編成。ベルクの巨大な編成に比べると、古典的とも思える編成に逆戻り。しかし、ベルリン・フィルは弦、木管、金管が3層に並んで、素晴らしい響きを聴かせてくれます。
冒頭は高弦の美しい響きでロマンに満ちた音楽が立ち上ります。憂愁に満ちたブラームスをそう粘らずに弾いていきます。うっとりと聴いていると、第1楽章の終盤の音楽の高潮に心を揺さぶられます。圧倒的な響きのコーダはこれでこの交響曲が終わったかの如くです。万雷の拍手が起きないのが不思議なくらいの音楽の充足感です。
第2楽章で再び、音楽が開始。穏やかに始まった音楽はまた、楽章の終盤で燃え上がります。楽章ごとに音楽を完結しているような不思議な演奏です。
第3楽章は賑やかに始まります。強大な響きのスケルツォが展開されます。そして、やっぱり、最後は大きく音楽が盛り上がります。第4楽章はパッサカリアの変奏曲。パッサカリア主題の提示に続いて、30の変奏曲が続きます。古典的な雰囲気でありながら、ロマンに満ちた傑作です。弦楽、木管、金管が交錯しながら、得も言われぬ音楽を奏でていきます。ベルリン・フィルの機能性が素晴らしく音楽を盛り立てていきます。第12変奏での長大なフルート・ソロが見事なアクセントになっています。そして、もちろん、終盤、音楽は熱を帯びて燃えあがり、劇的なコーダに収束します。ペトレンコの疲れをしらないタクトがオーケストラを鼓舞し続けたことが印象的です。期待していたブラームスですが、その気持ちは完全に報われました。

キリル・ペトレンコ指揮のベルリン・フィルはもう一度聴きます。あの素晴らしかったリヒャルト・シュトラウスの交響詩《英雄の生涯》です。期待は裏切られないでしょう。


今日のプログラムは以下のとおりです。

  指揮:キリル・ペトレンコ
  管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 コンサートマスター:ヴィネタ・サレイカ=フォルクナー

  モーツァルト:交響曲第29番 イ長調 K.201
  ベルク:オーケストラのための3つの小品 Op.6
   
 《休憩》
 
  ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 Op.98


最後に予習について、まとめておきます。

いずれもベルリン・フィルのデジタル・コンサートホール(ネット配信)で聴きました。

  2023年2023年11月3日、ベルリン・フィルハーモニー

  指揮:キリル・ペトレンコ
  管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

詳しい視聴記事は以下に書きました。

  https://sarai2551.blog.fc2.com/blog-entry-4851.html
  
モーツァルトもベルクもブラームスもあり得ないほどの最高レベルの演奏です。



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       キリル・ペトレンコ,        ベルリン・フィル,  

今更ながら名曲であることを実感したチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番をイノン・バルナタンが圧巻の演奏 小泉和裕&東京都交響楽団@サントリーホール 2023.11.24

