生涯最高の室内楽!ベートーヴェン弦楽四重奏曲チクルス⑤:ハーゲン・カルテット@トッパンホール 2013.9.30
今日はこれまでの生涯で聴いた最高の室内楽リサイタルになりました。今日の感動はこれからもずっと忘れることはないでしょう。今日は後半が第14番で大いに期待していましたが、実は前半の第2番と第4番にすっかり、魅了され、感動してしまったんです。第14番も素晴らしかったのですが、sarai自身、前半の第2番と第4番でアドレナリンを出し尽くしてしまい、精魂尽き果てた状態で後半の第14番を聴いてしまったんです。第14番と双璧をなす傑作の第15番は今春のシリーズで聴きましたが、あれはその日のプログラムの前半で演奏されたこともあって、大変な感動を味わいました。できうることならば、今日も第14番を前半に持ってきて欲しかったと贅沢なことを考えてしまいます。コンサートのプログラムですべての演奏が最上のレベルなんてことはほとんどありませんが、今日はそういう素晴らしい日でした。聴く側としても、体力を温存しながら聴かないといけなかったわけです。
これまでのチクルスについては、前期シリーズの1日目はここ、2日目はここ、3日目はここ、そして、後期シリーズの1日目はここをご覧ください。
今日も、事前の予習はブッシュ四重奏団(第14番のみ、初期は第1番しか録音が残っていません。)、ブダペスト四重奏団、そして、当日予習はエマーソン・カルテットです。今は予習にブッシュ四重奏団は聴かなければよかったと後悔しています。その理由はブッシュ四重奏団の第1ヴァイオリンのアドルフ・ブッシュの物悲しい響きがどうしても、頭に残り、どこかでハーゲン・カルテットの演奏と比較してしまう自分を感じます。それほど、ブッシュ四重奏団の第14番は素晴らしく、心に深く刻み付けられています。今日の第14番にのめり込めなかったのは、アドレナリン不足だけではなかったんです。皆さんも予習には気をつけましょう。ブッシュ四重奏団の録音は何と1936年のものですから、80年ほど昔のもので、そんなものに呪縛されてしまうと、一生、そこから抜けきることはできなくなります。
今日のプログラムは以下です。
弦楽四重奏曲第2番ト長調Op.18-2
弦楽四重奏曲第4番ハ短調Op.18-4
《休憩》
弦楽四重奏曲第14番嬰ハ短調Op.131
まず、第2番。この曲はベートーヴェンの初期の6曲の中でも、特に平明でハイドンの弦楽四重奏曲を想起してしまうような曲です。その筈でした。実際の演奏は何たる第2番でしょう。冒頭の一音から気合の乗った美しい演奏。《挨拶》という可愛らしい愛称が付けられていますが、何の何の、実に充実した響きで、ハイドンを連想するようなところはまったくありません。こんな第2番は聴いたことがありません。初期の弦楽四重奏曲セットはこのように演奏次第で大化けする可能性を秘めていることは今までも経験してきました。それにしても、よりによって、この第2番がこんなに素晴らしく響くとは驚愕です。まことにハーゲン・カルテットらしい演奏とも言えます。このチクルスでも、ハーゲン・カルテットには、このように弾いてもらうことを期待していた自分に気が付きました。この演奏のレベルで全曲録音に臨んでもらいたいものです。
次は第4番。この曲は初期の6曲のなかで、とりわけ有名で傑作。何せ、ベートーヴェンお得意のハ短調ですからね。第1楽章の第1主題の短調の悲愴な調べにいきなり感動し、素晴らしい第1楽章を涙を滲ませながら、じっと聴き入っていました。これ以上、何も望むところはない完璧な演奏です。残りの楽章も見事な演奏で大いなる感動を味わわせてもらいました。
休憩後、期待の第14番。冒頭の第1ヴァイオリンの美しいソロが始まります。今日のルーカス・ハーゲンはとても素晴らしく、これも繊細さに満ちた美しい響き。しかし、前述したようにsaraiは心に刻み付けられているアドルフ・ブッシュの物悲しい響きにとらわれ、また、アドレナリンも欠乏状態。うっとりとして聴くことはできても、決して感動に陥ることはありません。残念なことでした。実際、ハーゲン・カルテットの演奏は、第1楽章のソロの受け渡しの素晴らしい響き、第4楽章の情緒たっぷり変奏、第6楽章の何とも美しい抒情、そして、第7楽章の気魄に満ちた圧倒的な迫力と素晴らしい和音など、聴きどころ満載の充実の演奏だったんです。
これで感動できないのなら、もう、この第14番はブッシュ四重奏団で封印するしかありません。古いLPレコードを大事に聴き続けるしかありません。
今春から続いたベートーヴェン弦楽四重奏曲チクルスも明日の6回目の演奏会で完了します。最後に演奏されるのは第13番ですが、ただの第13番ではありません。第一稿で演奏されます。つまり、終楽章の第6楽章は従来のフィナーレではなく、長大な大フーガが演奏されます。堂々たる締めくくりになるでしょう。
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