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モーツァルト・ツィクルスの行き着く果てはブラームス・・・ただただ感動!!ヴィトマン&ハーゲン・カルテット@トッパンホール 2015.10.4

怒涛の10日間連続の音楽三昧も遂に最終日になりました。

今日はハーゲン・カルテットのモーツァルト・ツィクルスの最終日で弦楽四重奏曲第20番と室内楽の最高峰のひとつ、クラリネット五重奏曲が演奏されます。クラリネット五重奏曲つながりでモーツァルトに加えて、ブラームスのクラリネット五重奏曲も演奏されます。

このモーツァルトのクラリネット五重奏曲は実に衝撃的な演奏でした。この曲はクラリネットが主役ですが、同じくらい第1ヴァイオリンが重要です。今日のルーカス・ハーゲンのヴァイオリンは素晴らしいとしか言いようのない音楽を奏でました。抑制のきいた大人の表現でありながら、素晴らしい響きが第1楽章から続きます。ヴィトマンのクラリネットもとても美しい響きでしたが、第1楽章はちょっと鳴らせ過ぎの感じで浮いた印象もありました。それも第2楽章からは抑制のきいた響きになり、弦楽四重奏の響きとパーフェクトに重なり合うようになりました。大傑作の作品が素晴らしい演奏で奏でられるのですからたまりません。うっとりどころではなく、感極まりつつ聴くしかありません。しかし、第3楽章まではそれも序章にしか過ぎませんでした。第4楽章も素晴らしい演奏が続き、やがて終盤にはいります。5人の息がぴったりと合い、自在なルパート、パウゼ、極限までのピアノッシモ。ありえないような境地の音楽に高まっていきます。音楽はスローダウンし、長いパウゼ。凄い緊張感です。テンポアップしたコーダで圧倒的な幕切れ。モーツァルトのクラリネット五重奏曲はこんなに凄い音楽だったとは・・・めくるめくような感動に襲われます。saraiの体内に感動を超えた衝撃が走ります。曲が終わっても高揚感は持続したままです。もう頭は真っ白。何と言う音楽をヴィトマンとハーゲン・カルテットは創り上げたんでしょう。一昨日、当ブログでsaraiはモーツァルトの音楽では感動しないと書きましたが、これは撤回するしかありません。この晩年の名作は天才モーツァルトがおのれの天分に加えて、人間モーツァルトの万感を込めた作品です。その人生をかけた思いがこんなに心を打つんですね。

無論、この作品はsaraiも昔から聴き続けてきて、細部まで熟知している筈の作品です。出会ったのは10代が終わりかける頃。京都で学生生活を送っていました。今回も予習したランスロのクラリネットとバルヒェット四重奏団のLPレコードを擦り切れるほど聴いていました。聴くだけでは満足できず、古物商で古いクラリネットを求めて、いつも鴨川の土手でポケットスコアを見ながら、吹けもしないクラリネットでこの曲とブラームスのクラリネット五重奏曲を吹いていました。まわりの人は迷惑だったことでしょう。そんなに入れ込んでいた作品ですが、今日の演奏を聴くまではこの作品の真価を知らなかったと言っても過言でありません。天下の名演と言われる録音はほとんど聴いてきたつもりですが、これほどのしびれるような感動を覚えたことはありません。生演奏でも退屈したことがしばしばあります。今日の演奏は超名演だったんです。ハーゲン・カルテットが好きなのでこのコンサートにも足を運びましたが、正直言って、これほどの演奏を聴かせてくれるとは想像だにしませんでした。ヴィトマンのクラリネットも見事でしたが、それ以上にハーゲン・カルテット、とりわけ、第1ヴァイオリンのルーカス・ハーゲンの高い芸術性は凄かったとしか言えません。

20分間の休憩時間中も感動の高揚感は収まりません。コンサート前はモーツァルトよりも期待感の高かったブラームスのクラリネット五重奏曲が始まってしまいます。結局、平常心に戻ることなく、ブラームスを聴くことになってしまいます。このブラームスがまた素晴らしかったんです。相変わらず、ルーカス・ハーゲンのヴァイオリンは絶好調。ヴィトマンのクラリネットも最高です。他のメンバーも見事なハーモニーを奏でます。強弱のコントロールの大胆さ、精妙さには舌を巻きます。テンポ・ルパートもモーツァルト以上に見事です。室内楽の極致をいくような演奏です。大人数のオーケストラでは決してなしえないような精緻を極める演奏なんです。これだから、室内楽を聴くのはやめられません。そして、音楽性の高さ・・・ブラームスの晩年の孤高のロマンを味わい尽くすような見事な表現です。秋の日の木漏れ日の温もりを実感させてくれる素晴らしい演奏です。第1楽章のロマンの香り高い演奏、第2楽章の一音一音に万感を込めたような味わい深い音楽、第3楽章の美しいハーモニーとテンポ感。そして、圧巻だったのは第4楽章。こんなに深い音楽があるでしょうか。終盤に至り、第1楽章の主題が回帰して、スローダウン。深いため息のように音楽が終止・・・長い沈黙。演奏者がやがて手を下ろしますが、聴衆の誰一人、拍手もなく、静寂を守ります。会場に感動が共有された瞬間です。演奏者が立ち上がり、初めて拍手が巻き起こります。それも盛大な拍手。saraiは拍手もできず、ただ、佇んでいました。