名曲の誉れ高いチャイコフスキーのピアノ協奏曲。その素晴らしい実演を聴いて、今更ながら、この曲の凄さ、素晴らしさに魅了されました。冒頭、都響の音響が凄い! 何という素晴らしい響きでしょう。その壮麗な響きに圧倒されていると、独奏ピアノが入ってきます。ピアノのイノン・バルナタンは初めて聴きますが、これは只者ではありませんね。実に美しい音色で、パワーもあります。音楽性も問題なし。何を弾かせても素晴らしい演奏をするでしょう。無論、このチャイコフスキーも魅惑的な演奏で聴く者を惹き込みます。序奏部だけでもう圧巻の演奏でした。主部に入っても、都響を向こうにまわし、素晴らしいピアノで圧倒します。小泉和裕指揮の都響も素晴らしい演奏でワクワク感がたまりません。ピアノとオーケストラが一緒に演奏するところではバランスがよい協奏を聴かせてくれて、独奏とは違った魅力も感じます。やがて、カデンツァに入り、バルナタンのまさに一人舞台。心技体揃った演奏に魅了されるだけです。そして、カデンツァが終わるとすぐにコーダで音楽が最高に盛り上がります。凄い第1楽章でした。
第2楽章、冒頭のフルートのソロが素晴らしい演奏で魅了してくれます。一体、誰がフルートを吹いているんでしょう。見ると小柄な女性。首席奏者の松木さやのようです。知らないのも当然。今年の8月に入団したばかりなんですね。以前はオーケストラ・アンサンブル金沢に所属していたようです。都響は次々と他のオーケストラから逸材が入団してきますね。今日のコンマスはまた、ゲストとして、東響のコンマスだった水谷晃が弾いています。少なくとも2度目です。彼も都響のコンマスに横滑りするんでしょうか。都響はますます充実しますね。そんな感じでフルートに感心していたら、バルナタンのピアノが極めて美しい響きで抒情的な旋律を奏でます。魅惑的な楽章でした。
第3楽章はバルナタンのピアノが激しく鍵盤を叩きつけて、爆演気味です。ちょっとやり過ぎかな。爆演が続き、未曾有の高揚感になります。圧倒的な音楽の高揚の中、曲を閉じます。
チャイコフスキーのピアノ協奏曲はとても有名なので、知り尽くしているつもりでしたが、まだまだ、分かっていない部分が多々あることを知りました。素晴らしい演奏に感銘を覚えました。独奏ピアノのイノン・バルナタンの実力も凄く、そして、小泉和裕指揮の都響は壮麗で情感あふれる演奏を聴かせてくれました。となると、後半のプロコフィエフが楽しみです。

後半はプロコフィエフの交響曲第5番。素晴らしい演奏を期待しましたが、第1楽章はどうにも理解できない演奏。モダニズムに徹した演奏を期待しましたが、まるで、マーラーか、リヒャルト・シュトラウスの情感を目指したような中途半端な演奏で、音響的にもうるさいだけ。第2楽章以降は何とか持ち直しましたが、やはり、この音楽の持つ新古典的なモダニズム、あるいは社会主義的なリアリズムのようなすっきりした演奏とは程遠い熱過ぎる演奏でプロコフィエフとは無縁な世界にはまりこんでいます。無論、そういうことは分かった上で新しいプロコフィエフ像を作り上げようとしたのでしょうが、saraiには到底理解できませんでした。演奏後、盛大な拍手と声援が上がったので、こういう演奏を好まれる聴衆が多かったようです。saraiの感性がきっとおかしいのでしょうね。人それぞれ、好みは違いますね。

今日は前半のチャイコフスキーのピアノ協奏曲が素晴らしかったので、よしとしましょう。都響の音響は最高だしね。


今日のプログラムは以下のとおりです。

  指揮:小泉和裕
  ピアノ:イノン・バルナタン
  管弦楽:東京都交響楽団 コンサートマスター:水谷晃(ゲスト)

  チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 Op.23
   
   《休憩》
   
  プロコフィエフ:交響曲第5番 変ロ長調 Op.100
   

最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を予習したCDは以下です。

 マルタ・アルゲリッチ、クラウディオ・アバド指揮ベルリン・フィル 1994年12月 ベルリン、フィルハーモニー ライヴ録音

絶頂期のアルゲリッチ。何も言うことはない。


2曲目のプロコフィエフの交響曲第5番を予習したCDは以下です。

 ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団 1959年10月24日、30日 オハイオ州クリーヴランド、セヴェランスホール セッション録音

素晴らしいの一語。



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オーケストラ芸術の究極:キリル・ペトレンコ指揮ベルリン・フィルのR.シュトラウスの《英雄の生涯》を聴き、ただ、幸せを噛みしめるのみ@サントリーホール 2023.11.25

ベルリン・フィル、3回目のコンサートを聴きます。これで最後です。最後はやっぱり、R.シュトラウスの《英雄の生涯》。ベルリン・フィルのラストコンサートは明日ですが、明日はブラームス。saraiとしてはこのR.シュトラウスの《英雄の生涯》で締めたいんです。
前回と同じメンバー・・・コンサートマスターは我が樫本大進、フルートはエマニュエル・パユ、クラリネットはヴェンツェル・フックス、オーボエはアルブレヒト・マイヤー、ホルンはシュテファン・ドール・・・。スーパースターの勢揃いで、文句なし。
そして、お目当ては首席指揮者のキリル・ペトレンコ。いつもの柔和な笑顔でステージに登場です。

