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圧倒的感動!マーラー「大地の歌」東京都響/インバル/フェルミリオン/ギャンビル@サントリーホール 2012.3.29

今シーズン最後の東京都交響楽団の定期演奏会は1年前に今シーズンのプログラムが発表されたときから、一番期待していたコンサートでした。そして、聴き終えた今、期待を大きく上回る演奏に酔いしれ、感動の波にひたっています。この感動はマーラーの交響曲第9番の素晴らしい演奏を聴いて得られる感動にも匹敵するものです。
常々思うのですが、作曲家と演奏者と聴衆が一体感を持てた時(正確には作曲家はコンサートホールにはいませんが・・・)、計り知れないほどの大きな感動がホール全体を包み込みます。音楽というのは、それを通して、人の心と心をつなぎあわせる素晴らしい力を持ったものだと思うのです。今日はフィナーレに向かって、確かにそういう力がホールを支配していたと実感しました。

今日のプログラムは以下の通りです。

 指揮:エリアフ・インバル
 メゾソプラノ:イリス・フェルミリオン
 テノール:ロバート・ギャンビル
 管弦楽:東京都交響楽団
 
 マーラー:亡き子をしのぶ歌

  《休憩》

 マーラー:交響曲「大地の歌」

まずは「亡き子をしのぶ歌」です。この曲は本来は子供を失くした父親の気持ちを歌うので、バリトンが歌うことが多いのですが、saraiは女声で聴くのが好きです。今日の歌手フェルミリオンは以前マーラーの《復活》を聴いて、そのしっかりした歌唱に感銘を覚えました。そのときの感想はここです。今日もそのような歌唱をイメージしていましたが、意外に抑えた歌唱でしみじみという感じで、なかなか素晴らしい。CDで聴いたなかではフォン・オッターに近い感じです。実は最近、フォン・オッターのマーラーにはまっていて、今日のフェルミニオンの歌唱にもうっとりとします。しみじみと哀切を極めた表現には共感を覚えます。メゾソプラノが高い音域を苦しそうに歌うところは何とも言えず、いいものです。マーラー色に染まっていく自分を感じつつ、5曲を満足して、聴き終えました。
もちろん、伴奏の管弦楽の東京都響の演奏も先週のショスタコーヴィチ以上に素晴らしい響きです。コンサートマスターは四方恭子ですが、その横の席には矢部達哉が座り、まさにベストメンバーです。弦楽セクションの美しさはいつもの通り素晴らしいです。木管も美しい響きです。

休憩の後、「大地の歌」です。テノールのロバート・ギャンビルは生では初聴きです。第1楽章、オーケストラが迫力十分で基本動機を提示します。都響はなかなか素晴らしい。そして、ギャンビルが強くはいってくるかと思ったら、意外にソフトな歌い方ではいってきたので、予想はずれ。大体、ここはうるさ過ぎるところなので、これでいいかもしれません。その後、高音を張り上げるところでは十分な喉を聴かせてくれました。この楽章はやはり、かっこよく演奏しないといけません。オーケストラもテノールもかっこよく演奏してくれたので、満足して聴けました。切迫感・緊張感が持続した演奏だったので、あっという間にこの比較的長い楽章も終了。
第2楽章は緩徐楽章でしみじみとした楽想が続きます。そういう意味では先ほどの「亡き子をしのぶ歌」と同様ですが、内容が違います。人生の寂寞感をフェルミリオンが切々と、しかし、精神的な力を込めてしっかりと歌います。静かですが、決然と強い表現です。なかなかの名唱です。オーケストラも特に木管の響きが切々として、心に沁みます。
第3楽章~第5楽章もオーケストラも歌唱も気持ち良く(内容が内容ですから、もちろん暗い気持ちではありますけどね)、聴けました。
そして、いよいよ、第6楽章、ここが聴きたくて、この曲を聴くようなものです。そういえば、《復活》も同じですね。美しくも寂寞たるオーケストラの響きが流れるなか、フェルミリオンは美しい詩句を歌い上げていきます。そして、前半も終りに近づくと、あふれる心情が盛り上がり、saraiもうるうるしてきます。そして、長大なオーケストラの演奏が始まります。もう、美の極致、インバルと都響のコンビも最高の高みに上り詰めてきたようです。とても平静な気持ではいられなくなります。弦や木管の響きで心が揺れ動きます。そして、最高の部分にはいっていきます。惜別を歌うフェルミリオンの歌声の一言、一言が心に突き刺さります。saraiの心はずたずた、涙があふれます。東洋的な諦観もありますが、むしろ、ウィーンの熟成した退廃的とも言えるぎりぎりの美が心を捉えて放しません。何という感動でしょう。だんだん静まってくるエーヴィッヒ、エーヴィッヒという言葉も感動を静めることはできません。静かな感動に変容するだけです。そして、消えるような終わり。ホールは静寂に包まれます。1分くらいはこの感動を胸に秘めておきたかったところです。インバルはあっさりと指揮棒をおろしたので、すぐに拍手。残念です。

「大地の歌」は東洋的な死生観とマーラーのヨーロッパ的な愛と死の哲学がアウフヘーベンしたような音楽で、まさに日本人の感性でヨーロッパの文化を受け入れてきた日本のオーケストラ、とりわけマーラーにこだわってきた東京都響にはうってつけのものだと感じました。日本のオーケストラとしては最高のマーラー演奏であったと感じています。

これでしばらく、日本のコンサートからは遠ざかって、来週からはヨーロッパでコンサート・オペラの日々を送ります。今日日本で聴いた最高のマーラー演奏に対して、やはり、ヨーロッパの音楽はさらに上を行くのか、日々、レポートを送りますので、是非、ご愛読くださいね。


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