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終盤に高まる音楽的絶頂で深く感動 ウィリアム・クリスティ指揮レザール・フロリサン《ヨハネ受難曲》@東京オペラシティコンサートホール 2023.11.26

ウィリアム・クリスティ指揮レザール・フロリサンの演奏を実演で聴くのは3度目。最初はザルツブルク音楽祭でオペラ《ポッペアの戴冠》であまりの音楽レベルの高さに衝撃を受けました。2度目は来日公演でのヘンデル《メサイア》。これも究極の《メサイア》でした。で、今回は初めてのバッハの作品を聴きます。それがあまり演奏されない《ヨハネ受難曲》とはね。

若干の危惧はありましたが、前半の第1部第1曲~第14曲は正直、あまり、ぱっとしない演奏。もっとも《ヨハネ受難曲》の第1部はどの演奏を聴いてもぱっとしません。ただ、エヴァンゲリストのバスティアン・ライモンディの高音の美声だけは印象的でした。

休憩後、第2部が始まると、ぐっと音楽の緊密度が上がります。最初のコラールの優しい慰撫に心がとろけそうです。次第に音楽の劇的緊張感が高まっていきます。アカペラで歌われたコラールの音楽的な魅力はたまりませんでした。
そして、第30曲のアルトのアリア、成し遂げられた!Es ist vollbracht ! で音楽的頂点に至ります。
ヴィオラ・ダ・ガンバの美しい響きに乗って、アルトのヘレン・チャールストンが実に感動的な歌唱を聴かせてくれました。美し過ぎる歌唱でした。アルトの彼女がとても綺麗な高域の声で歌うのが素晴らしく、聴き惚れます。中間部の激しい歌唱も見事です。そして、再び、最初の抒情的なパートを歌い始めます。もう、うっとりです。

この第30曲に続く10曲は素晴らし過ぎる演奏ばかりです。

第32曲のアリアとコラール、尊い救い主よ、お尋ねしてよろしいでしょうかMein teurer Heiland,lass dich fragen。
既に絶命したイエスに対して、問いを発するものです。バスの歌唱は素晴らしく、そのバックで合唱隊が低い音量で歌うコラールの何とも美しいことに感銘を覚えます。この音楽はバッハの天才的な筆の冴えを感じます。それを音楽として実現したクリスティの力量も天才的です。

第35曲のソプラノのアリア、わが心よ、涙となって融け流れよZerfließe, mein Herze, in Fluten der Zähren。
これも素晴らしい演奏です。レザール・フロリサンの達人たちの実力が発揮されます。ヴァイオリン、フラウト・トラヴェルソ、オーボエ・ダ・カッチャ、オルガン、チェロの素晴らしいアンサンブルをバックにソプラノのレイチェル・レドモンドが美しい透明な歌唱を聴かせてくれます。

第39曲の合唱、安らかに眠ってください、聖なる骸よRuht wohl, ihr heiligen Gebeine。
マタイ受難曲の終曲と類似した音楽がより劇的な合唱で聴けます。ここにきて、合唱隊は持てる力をすべて出し尽くして、圧倒的な歌声をホールに響き渡らせます。ただただ、聴き惚れるだけです。そして、深く感動します。

第40曲のコラール、ああ 主よ、あなたの愛する天使を遣わされAch Herr, las dein lieb Engelein。
レザール・フロリサンの合唱隊は魂の歌声を聴かせてくれます。感動のあまり、涙が滲んできます。感銘あふれる終曲です。マタイ受難曲もこのようにコラールで締め括ってくれればよかったのにと思います。ヨハネ受難曲の終盤の盛り上がりは明らかにマタイ受難曲を上回ります。

昨日まで聴いていたベルリン・フィルも最高でしたが、ウィリアム・クリスティ指揮レザール・フロリサンはそれに匹敵する音楽力を持った団体です。感銘の深さではベルリン・フィルを上回ります。それにしても、この秋の東京は一流のヨーロッパのオーケストラが大挙してやってきて、まるで、ルツェルン音楽祭のようです。ヨーロッパの音楽の奥深さに日々、衝撃と感銘を受け続けています。
これでsaraiの黄金の10日間が終わりました。それを締めくくるのにふさわしいウィリアム・クリスティ指揮レザール・フロリサンのヨハネ受難曲でした。同時刻にサントリーホールではベルリン・フィルのラストコンサートも開かれていたのですね。何ともはや・・・。
ちなみに彼らはこの日のコンサートのためにだけ、来日したそうです。なんと贅沢な! またの来日を期待したいものです。次はラモーのオペラでもやってくれないかな。


今日のプログラムは以下のとおりです。

  指揮:ウィリアム・クリスティ
  バスティアン・ライモンディ(テノール/エヴァンゲリスト)
  アレックス・ローゼン(バス/イエス)
  レイチェル・レドモンド(ソプラノ)
  ヘレン・チャールストン(アルト)
  モーリッツ・カレンベルク(テノール)
  マチュー・ワレンジク(バス)
  レザール・フロリサン(管弦楽&合唱)

  J.S.バッハ:ヨハネ受難曲 BWV245
  
   第1部
  
   《休憩》
   
   第2部
  

最後に予習について、まとめておきます。

J.S.バッハ:《ヨハネ受難曲》 BWV245(1739/49版)

ジェイムズ・ギルクリスト(エヴァンゲリスト)
ハナ・ブラシコヴァ(ソプラノ)
ダミアン・ギヨン(アルト)
ザッカリー・ワイルダー(テノール)
クリスティアン・イムラー(バス/イエス)
松井亜希(ソプラノ/召使の女)
谷口洋介(テノール/下役)
浦野智行(バス/ペトロ)
渡辺祐介(バス/ピラト)
バッハ・コレギウム・ジャパン、寺神戸亮(コンサートマスター)
鈴木優人(チェンバロ)、鈴木雅明(指揮)

セッション録音:2020年3月14-17日/ケルン・フィルハーモニー大ホール

バッハ・コレギウム・ジャパンのデビュー録音もヨハネ受難曲でしたが、その3年後にもBIS録音しています。さらにその2年後には映像版も収録しています。2020年、コロナ禍のヨーロッパで演奏旅行中に演奏会を断念したケルンでこの曲の3回目のCD録音も行っています。名演の誉れ高い1998年のCDは以前聴きましたので、今回は2020年の新録音を聴きました。大変、高いレベルの演奏です。saraiとしては、1998年の録音が優れていると感じました。



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金婚式、おめでとうございます!!!
大学入学直後からの長いお付き合い、素晴らしい伴侶に巡り逢われて、幸せな人生ですね!
京都には年に2回もお越しでも、青春を過ごし

10/07 08:57 堀内えり

 ≪…長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さ…≫を、長調と短調の振り子時計の割り振り」による十進法と音楽の1オクターブの12等分の割り付けに

08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
その後、ザル

07/08 18:59 sarai

CDでしか聴いてはいません。
公演では小沢、ショルティだけ

ベーム、ケルテス、ショルティ、クーベリック、
クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
、チェリブ

07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

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