演奏は今回もやはり、凄かった! 前回と同じような感想になるのは当たり前ですが、ご容赦ください。

まずはレーガーの《モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ》です。最初に主題がオーボエで奏でられます。最前列のsaraiの席からは見えませんが、名人アルブレヒト・マイヤーが吹いています。素晴らしい音色です。そして、弦楽パートがはいってきます。前回ほどの恐ろしいくらいの弱音ではなく、もっとリラックスした感じです。そして、第1ヴァイオリンの前の席で聴いているせいか、ピタッと合った合奏ではなく、若干のずれがあります。これもご愛嬌ですね。キリル・ペトレンコの極めて柔らかい指揮でベルリン・フィルも柔らかい演奏です。直線的な演奏ではないのも面白いところです。そして、終始、響きの美しさは驚くべきものです。レーガーの和音感覚はちょっと不思議な音響ですが、次第に耳馴染みしていきます。レーガーのちょっと変わった感覚の変奏曲に聴き惚れているうちにたちまち、最後の第8変奏。既に最初の主題の姿は消え去っていますが、実に心に響く繊細な表情が印象的です。ここでペトレンコの指揮もベルリン・フィルの演奏も最高レベルに達しました。若干のパウゼの後、最終のフーガが始まります。第1ヴァイオリンがフーガ主題の音型を示し、それが次々と他の弦楽パートに受け継がれます。さらに木管、金管も加わり、音楽が物凄く高潮します。鉄壁のベルリン・フィルのアンサンブルが本領を発揮していきます。美しい音響のまま、強烈なフォルテシモ。ベルリン・フィルの音響は最強音でもまったく濁りがなく、美しさの限りです。最後は全楽器でモーツァルトの主題が壮大に歌い上げられます。バロックの雰囲気を醸し出しつつ、音響の芸術が終焉。今日は前回以上に凄い演奏でした。

長い休憩後、リヒャルト・シュトラウスの交響詩《英雄の生涯》です。弦は16型の構成で、コントラバスは8本に強化。4管編成でホルンは8本、トランペットは5本。ハープが2台。強力な布陣で、ステージは団員で埋め尽くされます。
冒頭の英雄の主題は前回ほどの整ったアンサンブルではなく、少し、お疲れ気味の感じです。しかし、英雄の主題が終盤に高潮していくところで本来の響きが復活してきます。最後は爆発的な響きで光り輝くような音楽が炸裂します。いやはや、凄いね、これは。キリル・ペトレンコ率いる強大なベルリン・フィルの凄まじい響きは光り輝く閃光のようです。大編成のオーケストラの隙のない完璧な演奏はもうオーケストラ芸術の究極の姿としか思えません。音楽を聴いて、途轍もなく、幸せ感に浸ります。第1部の《英雄》の持ち直した光輝く響きの後、第2部の《英雄の敵》では、木管の達人たち、パユ、マイヤー、フックスが今日もあり得ないような美しい響きの饗宴を聴かせてくれます。そして、弦楽も加わって、さらに音響の高みに達していきます。第3部の《英雄の伴侶》では、コンマスの樫本大進が素晴らしい技巧と響きのヴァイオリン独奏を聴かせてくれます。ただ、前回のような突っ込んだ演奏ではなく、もっと落ち着きのある余裕の演奏です。この渾身の独奏を最前列で最も樫本大進に近い席のsaraiはすべての響きを漏らさずに聴き取りました。まったく、濁りのない響きで素晴らしい演奏でした。それに実に音楽的に充実していました。第4部の《英雄の戦場》は、今日も強烈な金管が鳴り響き、勇壮そのものの圧倒的な響きに圧し潰されそうでした。第5部の《英雄の業績》はキリル・ペトレンコの巧みな棒さばきでオーケストラ芸術の粋を味わいます。ゲネラルパウゼを効果的に使い、緊張感を高め、物凄い気魄の指揮でベルリン・フィルを鼓舞し、超絶的な演奏を聴かせてくれます。超高速の弦楽合奏が一糸乱れない演奏を繰り広げるのには呆れるのみです。第6部の《英雄の隠遁と完成》は音楽的にも演奏的にも最高に素晴らしく、もう、天国の音楽を聴いている心持ちです。美し過ぎる弦楽合奏が心に沁み入ります。最後は樫本大進のヴァイオリン独奏が超高域を極めて、心が持っていかれそうになります。金管が葬送のようなフォルテシモの響きをあげた後、木管の弱音の長いフェルマータが続きます。最終的にペトレンコがタクトを止めて、静寂の時間を作ります。長い静寂の後、ペトレンコがタクトをゆっくりと下ろします。盛大な歓呼と拍手の嵐。

