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ウィーン・フィルの豊穣な音の奔流を見事にコントロールしたソヒエフの音楽の才に驚嘆 色彩感あふれる絵巻物のようなR.シュトラウスの《ツァラトゥストラはかく語りき》に没我の心地@サントリーホール 2023.11.19

ウィーン・フィルはいつ聴いても素晴らしい演奏を聴かせてくれますが、今日の演奏のように冒頭からアンコールに至るまで最高の状態で演奏してくれたのは覚えていません。多分、ソヒエフの指揮が実に丁寧で的確、かつ、素晴らしかったからだと思います。明日聴くベルリン・フィルも首席指揮者はロシア人のペトレンコなのだからということもありませんが、ウィーン・フィルも久々に首席指揮者として、ロシア人のソヒエフを据えればよいとsaraiは強く思いました。実はソヒエフがウィーン・フィルを振るのはちょうど10年前にウィーン楽友協会グローサーザールで聴いています。当時はソヒエフは30代半ばの若手でしたが、物凄い色彩感あふれるベルリオーズの幻想交響曲を振って、あまりの凄さにsaraiは高笑いしました(笑い)。

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そして、10年ぶりに聴いた今日の演奏はさらに高レベルのものになっていました。ですから、ウィーン・フィルの首席指揮者に推挙したわけです。ウィーン・フィルは実質的な首席指揮者だったカール・ベームが1981年に亡くなってからは決まった首席指揮者はいません。カール・ベームの前はフルトヴェングラーだったことを考えれば、そうそう、そのあたりの指揮者が重責を担うわけにはいきませんけどね。

ともあれ、今日の最初の曲、R. シュトラウスの交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』は冒頭のトランペットの響きが美しく、ぐっと惹き付けられます。《2001年 宇宙の旅》で有名になった冒頭部分が圧巻の演奏で背中がぞくぞくします。そして、続くVon den Hinterweltlern(世界の背後を説く者について)にはいると、ウィーン・フィルのまろやかな弦の響きで「人間」を象徴する“憧憬の動機”が何とも魅力的に奏でられます。コラールの陶酔の響きに魅了されて、もう、ウィーン・フィルの世界にどっぷりと引き込まれます。ソヒエフの指揮、表現も見事としか言えません。夢のような世界を彷徨いつつ、Von der Wissenschaft(学問について)では弦の対位法的展開にまたまた、魅了されて、第1ヴァイオリンの奏でる高音の美しさはウィーン・フィルを体現するものです。続くDer Genesende(病より癒え行く者)の長大なパートを味わいながら、次も長大なDas Tanzlied(舞踏の歌)に入ります。ウィーン・フィルの面目躍如たるワルツのリズムを刻みつつ、コンサートマスターのライナー・ホーネックの独奏ヴァイオリンが美しく響きます。昔、ウィーン・フィルでこの曲を聴いたときはライナー・キュッヒルの独奏ヴァイオリンだったことを思い出します。そして、音楽が高潮していき、突如、真夜中の12時を告げる鐘の音が響きます。うーん、これは夢のような時間が終わりを告げるようなシンデレラの世界だななんて、馬鹿なことを思いつつ、音楽は終焉していきます。第1ヴァイオリンがロ長調の和音(「人間」)を奏で、低音のハ音(「自然」)と結局は調和することなく、美しくも暗黒の未来を象徴しながら、音が途絶えます。凄い演奏でした。交響詩としては、明日、ベルリン・フィルで聴く《英雄の生涯》と肩を並べる傑作であることを実感しました。

休憩後、おまけのようなドヴォルザークの交響曲第8番がウィーン・フィルの贅沢過ぎる音響で奏でられました。saraiが子供の頃から愛する曲です。とりわけ、第3楽章の舞曲の高弦と木管の美しさは究極の響きです。ソヒエフの巧みな表現で各楽章が素晴らしく演奏されます。そして、第4楽章のコーダの盛り上がりの凄まじさはどうでしょう。もったいないような演奏に恐れ入りました。

アンコールは無論、ウィンナーワルツ。これは凄いね! 文句なし。

今回がウィーン・フィルを聴く33回目のコンサートでした。ほとんどはこの10年間にウィーン、ザルツブルク、東京で聴きました。もっとも、実質、ウィーン・フィルのウィーン国立歌劇場はほぼ40回聴いているので、やっぱり、ウィーン・フィルはオペラを聴くオーケストラかな。オペラはこの30年間、まんべんなく聴いてきましたが、もう、ウィーンに行かないので、これからはウィーン・フィルのコンサートを東京で聴くのみですね。

明日からはベルリン・フィルを聴くモードに移行します。これもワクワク。


今日のプログラムは以下のとおりです。

  指揮:トゥガン・ソヒエフ
  管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 コンサートマスター:ライナー・ホーネック

  R. シュトラウス:交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』Op.30

   《休憩》

  ドヴォルザーク:交響曲第8番 ト長調 Op.88(B 163)

   《アンコール》
    J. シュトラウスⅡ世:ワルツ『芸術家の生活』Op.316
    J. シュトラウスⅡ世:ポルカ・シュネル『雷鳴と稲妻』Op.324


最後に予習について、まとめておきます。

R. シュトラウスの交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』を予習したCDは以下です。

  ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(ヴァイオリン・ソロ:ウィリー・ボスコフスキー) 1959年 ウィーン、ゾフィエンザール セッション録音

カラヤンがウィーン・フィルとの録音をとりわけ、DECCA録音で熱望して、実現した第1弾のアルバム。1950年代のウィーン・フィルの爛熟した響きと壮年期でかっこよかった頃のカラヤンの名演が聴けます。普通はカラヤンの録音は避けますが、この頃のウィーン・フィルとのR.シュトラウスだけは例外です。実に素晴らしい演奏です。キューブリック監督の《2001年 宇宙の旅》(1968年)でも、この演奏の冒頭部分が使われています。太陽、月、地球が直列したシーンです。以来、この曲のアルバムは宇宙をイメージするデザインが多くなっています。


ドヴォルザークの交響曲第8番を予習した演奏は以下です。

  ジョージ・セル指揮チェコ・フィル 1969年 ライヴ録音(ルツェルン音楽祭) audite 48kHz/24bit PCM ダウンロード音源

ハイレゾで聴くセルとチェコ・フィルの一期一会の圧倒的名演。セルがこんなにオーケストラを伸び伸びと演奏させているのは、いつものクリーヴランド管弦楽団ではなく、チェコ・フィルとのライヴだからでしょう。それでいて、セルらしく、きっちりと統率しているのは見事。これもカラヤンとウィーン・フィルで聴こうと準備はしましたが、やはり、空前絶後のこの演奏は何度聴いても凄いと言わざるを得ません。



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金婚式、おめでとうございます!!!
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京都には年に2回もお越しでも、青春を過ごし

10/07 08:57 堀内えり

 ≪…長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さ…≫を、長調と短調の振り子時計の割り振り」による十進法と音楽の1オクターブの12等分の割り付けに

08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
その後、ザル

07/08 18:59 sarai

CDでしか聴いてはいません。
公演では小沢、ショルティだけ

ベーム、ケルテス、ショルティ、クーベリック、
クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
、チェリブ

07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

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