予習したクラリネット五重奏曲のCDは以下です。

  ランスロ、バルヒェット四重奏団(モーツァルト)、ミュンヘン弦楽四重奏団(ブラームス)
  ウラッハ、ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団
  シフリン、エマーソン四重奏団(ブラームス)
  オッペンハイム、ブダペスト弦楽四重奏団(ブラームス)
  コヴァーチェ、バルトーク四重奏団(ブラームス)

ランスロのCDは思い出深い1枚。最初に聴いた演奏です。古いLPは処分したので、CDは最近入手し、この演奏を何十年かぶりに聴きましたが、やはり素晴らしいです。ウラッハ&ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団は決定盤と言われています。第1ヴァイオリンのカンパーの演奏が見事です。古いモノラル音源ですが、音質もいいです。残りのブラームスの3枚は今日予習しました。オッペンハイム&ブダペスト弦楽四重奏団の演奏は素晴らしいです。モーツァルトも録音してくれればよかったのにね。ということで、今日、ブラームスのクラリネット五重奏曲は4回も聴いてしまいました。

今日のプログラムは以下です。

  弦楽四重奏:ハーゲン・カルテット
  クラリネット:イェルク・ヴィトマン


  モーツァルト: 弦楽四重奏曲第20番 ニ長調 K.499《ホフマイスター》
  モーツァルト:クラリネット五重奏曲 イ長調 K.581

   《休憩》

  ブラームス:クラリネット五重奏曲 ロ短調 Op.115


アンコールはもちろん、なしです。こんな凄い演奏の後にアンコールする音楽って、想像だにできません。

今回のハーゲン・カルテットのモーツァルト・ツィクルスは最後にブラームスで終わるという変則的なものです。すべて、聴き終わって、その意味が分かったような気がします。このツィクルスはモーツァルトの弦楽四重奏曲全23曲のうち、26歳以降に書かれたハイドン・セット、ホフマイスター、プロシャ王・セットの10曲が演奏され、モーツァルトの室内楽の最高傑作、晩年に作曲されたクラリネット五重奏曲で締めくくるというものです。後年、クラリネットの名手ミュールフェルトの演奏するモーツァルトのクラリネット五重奏曲を聴いて、ブラームスが作曲したのが同じ構成のクラリネット五重奏曲です。晩年のブラームスは創作力も衰えて、ピアノの小品のように構成の小さな曲を書いていました(バート・イシュルで書かれたOp.116~Op.119のピアノ小品集は傑作揃いです。saraiがはまっています。)。そんなブラームスが創作力を取り戻して作曲したのがクラリネット五重奏曲でした。いわば、晩年のモーツァルトの作品から霊感を得て、晩年のブラームスが傑作を創り出したということです。モーツァルトの室内楽の延長線上にブラームスの作品を置いた今回の企画は必然と言えば、必然でしょう。今日の演奏を聴いて、納得がいきました。モーツァルトの室内楽を起点として、西洋音楽の室内楽の系譜がつながっていることを大きく描き出したかったということでしょう。まあ、何と言っても、ブラームスのクラリネット五重奏曲は傑作だし、saraiも大好きな曲なので、そういう理屈抜きでもこのプログラムは大歓迎でしたけどね。

次はハーゲン・カルテットはどんな演奏でsaraiを驚かせてくれるでしょう。



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ジャンル : 音楽

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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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たかぼんさん、初めまして。saraiです。

嬉しいコメント、ありがとうございます。ブッシュ四重奏団は素晴らしいですよ。とりわけ、第14番は最高です。
もっとも、ブッシュ

09/17 02:04 sarai

とても素晴らしいお話をお聞かせ頂き感謝いたします。
私は今まで、後期の4曲はブダペスト四重奏団できまり!と思っておりました。
ブッシュ四重奏団は別なレコード(死

09/16 13:52 たかぼん

ミケランジェロさん、saraiです。

遅レスで申し訳けありません。敬愛するジョナサン・ノットをご評価いただき、ありがとうございます。

相変わらず、独自の音楽探求を続

06/23 23:50 sarai

こんにちは。

ジョナサン・ノット氏の公演鑑賞を拝読したく参りました。毎回とても沢山の公演記録を私達に届けて下さり、ありがとうございます。

マエストロは数年前のイ

06/14 08:27 michelangelo

えりちゃさん、コメントありがとうございます。
最終公演に行きますが、ムーティ&ウィーン・フィルは渾身の力で凄い演奏を聴かせてくれますよ。特にシューベルトは有終の

11/09 22:13 sarai

尻上がりに素晴らしくなりました!
あの弦の響きにもうハマるのですよ!
あと2公演ありますが、もう既に同じプログラムを2回演奏しているので、ますます良くなるか、ち

11/09 10:56 えりちゃ

えりちゃさん、お久しぶりです。saraiです。

なかなか、海外渡航の見通し、立ちませんね。来年あたりはどうでしょうね。長期戦覚悟で我慢するしかありませんね。

こちら

04/10 02:37 sarai
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