今日のリヒャルト・シュトラウスの交響詩《英雄の生涯》はもっと凄い演奏でした。小柄で優しそうなキリル・ペトレンコがこれほどの音楽を聴かせてくれるとは・・・。saraiにとって、今年最高のコンサートでした。幸せな気持ちを抱き、サントリーホールを後にしました。


今日のプログラムは以下のとおりです。

  指揮:キリル・ペトレンコ
  管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 コンサートマスター:樫本大進

 マックス・レーガー
   モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ Op. 132
   
 《休憩》
 
 リヒャルト・シュトラウス
   交響詩《英雄の生涯》Op. 40


最後に予習について、まとめておきます。(無論、前回と同じ)

いずれもベルリン・フィルのデジタル・コンサートホールで聴きました。

  ベルリン・フィルの2023/2024年新シーズン開幕コンサート
  2023年8月25日19時(ベルリン時間)、ベルリン・フィルハーモニー

  指揮:キリル・ペトレンコ
  管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

詳しい視聴記事は以下に書きました。

  https://sarai2551.blog.fc2.com/blog-entry-4808.html
  
このとき、2度視聴しましたが、その後、1回、そして、本日ももう1回、計4回も聴きましたが、聴けば聴くほど、素晴らしい演奏です。



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終盤に高まる音楽的絶頂で深く感動 ウィリアム・クリスティ指揮レザール・フロリサン《ヨハネ受難曲》@東京オペラシティコンサートホール 2023.11.26

ウィリアム・クリスティ指揮レザール・フロリサンの演奏を実演で聴くのは3度目。最初はザルツブルク音楽祭でオペラ《ポッペアの戴冠》であまりの音楽レベルの高さに衝撃を受けました。2度目は来日公演でのヘンデル《メサイア》。これも究極の《メサイア》でした。で、今回は初めてのバッハの作品を聴きます。それがあまり演奏されない《ヨハネ受難曲》とはね。

若干の危惧はありましたが、前半の第1部第1曲~第14曲は正直、あまり、ぱっとしない演奏。もっとも《ヨハネ受難曲》の第1部はどの演奏を聴いてもぱっとしません。ただ、エヴァンゲリストのバスティアン・ライモンディの高音の美声だけは印象的でした。

休憩後、第2部が始まると、ぐっと音楽の緊密度が上がります。最初のコラールの優しい慰撫に心がとろけそうです。次第に音楽の劇的緊張感が高まっていきます。アカペラで歌われたコラールの音楽的な魅力はたまりませんでした。
そして、第30曲のアルトのアリア、成し遂げられた!Es ist vollbracht ! で音楽的頂点に至ります。
ヴィオラ・ダ・ガンバの美しい響きに乗って、アルトのヘレン・チャールストンが実に感動的な歌唱を聴かせてくれました。美し過ぎる歌唱でした。アルトの彼女がとても綺麗な高域の声で歌うのが素晴らしく、聴き惚れます。中間部の激しい歌唱も見事です。そして、再び、最初の抒情的なパートを歌い始めます。もう、うっとりです。

この第30曲に続く10曲は素晴らし過ぎる演奏ばかりです。

第32曲のアリアとコラール、尊い救い主よ、お尋ねしてよろしいでしょうかMein teurer Heiland,lass dich fragen。
既に絶命したイエスに対して、問いを発するものです。バスの歌唱は素晴らしく、そのバックで合唱隊が低い音量で歌うコラールの何とも美しいことに感銘を覚えます。この音楽はバッハの天才的な筆の冴えを感じます。それを音楽として実現したクリスティの力量も天才的です。

