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ドレスデンで音楽・美術三昧:アルテ・マイスター絵画館のフランドル・オランダ絵画1回目

2013年6月13日木曜日@ドレスデン/3回目

充実したイタリア絵画コレクションの次はフランドル・オランダ絵画を見ていきましょう。
フランドル・オランダ絵画では、ヤン・ファン・エイク珠玉の1枚とフェルメールの貴重な2枚に感銘を受けます。レンブラントの作品も充実しています。

まずはヤン・ファン・エイクの《三連祭壇画(トリプティカ)》です。1437年、ヤン・ファン・エイク47歳頃の作品です。この作品は当初、デューラーの作とされていました。しかし、この作品の精巧な油彩画技法がヤン・ファン・エイクその人のものに他ならないとの美術史家の意見も多く、1958年の額縁の洗浄修復の際に下の縁から「ヤン・ファン・エイク、1437年、我れ描き完成す」という銘文が発見され、ヤン・ファン・エイクの作品であることが判明しました。さて、この作品は祭壇画と言っても、教会に飾られるような大きなものではなく、縦が30センチほど、幅が全体で55センチほどの小さなもので、富裕な市民が自宅に飾るものです。しかし、小さいとは言え、細密画法に長けたヤン・ファン・エイクが作り上げたこの祭壇画は膨大な内容を秘めた作品になっています。中央は聖母子が描かれていますが、聖母の衣の赤の色彩の輝かしさに目を奪われます。右翼は聖カタリナが描かれ、ドレスの青い色彩、そして、冠の見事な細密表現には驚かされます。左翼は大天使ミカエルが描かれ、その鎧で身を固めた大天使ミカエルがこの絵の寄進者を聖母に紹介しています。
見れば見るほど奥深い絵です。どれだけ見ても見尽すことは不可能でしょう。ヤン・ファン・エイクは初めて油彩画技法を完成させた画家と言われていますが、いまだに彼を超える油彩画を描ける画家はいないのではないでしょうか。このアルテ・マイスター絵画館で名画を1枚選ぶのなら、saraiは間違いなく、この1枚を選ぶでしょう。次の旅はヤン・ファン・エイクを尋ねて、ベルギーのゲントやブルージュを訪れたいものです。


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ロヒール・ファン・デル・ウェイデンの《磔刑:聖ヨハネ、聖母マリア、マグダラのマリアを伴うキリスト》です。1460年から1470年頃、ファン・デル・ウェイデン60~70歳頃の作品です。ファン・デル・ウェイデンは現在では、ヤン・ファン・エイクと並ぶ初期フランドルの巨匠と評価されています。15世紀後半はヤン・ファン・エイクを凌ぐ人気すらあったと言われていますが、その後、忘れ去られ、最近になって再評価が進んできた画家です。ただ、この作品はファン・デル・ウェイデン自身の作ではなく、ファン・デル・ウェイデンの作品に習って、彼を信奉する仲間の画家が描いたものとの説が強くなっています。要はファン・デル・ウェイデンの作品ならば、もっと素晴らしいだろうとのことです。実際、後日、プラド美術館で見たファン・デル・ウェイデンの《十字架降下》はヤン・ファン・エイクと見まごうばかりの素晴らしい作品でした。


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ルーベンスの《レダと白鳥》です。1598年から1600年頃、ルーベンス21~23歳頃の作品です。ルーベンスの若い頃の作品ですが、既に十分な筆力を持っていたことが分かりますね。この作品はギリシャ神話の有名な1シーンを描いています。女好きでもある、神の中の神ゼウスは見染めた女性レダを求めて、白鳥に姿を変えて、まんまと事をなしとげます。この絵は初々しいルーベンスを感じさせられます。成熟していないからこそのルーベンスの魅力を感じます。


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ルーベンスの《酔っ払いのヘラクレス》です。1613年から1614年頃、ルーベンス36~37歳頃の作品です。この作品はギリシャ神話から題材を取り、逞しい筋肉の英雄ヘラクレスが酔っ払ってニンフとサトゥロスに導かれて連れ去られるシーンが描かれています。こういう力強く劇的な絵はルーベンスの専売特許ですね。しかもルーベンスの絵の中でも質の良い作品だと感じます。


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ルーベンスの《老女と石炭籠》です。1616年から1618年頃、ルーベンス39~41歳頃の作品です。この作品は夜のシーンで、手を温めている老女、残り火に息を吹きかけている少年、火を一心に見つめている青年、その3人が石炭籠を中心に集まっています。ルーベンスのこのような絵は初めて見ました。明らかにカラヴァッジョの闇と光の表現の影響が感じられます。実際、ルーベンスがこのような夜のシーンの作品を描き始めたのはイタリア訪問後だったそうです。巨匠ルーベンスさえ、カラヴァッジョの作品には畏敬の念を感じたようです。この作品では、石炭籠の光が中心にありますが、これは神の光を暗示しているのでしょう。その光に息を吹きかけるのはキリストでしょうか。カラヴァッジョの技法を完全消化して、鮮やかな構図を作り上げたルーベンスの画力に脱帽です。


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ルーベンスの《狩りから帰るディアナ》です。1616年頃、ルーベンス39歳頃の作品です。この作品は狩りの女神ディアナと男たちの肉体美を描き上げたももです。ディアナはギリシャ神話で活躍するオリュンポス12神の一人で、太陽の神アポロンの双子の妹です。この作品は《酔っ払いのヘラクレス》と同系列のものと言えますが、同時期に《老女と石炭籠》というまったく別傾向の作品も描いているのですから、ルーベンスの画力の幅広さには舌を巻きます。


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ルーベンスの《水浴のバテシバ》です。1635年頃、ルーベンス58歳頃の作品です。この作品は旧約聖書の《サムエル記》に書かれたエピソードを描いています。水浴と言っても、泉の水で体を洗ってもらっているのが人妻のバテシバ。その美しい裸体を盗み見たのがイスラエル王国のダヴィデ王。バテシバの夫の兵士ウリアは戦に出征中でしたが、ダヴィデ王はこのバテシバを宮殿に招いて愛人にし、兵士ウリアを戦の最前線に送り出して戦死させてしまいます。この作品はダヴィデ王自身は登場させずに、黒人の少年にダヴィデからバテシバへの恋文を届けさせています。何のことはない、ルーベンスは旧約聖書を引用することで、女性の豊満なヌードを描く正当性を得ているだけです。ですから、この作品は赤い布と女性の白い肌の対比で、女性の美しさがいかに表現されているかを鑑賞するのが本質と言えるでしょう。saraiはルーベンスのこの手の女性表現は苦手です。


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フランドル・オランダ絵画について、見てきましたが、まだ、レンブラント、フェルメールという巨匠の作品が続きます。


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