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モーツァルトもドビュッシーもベートーヴェンも繊細で抑制された極上の音楽を聴かせてくれたハーゲン・クァルテット@トッパンホール 2023.11.1

今年のハーゲン・クァルテットの〈ハーゲン プロジェクト 2023〉、3夜連続のハーゲン・クァルテットのコンサート・シリーズの第2夜です。昨夜の演奏からは明らかにレベルの高い上質の音楽を聴かせてくれました。体調も精神状態も万全に整ったのでしょうか。やはり、海外の演奏家は来日後、次第に演奏レベルが上がるという一般的な傾向があります。時差の関係もあるのかもしれません。そうすると、最終日の明日の演奏はさらに期待できそうですね。

今日のモーツァルトは弦楽四重奏曲第15番 ニ短調 K421。ハイドンセットの第2曲で、希少な短調の作品です。何故にモーツァルトの短調の作品はこうも名曲が多いのでしょう。この作品も哀愁に満ちたもので、実に天才モーツァルトが丁寧に心を込めて作曲したことが分かる傑作です。ハーゲン・クァルテットの響きを抑えた繊細極まる演奏も最高です。基本、響きを抑えつつ、その中で起伏のある音楽を作り上げています。第1楽章の素晴らしさに続き、第2楽章の美しさは寂漠としたものがあります。

昨日のラヴェルに続き、今日はドビュッシー。その響きの豊穣なることは昨日のラヴェルの比ではありません。モーツァルトの抑えた響きをこのドビュッシーでは全開放しつつ、その響きの隙のなさは完璧です。常に4つの楽器が重なり合って作り出す響きの新しさはドビュッシーもまた天才作曲家であったことの証しでしょう。4つの楽章はそれぞれ個性を発揮しますが、循環形式によって統一感が感じられます。ハーゲン・クァルテットの演奏はドイツ・オーストリア系の音楽とは一線を画していますが、素晴らしいアンサンブルの妙を感じさせてくれます。

ここで休憩。

最後はベートーヴェンの弦楽四重奏曲第8番 ホ短調 Op.59-2《ラズモフスキー第2番》。ラズモフスキー3曲の中で唯一、短調で、少し、規模が小さいのですが、その凝縮度によって、ちっとも短さを感じさせない作品で、内省的な深さを感じさせます。ハーゲン・クァルテットは集中度の高い気魄、そして、ここでも抑制した美を発揮します。この作品の素晴らしさを十全に表現した稀有な演奏でした。圧巻の第1楽章に続き、第2楽章のモルト・アダージョの深く沈潜した内省的な表現はもう、中期の作品の枠を超えるような演奏です。芸術の何たるかを我々に語りかけてきます。ハーゲン・クァルテットは熟成の時を迎えました。第3楽章のリズム感のあるスケルツォを経て、第4楽章は推進力を持って熱いコーダで全曲を〆ます。圧倒的な演奏でした。
明日のベートーヴェンの大フーガ付きの第13番 Op.130/Op.133がますます楽しみになってきました。
まさにホップ・ステップ・ジャンプの3夜になりそうです。


今日のプログラムは以下のとおりでした。

 〈ハーゲン プロジェクト 2023〉ハーゲン・クァルテット 第2夜

ハーゲン・クァルテット Hagen Quartett
    ルーカス・ハーゲン Lukas Hagen (ヴァイオリン)
    ライナー・シュミット Rainer Schmidt (ヴァイオリン)
    ヴェロニカ・ハーゲンVeronika Hagen (ヴィオラ)
    クレメンス・ハーゲン Clemens Hagen (チェロ)

  モーツァルト:弦楽四重奏曲第15番 ニ短調 K421(417b)
  ドビュッシー:弦楽四重奏曲 ト短調 Op.10

   《休憩》

  ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第8番 ホ短調 Op.59-2《ラズモフスキー第2番》

   《アンコール》

  モーツァルト:弦楽四重奏曲第14番 ト長調 K387より 第3楽章


最後に予習したCDですが、もちろん、ハーゲン・クァルテットのCDを軸に聴きました。


 モーツァルト:弦楽四重奏曲第15番 ニ短調 K421
  ハーゲン・カルテット 1989~2004年 セッション録音

 ドビュッシー:弦楽四重奏曲 ト短調
  ハーゲン・カルテット 1992年11月 ミュンヘン、マックス・ヨーゼフザール セッション録音

 ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第8番 ホ短調 Op.59-2《ラズモフスキー第2番》
  ハーゲン・カルテット 2010年5月&7月 ベルリン、ジーメンス・ヴィラ セッション録音 ハーゲン・カルテット結成30周年記念

ハーゲンのモーツァルトは実に端正なスタイルの演奏です。短調の作品の色彩が浮き彫りになっています。
一方、ドビュッシーは実に深い響きでエスプリに満ちた演奏。会心の演奏です。
ベートーヴェンはそれまでのハーゲン・クァルテットになかった熟成した深い音楽が聴こえてきます。



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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
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金婚式、おめでとうございます!!!
大学入学直後からの長いお付き合い、素晴らしい伴侶に巡り逢われて、幸せな人生ですね!
京都には年に2回もお越しでも、青春を過ごし

10/07 08:57 堀内えり

 ≪…長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さ…≫を、長調と短調の振り子時計の割り振り」による十進法と音楽の1オクターブの12等分の割り付けに

08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
その後、ザル

07/08 18:59 sarai

CDでしか聴いてはいません。
公演では小沢、ショルティだけ

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クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
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07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

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