第35曲のソプラノのアリア、わが心よ、涙となって融け流れよZerfließe, mein Herze, in Fluten der Zähren。
これも素晴らしい演奏です。レザール・フロリサンの達人たちの実力が発揮されます。ヴァイオリン、フラウト・トラヴェルソ、オーボエ・ダ・カッチャ、オルガン、チェロの素晴らしいアンサンブルをバックにソプラノのレイチェル・レドモンドが美しい透明な歌唱を聴かせてくれます。

第39曲の合唱、安らかに眠ってください、聖なる骸よRuht wohl, ihr heiligen Gebeine。
マタイ受難曲の終曲と類似した音楽がより劇的な合唱で聴けます。ここにきて、合唱隊は持てる力をすべて出し尽くして、圧倒的な歌声をホールに響き渡らせます。ただただ、聴き惚れるだけです。そして、深く感動します。

第40曲のコラール、ああ 主よ、あなたの愛する天使を遣わされAch Herr, las dein lieb Engelein。
レザール・フロリサンの合唱隊は魂の歌声を聴かせてくれます。感動のあまり、涙が滲んできます。感銘あふれる終曲です。マタイ受難曲もこのようにコラールで締め括ってくれればよかったのにと思います。ヨハネ受難曲の終盤の盛り上がりは明らかにマタイ受難曲を上回ります。

昨日まで聴いていたベルリン・フィルも最高でしたが、ウィリアム・クリスティ指揮レザール・フロリサンはそれに匹敵する音楽力を持った団体です。感銘の深さではベルリン・フィルを上回ります。それにしても、この秋の東京は一流のヨーロッパのオーケストラが大挙してやってきて、まるで、ルツェルン音楽祭のようです。ヨーロッパの音楽の奥深さに日々、衝撃と感銘を受け続けています。
これでsaraiの黄金の10日間が終わりました。それを締めくくるのにふさわしいウィリアム・クリスティ指揮レザール・フロリサンのヨハネ受難曲でした。同時刻にサントリーホールではベルリン・フィルのラストコンサートも開かれていたのですね。何ともはや・・・。
ちなみに彼らはこの日のコンサートのためにだけ、来日したそうです。なんと贅沢な! またの来日を期待したいものです。次はラモーのオペラでもやってくれないかな。


今日のプログラムは以下のとおりです。

  指揮:ウィリアム・クリスティ
  バスティアン・ライモンディ(テノール/エヴァンゲリスト)
  アレックス・ローゼン(バス/イエス)
  レイチェル・レドモンド(ソプラノ)
  ヘレン・チャールストン(アルト)
  モーリッツ・カレンベルク(テノール)
  マチュー・ワレンジク(バス)
  レザール・フロリサン(管弦楽&合唱)

  J.S.バッハ:ヨハネ受難曲 BWV245
  
   第1部
  
   《休憩》
   
   第2部
  

最後に予習について、まとめておきます。

J.S.バッハ:《ヨハネ受難曲》 BWV245(1739/49版)

ジェイムズ・ギルクリスト(エヴァンゲリスト)
ハナ・ブラシコヴァ(ソプラノ)
ダミアン・ギヨン(アルト)
ザッカリー・ワイルダー(テノール)
クリスティアン・イムラー(バス/イエス)
松井亜希(ソプラノ/召使の女)
谷口洋介(テノール/下役)
浦野智行(バス/ペトロ)
渡辺祐介(バス/ピラト)
バッハ・コレギウム・ジャパン、寺神戸亮(コンサートマスター)
鈴木優人(チェンバロ)、鈴木雅明(指揮)

セッション録音:2020年3月14-17日/ケルン・フィルハーモニー大ホール

バッハ・コレギウム・ジャパンのデビュー録音もヨハネ受難曲でしたが、その3年後にもBIS録音しています。さらにその2年後には映像版も収録しています。2020年、コロナ禍のヨーロッパで演奏旅行中に演奏会を断念したケルンでこの曲の3回目のCD録音も行っています。名演の誉れ高い1998年のCDは以前聴きましたので、今回は2020年の新録音を聴きました。大変、高いレベルの演奏です。saraiとしては、1998年の録音が優れていると感じました。



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CDでしか聴いてはいません。
公演では小沢、ショルティだけ

ベーム、ケルテス、ショルティ、クーベリック、
クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
、チェリブ

07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

もろともにあはれとおもへ山ざくら 花よりほか

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