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モノのオワリ

モノにはすべてオワリがあります。昨日から、今日にかけて、モノのオワリへの思いが三つ、saraiの胸に湧き起りました。

その1。
昨日、久しぶりにTSUTAYAで新作のDVDを借りて、配偶者と一緒に鑑賞。
映画《25年目の弦楽四重奏》です。この映画は、結成後25年目を迎えた弦楽四重奏団の最年長のチェリストがパーキンソン氏病にかかり、引退を決意することによって、この名門弦楽四重奏団で起きる人間ドラマを描いたものです。これも音楽家もいつかは引退を余儀なくされるという、モノのオワリを考えさせられるものでした。弦楽四重奏団の場合は、一人のメンバーが引退することは弦楽四重奏団そのものの存続問題にまでなります。弦楽四重奏団も人間が組織するものである以上、モノのオワリがあります。実際、我々も数々の弦楽四重奏団の解散を見てきました。最近で言えば、東京カルテットの解散がありました。また、この映画はシナリオそのものもさることながら、全編に流れる音楽が本当の主役であるとも言えます。その音楽はベートーヴェンの晩年の最高傑作である弦楽四重奏曲第14番嬰ハ短調Op.131。実はこの映画の原題は《A Late Quartet》、つまり、後期弦楽四重奏曲ということになります。saraiの勘違いでなければ、弦楽四重奏曲第14番がこの映画のタイトルロールです。弦楽四重奏曲第13番、第14番、第15番はベートーヴェンの晩年の傑作で、その中でも第14番はそれら3曲の最後に作曲されたものです。映画中でチェリストが最後の演奏をするのが、この曲。モノのオワリにふさわしい曲ですね。昨年聴いたハーゲン・カルテットのチクルスでは、この第14番は素晴らしい演奏でした。そのときの記事はここです。映画鑑賞後に、秘蔵LPレコードを取り出して、ブッシュ弦楽四重奏曲の素晴らしい演奏を聴きました。
ところで、この映画にはサプライズがあって、びっくり! 老チェリストの亡くなった妻がまぼろしのように現れるシーンが終盤近くであり、歌を歌いながら、現れたのは、何と、saraiの愛するメゾソプラノ、アンネ・ゾフィー・フォン・オッターです。彼女の歌うのはコルンゴルトのオペラ《死の都》第1幕からの《マリエッタの歌》。短いですが、素晴らしい歌唱。映画鑑賞後すぐに、シャトレ座で行われたコンサートのDVDを取り出して、全曲を聴きました。このDVDは現在、廃盤で入手困難のようです。もったいないことです。ピアノ五重奏をバックに歌うフォン・オッターの心のこもった歌声にまたまた魅せられました。マーラーを歌うときと同じくらい素晴らしい歌唱です。幸い、ネット上でもこのフォン・オッターの心の歌を聴けるサイトがありました。ここです。
フォン・オッターは昨年、ウィーンでベルリン・フィルと共演したマーラーの《復活》を聴いたばかりです。そのときの記事はここここです。今年はマドリードのレアル劇場で、オペラ《ホフマン物語》に出演するフォン・オッターの歌唱を聴く予定です。これはまだ、モノのオワリではありません。

