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薄明~熱い情熱!マーラー2番《復活》byフォン・オッター、ラトル+ベルリン・フィル@コンツェルトハウス 2013.6.5

音楽にこれ以上、何が望めるでしょう。音楽に真摯に魂を捧げる演奏者、それを享受する聴衆、そして、何よりもその全存在をかけて、芸術を作り上げた作曲家マーラー。それらが一体になって、ウィーン・コンツェルトハウスのグローサーザールに輝かしい感動を巻き起こしました。

それにしても、フォン・オッターの絶唱とも言える歌唱はマーラーを愛する心が呼び起こした奇跡のような音楽です。第4楽章の《原光》は期待通りの深い味わいの歌でした。感動の涙をおさえることは不可能です。フォン・オッターの歌声を最後に聴いたのは、かれこれ20年前のクライバー指揮の伝説のオペラ《薔薇の騎士》のオクタヴィアンです。こんなマーラー歌いになるなんて、想像もしていませんでした。彼女も歳を重ね、今や、マーラーを歌わせたら、右に出るものがいない存在になりました。そんなに声量があるわけではなく、メゾ・ソプラノとしては線の細い声の響きですが、マーラーの音楽へのシンパシーが聴く者の魂を揺り動かします。やっと、彼女がマーラーを歌う生の声を耳にして、それだけでsaraiは感激です。今年の4月には、この《復活》が作曲されたアッター湖畔のマーラーの作曲小屋を訪問しましたが、そのときにIPODで聴いたのがフォン・オッターの《原光》(ただし、角笛の中の1曲)でした。そのときの思い出も脳裏をよぎり、感動は倍化しました。今日の彼女の真っ赤なドレスから、淡い光が差しているような感じもありました。まさに薄明の音楽です。

ラトルのマーラーは実に誠実なものです。第一に彼のテンポ感の素晴らしさ、そして、絶妙のバランス感覚に基づいて、マーラーの音楽が妙な粘っこさなしに美しく表現されます。時として、ダイナミックな爆発もありますが、決して、恣意的なものではなく、マーラーの意図に沿っての演奏に感じられます。もちろん、だからと言って、無味乾燥な音楽に陥っているのではなく、確かな熱情、あるいは曲に対する愛情と言ってもいいと思える人間的な気持ちのこもった表現になっています。
その発露が第2楽章でした。これも薄明の音楽です。第1楽章がアッター湖の日の出の音楽だとすれば、第2楽章は朝のアッター湖の静かなさざ波を思わせる音楽です。それを実に精妙に再現するのがラトルの誠実な音楽です。それでも、マーラーの自然の穏やかな情景に包まれた平静な音楽は内面に持つ自身の生の情熱に揺り動かされ、熱いほとばしりを禁じ得ません。ラトルはそのあたりの葛藤を的確に描き分けていきます。あくまでもマーラーの音楽の再現の範囲内での誠実な表現です。
第4楽章の《原光》を経て、第5楽章はマーラーの内面の熱い情熱の開放です。ラトルもともに自己を開放し、熱い演奏を展開します。復活のテーマが輝かしく、何度も繰り返され、それは大合唱に引き継がれます。「よみがえる、そうだ、おまえはよみがえるだろう」・・・合唱が厳かに始まります。生あるものは必ず滅びるが、滅びたものは必ず復活する。それはマーラーの終生のテーマ、死への恐れと生への憧憬、そのものです。自己の内面をあらわに表現することでマーラーは現代の聴衆の共感を得ることになりました。ラトルはマーラーと気持ちを一つにするかのように、熱い生への賛歌を歌い上げました。フィナーレへの狂奔する高ぶりに心穏やかでいられる聴衆はいないでしょう。saraiも熱い涙が流れるままです。合唱は高らかに「私は生きるために死のう!よみがえる、そうだ、おまえはよみがえるだろう」としめくくります。音楽を聴くことは、人間の愛と死を魂で感じ取ることだと思います。そして、ここには、それがありました。偉大な音楽にまた接することができて、感動で胸がいっぱいになりました。

最後に、今日のプログラムをまとめておきます。

  指揮:サイモン・ラトル
  ソプラノ:サラ・フォックス
  メゾ・ソプラノ:アンネ・ゾフィー・フォン・オッター
  管弦楽:ベルリン・フィル
  合唱:ウィーン・シングアカデミー

マーラー:交響曲第2番ハ短調《復活》

ベルリン・フィルはこの《復活》をマーラー自身の指揮で初演したオーケストラです。そのオーケストラがマーラーの聖地とも言えるウィーンで凄まじい演奏を聴かせてくれました。明日もまた、フォン・オッターの魂の歌、そして、ラトルの誠実な指揮で再度、この人間味あふれる大曲を聴きます。音楽は人間の根源的な何かを感じさせてくれる、素晴らしいものですね。


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