最初のベートーヴェンの弦楽四重奏曲第11番《セリオーソ》は第1楽章は気魄と哀愁が交錯するような彼ら独特の表現。しっかりと堪能しました。第2楽章はクレメンスの印象的なチェロの演奏、そして、ヴェロニカのヴィオラから開始されるフーガに魅了されました。第3楽章は勢いのある演奏が圧倒的で、トリオは実に静謐。第4楽章は序奏の後、勢いのある情熱的なフレーズに魅了されました。最後は明るく〆。今回の3回のコンサートはこのベートーヴェンで開始し、明後日の第3夜はベートーヴェンの弦楽四重奏曲第13番で閉じるという構成になっています。それにふさわしい開幕演奏でした。
次はモーツァルトの弦楽四重奏曲第14番。ハイドン・セットの最初の曲です。作曲したモーツァルトの意気込みとハーゲン・クァルテットの気合いが実にマッチしていました。とりわけ、第4楽章の素晴らしさに感銘を受けました。やはり、弦楽四重奏曲に対位法はマッチしますね。ベートーヴェンも見事ですが、モーツァルトも素晴らしい音楽を書いています。
ここで休憩。
最後はラヴェルの弦楽四重奏曲。今日一番の演奏でした。一見、ハーゲン・クァルテットには似合いそうもないと思われますが、さすが、見事に弾きこなします。まず、響きの美しさに魅了されます。そして、緻密な音楽表現に引き込まれます。第1楽章のエスプリに満ちたフランス伝統の音楽表現。そして、第2楽章はピッツィカートの勢いに満ちた弾けるような音楽に魅了されます。ここまで、ハーゲン・クァルテットの素晴らしい演奏が光ります。極め付きは第3楽章の抑えに抑えた内省的な音楽の深みです。これこそ、音楽の醍醐味です。何と言う演奏、何と言う音楽。最後の第4楽章は一転して、激しい音楽。圧倒的な演奏でした。明日のドビュッシーも楽しみです。
これから、明日、明後日とハーゲン・クァルテットを堪能します。4年前のバルトークの素晴らしさを思い出しています。
今日のプログラムは以下のとおりでした。
〈ハーゲン プロジェクト 2023〉ハーゲン・クァルテット 第1夜
ハーゲン・クァルテット Hagen Quartett
ルーカス・ハーゲン Lukas Hagen (ヴァイオリン)
ライナー・シュミット Rainer Schmidt (ヴァイオリン)
ヴェロニカ・ハーゲンVeronika Hagen (ヴィオラ)
クレメンス・ハーゲン Clemens Hagen (チェロ)
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第11番 ヘ短調 Op.95《セリオーソ》
モーツァルト:弦楽四重奏曲第14番 ト長調 K387
《休憩》
ラヴェル:弦楽四重奏曲 ヘ長調
《アンコール》
モーツァルト:弦楽四重奏曲第21番 ニ長調 K575《プロシア王第1番》より 第4楽章
最後に予習したCDですが、もちろん、ハーゲン・クァルテットのCDを軸に聴きました。
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第11番 ヘ短調 Op.95《セリオーソ》
ハーゲン・カルテット 1996~1998年 セッション録音
モーツァルト:弦楽四重奏曲第14番 ト長調 K387
ハーゲン・カルテット 1989~2004年 セッション録音
ラヴェル:弦楽四重奏曲 ヘ長調
ハーゲン・カルテット 1993年1月 スイス、ラッパースヴィル、リッターザール セッション録音
ハーゲンのベートーヴェン、モーツァルトは結構、癖のある独特のスタイルの演奏です。かなりの思い入れのある突っ込んだ演奏です。モダンと言えば、モダン。過去の伝統を振り切ったかのごとくです。
一方、ラヴェルは意外なほど、端正な演奏。フランスものは変な縛りがないのでしょう。
↓ saraiのブログを応援してくれるかたはポチっとクリックしてsaraiを元気づけてね
いいね!