その2。
今朝、起きるとテレビを見ていた配偶者が「アバドが亡くなったようよ。」と教えてくれました。昨日、1月20日、ボローニャの自宅で亡くなったそうですね。saraiは特別、アバドのファンではありませんが、結局、アバドのコンサートは聴かず終いでちょっぴり、残念です。これもモノのオワリですね。1994年のウィーン国立歌劇場の来日公演で、《フィガロの結婚》と《ボリス・ゴドノフ》のオペラ指揮を聴いたのが唯一の接触でした。今年のヨーロッパ遠征では、ウィーンでのモーツァルト管弦楽団のコンサートを聴こうかとも考慮していたところでしたが、かなわぬ夢に終わりました。指揮者は80歳からと信じているsaraiにとって、80歳になったアバドは楽しみな人でした。昨年、ベートーヴェンの交響曲全曲の集中予習で、アバド指揮ウィーン・フィルの全集を聴いたばかりでもあり、その音楽性を再認識したところでもありました。最高の1枚は第6番でしょうか。瑞々しいロマン性に彩られた、とても美しい演奏です。アバドはフルトヴェングラーの演奏を崇めていたそうですが、彼の演奏スタイルはフルトヴェングラーとはまったく異なり、流れるような美しさが本質で押しつけがましいところが微塵もない爽やかなものです。これはこれでとてもよい演奏でした。アバドのこのような演奏スタイルも考慮し、追悼ではなく、思い出ということで、マーラーの交響曲第9番を聴いてみることにしました。ベルリン・フィル、ルツェルン祝祭管弦楽団との演奏もありますが、やはり、ベートーヴェンの全集と同時期に録音されたウィーン・フィルとの演奏を聴きましょう。やはり、とても美しい演奏でした。憧れに満ちた第4楽章はいかにもアバドらしい瑞々しい感性に基づくもの。大きな感動はありませんが、静かな感銘を受けました。こういうマーラーの交響曲第9番も好きです。ウィーン・フィルとの第2番、シカゴ交響楽団との第6番も気になるところ。そのうち、聴いてみましょう。
ところで、KAJIMOTOのサイトでアバドの来日公演の一覧がまとめられていましたが、1981年のミラノ・スカラ座とのヴェルディのオペラ《シモン・ボッカネグラ》のキャストを見て、びっくり。あり得ない最高のキャストではありませんか。カプッチルリ、フレーニ、ギャウロフという垂涎の歌手。思えば、これは愛聴CDと同じキャストです。CDにはさらにカレラス、ファン・ダムも加わっているスーパーキャストですが、このオペラの主軸はシモン・ボッカネグラ、アメーリア、ヤコボ・フィエスコですからね。1981年というと、saraiが本格的にオペラを聴き始める1990年の約10年前。仕方がありませんが、聴きたかった! きっと、読者のかたで聴いたかたもいるでしょうね。今日はマーラーの交響曲第9番ではなく、《シモン・ボッカネグラ》を聴くのもありでした。

その3。
今日、眼科で精密検査を受けました。恐れていた通り、視野検査の結果、緑内障の診断です。まったく、目に異常は感じていませんが、健診の眼底検査で異常を発見されました。saraiも歳も歳なので、次々と悪いところが出てきます。これもモノのオワリかな。失明する前に、できる限り、オペラを楽しめという天のお告げかもしれません。とりあえず、症状の進行を遅らせるために、今日から、眼圧を下げる目薬を点し始めました。生まれて初めての目薬点しに四苦八苦です。まあ、saraiにとって、目を取るか、耳を取るかというと、即断で耳です。音楽が聴けない人生は考えられないですからね。そう考えて、勝手に納得しています。でも、これから、死ぬまで、ずっと、毎日、効果の見えない目薬点しが続くのかと思うと、暗澹たる思いではあります。まるでシジフォスの神話ではありませんか。





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ジャンル : 音楽

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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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えりちゃさん、お久しぶりです。saraiです。

なかなか、海外渡航の見通し、立ちませんね。来年あたりはどうでしょうね。長期戦覚悟で我慢するしかありませんね。

こちら

04/10 02:37 sarai

saraiさま、
お久しぶりです!
お元気にコンサートや旅行を楽しんでおられますね!
ブログ、楽しく拝見しています。おフランス、良いね😊
私は春だというのに、仕事と用事以

04/09 05:29 えりちや

気になってたずねても 
誰にも知らんと言われなんやろ
と思いつづけて居ました❗
写真みつけてこれだと思いました❕スッとしました
教えて下さって嬉しいです
ありがとうご

02/13 22:26 みーちゃん

みーちゃんさん、saraiです。

あの謎の建物は雄琴沖総合自動観測所という施設で琵琶湖の水質を測定しているそうです。

https://www.water.go.jp/kansai/biwako/html/repo

02/13 21:40 sarai

ずーと前にうきみどうに行きました
やはり、琵琶湖の真ん中の建物が何なのか気になったままです
分かりましたか
教えてください

02/13 20:54 みーちゃん

五十棲郁子さん、コメントありがとうございます。

水道水のこと、tap waterって言うんですね。知らなかった。単にwaterで通していました。ましてや、フランス語はほとんど

02/11 00:12 sarai

フランスも地方へ行くと英語が通じないでしょう。tap water ぐらいフランス語で言えないとね。

02/10 12:54 五十棲郁子
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